はみ出し者は自分だけ(ポケモン不思議のダンジョン空) - りんごの森と
第二十八話:合流
 スピアーがいると思われる付近を避けながら、自分が逃げてきた方向と反対側に行ってみたけど、誰もいなかった。そこからは何処を探せばいいのかも分からなくなり、適当にあちこち走り回る始末。いま思えば、やっぱりテンパってたのかもしれない。
 途中で、自分と同じピカチュウを見つけた。同種族の情というか、なんか複雑な気分というかが相まって、俺としては戦うつもりはなかった。しかし、向こうのピカチュウの方はそうともいかず、凶暴化していたので襲ってきた。
 幸い弱かったので、特に苦労せずに返り討ちにすることができた。そして、ここからが驚くべきことだが、逃げ帰るピカチュウは、なにか黄色い宝玉のようなものを落としていった。
 手に取ってみると、それが何なのか実感できた。みなぎるパワー、バチバチと電気が溢れそうになる、それは、それこそが、「でんきだま」だった。
 俺はメアリーを見つける前に先に「でんきだま」を見つけてしまった。探し物は探してないときにこそ見つかるものだとよく言われるが、本当にその通りである。
 探す対象がいよいよメアリーだけになったことだし、ちょっとだけ頭を捻ってみた俺は、階段を探すことにした。この不思議のダンジョン、階段を登らなければこの階層というか、エリアから出ることはできない。(脱出すれば別だが)ということで、メアリーは必ずこの場所に行き着くはずなのだ。
 ということで、階段を探し、見事見つけた〜ってところで、俺はメアリーと、そしてチコリータに出会ったのである。


 「シンくん!」
「メアリー、やっぱりそこにいたか」
「うん!ここで待ってたらいつかは出会えるかな〜って思って!」
「考えてることは一緒だったんだな」

 「あたしたちの方が、一歩二歩早かったみたいだけどね」
メアリーの横にいた、チコリータが口を開いた。それにしてもこのチコリータ、どこかで出会った気がするな。
 「えっと、誰でしたっけ」
チコリータ、顔をしかめる。
「揃いも揃って失礼ね、あんたたち。あたしはチコ。前に、トレジャータウンで会ったでしょ?」
「チコ…。あぁ、あの時の。…でも、なんでこんなところでメアリーと?」
チコは胸を張って、(四足歩行なのでふんぞり返ってともとれるが)
「メアリーがシンくんを探すって言うから、あたしは手伝ってあげてたのよ!」
「そうなの。ここで二匹で待ってたのも、チコの提案なんだよ」
「へー。ありがとう、チコ。おかげで助かったよ」
 ペコリと頭を下げる。チコのおかげで俺たちは再会できたというわけか。それはほんとに感謝すべきことだ。チコはどういたしまして、と言ってはにかんだ。

 「あれ?シンくん。手に持ってるのは、何?」
メアリーが、俺が手に持っていたでんきだまに気づいた。俺は、でんきだまをメアリーの前に出した。
「探してたでんきだまだよ。メアリーを探してる途中で、見つけたんだ」
「これが…でんきだまか〜。綺麗な色だね〜」
うっとりするメアリー。「触ってもいい?」と言われたが、「電気タイプ以外がさわると麻痺するんだ」と言うと、顔をぷうっと膨らませて、「ずるい」と言った。
 「でも、これで目的は達成したってことだよね!」
「そういうことになるな」
「じゃあさ、今日はもうギルドに戻らない?ちょっと早いかもしれないけど」
「そうだな。たまにはギルドでのんびりするっていうのもありかもしれない」
「決まりだね!…あ、えっと…チコはどうする?」
メアリーがそう聞くと、チコは空を見上げてうーん、とうなり、
「あたしもついていっていいかしら?あんたたちのギルドってとこ」
と言った。そして続けて、
「ちょっと、あんたたちのギルドに興味が出てきたのよ」
と言った。メアリーは笑って答えた。
「そういうことなら大歓迎だよ!…ね、シンくん!」
「あぁ、もちろん」
否定する理由はない。歓迎の言葉を受け、チコは穏やかに微笑んだ。
「ありがとう!メアリー、シンくん!」
 なんか、妙にさくっと話が進んだ気がするけど、ま、気のせいか。




■筆者メッセージ
描写の迷宮に迷い混んでしまいました…
〜分かったこと〜
シン…一安心
つらつら ( 2017/10/28(土) 23:36 )