短編集 - 本編
変わる者
────変わりたい…────

とある崖でモノズのリボンズは、変わらずの石のペンダントを見て、そう思った。幼い頃に父親と空へ散歩に出かけ、最初は空を楽しんでいたが、ふと下を見てあまりの高さに恐怖を覚え、トラウマとなり高所恐怖症となってしまったのだ。

時が経ち、周りの木には桜が咲き誇っていた。周りの仲間は次々とジヘッドへ。そして、サザンドラへと進化していく。進化して生えた翼を使い、みんな空を飛ぶのを楽しんでいる。その中で一匹進化していないリボンズは、いても面白くないので、皆から離れ、誰もいない森の中へと入り、大きく開いた一本の木が生えている場所に着いた。

「変わりたいと思っているのに……それでも心の中で怖がってる自分がいる……もう昔のことなのに……」

目に涙を浮かべ、木の下に寝転んだ。ブツブツと言っている間にリボンズは、いつの間にか眠っていた。



〜〜〜〜〜



『リボンズ…』

(…ん、誰だ…)

薄黒い世界でリボンズは誰かに呼ばれた。起き上がり、前を見ると一匹のモノズがいた。

『俺は、お前だ。えっと…お前の影とでも言っておこうか』

(…俺の影が俺に何用だよ)

『お前は変わりたいんだろう?』

(あぁ、でも怖いんだよ。進化して、飛んでる時に……)

リボンズは、自身が飛んでいるのを頭に浮かべると身体が震えはじめた。それを見た、モノズが、胸に手を当ててリボンズに問う。

『お前は満ち足りたポケ生を歩みたいと思わないか?』

(満ち足りたポケ生…?どういう意味だ)

リボンズはモノズの言っている事に理解できず、聞き返すと、影は首を横に振った。

『それは答えは自分で見つけろ。じゃあな』

(お、おい!!)



〜〜〜〜〜



リボンズはふと目が覚めた。周りを見ると、先程の薄黒い空間ではなく、何も変わってない森の中だった。リボンズは、さっきの夢の中で自分が言っていたことを思い出した。

「満ち足りたポケ生……ねぇ」

そして再び時は経ち、夏になった。満開だった桜が散り、緑に染まり、段々と暑くなってきた。リボンズは、あの夢を見た日から、未だに変われないままモノズのままで過ごしていた。ある日、リボンズは崖へ向かった。サザンドラ達は、夏の暑さを気にせず、楽しく空を飛んでいる。リボンズは、少しだけ羨ましく思いペンダントに足をつけたが、トラウマを思い出しペンダントから足が離れた。

「ははっ……やっぱり怖いや……」

リボンズは、他のサザンドラから背を向け、あの日と同じように森へと向かい、木の下で寝転んだ。



〜〜〜〜〜



『まだ変われずにいるのか…』

(俺か……変わりたいさ。でも、心の底から恐怖が湧いてきて俺の決断を躊躇わせるんだ)

リボンズは、自分の胸に足を当てる。心臓の鼓動が、いつもより速く感じた。リボンズの隣にモノズが座り、話を続ける。

『そうしているうちにお前の仲間は遠くに行ってしまうぞ?それでも良いのか?』

(…うるせぇな。いいだろ、別に…)

『別にって……本当に、それでいいのか?』

(………)

『………』

二匹の間に沈黙が流れた。しばらくして、リボンズが口を開いた。

(怠惰だな…)

『そうだな…』

リボンズは、ペンダントを見ながらそう呟いた。その時、何かの声が聞こえた。


────ン…ゃん────


(ん?なんだ…声?)


────ンズ…ゃん!────


(誰かが俺を呼んでいるのか?)


────リボンズ兄ちゃん!!────



〜〜〜〜〜



リボンズは、目を覚まし起き上がると、そこには一匹の泣いているモノズがいた。

「ど、どうしたんだ?」

「リボンズお兄ちゃん…ズズが…ズズが崖から……」

「何っ!?どこだ!!」

リボンズは、モノズの後をついて行った。向かった先は、森を抜けた先にある、崖だった。リボンズは、怖がる自分に喝を入れ、覚悟を決め、崖の下を覗いてみた。そこには、崖に生える一本の枝にしがみつく一匹のモノズが。

「ズズ!大丈夫か!」

「り、リボンズお兄ちゃん……た、助けて…」

涙でぐしゃぐしゃになった顔を見たリボンズは、急いで頭の中で助ける方法を考えた。助けを呼びに行こうにも、ここから、住んでいる場所までは遠すぎる。ふとリボンズは、ここに向かう前に蔓を見かけた事を思い出した。

「おい!ここに向かう前に蔓があったよな!?それを持ってくるぞ!」

「う、うん!」

リボンズ達は森の中に戻り、蔓を咥えて戻ってきた。それをゆっくりとズズの近くまで下ろす。

「蔓に掴まれ!」

「無理……怖い……」

ズズは、怖がり蔓の方に顔を上げることが出来ない。その時、リボンズ達に強い風が吹き始めた。リボンズは、焦り始めた。

「頑張れ!ゆっくりと慎重に顔を上げて蔓に掴まればいいんだ!頑張れ!」

「うぅ……」

ズズはゆっくりと顔を上げ、目の前にある蔓を咥えようとした。次の瞬間、さっきよりも強い風が吹いていた。風に驚いたズズは元の状態に戻った瞬間…


バキィ!!


リボンズは、嫌な音を聞いた。それは、乾いた何かが折れる音。その次に聞こえたのは……悲鳴だった。

うわぁああああああああああ!!!!!

リボンズが見たのは、落ちていくズズの姿。隣には、弟が落ちるのをただ見ている事しか出来ず、青ざめたモノズの姿が。そして次の瞬間、リボンズはペンダントを投げ捨てて崖を飛び降りていた。

「ううぅ…ズズ!!」

リボンズはなぜいきなり崖から飛び降りた自分に理解できなかった。勝手に身体がペンダントを投げ捨て、崖に飛び降りた自分に。怖いという思いなどなかった。そう思っている間にリボンズの身体が光に包まれ形が変わり始めた。
頭が2つになり、2本の翼が生え、ジヘッドに。再び、光に包まれ、翼が2本から6本へ、前足に顔が現れ、サザンドラへと進化した。

リボンズは、今まで体験したことのない速さでズズの下まで急降下し、抱き止めた。

「リボンズお兄ぢゃん…怖がっだよぉ……」

「ズズ…」

胸の中で泣くズズを空中で抱きしめ、しばらくして上で待つモノズの元へ戻った。

「リボンズお兄ちゃん!ズズを助けてくれてありがとう!」

「ありがとう!リボンズお兄ちゃん!」

「どういたしまして。今度からは、あまり崖の所には行かないようにな」

「うん!あっ、リボンズお兄ちゃん。これ」

モノズは、リボンズが投げ捨てたペンダントを渡した。リボンズは、それを首にかけると、変わらずの石がはめ込まれていない事に気づいた。

「なぁ、ここにはめ込まれてた変わらずの石知らないか?」

「石?あれ、リボンズお兄ちゃんが投げ捨てた時、割れちゃったんだ。ほらあそこ」

モノズが足差した方向をみると、そこには真っ二つに割れた変わらずの石があった。

「あらら…まぁいいや。最終進化したからもう俺には必要の無いけど、一応持って帰っとこ」

と笑いながら言って、リボンズは割れた変わらずの石を拾い、3匹は自分達の住む家へと帰っていった。リボンズが家に帰ると親はびっくり。「何があったんだ!?」と聞かれ、リボンズは先程の一部始終を説明。リボンズの親は彼を褒め、今日の夕飯はリボンズの好きな物ばかりが並べられた。夕飯の後、2匹の兄弟の親がお礼にやって来た。涙を流しながら、何度も頭を下げ、リボンズに感謝をした。



〜〜〜〜〜



『ついに進化したな』

リボンズの夢の中に彼の影が出てきた。

(あぁ、自分でも驚いてるよ)

『これで、空を飛ぶのも怖くないだろ?』

(さぁね…それはどうだろう。まだ少し怖いかな)

『なんだよそれ。じゃあ、お前は今日の事で少し変わる事が出来たってわけだな』

(そういう事になるだろうね)

と、笑いながら言った。影も笑っていた。

『じゃあ、あの石はお前が変わる事が出来たから割れたのかな?』

(どういう事?)

『お前が持っていた変わらずの石が、お前が変わった事で割れた…変割れた石…なんてな』

(面白い事いうな)

『だろ。ほら朝日が上がったぞ。行ってこい』

(はいはいっと……ありがとな)

『なんて?』

(何でもねぇよ)



〜〜〜〜〜



翌朝、リボンズは影に起こされた。崖の方に行くと仲間は、リボンズが進化している事に驚き、そして喜んでくれた。その後、仲間と一緒に空を飛んだ。少し、怖く感じたがすぐに慣れ、空を飛ぶのが楽しく思えるようになり、その日は遅くまで、仲間と空で遊んでいた。影とはたまに夢の中で話すようになり、リボンズはあの日に変われた事によって、影の言っていた満ち足りたポケ生の第一歩を踏むことが出来た。止まっていた歩みを再開する事が出来た。

あの石は今でも大切に飾ってある。俺の人生を変えてくれた…割れた変わらずの石が。














■筆者メッセージ
ティア様主催の企画の短篇集です☆

ポケモン:モノズ

キーワード:変わらずの石
暗歌 ( 2017/06/10(土) 22:05 )