甘太郎
昔々、ある所にジュカインとメガニウムが二匹仲良く暮らしていました。ある日、ジュカインは山へ果実を採りに、メガニウムは川へ水を汲みに行きました。
メガニウムはいつも水を汲んでいる川へ着きました。持ってきた木桶で水を汲もうとすると、川の上流から何やらとても甘い匂いがしてきました。
「いい匂い…この匂いは何だろう?」
顔を綻ばせながら、メガニウムは川の上流に目を向けると、緑の葉っぱのついた薄いホットピンク色の巨大な果実が…
どんぶらこ…どんぶらこ…と流れてくるではありませんか。それを見たメガニウムは大喜び。つるのムチで果実を引き上げ、にこにこしながら家に持って帰りました。
夕方になり、ジュカインが籠いっぱいの果実を採って帰ってきました。
「メガニ……わっ、なんだ!?この大きな果実は!」
「ジュカイン、おかえり!今日、川の上流から流れてきたの!」
「へぇ〜!食べるのがもったいないくらい、大きいなぁ」
「ちょっとだけ食べてみましょ!ジュカイン、リーフブレードで切ってくれない?」
「任せな!リーフ…」
ジュカインが切ろうとした瞬間…巨大な果実がいきなりポンッと割れました。なんと、巨大な果実の中からアマカジが出てきたのです。元気な雄のアマカジです。子供のいない、ジュカインとメガニウムは、このアマカジを『
甘太朗』と名づけました。
アマカジは元気な男の子に育ち、アママイコに進化しました。えっ?早すぎる?気にしないでください。ジュカインとメガニウムは甘太朗が可愛くてたまりません。甘太朗は、おじいさんと共に果実を採りに行ったり、薪を割ったり、物を運んだりして二匹のお手伝いをするのでした。
その頃、ポケガ島から悪いポケモン達がやってきて、町や村を襲い、宝物や食べ物を奪い、渡さなければ乱暴をするのでした。町や村のポケモン達が困っているのを聞いて、甘太朗は、じっとしていられません。
「お父様!お母様!僕、ポケガ島に住む悪いポケモン達を退治してきます!」
ジュカインとメガニウムは最初は反対しました。しかし、甘太朗は…
「無事に元気で帰ってきますよ」
と言いました。それを聞いたメガニウムは…
「じゃあ、力のつくチイラ団子を作るから持って行きなさい」
ジュカインとメガニウムは、すぐに力の出る美味しいチイラ団子をたくさん作ってくれました。
「気をつけていくんだぞー!」
二匹に見送られ、甘太朗は元気に出発しました。村はずれに来た時、いつも遊んでいる野生のルガルガンが走ってきました。
「甘太朗!どこに行くんだい?」
「悪いポケモン達を退治にポケガ島へ!」
「甘太朗!お供するから、お腰につけたチイラ団子を一つ僕にくださいな!」
「いいよ!たくさん食べて!」
ルガルガンをお供にした、甘太朗。次に、山道に入るとケンホロウが飛んできました。
「甘太郎さん!某もお供いたします!」
「ありがとう!お礼に力の出る、美味しいチイラ団子あげる!」
甘太郎は喜んで、ケンホロウに団子をあげました。ケンホロウを仲間にした甘太郎。次に、森林の中に入るとゴウカザルがやって来ました。
「甘太郎!俺もお供させてくれよ!」
「本当かい?じゃあ、力の出る、美味しいチイラ団子あげるよ!仲間が増えて嬉しいなぁ!」
甘太朗は、ゴウカザルに団子をあげました。仲間が増えて嬉しい甘太朗。やがて、四匹は港に着きました。甘太朗は港にいた、ラプラスに声をかけました。
「ラプラスさん!僕達、ポケガ島へ行きたいのですが、乗せてもらえませんか?」
「ポケガ島へ?駄目だよ。あそこには悪いポケモン達がいるだよ?君のような子供が行くような所じゃ…」
「分かっています!僕達はその悪いポケモン達を退治しに行くんです!お願いします!」
甘太朗は必死に、頼みました。ラプラスは聞き入れませんでしたが、ついに…
「しょうがない……乗せて行ってあげるよ。その代わり、無事に帰ってくるんだよ」
「はい!ありがとうございます!」
ラプラスに乗った甘太朗達は、海に出ました。しばらくして沖に出ると、見張りをしていたケンホロウが叫びました。
「甘太朗さん!向こうから、真っ黒い雲がどんどんこっちに!」
「嵐だ!みんな、掴まれ!」
海は荒れ、波が激しくなってきました。ラプラスは木の葉のように揺れますが、全速力で嵐を抜けました。甘太朗は皆にチイラ団子を食べさせ、元気いっぱいになりました。しばらくして、ケンホロウが何かを教えてきました。
「島だ!島が見える!」
「あれは……ポケガ島だ!」
ラプラスが叫びました。甘太朗達はついにポケガ島にたどり着いたのです。
「ラプラスさんは、ここで待っててくださいね」
甘太朗達は島に上がると頑丈そうな黒い門がそびえていました。甘太郎達は門を開けようとしましたが、門は開きません。
「甘太郎!俺に任せろ!」
ゴウカザルが皆に、門から離れろと指示を出し、息をいっぱい吸い込むと、頭の炎が勢い良く燃え上がりました。
「火炎放射!」
火炎放射は門を貫通し、中に入ることが出来るようになりました。甘太郎は、先頭になって中に飛び込みました。
「悪いポケモン達め!出てこい!」
「何だと!?このガキぃ!!」
ご馳走を食べていたランドロス、トルネロス、ボルトロス、そしてオニドリルとオニスズメが一斉に飛び出してきました。
「さぁ、かかってこい!」
甘太郎は向かってきたオニドリル達に甘い香りで誘惑しました。オニドリル達は甘い香りに惹かれ、その隙に次々とおうふくビンタを喰らわせ、倒していきました。
「みんな!力のつくチイラ団子で千人力だ!」
ルガルガンは駆け回り、トルネロスの腕に噛みつきました。
「い、いたた!や、やめろ!あ、兄者達!助けてくれぇ!」
トルネロスは大騒ぎ。離そうとしますが、ルガルガンは離れません。
「トルネロス!待っておれ!今、我が…」
ボルトロスが金棒を持ち、ルガルガンに振り下ろそうとすると、そこへゴウカザルがボルトロスの顔にマッハパンチを打ち込みました。ランドロスは、二匹の弟達を助けに向いましたが、ケンホロウが立ちふさがり、くちばしでランドロスの手をつっつき、ランドロス達は逃げ回りました。
「よくもやってくれたな!弟達!力を合わせるぞ!」
「あれをやるんだな!兄者!」
「分かったぜ!兄者!」
ランドロス達はそれぞれの力を合体させ、強力な光線を放ってきました。ルガルガン達は避け切れず、戦闘不能になってしまいました。
「どうだ!我ら、三兄弟が力を合わせれば怖いものなどないわ!」
「お前達!よくも、僕の友達をやってくれたな!」
「ガキか!あとはお前……ん?」
ランドロス達の前に現れたのは、なんとアママイコからアマージョに進化した甘太郎でした。甘太郎は、一瞬でトルネロスの頭上へ飛び、そのまま地面へ踏みつけました。
「ト、トルネロス!!」
「ガキ!よくも、トルネロスを!」
ボルトロスは、金棒を振り回します。甘太郎は、さっと避けて金棒を、払い落とすと「やあっ!」とボルトロスの腹にトロピカルキックを蹴り込みました。
「ボ、ボルトロス!!」
「ゴミ共!この王に向かってよくもガキだと言ってくれたな!僕は甘太郎!これ以上、町や村で悪さをしてみろ、こうしてやるからな!」
と、言いながらランドロスの頭上に飛び、地面に向かって踏みつけました。そして、しばらくして…ランドロス達は手をついて大謝り。
「もう、悪いことはしません!許してくださあっ!!」
顔を上げたランドロスが、甘太郎に地面に踏みつけられました。
「頭が高い!お前らみたいなゴミ共がこの僕を見るんじゃない!」
「す、すみません…い、今まで奪ってきた宝を返しますので許してください……」
「それなら許してあげるよ。早く持ってきてくれない?」
ランドロス達は急いで山のような宝を運んできました。甘太郎達は、宝を持ち帰り、一つずつ持ち主の所へ返すのだろう…と思いきや、全ての宝を質屋に持って行き、金に変え、山の頂上に大きな屋敷を建てました。
甘太郎は、ジュカインとメガニウムを屋敷に呼びました。元気に、そして立派になって戻ってきた甘太郎に二匹は大喜び。甘太郎はそれからも、ルガルガン、ケンホロウ、ゴウカザルと一緒に町や村を守り、悪い者がいると聞くと、その者達の頭を踏みつけ、奴隷にし、莫大な財を築き上げた甘太郎は自分の国を作り、そして王様となり、幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし…