最弱じゃない
僕はヌメラ。竜の森という、ドラゴンタイプのみが生息している森に住んでいます。僕は、みんなからいじめられていて、『最弱のドラゴン』って呼ばれてるんだ…ん?なぜかって?ここに訪れたトレーナーとバトルしても負けるし、仲間にバトルをいどんでも完敗するからだ。僕は、生まれてきてから一度も勝ったことがない。何故だろう…勝ちたいのに勝てない…だから勝つために努力をしているのに報われない。ヌメラは深く溜息をついた。
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僕はつい最近、ヌメイルに進化した。始まったばかりなのにもう進化!?って思っている人もいるかもしれないけど、気にしない。進化したから勝てるようになってるだろうと思っていると思うけど…ヌメラの時と変わらず連敗続き。情けないよね…
今日もバトルに負けてトボトボと森の中を歩いていると、どこからか微かに雨の音が聞こえてきた。僕は、その音のする方向へ全速力で走った。森を抜け、草原を走っていると、いつの間にか雨の降っている雲の下に入った。冷たい…なんて気持ちがいいんだろう…何日ぶりかの雨はヌメイルの身体に癒やしを与えた。しばらくして雨は止み、雲から太陽が顔を出した。ヌメイルは近くにあった木の陰に移動し、昼寝を始めた。
懐かしい親友の夢を見た。それは、仲の良かったキバゴと一緒に遊ぶ夢。ヌメラの時…いつも、いじめられていた所を助けられ、その時からずっと一緒に遊んだり、特訓したり、木の実を食べたり、寝たりして、周りからは二匹は兄弟のように見ていた。ある日…キバゴは森を訪れた一人の少年に捕獲されてしまった。ヌメラはその時、キバゴを助けようとそのトレーナーの前に立ち塞がった。だが…呆気無くやられてしまった。いつも隣にいてくれた大切な者を失い、ヌメラは泣いた。身体の中の水分が全て無くなるような勢いで泣いた。これは、ヌメラにとって絶対に忘れる事の出来ないものとなったのだ。
僕は目を覚ました。周りを見渡すと、既に日は落ち、月が出ていた。月の光がヌメイルを照らしている。僕は、夢を見て、一つある事をふと思い出した。ヌメラの頃、キバゴに
「これなら自慢できるものはある?」
と聞かれた事があった。僕は答えられず困った。その様子を見て、キバゴは言った。
「ヌメラには我慢強い所がある。防御こそ最大の攻撃って言うだろ?そこを伸ばせばバトルでもきっと勝てるよ!」
今思えば、自分には防御や特防が特化していると感じていた。耐久力があるから、攻め続けてPPがすぐに無くなってしまう。ヌメイルは攻撃が全てだと思っていたが、ある一つの作戦が浮かんだ。
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次の日…ヌメイルは昨日思いついた作戦を実践に移そうとした。相手はガバイド。ガバイドは手を休めず攻撃を繰り出す。ヌメイルはそれを耐える。ただひたすらに耐え、時を待った。しばらくして、攻撃をしていたガバイドの息が上がってきていた。チャンスだと思ったヌメイルは、今まで耐えてきた攻撃を光線にして放とうとした。そう、作戦とは相手の攻撃を受けることで倍にしてダメージを与える技【がまん】を使った戦略だったのだ。いざ、放とうとしたその時…ヌメイルは痛みで顔をしかめた。カバイドの攻撃のダメージで体中が悲鳴を上げているのだ。ヌメイルは焦りながらも、最後の力を振り絞り、放とうとした。しかし…ガバイドの爪がヌメイルが放つよりも先に彼の体を切り裂いた。
(あと一歩のところで…)
ヌメイルは倒れた。初めて勝てると思ったのに…意識が遠のきそうになった時、上空から雨が降ってきたのだ。その時だった!ヌメイルは自身の身体から力が溢れてくる感覚を感じた。
(何だろう…なんだか分からないけど…力が…力が湧いてくる!)
そして、ヌメイルの身体は光に包まれた。その場にいたガバイドや周りのポケモンは驚いた。光が消えるとヌメイルはヌメルゴンに進化していた。ヌメルゴンは、ガバイドにバトルの続きを求めた。カバイドはニヤッと笑い、攻撃を再開した。ヌメルゴンは先程と同じようにカバイドの攻撃を受け続けた。ガバイドは攻撃を繰り出し続け、再び疲れが見え始めた。
(今度こそ…!)
ヌメルゴンは今まで受けたダメージを光線に変え、ガバイドに向けて放った。避けれずに直撃を喰らったガバイドは、吹っ飛び、森の奥にある木に打ちつけられ、気を失っていた。すると、周りから喝采が巻き起こった。
「おめでとう!」
「ヌメルゴンおめでとう!」
周りのポケモン達はヌメルゴンを抱え、胴上げした。一回…二回…三回…ヌメルゴンの身体は宙に飛んだ。
「キバゴ……やったよ…僕…ついに…ついに……!!」
僕は泣いた。夜になっても、今日の事が忘れられず、嬉し泣きしていた。
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それから、僕はバトルで連勝を続けた。強いヌメルゴンが竜の森にいるという噂を聞きつけ、たくさんのトレーナーが捕まえに来るけど、全員返り討ちにしてやった。僕は、竜の森の中で最強…つまり一番の座に着いた。どう?すごいでしょ?キバゴがいなかったら、僕は一生…負け続ける人生だったかもしれない。キバゴがいたから…僕は強くなれた。少しずつ…着実にね。最初の頃は努力しても報われないって思っていたけど、諦めずに努力を続けていけばいつかは報われるんだ。僕はもう最弱じゃない……僕は…最強のドラゴンなんだ!