vsワシボン
ユウキとジャキは公園のベンチに座った。ジャキは静かに口を開く。
「ポケモンとは…地球から見たら侵略者ってところだな。」
「えっ?」
ユウキは驚きを隠せなかった。
「こいつらが…か?」
「あぁ。」
ジャキの頷きが重苦しい雰囲気を作る。
「詳しく聞かせてくれ。」
「分かった。」
ジャキは一呼吸置き、口を開き始める。
「グラン・メテオがイッシュとシンオウの間にある海に落ちたのは2年前。俺はシンオウのナギサシティに住んでたからその被害がどれだけのものなのか、よく分かった。海から続々と出てきたポケモン達は家を破壊し、町をいとも簡単に壊す程の力を持っていた。俺はシンオウの中心、ヨスガシティに逃げたよ。家族ともはぐれた。ヨスガにはたくさんの人が避難していた。」
「俺は教会の椅子に横になって寝ていた。避難してから何日か経っていきなり窓ガラスが割れた。突然のことだったから俺もびっくりしたよ。そのとき出会ったのがあのワシボンなんだ。」
ジャキはリザードと遊ぶワシボンを指差す。
「俺の腹の上に落ちてきたんだ。周りの人は逃げるように俺を囲った。俺も怖がっていた。だけど、ワシボンは攻撃する気も無いように思われた。羽を痛めてたみたいなんだ。俺はワシボンを連れて、急いで病院に行った。けど、病院は怪我をした人で一杯だった。誰一人として俺の話なんか聞こうとしない。それどころか、ワシボンを見て軽蔑している。どこに行ってもそうだった。ワシボンを怖がって、治療なんかしてくれそうにもない。ワシボンは羽をかばうようにおさえている。それで俺は町を出る決心をした。俺自身もかなり疲れていて、クロガネシティまで逃げて限界だった。病院に着いたものの、やはり、人で一杯だった。誰か手の空いている人を探していると、一人の人が俺に話しかけた。『ちょっと私の家においで、そのポケモンの治療ができるよ。』そのときはポケモンとかよくわかんなかったけど、着いていくしかなかった。」
「その人は年は50ぐらいでたくましい体つきで頼もしかった。ワシボンの治療もほとんど任せっきりで、俺は腹が減ってたからご飯を食べていた。俺が食事を終えた頃にワシボンの治療も終わった。『これでもう大丈夫だと思うよ。』俺はありがとうございますと言い、色々と話を聞かせてもらった。その人はポケモンについてよく知っていて、俺も驚くことがたくさんあった。ポケモンの中の何匹かはワシボンのように何の危害も加えないが、ほとんどは危害を加える侵略者であること。危害を加えないポケモンはそのポケモンを所持する人間によって悪にも善にも変化するということ。そして何より驚いたのは自分の所持するポケモンが消滅するとその所持者は命を失ってしまうということ。まあ、ノーサはどうか分からないけどな。」
ユウキは自分がクルスにしたことをとても悔やんだ。
「俺はワシボンと一緒にそのジンと呼ばれる男の人の家にしばらく泊めてもらった。だが、3日ぐらい経って、ドサイドンと呼ばれるポケモンを連れた男がクロガネシティに来た。食料と金を求めていたらしい。皆はクロガネゲートの方へ走っていった。しかし、ジンさんは違った。流れに逆らってその男の方へ行った。俺もクロガネゲートへ行ったふりをして、家に隠れて、その様子を見ていた。そこで俺が見たのは驚くべき光景だった。」
ジャキはそう言って、ポケットからモンスターボールに似ているが、上半分が黒とH型の黄色で彩られた球体を出した。
「これがジンさんのポケモン。名前はギャラドスっていうんだ。自分は何匹かポケモンを持ってるから一匹やる、とか言われてさ。多分ボールの違いは強さなんだと思う。これはハイパーボールっていうらしく、他にもスーパーボールとかマスターボールとかがあるんだって。」
ユウキは不思議に思い、「じゃあなんでそいつ使わないの?」と質問した。
「多分まだ俺には使いこなせないんだ。前ボールから出しても言うこと聞かなくて、ジンさんも扱いには少し困ってたっぽいしね。」
ユウキはへぇーと相づちをうつことしか出来なかった。
「こんなところかな、ユウキには知っておいてもらいたかったし、仲間が見つかってよかったよ。俺の家あそこだからいつでもおいでよ。」
「うん。」
ユウキはまた相づちをうった。
ユウキは家に帰り、時間も遅く、親にこっぴどく叱られ、説教が終わると風呂にも入らず真っ先にベッドへ向かった。
「…どうしてもポケモンバトルで負けた奴が死ぬってのが頭から離れない…」
ユウキはこの時自分達のやっているポケモンバトルは自殺と殺人が共存するものであることに気づいた。