vsライボルト
ユウキとジュペッタは走って自分の家へ帰宅した。家を出ていったのは9時ぐらいだが、帰ると時計は11時を示していた。
部屋に着くと、すぐさまベッドへと倒れこんだ。
「嘘だろ…消えちまうなんて…」
「ケラケラ…」
ジュペッタもユウキと同じく悲しんでいる。
「ジュペッタ…お前も知らなかったのか?」
ジュペッタは静かにうなずいた。
「ん…?」
ユウキが手にしたのはモンスターボール。それも、クルスのだ。
「これ…あいつのか…?」
モンスターボールの真ん中のスイッチを押したが、なにも変化は起きない。
「なんも出ねぇな…、なんか疲れたな…。」
「ケラケラ…」
ジュペッタも眠そうだった。
ユウキはジュペッタとともに寝てしまった。
「グルアアアア!!」
またあのくじらのような…ポケモン…?
そのとき、父さんが叫ぶように声をかけた。
「やめろ!我を失うな!カイオーガ!」
あのくじらのようなポケモンはカイオーガというらしい。
「グルアアアア!!」
それでもカイオーガは我を忘れ、暴れている。
「くっ…仕方ない…ライボルト!10まんボルト!」
ライボルトと呼ばれたポケモンの10まんボルトという技はカイオーガへと飛んだ。体の大きさはかけ離れているものの、カイオーガは大ダメージを受けているようだった。
「グルル…」
カイオーガは落ち着きを取り戻したようだった。
「よし…」
さすが父さん…とユウキが夢の中で虚ろに思っていると。
「ちゃんと計画的に暴れなきゃダメだろ?」
「グルル…」
ユウキは目を覚ました。
「あの父さんが…?」
ジュペッタはまだ寝ている。
「んな訳ないか…」
ユウキはベッドから体を起こしてタオルで寝汗を拭った。時計の短針は午後4時を過ぎていた。
部屋に戻ってもまだジュペッタは眠っている。やはり今日の戦いで疲れたのだろう。
にしても自分は何で見たことも無いあんな夢を見たのか、なぜ父さんがあのようなイメージで夢に出てきたのか、疑問に思うことばかりだった。
「ふぅー…」
ユウキはベッドに座り、クルスのモンスターボールの真ん中のスイッチをカチカチと押していた。全く何も起きない。
「何に使うんだこれ…?」
ユウキは昼食を取るのも忘れて、ただボーッとしていた。6時ぐらいになり、母さんが帰ってくるとやっと我にかえったように一階へと降りていった。ジュペッタはまだぐっすりと眠っていたので、部屋に居させた。
夕食では母さんに「最近どう?」などを聞いてくる。ユウキは適当に「まあまあ」などと答えて、夕食を進める。
ユウキはさっさと食べ終えて、ジュペッタを見に行った。ジュペッタは起きて、サッカーボールをいじって遊んでいた。
「かわいいなお前。腹減っただろ?なんか買いにいこうか。」
「ケラー!」
最近はケラケラ以外のパターンで喋る。
ジュペッタを隠しながら、ユウキは近くのコンビニへと出かけた。
「今日はお前頑張ったからな。好きなもの買ってやるぞ!」
「ケラー♪」
ジュペッタは見るからに楽しそうだ。
コンビニではジュペッタをカバンに隠し、どれがいい?と囁くように聞いた。そこでジュペッタが指差したのはグレープフルーツだった。
「お前好きなのか?」
ジュペッタはカバンの中で小さく頷く。
ユウキとジュペッタは近くの公園のベンチに座った。ジュペッタがグレープフルーツを美味しそうにかじっている隣でユウキはココアを飲んでいた。
「美味しいか?」
「ケラケラ♪」
「本当に楽しそうだな。」
ジュペッタが食べ終えると、ユウキはココアを置いてジュペッタに指示をした。
「そうだジュペッタ。10まんボルト!」
ジュペッタは体を光らせ、ビリビリとし、放電した。
「やっぱり電気系なんだな。」
「ケラケラ?」
ジュペッタはいきなりのことに少し驚いていた。
そのとき、
「へぇー…君もか。」
そう言って、年齢が同じくらいの少年が近づいてきた。
「誰だ?」
ユウキは身構え、ジュペッタは少し怯えている。