白昼に熟眠す
……うつら……うつら。
吹き抜ける風と木漏れ日の暖かさに、サトシはゆっくりと船をこぐ。昼ご飯を食べた後というのもあるが、やはりこの陽気が最大の要因と言えるだろう。
うつら……うつら……。
夢と現実を行ったり来たりしながらサトシは考える。
このまま寝たら気持ちいいだろうなあ。でも、次の街まで後少しだから今日中に着くようにするってデントが……。
眠気と戦いながら彼は黙考する。その結果ーー
いいや、寝ちゃえ。
完全勝利を収めた睡魔とともにサトシは夢の世界へと旅立って行った。
「ピカピ?」
サトシの異変を最初に気付いたのは、やはりピカチュウだった。
横になったまま動かないサトシに近づき様子を伺うと規則正しい寝息が聞こえ、ピカチュウは安心すると同時に当惑した。
このまま寝かせておくか、今すぐ起こすか。熟睡中のサトシを前に熟考していると、他の仲間がピカチュウの周りに集まってきた。
「タジャ?」
「ピカ。ピカピ、ピーカーチュ」
どうしたの? と聞くツタージャにピカチュウが状況を簡潔に伝える。
とりあえず大丈夫と分かって安堵するポカブとハトーボー、じっとサトシを見るズルッグ、呆れ顔でため息をつくツタージャ、そしてサトシと一緒に昼寝するミジュマル。
「タージャ……」
「ピ、ピカチュウ。ピカピカ」
鋭さを増すツタージャの視線はミジュマルに注がれている。これはやばいとピカチュウが間に入ると、
「何やってるの、みんな」
絶妙のタイミングでアイリスとデントがやってきた。
「ピカ」
「なるほど」
ピカチュウが指差す先で一人と一匹が熟睡する光景にデントは困ったような顔で笑い、
「ほんとに子供ねー」
アイリスも同じような顔で肩をすくめた。
「で、どうするの。デント」
「うーん……」
アイリスの問いに彼はしばし考え、
「ここはサトシ達と一緒にお昼寝ターイム。っていうのはどうかな?」
「ピッカ!」
「そう言うと思った。エモンガ、キバゴ、一緒に寝よ!」
満場一致でお昼寝タイム突入が決定し、みんな思い思いの場所に寝場所を確保する。
「気持ちいい〜」
「本当だね。サトシが寝ちゃったのもわかる気がするよ」
そう言って二人は微笑みを交わし、心地よい睡魔に身を委ねた。
ーーたまにはこんな日があってもいい。