第五十四話 最硬の岩石
異常な防御力を持った番人レジアイスを相手に、合計30個もの爆裂の種を使い倒したラルドチーム。番人を破った三人は、次なるステージへと――?
〜☆〜
――階段を上がると、そこにあったのはさっきの石碑があった。
もしや戻ってきたのでは? とラルドは一瞬思ったが、それはないと瞬時に分かった。なぜなら、くぼみの形が変わっていたからだ。
レジアイスを倒したラルドチームは、一足先に次の間――ロックの間へと、足を踏み入れていた。
「ここが、次のステージか……変なダンジョンだな」
「番人の洞窟といわれるだけあるわね。これ、番人の遺跡のほうが合ってんじゃないの?」
「おそらく、この謎を解けなかったから洞窟だったのだろう……ん?」
シルガがそういっていると、ふと何かに気付く。
何者かが、階段を上ってきているのだ。
三人は誰が来るのか期待して、階段のほうへ目を向けると……現れたのは、チャームズだった。
「あら、あなたたち、もう来てたの?」
「ああ。番人を倒してきたんだ。残念だったな、今回は俺たちの勝ちだ」
「あら、中々やりますね」
「悔しいけど、今回はアタイらの負けだね。でも、次は負けないよ!」
「そうね。道はまだまだ続いているもの……宣言するわ、あなたたちにはもう負けないと!」
カロスはそういって、なにやらポーズをとると高らかに宣言した。
勿論、それを黙って聞き逃すラルドでもなく。
「はっ、次も完膚なきまでに負かしてやる。もう謎は解けた、後はどれだけ早く石を手に入れられるかだ」
「ええ、でも私達、負ける気がしなくてよ!」
「そうだね。僕も負ける気がしないよ」
そういって、三人のリーダーは対抗を……と、そこで初めてラルドは気付いた。
フィリア、ミル、ヒイロ――現実世界チームが、揃っていたのだ。
「え、えぇ!? いつの間に!?」
「それはもう、チャームズと一緒にだよ。君たち気付かなかったのかな?」
「私は気付いてたわよ」
「俺もだ」
「え、まさか気付いてなかったの俺だけ!?」
そう、仲間がいるというのに気付かなかったのはラルドだけだ。
「気付かれなかったのはとても傷つくよ。ああ酷い」
「テメェ、フィリアに謝れ!」
「演技! 演技って言葉知ってる!? アーユーオーケー!?」
フィリアのうそ鳴きにすっかり騙されるヒイロを、ラルドは必死になだめる。
勿論その間、フィリアは笑っていた。完全なる悪女である。
「ヒイロ。そこまでだよ……君達は確かに強いけど、今度は僕たちが手柄を手に入れるよ。チャームズの皆さんも、覚悟しておいて下さいね?」
「そうだ! フィリアと俺がいりゃあ、どんな敵でもイチコロさ!」
「私は!?」
さりげなくミルを除外しているヒイロだが、悪気があるわけではない。勿論その方が悪質だが。
「……言ってくれるじゃねーか。俺たちかお前たちか、はたまたチャームズか。どっちが強いか」
「ええ。勝負ね」
「僕は負ける気がしないよ」
三人のリーダーの視線は、火花が散っているように見えるほど鋭くぶつかり合っている。そこにあるのは、ただ純粋なる闘争心のみ。
ラルドも、カロスも、フィリアも、小さくその顔に笑みを浮かべると一斉に手を声を上げた。
「よし! シルガ、レイン、負けてられないぞ!」
「ああ」
「あっ、待ちなさいよ!」
「あら、お早いわね。……じゃ、メイリー、ニンファ。行くわよ」
「分かっています」
「アタイらも、先輩って所を見せ付けなきゃね!」
そういって、ラルドチームもチャームズチームも次なる間――ロックの間へと急ぐ。
その後を追うように、フィリアチームもまた走っていった。
――第二ラウンドの幕開けだ。
〜☆〜
「“リーフブレード”!」
「“龍の怒刀”!!」
「“シャドーボール”!」
現在、ロックの間一階では。
フィリアとヒイロの斬撃はアンノーンを切り裂き、ミルの効果抜群の一撃はアンノーンを容易く吹き飛ばした。
勿論、その際に落とすアンノーンの石――RとOの石も忘れずに取っている。
「ふう、これで残りは二つ、か」
フィリアが石碑でみたくぼみは、R、O、C、Kとどこかで見た事がある並びだ。
そう、アンノーン文字を知っている者ならば気付く並びで、ロック、つまりは岩だ。
フィリアがこれに気付けたのは、アンノーン文字を単純にもっと知りたいとシルガに聞いていたのが大きいだろう。
なにせアンノーン文字というのは普通では知る事のできない、古代の人間時代からの文字だ。そう易々と分かるものではない。
「この洞窟は、まだ謎が多そうだね」
「確かになァ。この洞窟、遺跡がダンジョン化したんじゃねぇか?」
「そうかな……私には分からないや」
「なら口出しすんな」
「ごめん!」
「ヒイロ、君はミルよりも立場は一応低いんだけどね。……っと、探してたら」
フィリアがヒイロに注意をしていると、目の前に都合よく残り二匹――C、Kのアンノーンが現れる。
アンノーンというのは基本、目覚めるパワーというそのポケモンによってタイプが異なる、特殊な技しか使ってこない。
そして今回のアンノーンのタイプは――
「――」
「っ、この感触は……Cは水で、Kは岩かい」
水色と褐色色のエネルギーを、フィリアは華麗によけると即座に懐へともぐりこむ。
フィリアの素早い動きにアンノーンはついていけず、混乱した隙を乱れ桜で倒す。
勿論、持っている石には傷つけず、だ。
「……これで、石はすべて揃ったね」
「あァ。俺たち運がいいぜ、一回目で全部揃うたァ、中々だ」
「これでみんなよりも早くできるね!」
今回の探検において、最速で攻略するに当たり一番重要なのは運だ。
アンノーンもランダムで出てくるため、運がなければ一向に出てこない、なんてこともありうるのだ。
今回運がよかったのは、この三人だったということだろう。
「よし、じゃあ……行こうか」
三人はアンノーンや新たに出現したゴーリキー、カイリキーなどを倒しつつ、再び石碑の間へと戻っていって――
〜☆〜
――石碑の間。
そこに到着したのは、エンジェルナンバーワン、ナンバーツーの実力を持つ二人がいるラルドチームでもなく、最高のトレジャーハンターと謳われたチャームズでもなく。
運がよかったフィリアチームだった。
「……ここで、目を瞑るのかい」
フィリアは石碑に書かれてあったとおりに、目を閉じ、石碑にそっと触れる。
すると、バッグの中のなにかが輝く。
「……R、O、C、K」
すべての石が、光となって石碑へ治まる。
そして、その光が収まると、石碑はどこかへ消え……変わりに、下へと続く階段があった。
「さ、ここからは戦闘が始まるらしいよ。どんな敵が来るかは分からないけど……行くよ!」
「フィリアの行く所なら、俺ァどこでも行くぜ!」
「う、うん……ねぇ、帰っていい?」
「ダメだよ。じゃ、行こうか」
「えぇ……」
ずるずるとミルを引っ張っていくフィリアに、それについていくヒイロ。
三人が階段を下りた先で待ち受けているのは――レジアイスに続き、レジ系のポケモン。
「ジ……ロック」
「……どうやら、準備もなにも待ってはくれないようだね」
「ちっ、いきなりか」
「えっ!? もう戦うの!?」
そこにいたのは、レジアイスとなんとなく似ている雰囲気を持ち、しかしタイプは全く異なる、最硬の体を持つ、岩系ポケモン。
レジロックだった。
「ココヨリ先ニ進ミタケレバ、ソノ力ヲ我――レジロックニ示セ」
「始まるよ!」
レジロックの顔であろう部分にある点が点滅した瞬間、戦いは始まった。
レジロックは拳を地面に叩きつけると、フィリアのいる地面から鋭い岩を突きあがらせる。
岩系の技の中でも強力な、“ストーンエッジ”だ。
フィリアは持ち前の素早さでそれを難なくよけると、今度はこちらの番だとでも言わんばかりの攻撃をする。
「“エナジーボール”!」
「“火焔霊”!」
「レジ、ジ、レジ」
二つの技も、レジロックの繰り出す“ストーンエッジ”によって防がれ、あたる事はない。
ならば――と、ヒイロとフィリアは揃ってレジロックへと駆け出す。
フィリアは尻尾を緑色に光らせ、ヒイロは鋭い剣を構えると、レジロックの前へと移動して、思い切り斬った。
「“リーフブレード”!」
「“爆炎切り”!!」
「ジ……!」
タイプ相性的にもいいリーフブレードと、鉄をも切り裂く一撃である爆炎切りがレジロックに直撃する。
本来ならば、それは鋼をも両断するほどのエネルギーと切れ味があるはずだ。
しかし、レジロックの硬い、とても硬い体にそれは通用しない。
レジロックは二つの攻撃を真正面から受けたはずなのに、その体は少しも傷ついていない。
「なっ!?」
「これで傷一つつかないのかい!?」
それには流石のフィリアも驚いたのか、一瞬動きを止めてしまう。
勿論番人であるレジロックが、こんなにも分かりやすく大きい隙を見逃すはずがない。
「レジ、ロック」
「! 二人とも、危ないよ!」
「しまっ、ぐっ!」
「うおォッ!?」
レジロックの“馬鹿力”により、二人はなす術もなく吹き飛ばされる。
その威力は高く、レジロックの攻撃力がそれほど高くなかったのが唯一の救いだろうか。
フィリアとヒイロはミルの元へと戻ると、一旦体勢を立て直す。
「これは強いね。近距離攻撃がほぼ全くと言っていいほど効かない」
「俺の一撃にも耐えやがったぞ、あいつ」
「私も見てたけど、そんなに硬いの?」
「当たり前だ。俺の手がいまだにじんじんしやがる……ありゃあ、並みの攻撃じゃあ通らねぇ。あの糞鼠の頭おかしい威力のパンチでやっとレベルだろうな」
勿論、ヒイロが受けた爆雷バレットのことだ。
「でも、それじゃ倒せないよ!」
「防御は硬いだろうけど、特殊防御は分からないだろう? ま、“エナジーボール”!」
レジロックへ向けて放たれた生命のエネルギーの塊は、レジロックの“ストーンエッジ”によってしたから突き上げられ、雲散する。
「この通り、ストーンエッジで生半可な攻撃じゃ防がれる。僕のエナジーボール程度じゃ、突破は不可能だろうね」
「俺の斬撃も、炎と岩じゃ相性が悪ぃからな」
「じゃ、私のシャインロアーでやっとかな?」
「そうだろうね」
目の前で圧倒的な威圧感を放つレジロックは、目の前で相手の分析を図る三人組を見て、待つほど親切な番人ではない。
番人とはなにか――それは、侵入者を排除する存在。
そんな存在が、果たして目の前にいる隙だらけの侵入者を見逃すだろうか?
そんなはずがない。
「レジロ、ック」
「! なにか仕掛けてくる!」
レジロックは両手を上に上げると、宙に鈍い光を放つエネルギー球を作り出す。
それは段々と大きくなっていき、遂にレジロックの拳と同程度の大きさまで膨れ上がる。それを、レジロックは地面へとたたきつけた。
「レジ、ジ、ロック」
「なにを……ッ!?」
「な、なんだァ!?」
瞬間。
レジロックの前方180度全てを覆い尽くすほどのストーンエッジが放たれた。
それの逃げ道は空中にしか存在せず、そして空中へ逃げるとレジロックからの攻撃が待ち受けるのみ。
「なら、“ポースシールド”!」
「ありがとう、ミル」
「ナイスだ、耳長兎」
「酷い!」
ならばと、ミルは二人を自身の元へと引き寄せてポースシールドを展開する。
三つの層でできたバリアは、一層目を突破されるも二層目で自分たちへと襲い掛かるストーンエッジをなんとか防ぎ、凌ぐ。
「レジ、ジ、ク」
しかし、それすらレジロックにとって想定内のことだ。
レジアイスが冷凍ビームで足場を奪っていったのと同じ様に、またレジロックもストーンエッジの応用で三人の足場を奪ったのだ。
また、周りが突き上げられた岩ばかりで、レジロックが見えないというのも狙いだった。
レジロックはその場で両手を掲げると、なにやらエネルギーをためる。
それは段々、段々大きくなっていき、まるで爆発をそのまま凝縮したようなエネルギー球となる。
「“リーフブレード”!」
「“十字火”!」
「“シャインボール”!」
エネルギー球が完成した、一瞬遅れてフィリア達は自分たちの周りの岩を除去する。
しかしもう遅い。
「! なんだありゃァ!?」
「破壊光線? ……じゃないよね」
「そうではなさそうだね。だけど……それ以上に厄介そうだ」
フィリアたちが自身の周りの岩を除去したとはいえ、まだほかの岩は健在だ。
つまり、
「レジロ、ック」
「! 来たよ!?」
「ちっ、なんだか分からねぇ……とにかく、打ち返せばいい話だ!」
爆発を凝縮したような、膨大なエネルギーをこめた一撃はフィリアたちへと寸分狂わず向かっていく。
それを避けようにも、周りの岩が邪魔で確実に避けきれないと思った三人は、打ち返そうとそれぞれ技を放つ。
「“エナジーボール”!」
「“火焔霊”!」
「“シャドーロアー”!」
エネルギー弾と三つの技は、互角だった。
強力なエネルギーが、まるで爆風のようになって三つの技を押しのけようとするが、三つの技も負けてはおらず、爆風に押し勝ち、エネルギー弾とぶつかり合っている。
「ちょ……三対一なのに!?」
「それだけ向こうが強いってことだろうね、でも」
「……!」
短い、エネルギー同士の戦いも終わりが来る。
レジロックが放ったエネルギー弾は、段々と雲散していって、最後に強力な爆発を起こして三つの技を消滅させる。
そして技は、全て消える。
「――“爆炎切り”ィ!!!」
「レジ、ジ」
その瞬間、ヒイロは爆発的なスタートダッシュをきって、レジロックへ攻撃を仕掛ける。
しかしそれは物理技、レジロックの硬い体に阻まれダメージを与える事はなかった。
いや、それでいいのだ。
「レジ、ロック」
「ハッ! テメェはどうやら、防御は高ェようだがよォ……これならどうだ?」
「――」
直後。
レジロックの体に触れていた刀から、紫と赤が混じった禍々しいエネルギーがレジロックを襲う。
「“龍の怒り”を、食らいやがれェ!!」
「!!!??」
それは、ほとんどダメージを通さなかったレジロックの体に、たしかなダメージを与えた。
龍の怒り、相手の防御力に関係せずに決まったダメージを与える技だ。
普通の戦いでは決定打に欠けるが、こういう戦いでは安定したダメージを与えられる技だ。
「レジ、ジ……」
「ハッ! どうだ、このデコボコ野郎!」
反撃を恐れ、すぐにヒイロは後ろへとさがる。
だがレジロックは反撃をせず、その場で動きを止める。
「どうだフィリア、俺の奇策は!」
「奇策ではないだろうけど、よかったよ……これで活路も見えてきた」
ラルド達が、特殊防御の高いレジアイスに確実にダメージを与えられる爆裂の種を使い、それが有効だったように。
また、レジロックにも固定ダメージ攻撃は有効なのだ。
「この勢いをなくしちゃ駄目だ。仕掛けるよ、みんな!」
「おー!」
「分かったぜ!」
ヒイロは火焔霊を、ミルはシャインロアーを、それぞれレジロックへと放つ。
勿論レジロックも黙ってやられるわけがなく、両の拳で地面を叩きつけると、槍の如き鋭いストーンエッジが技を突き破る。
だがそれは同時に、レジロックの視界を阻むわけで、
「“ソーラービーム”!」
「レジ、ロ」
後ろで僅かな光を集め、十分な量を溜めて放ったフィリアのソーラービームに気付けず、レジロックはその直撃を受ける。
レジロック自身、特殊防御は防御ほど高くなく、また草タイプが弱点だったことが災いしてか龍の怒りの比ではない程のダメージを受けてしまう。
レジロックは片膝をついてしまう。
「レジ……」
これでは勝てない。
この先へ、侵入を許してしまうと、レジロックはそう思った。
目の前の敵は自身の技を攻略した訳では無い、ただ向こうの連携がレジロックの攻撃を上回っていただけだ。
「ロ、ック」
だが、そうだとしても。
自分は番人――ならば、死守せねばならない。
この先の扉を、自らが守るべきものを。
「――」
後はもう、使命のままに動くだけだった。
「片膝をついた……僕たちの勝利が近づいてきたという事かな?」
「龍の怒りとソーラービームの直撃、倒すまでには至らないだろォが、それでもかなりのダメージにはなったはずだ」
「もう少しだね!」
レジロックは、目の前の侵入者たちをみて、ただ静かに。
ただ静かに、死守への準備を始めた。
「レジ、レ、ク」
「! なにか、やってくるよ!」
「分かってるよ。……相手は、もう一撃ソーラービームを当てれば倒れるだろう。もう一息だよ!」
フィリアのエナジーボールが、ミルのシャドーボールがレジロックへと向かっていく。
レジロックはそれを両手を交差して受け止めると、ほぼ動かず、その場で止まっていたはずが、三人の近くへと歩いてくる。
「!?」
「あ、歩いてきたよ!?」
「なんでだァ!?」
ずんずんと、重い足を上げて歩くレジロックは、三人の攻撃を真正面から受け止め、時には“守っ”って。
段々と、近づいてきた。
「……好都合だよ。来るなら、迎え撃つだけさ」
しかしフィリアも、そのいきなりの行動に対応する。
大体、近づいたら近づいたで物理攻撃は通用せず、零距離で特殊技を放とうにもその間に攻撃されてしまう、いきなりでもない限り無理だった零距離攻撃が、今は可能になっているのだ。
この不可解な行動は、チャンスとも言える。
「溜めて溜めて、一気に攻撃するよ」
「分かった」
「フィリアのいう事だからなァ」
フィリアは微弱な太陽光を集める。
ミルは自身のエネルギーを口元に集める。
ヒイロは一刀を持ち、強力な炎を纏わせる。
「レジ、ロック」
レジロックはなにかするでもなく、ただ三人に近づいてくる。
近づいて、近づいて。
近づきながらも死守の準備を整える。
「……」
「……」
「……」
「レジ、ジ」
そして、レジロックが三人の攻撃が最も強い威力で当たるであろう場所に到達した。
瞬間。
「ジ――」
「か、輝きだしたよ!?」
「こりゃァ……なんだァ!?」
「……! 今すぐ攻撃を放つんだ!!」
レジロックの体が光り輝く。
それに戸惑う二人だったが、フィリアはなにかに気がついたのか攻撃を放つ命令を下す、だがそれも遅い。
三人が技を放ったと同時に、レジロックの体の輝きが直視できない程になる。
そして。
――大爆発を起こした。
「ぐおォッ!!?」
「きゃっ!?」
「ぐぅ……!!」
圧倒的なエネルギー波の前に、三人は吹き飛ばされそうになる。
だが吹き飛ばされたら最後、あのエネルギーの直撃を受けて戦闘不能。ギルドへと強制送還だ。
それは駄目だと、なんとか堪えて自身の技で相殺を図る。
「ぐが……!!!」
「つ、強いよ……!」
「耐えるんだ……!!」
強力な爆風、エネルギー。
その全てが、三人に襲い掛かる。
“大爆発”――レジロックが使ったのはこの技だ。
自身が瀕死の重傷になるのと引き換えに、最強最高の威力の、それこそ極限まで力を高めて放てば伝説のポケモンでさえ一撃で倒せる技だ。
ただ瀕死の重傷になるということで、本当に最後の、最終手段の技。
それを相手は使ってきたのだ。
そんな技が三人を倒さんとばかりに襲い掛かるも、三人は必死に抵抗する。
溜めに溜めた技はそう簡単に突破されるはずもなく、体感では数十分にも及ぶ技と技とのぶつかり合いは、
「オオォ!!!」
「いっけー!!」
「ハアァ!!」
「――――」
三人の放った技が、大爆発を、完全とは行かないが相殺した。
番人の洞窟、レジロックの間。
番人レジロックVSフィリアチーム、勝者フィリアチーム。
次回「鋼鉄の番人」