ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜黒と白の12の翼〜







小説トップ
第五章 右腕と番人
第五十一話 戦の後には休憩を
 フルドの圧倒的な速さにより、一時は倒されるエンジェルだったが、ラルドの策によってなんとか逆転勝利を収め――?






〜☆〜


 ――くらい。
 辺りは暗く、なにもない。なにも、空気すら感じられない。
 悪夢と呼ぶには相応しい、いや、正に悪夢そのものだ。なにも感じ取れない、なにもない。ただ暗闇がどこまでも続く。
 その暗闇を、俺は、『僕』は、俺は――

「ラールド!! 起きて!!」

「へぶっ!?」

 お腹に強烈な一撃が決まり、俺は飛び起きる。比喩ではない。
 
「あ、おきたんだね」

「お前が起こしたくせに……! 白々しいな!」

「え? なんて?」

 こいつ!

「この期に及んでまだ白を通すとは。ミル、恐ろしい子……! でもないから、ほら、ちょっとお腹出せ。爆雷パンチだ」

「や、やめて!」

 じりじりとにじり寄る俺から、遠ざかるように後ろへ下がるミル。しかし背後には壁が。

「観念しろぉー、お縄につきやがれ!

「ごめんなさい!」

 と、どうやら両手にかなりの電撃を纏わせた俺を見て、遂に観念したようだ。
 ……しかし、手が痛いな。足も、体も。

「って、そうだ! なんかちゃっかりと日常パートになってるけど、フルドは!?」

「知らん。……俺も、気付いたらここにいた」

「私も」

「私も!」

「僕もだね」

「俺は……なんかどっかから落ちて、んで起きた」

 なるほど、分からん。
 まぁ……いいだろ。とりあえず無事なんだ、それだけで十分だ。もしかしたら、壊されたと思ってたバッジが、実はまだ使えててそれを俺が偶然押したのかもしれない。

「で、今は何時?」

「十時」

「なるほど」

 だからこんなにも暑いのか。納得。
 夏もそろそろ終盤へ差し掛かっているというのにこの暑さ、太陽でも接近してんじゃないかと言いたくなるほどだ。

「あぁー……肝試しに出掛けたはずが、とんだことになった」

「ホント。私、あいつにやられたところがかなり痛むのよね……今日は私休暇とるわね」

「俺もだ。あいつの一撃、かなり響きやがった。しかも筋肉痛だ」

「僕は、まぁ比較的軽症だからね。まぁでもちょっと休んでおこうかな」

「俺は休むぞ。筋肉痛が酷い」

「私も」

 筋肉痛多いな、と思ったけど俺もだった。多分、解放の影響だろう。十分超えてたか。
 激戦を繰り広げた翌日ということもあってか、皆疲れている。勿論、俺もだ。
 ということで、今日は臨時休暇にするか。

「でもなぁ……俺、筋肉痛だけしかないんだよな。後は体の節々がちょっと痛むくらいか」

 回復力の速さは化け物レベルだと自負しているが、やはり昨日の戦いはかなりのものだったのか、完璧には治っていない。
 それでも歩けるレベルではある。

「んじゃ、俺はテキトーにその辺を散歩してくる。皆も、早く体を治せよ」

「行ってらっしゃーい」

「ついでになにか買っとけよー」

「僕はりんごで」

「私もー」

「自分で買いに行け!」

 シルガを除いた全員が五月蝿くなってきたので、俺は急いで家から出る。
 はぁ……今日はそんなにいい日じゃなさそうだ。






「お、英雄じゃねぇか。どうした? なんか疲れてるみたいだな」

 散歩を終えて、暇をもてあましていると、カマイタチの面々が話しかけてくる。
 というかこいつら、いつ探検に出掛けてるんだろうか。俺がここにいるときには、ほぼいるぞ。

「いや、ちょっと昨日、かなり強い奴と戦ってな。危うく負けるところだった」

「ハァ!? お前が負ける!?」

「んな奴がこの町に着たら、この町は壊滅状態だな!」

「そりゃあいえてるな」

 ……信じてないな。まぁ、この町で一番強いのはプリルだろう。だがその次に強いのは俺だろうからな。
 仕方ないといえば仕方ないか。

「おお、英雄。それよりも特種ニュースだ」

「なんだよ」

「実はな……この町に、あの有名な探検隊、マスターランクチームの“チャームズ”がくるって噂だ」

 ……チャームズ? なんだそれ、俺が知ってる探検隊の中にそんなチームあったか? いや、俺自身の知識が乏しいからな。いるんだろう。
 レイダースには及ばないと思うが。なんていったって、マスターランクの上の、星二つだ。ギルドマスターに最も近いチームとして有名だからな。

「なぁ、チャームズってなんだ? 俺、レイダースしか知らないんだけど」

「ハァ!? お前、チャームズも知らないのか!?」

「男も女も魅了する、魅惑の探険家だぞ!?」

「いや知らんがな」

 魅惑とか言われてもな……俺、そういうのには興味ないし。恋愛なんてするだけ無駄だろ。面倒くさい。

「で? どれだけ凄いんだ? マスターランクって言うんだから、相当強いんだろ?」

「強いどころの話しじゃねぇよ。あのレイダースに並ぶくらいの強さだぜ?」

「……え?」

 レイダースといえば、プリルが世に送り出した探検隊の中でも最高と呼ばれる探検隊だ。
 そんな探検隊と並ぶ……?

「ランクこそ違えど、チャームズの強さはレイダース級だって話だ。ま、チャームズは依頼をあまり受けないらしいからな」

「強く、賢く、美しく! 狙った宝は逃がさない! そんな華麗な姿に、俺たちはいつしか魅了されていったんだよ!」

「チャームズ……なるほど、本人たちもそれっぽいな」

 チャーミングとか、そういう意味だろう。となるとチャームズの奴らはとんでもなく寒い奴らの可能性が浮上してきた。
 まぁいいか。所詮は噂だ。そんな一々町へ移動するたびに噂されるような奴らが、こんな辺境の地にあるトレジャータウンなんてこないだろ。

 そんなことを考えつつ、俺は黄色グミ100%を飲み干す。

「ま、どっちみち興味ないからな。どうでもいいや」

「ちぇ、お前とはいいジュースが飲めそうだったのに……そうそう。英雄、聞いたか?」

「なんだよ。まだなにかあるのか?」

「ああ。ほら、西のほうにある火山地帯、知ってるか?」

「……?」

「知らないみたいだな。そこには、巨大火山とか闇の火口とか、そういう火山系ダンジョンが多いらしいんだよ」

 だからなんだよ。

「おい、その目はなんだよ……でな、そこで新しいダンジョンが発見されたみたいでよ」

「本当か!?」

 新しいダンジョンと訊いて、俺は一も二もなく身を乗り上げる。
 最近、どうも探検に行き詰まりというか、そろそろ新しいステップを踏み出そうとしていたのだ。理由は、手ごわいと感じるダンジョンが少なくなってきたからだ。

「名前は、えーっと……ヒトダマかざんだっけ?」

「“人魂火山”?」

「なんでも、夜な夜な人魂が出るらしいぜ……って、信じてねぇな」

「そりゃあ」

 幽霊なんて、ほぼ全てがゴーストタイプの仕業といえる。それに、幽霊目当てで昨日散々な目に合わされたのだ。
 当分、幽霊という二文字は見たくない。うちのゴーストデビルも見たくない。

「まぁ、情報ありがとうな。いつかその火山とやらも攻略するよ」

「ああ。お前はこのトレジャータウン期待の新人だからな。よろしく頼むぜ」

「新人か……まぁ確かに新人だな」

 一年も探検隊をやっていないというのに、もうこんな所まで来てしまった感がある。
 思い返せばいろいろあったな……あんなことやこんなこともあったが、かなり懐かしく思える。

 と、俺はその場を後にすると、プリルの元へ向かう。
 聞きたいことができたからだ。






「おーい。プリル、いるか?」

「あれ、ラルドじゃない。久しぶりー♪」

「またセカイイチを盗み食いしてるのか。ペルーに怒られるぞ」

「大丈夫だよ♪」

「あぁ、そう……」

 ギルドへ到着し、親方の部屋、と書かれたネームプレートが掛けてある部屋のドアを開けると、プリルがセカイイチを食べている所だった。
 ペルーには同情するが、まぁプリルのこれはもう矯正できないだろう。セカイイチ依存症のようなものだ。

「で、訊きたいんだけどさ。これ見たことあるか?」

「んー?」

 そういって、俺はプリルに、ギャラドスから盗ったあの石を差し出す。

「これだ。なんか、進化みたいなパワーアップする道具? なんだけど」

「んー……これは」

「み、見た事あるのか!?」

 プリルは石を手に持つと、360度いろいろな方向からその石を見る。
 そして、なにかが分かったのか、手をぽんと叩くと……!

「分かんない」

「意味ありげな動作するなよこの馬鹿!」

 一瞬期待したじゃねーか!

「でもね、どこかで見た気がするんだよね。これ、貰ってもいいかな?」

「なんでだよ」

「中央都市に、凄腕の情報屋のトモダチがいるんだ。その子に頼めば、多分なんか分かるよ♪」

 ぺ、ペルーも気の毒に……情報屋として、プリルに頼りにされていないなんて。
 ちなみに中央都市中央都市いわれているが、実際は東よりだ。中央ではない。
 西の中央都市と呼ばれる都市もあるようだが……まぁ、中央都市ほど発達していないので、あまり人は居ない。

「……ま、頼むよ。じゃぁ俺はこれで」

「あ、待って! ……はい、ラルドにもこれを上げちゃうよ! トモダチトモダチー!」

「ありがと」

 別れ際に、プリルから貰ったのはセカイイチだ。大きくて甘いそれは、かなりの美味しさだった。
 プリルに礼を言うと、俺はギルドを後にし、家へと帰る。

「うーん……謎が色々と出てきたな」

 何故、レイヴンが連盟に潜んでいるのか。
 何故、レイヴンがジュエルを狙っているのか。
 何故、レイヴンがあの石を持っているのか。
 
 一つ目に関しては単純に情報操作やら、最終的に連盟をパニックに陥れるための罠とかそんな所だろう。
 二つ目に関しては、これは分からない。エネルギーがどうたら工たらとか何とか。
 三つ目は……どこかで偶々手に入れたのだろうか。

「ま、俺は普段どおりにやってくか。とりあえず、フルドみたいなスピードタイプが出てきたときのためにも、素早さ増加の電気活性《アクティベーション》でも考えておくか」

 俺はセカイイチを食べ終えると、背伸びをする。
 ――確かに、分からないことだらけだが、それでいいのだ。世の中のすべてを分かっているなど、つまらない事この上ない。

「でもまぁ、今日は休暇だからな。ゆっくりと体を休めるか」

 俺は階段を下りると、家へと入る。
 エンジェルの日常は、まだまだ続く――




 家に帰ったら、皆が酸っぱさに悶絶してました。




次回「強く、賢く、美しく!」

■筆者メッセージ
今回は短め。エンジェルにとっても、私にとっても休憩な回でした。

次回「強く、賢く、美しく!」次回もお楽しみに!
ものずき ( 2013/12/20(金) 01:32 )