ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜黒と白の12の翼〜







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第三章 秘密のランクと秘密の組織
第三十五話 VSフィレア 前編
ミルも捕まってしまい最悪の状況になってしまった時、フィリアが現れた。天才による救出作戦は無事に成功し、そして――?






〜☆〜


 少し勢いが増してきた雨。
 そんな中で、本来はないはずの強力な輝きが俺達四人を照らしていた。太陽のように眩しく、温かい光……。
 フィレアが出す炎が、周囲を照らしていた。

「糞共が、覚悟は出来てんだろーな、あァ!!?」

「ひっ!」

「これは……迫力があるね」

「本気で怒ってるみたいだし、そりゃそうだろ」

「やっちゃったわね」

 見た限りでは、本気で怒っている。なんか電撃を受けて体毛が所々焦げているが、それは関係ないだろう。
 となると人質を取り返されて逆切れしたのだろうか。でもこれは理不尽すぎじゃ……。

「手前ら全員ぶっ殺す! 特にそこの鼠共は特になァッ!!」

「おいおいなんでだ。せめてドヤ顔でお前の事鼻で笑ったフィリアにしてくれよ」

「鼻で笑ってはいないよ」

「ドヤ顔は認めるのか」

「狙ってやったからね」

 ね、狙ってやがったのかこいつ……なんて奴だ。流石ニートだ。常識と非常識が混ざり合った奴だぜ。

「今、失礼なこと言わなかったかい?」

「言ってはいない」

「心の中で言ったらそれも言ったの内に入るよ。この戦いが終わったら睡眠の種だね」

「……はい」

 まぁフィリアもそこまで鬼畜じゃないだろ。うん。
 ……冗談はここまでにするか。これからは目の前の敵に集中しないといけない。何せ相手は、あのグレイシアと同レベルの敵。しかもファイヤーだ。

「さて、と。お前ら、あいつは強敵だ……あの二人がいないけど、気を引き締めて行くぞ! じゃないとこっちが負ける!」

「「「おぉ!!」」」

「死にさらせ、害獣がァ!!!」

 そうして、俺たちとフィレア。エンジェルとレイヴン四天王の戦いが、今――始まった。

「先手必勝、“十万ボルト”!」

「“原始の力”!」

 先手は俺の十万ボルト。それは寸分狂わずフィレアに命中、とはならずフィレアの原始の力に阻まれ当たる事は無かった。
 次にフィレアは口元に炎を溜め、そして。

「“火炎放射”!!」

 強力な炎を放った。
 その威力は流石ファイアーとも言うべきもので、当たればひとたまりもなさそうだ。ペルーに当たれば焼き鳥じゃなく炭になってしまう。

「でも、そう易々と当たるわけには行かない……“電撃連波”!!」

 それを俺は電撃連波で軌道を少しずらすと、火炎放射は近くにあった岩にぶかってしまう。そして、その岩は火炎放射が当たった瞬間砕ける。
 
「んなっ、なんだこの威力!?」

「当たれば跡形もなくなっちゃうよ!?」

「いや、そこまでは……」

「死にはしないけど、大怪我は負うわよ。だから絶対に当たるんじゃないわよ」

 レインの忠告がなくとも、俺たちはこの攻撃に当たるつもりはなかった。
 あの岩を簡単に砕く炎なんて、食らったら火傷程度じゃすまない。下手をすればそのまま貫かれてアウトだ。

「怖気づいたかァ!? だが残念、まだまだこんなもんじゃねぇぞォ!!」

「な、なにを……」

 そういうとフィレアは翼を後ろへとやって、溜めの姿勢に入る。

「なんだ、あれ」

「なんか、翼周辺の風が少し揺らいでいるけど……」

「ま、まさか……みんな、あれに当たらないでよ!」

 は? なにをいっているんだこいつは。といいかけた瞬間。
 物凄いスピードで翼が薙ぎ払われ、更に物凄い速さの風の刃がこちら目掛けて向かってくる。間違いない、“エアスラッシュ”だ。
 でも、なんだあの速さ。

「あれに当たらないで! 当たったら真っ二つになるわよ!!」

「ひぃっ!! あ、あれが!?」

「真っ二つだって?」

 そうか、そういえばレインが焦げるか真っ二つになりたくなかったらとかそんな感じのことをミルに言っていたらしいな。
 あいつは見たのか? あれの威力を。

「なら試してやる、“十万ボルト”!」

 エアスラッシュは飛行タイプの技だ。なら電気タイプの十万ボルトで打ち消せるはず。そう考えた俺はレインが当たるな、と叫ぶエアスラッシュの威力も試すつもりで十万ボルトを放った。
 が。

「そんなので、俺のエアスラッシュを止められると思ってんのかァッ!!?」

「は、はぁっ!?」

 なんと、本来有利であるはずの十万ボルトがエアスラッシュに当たった瞬間切れたのだ。比喩でもなんでもない。綺麗に両断されていく。
 このままじゃ当たると思った俺は咄嗟に避ける事で逃れたが、今のは……。

「おいレイン。お前がみたエアスラッシュ。どんなだったんだ?」

「枯れ木を引っ付けたら元に戻りそうなくらい綺麗に切断してたわ」

 ……え? なにそれ、まさかのチート疑惑?

 なんかパワーアップできるあの水晶使ってなくて、この威力?
 ……いや、違うな。普通はあんなもの使わないんだ。これがあのファイヤー本来の力ってわけだ。

「なら、こっちも素の実力で行くぞ! “チャージビーム”!」

「“翼で打つ”!」

 俺は特攻を上げるためにチャージビームを放つ、がファイヤーの翼によってかき消されてしまった。
 というか、さっきから思ってたけど……あいつの翼の力、強すぎじゃ? エアスラッシュのときも無茶苦茶早かったぞあいつ。

「……確かこいつ、聞いたとおりだと空中戦が得意だったよな。だからか」

「おらァ! こんな生温ぇ攻撃じゃ響かねぇぞォ格下共がァッ!!」

「なら、“シャインロアー”!!」

「“火炎放射”!!」

 それならと、ミルは自身が出せる最強の攻撃を繰り出す。が、相手は空中にいるからか段々失速していって、最終的に相殺という形になる。

「威力だけなら破壊光線なみのシャインロアーと相殺、か」

「ねぇ、これって厳しいわよね? “電棘”!」

 レインやフィリアも戦っている物の、フィリアは相性の問題からほぼ役に立っていない。レインも肝心の電棘の威力が足りないのか、ファイヤーにたどり着く前に失速して地面へ落ちてしまう。
 結局、あいつへ決定打を与えられるのはこの中では俺とミルだけになる。

「それでも、空中にいるから当たらないんだな、これが……ッ」

「“火の粉”!」

 空中を飛んで俺たちの攻撃を避ける途中、火の粉を吐くなど、ちまちまとこちらの体力を削ってくる。
 一言で言うと、うざったい。

「お前、そんなちくちく攻撃してないで降りて来い! 安心しろ、正々堂々ぼこぼこにしてやるから!」

「断るに決まってんだろォ? “原始の力”!」

「ちっ、交渉決裂か……“雷電パンチ”!」

 交渉というかお願い決裂だ。俺は向かってくる原始の力を砕きながら、また別の手を考える。といってもな……あいつの飛行技術は本物だ。楽々俺たちの攻撃を避けている。
 何か、別の手段を考えなければ……。

「無理だ、思いつかない! こうなったらフィリア、後は任せた!」

「僕に丸投げなんて、酷いリーダーも居たもんだね……この中で空飛べる人は?」

「全解放さえ出来れば」

「そうかい。なら……あの翼に少しでも傷を与えるんだ。できれば矢のような、ファイヤー自身が抜いても抜かなくても傷を負うようなものがいい」

「そんなこと言ったって、遠距離攻撃を得意であそこまで届きそうな奴はシルガしか思いつかないぞ?」

 そのシルガも、解放は最高二十分しか使用できない。というよりそもそも、あれは十分越えた辺りから慣れとか関係なしに体が痛くなってくる。
 しかもまだ来てないってことは、遠い所にいるか気付いていない、か。

「しょうがない。なんとかあの翼に傷を与える……“チャージビーム”!」

「そんなもん食らわねぇって言ってんだろォ!? “翼で打つ”!」

 大ダメージを一気に与えるとか、そんなのは無理だ。
 ならあいつが翼程度で十分と思わせられる程度の威力の攻撃を放ち続ければ、いつかは傷がついたり動きが鈍くなったりするはず。

「もういっちょ、“チャージビーム”!!」

「“翼で打つ”!」

 ……というか、もう二回やってるから三回目の威力は結構上がってるはずなんだけど、未だ翼で打ち消せるってどういうことだ。
 いや、そっちの方がいいか。このまま気付かれずに翼を鈍くするぞ!

「“チャージビーム”!」

「“翼で――」

 本日四回目のチャージビームは、さっきと同じ様に進んでいって、そして同じ様にフィレアの翼ではたかれ……ん? なんだ、翼を使ってない?

「って、まさか」

「おぉっと、今のは危ない危ない」

 あ、あいつ、避けやがった!?
 おいふざけるな、当たらなきゃ意味ないじゃないか!

「俺の翼を知らず知らずの内に傷つかせようって魂胆か? 残念だったなぁ、俺が馬鹿正直に翼で打ち返してると思ったか? ちゃんと炎でコーティングしてあるに決まってんだろ?」

「卑怯だ!!」

 飛べるし強力な炎は吐けるって、流石に強すぎだろ! もう手がないぞ!

「飛行タイプ相手にほとんど戦ってこなかったつけが、今回ってきたのか」

「ちょ、あんた電気タイプでしょ! なんとかしなさいよ!」

「やってるよ! “電撃波”!!」

 今の所、飛ぶあいつ相手に当たりそうな技はこれしかない。が、そんなので当たっていたら苦労はしない。
 フィレアは炎で俺の電撃波を軽々と打ち破ると、反撃してくる。

「“炎の渦”!!」

「“高速移動”!」

 巨大な炎の渦を間一髪の所で避けると、振り向きざまにエレキボールを放つ。それでも奴に届くまでにフィレアは反応できるので、あたることはない。

「どうすればいいんだよ、あんな焼き鳥!」

「あァア!? ぶち殺されてぇのかテメェ!!?」

「なんだか、あのアーボックに口調が似てるわね……」

 あのアーボックとか言われても、あんまり知らないから分からない。というか攻撃してくれよレイン。
 いや……水の波動もシーストライクという俺の電磁直線砲のアイデアを奪ったと人目で分かる攻撃も、電棘もあいつには届かないから仕方ないか。
 賢さ豪腕でもあればな……電棘の飛距離が伸びたのに。

「フィリア、何か考え付いたか!?」

「いや、まだだよ!」

「くっそ、早く何とかしてくれ! このままじゃジリ貧だ!」

 あのグレイシアとはまた違った強さだ。あいつは技ばかり鍛えて自分を鍛えてなかったから、居合い切りと居合い“乱れ桜”……だっけ? それと俺のパンチで倒せたけど、あいつは見たところ耐久もありそうだぞ。

「早くシルガが来てくれることを祈るしかない、か」

 そのシルガがきても、あいつにシルガの矢が当たるかは分からない。当たってくれたらうれしい限りだが……ん? いや待て。俺、確か空中の相手かもと思って、なんかの不思議玉を買ったような記憶があるんだけど、気のせいか?

「“エアスラッシュ”!!」

「ちっ、考える暇すらくれないのかよッ!!」

 再び高速移動を使い、エアスラッシュを難なく避ける。そのままエアスラッシュは地面に当たると、地面を切り裂いて消える。
 俺は電光石火や高速移動でよけつつ、なにか有利になりそうなものはないかとバッグを漁る。

「なにか、なにかないか……ああ林檎が邪魔で鬱陶しい!!」

 一人八個ずつ配ったが、それでも多い! こんなの吹雪の島でも使い切れないぞ。六十個も溜め込みすぎたが一気に四十個も減らしたのは間違いだった!

「レイン、ミル、お前らなんか持ってないか!?」

「あんた達用の身代わり玉ならあるわよ」

「私はなにも持ってないよー!」

「そうか。というかおい、レイン。お前今俺たち用って言った? なぁ?」

「気のせい気のせい。あいつの炎で耳でもやられたんじゃない」

 全く……こいつがなんで捕まったのかも、想像ついたぞ。
 どうせあの枯れ木の森抜けた先にヒイロかシルガか俺かが居たら身代わりにしようとしてたら、ミルが運悪く居て、状況を説明してミルを逃がしたら捕まってしまった、みたいなことだろう。
 でも、結局事態が好転しそうなものはなかったか。

「フィリアに任せるしかないか……」

「タラタラ歩いてたんじゃねぇよゴミ虫がッ!! “炎の渦”!!」

「さっきから、俺ばっかり狙ってきてないかお前! “十万ボルト”!」

 渦巻く炎を十万ボルトで逸らしつつ、バッグの中を探る。正直俺は頭が弱い。見張り撃退のときなんであんな作戦思いついたんだろう。気分が高揚してたせいか? だとしたら気分って大事だね!

「なにか、なにかないか?」

「なにしてるのか分からねぇが、無駄だ! テメェら一般ポケモンどもに伝説の俺は倒せねぇ!!」

「そんなことは分からないぞ? 伝説という肩書きに調子乗って、人質を取り返されるなんちゃって伝説なら倒せる」

 ただ伝説ということだけで自らは強いと努力を怠れば、普通のポケモンにも負ける。そもそもまず、結構な強さを誇った伝説のポケモンを倒したという記録はある。

「逆に、お前如きの強さで俺たちを倒す? 寝言は寝ていえっていう言葉知らないのかな、焼き鳥が!」

「……テ、ンメエエエェェェェ!!!!!」

 こいつは正直だ。挑発されれば怒るし、煽てられれば高笑いしながら肯定するだろう。
 今の俺に策はない。だからせめて、こいつの気を引かせてフィリアに考える時間を与えなきゃいけない。
 ……今の、好き勝手言ってたらこうなっただけなんだけどな!

「殺す、ぶっ殺す! 焼いて釜戸で熱して、地獄のそこへ送りつけてやるよぉ!!!」

「あら、そんなはしたない言葉使うなんて。オカマはやっぱりどこまで行ってもオカマなのかしら?」

「ちょ、レインお前」

「いいのよ。できる限り時間稼ぎした方がいいでしょ?」

 こいつ……俺の気持ちを察してくれたのか?
 俺、もしかしたらこいつのいやな部分ばかり見てたせいでこいつも嫌な奴だと思ってたのか。今のでこいつの評価を改めてやらないとな……。

「レイン。ありが――」

「その代わり。帰ったら銀のハリ百本買ってね! あれ高くて、私そこまで買えないのよー! よろしくね!」

 ……俺、こいつ嫌い!

「分かった。一応収入もあるし、でも貯めて別のなにかに使いたかったな……んじゃまぁ、やりますか」

 レインの電棘は使えない。が、水の波動などの攻撃は届く。俺の攻撃でかく乱してレインの攻撃を当てたりしていけば、きっと時間稼ぎはできるだろう。
 フィレアもフィリアをそこまで脅威に思ってはいないらしく、攻撃をほとんどしてない。つまり時間稼ぎも長くできる。流石に三人一緒に時間稼ぎしていたら一人のフィリアが狙われてしまうのでミルは俺たちとは別行動だ。

 勝負はフィリアが思いつくまでの間、それまでの辛抱だ。

「“十万ボルト”!」

「“水の波動”!」

「“火炎放射”!!」

 始まった時間稼ぎ戦。最初に十万ボルトと水の波動を放つが、フィレアの火炎放射相殺され、小規模の爆発が起きる。
 小爆発が起きた瞬間にエレキボールを放ってみるが、相手は俺がそうすることを分かっていたのか既にいなかった。

「馬鹿が! あの程度の攻撃、避けられない奴はいねぇよ!!」

「なら……“十万ボルト”!」

「効かねぇっつんだろおがッ!! “炎の渦”!!」

 俺は再び十万ボルトを放つ。それを見てフィレアは相殺しようと炎の渦を放った。
 が、俺が何の策もなしに、何度も防がれた攻撃をなら……とか策がありそうな発言すると思ったら大間違いだ。
 俺は炎の渦の回転に合わせて十万ボルトを回転させる。渦の回転に沿うようにしてフィレアに向かう電撃は、見事フィレアに直撃した。

「ぐっ、がァッ!!!」

「よっし!!」

 攻撃を当てられた、それだけで気分が高まる。
 そうだ。空中を自由自在に飛べるとは言ってもこういう相手の技を利用したりして当てられるんだ。

「どうだ焼き鳥! 油断してたらもこういうことも起きるんだぜ!!」

「テメェ、そんなに焦がされたいかァッ!!?」

「いやぁ全然!」

 こうやって怒らせておけば動きも単調になるだろう。ただ怒りでより周りの状況を把握できるタイプだったら最悪だが。

「あァ!!! テメェはやっぱり一番始めに壊さねぇと気が済まねぇ!」

「そりゃどうも。壊せるもんなら壊してみろ! “エレキボール”!」

 そう叫びながら放たれる電撃の球は、真っ直ぐフィレアに向かっていく。が、素早さの差はそこまでないのか小さい。
 そんな小さく遅い攻撃はフィレアに当たる寸前で華麗に避けられ、出来た隙を狙われる。

「“プロクスプリズン”!!」

「なにを……ッ!?」

 俺に向けて放たれた幾つもの炎の輪。流石にここまでやられると隙もなく避けられない。俺はその内の一つに捕縛されてしまう。
 するとフィレアはそれを待っていたかのように輪を連続で放ち、俺は幾重にも重なった炎の輪に囲まれ動けなくなる。

「くっ、レイン! どうにかしてくれ!!」

「どうすればいいのよ!」

「水の波動を当てればいいだろ!」

「そ、そうね! 水のは――」

「させるとでもぉ?」

 レインが水の波動を作り出すよりも早く、炎の輪は光り輝き――爆発した。

「ぐふっ……ちょ、洒落にならないぞ、これ」

「ちょ、大丈夫!?」

「ああ、至近距離だったから結構痛いが、オレンの実を食べればこれくらい……」

 それにしても今の攻撃、炎の輪で相手を取り囲んで、それを爆発させる? なんて強力な攻撃だ。並みの防御や体力じゃ直に体力を持ってかれるぞ。
 しかもこれでまだ通常だ。パワーアップでもしたらどうなるんだ。

「アヒャヒャヒャ!! これは愉快だ! 愉快すぎて……楽しくなってきたわぁ!」

「またあのオカマ口調に戻ったのか」

 正直言って、あの喋り方よりこっちの方が気色悪いというか、気持ち悪いというか、こいつ戦意喪失させるためにこの喋り方してるの? といいたいほど気持ち悪い。
 十段階で評価するなら十五って所だ。

「気持ちわるっ……」

「直球過ぎるのはどうかと思います!」

 それでも気持ち悪いと言い続けるレイン。五月蝿いな、空で高笑いしているフィレアも五月蝿い。

「おーほっほっほ!!! もう私はさっきまでの私とは違うわ! 冷静沈着、頭脳明晰、最強の飛行能力を持つ私に死角なんてないわぁ!!」

「冷静沈着と頭脳明晰はありえないとして、確かピジョットってマッハ2の速さで空飛べなかったっけか?」

「飛べたはずよ。ごく一部だけど」

「んじゃあいつ、今言ったこと全部自称じゃねーか」

「なぁーんどぇすってぇえ!!?」

 五月蝿い五月蝿い! あいつの声、ここまで響くから厄介なんだよな。しかもあの声で。一体どんな声量してるんだ?

「あんた達、私を怒らせるのが得意なようねぇ。お望みどおりやってやろうじゃなーいのぅ!!」

「きもっ」

「“火炎放射”!!」

「ちょっ、いきなりすぎる……薙ぎ払い“十万ボルト”!!」

 何のためもなしに放ってきた火炎放射は、真っ直ぐ俺たちに向かってくる。それは突然の事過ぎて、俺は咄嗟に放った十万ボルトを火炎放射の横に当てると軌道をずらす。これは流石にいきなりすぎて吃驚したー……。

「というか、なんで俺ばっかり狙うんだよ。あいつ……!」

「あんたがさっき怒らせたからじゃないの? “水の波動”!」

 降りかかる大量の火の粉を水の波動で防ぎながら、レインは答える。それってあまりにも理不尽じゃ……どっちかというと、レインの方が言ってるだろ。
 いや、俺の方が実力的に危険だからか……?

「まぁ、今はどうでもいいか。まずはお前の翼をもぎ取ってやるよ! フィレア・イグニル!!」

「やれるものなら、やってみるといいわぁ!! “ニトロチャージ”!」

 フィレアは炎を纏って体をこちらに向けると、俺たち目掛けて飛んでくる。空からの一直線に、重力に逆らわずに向かってきているのでとても速い。
 が、それでも避けられる程度。俺は高速移動を、レインは電光石火を使う事でそれを避ける。が、そこでフィレアの攻撃は終わらない。

「まだまだ、これで終わると思ってるんなら、大間違いよぉ!!! “燕返し”!」

「ああっ、折角攻撃が当てられそうだったのに!」

「地面擦れ擦れまで来たっていうのに、あの自由自在さは健在か!!」

 フィレアはそのまま空中で丸を描くように飛ぶと、地面に触れる寸前で前へ方向転換。風を纏いながら俺たち目掛けて突進してくる。
 が、それまたとないチャンスでもある。もしここでこいつを捕まえれば、フィリアの作戦など要らずに全員でオクタン殴りにできる。

「喰らえぇェえエ!!!」

「やっぱり俺なのかよ! “電気活性≪アクティベーション≫改”!!」

 幸い距離はあったので、俺は電気活性≪アクティベーション≫改を発動すると真正面に立つ。もしここで受け止められたら、その時点で俺たちが有利になるのは間違いない。
 だから俺は、迫るフィレアの嘴を、受け止めた。

「ぐっ、ちょ、重い……!!」

 約1,4メートルも違う巨大を受け止めるのは重く、そして辛い。脇と右腕ではさむようにして、左腕が下から嘴を抱えるように受け止めているので腋がこいつの嘴で切れて血が出てきて物凄く痛い。
 が……俺はそれを受けきった。

「ッ!? っ、ッ〜〜!!!」

「はぁ、はぁ……なにを叫ぼうとしてるのかは分からないけど、捕まえたぞ……!」

 攻撃力を通常の二倍にまで上げ、変わりに素早さを落とす。電気活性≪アクティベーション≫改による攻撃力上昇は伊達じゃない。体力半分になるのと引き換えに攻撃力を底上げにする腹太鼓。それをも上回るのだ。
 俺は嘴を、俺の手が奴の顎まで届く位置まで引き寄せる。

「さぁ、その驚きの表情に一発加えてやるよ! “爆雷アッパー”!!」

「ぐふっ――」

 そして嘴を離して体が空中に浮き一瞬隙ができたフィレアの顎を、爆雷パンチのアッパー版。爆雷アッパーで思い切り殴った。
 爆雷バレットは後のことを考えてアッパーで収めたが、それは正解だった。フィレアに大きなダメージを与えたが、俺の手も大きなダメージが与えられる。

 そのままフィレアはのけぞるように倒れた……とはいかず、擦れ擦れで翼を羽ばたかせるとそのまま逃げるように空へと飛んでいく。
 因みに追撃しようとレインは水の波動を放ったが、フィレアが避けたことでラルドに当たったのは単なる偶然だ。

「はぁ、はぁ……あなた、やるじゃなぁーい?」

「そりゃどうも。できればそのままやられてくれませんかね?」

「は、はは……よく言うわね。溝鼠のくせに」

 ……あれ、これってまさか、スイッチが入った?

「鼠がいーくらかかってきても、所詮鼠よねぇ。……本気を出せば、跡形もなく焼き尽くすことだって可能、可能なのよ」

「おい、ちょっと待て。本気を出すって」

 今までが本気じゃなかったということか? まさか、あの自由自在な飛行に苦戦してたのに、まだあのグレイシアみたいな何かが?

「レイン、これ不味いんじゃ……」

「え、ええ。確実に、これは……」

 フィレアが俯きながら何かをつぶやいている。それと同時にフィレアの体から燃え盛る炎も勢いを増し、フィレアの体が揺らいで見える。
 ぶつぶつとつぶやく度に、姿がどんどん揺らいでいく。取り巻く炎も勢いを増していって今やフィレアの姿が一回りも二回りも大きく見えてくる。
 そして――

「“陽炎”」

 強力な炎がフィレアから発せられるとともに、フィレアの姿が二重に見えるほど揺らいで見える。
 それは、陽炎と同じ現象。

「害獣は大人しく、やられてりゃいいんだよォオッ!!!!」

「ま、またなのー!?」

「フィリア、早くこいつを倒す方法考えろー!!」

 懐から怪しげな空気を漂わせて、フィレア・イグニルは――本気を出した。




次回「VSフィレア 後編」

ものずき ( 2013/08/02(金) 17:47 )