ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜黒と白の12の翼〜







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第三章 秘密のランクと秘密の組織
第三十一話 影滝島逃亡劇B
ファイヤー“フィレア・イグニル”とレインの追いかけっこが開始された。時はさかのぼり数十分前、新たにミルとエスグとの戦闘が始まろうとして――?






〜☆〜


辺りの水分が蒸発していき、地面が溶けている。
今目の前にいる敵がいる地面は溶けてきており、地面もここら一帯の水分は乾燥。非常に喉が渇く。
そして、そんな熱気に囲まれて。
エンジェル副リーダーのミル・フィーアは泣きそうな顔で立っていた。

「わ、私はそんな脅威じゃありませんから、倒しても意味はないと思われますと思われ……」

「ノルマでさいてーひとりはたおさないといけないんだなー」

「やっぱり、ラルドやシルガを狙ったほうがいいんじゃ?」

「あのふたりはこの数でもかなわないから無理なんだなー。よわいやつからたおしていくんだなー」

敵からも人外扱いされているラルドやシルガを少しだけ哀れむと、ミルは直に目の前の現実に向きなおす。
周りは敵に囲まれ、しかも目の前にはエスグという親衛隊と名乗る恐らく強力な相手。

(……私は倒せそうもないね。うん、逃げよう)

といっても、ミルには逃げ道もないし逃げ道を空けるほどの実力も今この状態ではないに等しい。
もしシャインロアーで吹き飛ばせそうでも、少し警戒しなければならない。

「なんでもはやいほうがいいんだなー。さっそくたおされるんだなー」

『ギャアッ!!』

「ひっ……こ、こないで!」

じりじり、と距離をつめてくる敵に縮こまるミル。
だが敵がそれで離れてくれるはずもなく、口元にエネルギーをためている。
そして。

「“かえんほうしゃ”に“ヘドロばくだん”なんだな!」

『ギャァッ!!』

「ま、“守る”!」

迫り来る六つの炎と三つのヘドロの爆弾をミルを囲むようにして展開された緑色のバリア、“守る”でそれらを防ぐと直にシャドーボールで反撃する。
が、エスグが弾ける炎でそれを相殺すると同時に、飛び散った炎がミルを襲う。

「熱っ……!」

「あきらめるんだなー。もうにげみちなんてないんだなー」

「い、いやだよっ! それに、諦めるなんて、私が本気を出せば実はとっても強いんだよ? もしかしたら一瞬で倒されちゃうかもねー。だから、逃げて、ね?」

「そんなにつよいんなら、報告義務があるんだなー。ほんとうかどうかたしかめるために、ほんきだしてくれなんだなー」

「……し、“シャインロアー”!!」

ミルなりのハッタリをかましてみたが、エスグには通じなかったらしい。
ミルは苦し紛れに、威力的には適応力によって破壊光線よりも威力が上となるシャインロアーを繰り出す。
が、周囲からの一斉攻撃により少し軌道をずらされ、当たることはなかった。

「で、これがほんきなんだなー?」

「うぅ……こ、これはちょっと、調子が悪くて」

「ならいまのうちにたおすんだなー。こぶんども、いっせーこーげきなんだなー!」

『ギャアッ!!』

「“守る”!」

再び繰り出される一斉攻撃を、再び守るで防ぐ。だがこれを繰り返していてはいつかは守るを繰り出せなくなり、負けてしまう。
そこでミルは守るを解いた瞬間に周囲に十の光球を展開し、一気に放った。

「“シャインボール”!」

「ふ、ふせぐんだなー!」

『ギャァゥ!!』

流石にこれには動揺したのか、エスグも驚いたような声を上げる。
周りの子分たちはいきなりのことで対応が遅れたのか、直撃こそ避けたものの少々のダメージを追ってしまう。

「むむぅ……なかなかやるんだなー」

「ふふん、私だってやればできる子なんだよ!」

「さすが、えいゆうのぱーとなーなんだなー」

「えへへ、そうかな?」

「だから、さっさとかたづけてしまうんだなー」

「……へ?」

ここで一つ。ミルとエスグの会話を見返してみよう。繋がっているようで、繋がっていないのがお分かりいただけるだろうか?
ちなみにミルは気付いていない。

「こぶんども、ぜんりょくでそうこーげきなんだなー!」

『ギャアッ!!』

「な、なに?」

右にいるガーディ三匹は炎を身にまとい、後ろにいるマグマッグ三匹は熱風を、左にいるアーボは尻尾を紫色に光らせる。
それぞれ、タマゴ技で覚えられる“フレアドライブ”に“熱風”、“ポイズンテール”だ。

「いっくんだなー!」

『ギャアァッ!!』

「え、えぇ!? そんなの、守るじゃとても……あ!」

九つの同時攻撃に危機感を覚えるミル。だが、寸前で何か思いついたのか守るを展開する。
そして、外側内側を光の膜で覆うと、力をこめる。

「“ポースシールド”!」

光のバリアは、三つの同時攻撃を完全に防ぎきる。
昔、闇のディアルガ戦で電気を操る事に関しては右に出る者が居ないほどのラルドが、守るを電気で包むということをして見せた。
これは、シャインボールで代用した版だ。しかも、適応力によりラルドの電気バリアよりも威力、というか守備力は高い。

そして、同時攻撃を防ぎきったことは、流石のエスグも驚いた。

「……これは、なんてきなんだなー」

「はぁ、なんとか防げた……」

全ての攻撃を防ぎきったことに安堵するミル。が、エスグも策がないわけじゃないらしい。

「かくごするんだなー」

「覚悟もなにも、さっきも見たでしょ? もうあなたたちの攻撃は通じないから、ね? もういい加減諦めようね?」

「いやなんだなー。めんどーなのはきらいだけど、しかたないんだなー」

エスグは力を込めると、殻から炎が噴き出す。
そして、徐々に罅割れていき――最終的には、ひとかけらもなくなってしまった。

「“からをやぶる”んだなー!」

「……もう、こうなったら仕方がないのかな?」

ミルも、目の前の敵の本気を感じ取ったのか、戦闘体勢に入る。

「じゃ、さっそくいくんだなー!!」

「え、早いっ!?」

マグカルゴという種族は遅い。鈍間で、それほど強いわけでもない。
だが、目の前のマグカルゴ、エスグは結構なスピードでミルに向かっていっている。ミルも見た目から鈍間だと思っていたのに速攻してきたから驚いたようだ。
咄嗟に“シャドーボール”で迎撃すると、即座に距離をとる。が、子分はまだいるので最低限の距離で、だ。

「むぅ、痛いんだな」

「早いって、え?」

「“からをやぶる”ってわざなんだな。しらないんだなー?」

「な、なにそれ!」

速攻で距離をつめてくるエスグを、“守る”で止めると即座にシャインボールを当てる。
すると……。

「うわぁ、なんだなー!」

「……あれ?」

思ったよりも吹き飛んだ、とミルは感じる。がそれも殻がないせいなのだろうと無理矢理納得し、戦闘に戻る。
エスグは少し距離を開けると、今度は遠距離攻撃を仕掛けてくる。

「“かえんほうしゃ”なんだなー!」

「“守る”!」

エスグの口から吐き出される高熱の炎を、バリアで防ぐ。
ミルでも分かった事は、一つ。エスグにはミルの護りを破る手立てはない。が、ミルはエスグにダメージを当てる事ができる。
チャンスは守るが使えなくなる、後二回だ。ピーピーマックスを飲もうにも、この譲が許しては暮れないだろう。

「“シャドーピンボール”!」

「い、いたいんだなー!」

『ギャァッ!!』

再びシャドーピンボールで少しのダメージを与えると、ミルは距離をとる。

(……あれ? 今の顔、本気で痛がっていたような……?)

殻を破ったから早くなった、という技だろうと無理矢理納得していたミルだが、なんとなく違うと気付く。
先程の火炎放射も普通の一斉攻撃となんら遜色ない威力のものだった。流石にこれはおかしい。
もしや、とミルが気付いた瞬間。エスグは再び子分に指示をだす。

「ぜんりょくいっせーこーげきなんだなー!!」

『ギャアッ!!』

再び、強力な一斉攻撃を放とうとする子分たち。ミルは即座に“ポースシールド”を展開すると、強力な攻撃を完璧に防ぐ。
そして、バリアを解いた瞬間、エスグが飛び掛ってくる。

「ゆだんたいてき、なんだなー!」

「きゃ、ぽ、“ポースシールド”!」

いきなりの出来事だったが、様々な経験を積んだミルはそれに対応して見せた。
だが、守るというものは連続で使うのは難しい。二回までならなんとかできるかもしれないが、三回めとなると強運が必要だ。
そのため、バリアは発動せずエスグを防ぐ事はできなくなる。

「さ、かんねんするんだなー!」

「ど、どうすれば――」

体温が太陽の表面温度よりも高いマグカルゴに突進された日には、どうなるか目に見えている。やけどで住んだら最善で、最悪跡形もなく溶けてしまう。
どうすれば、とミルは悩む……と、そのとき。一つの技を思い出す。
最近覚えた、戦闘には使えないだろうと思い使ってこなかった技。

「――ば、“バトンタッチ”!」

「なっ! なんだってなんだな!?」

『ギャァッ!?』

次々と煙が立ちこみ、煙が晴れた先には……マグマッグとぶつかり動けない状態のエウグと、場所が入れ替わり混乱している子分たち。
チャンスはいまだ。今しかない。

「今だよっ。“シャインロアー”!!」

「な――」

『ギャ――』

破壊光線よりも威力は上の攻撃をまともにうけて、立っていられるはずがない。
それもエスグなら耐えれたかもしれないが――いや、この状態ならエスグがもっとも倒れる確率が高い。

「からをやぶるって、攻撃と素早さを上げる代わりに、防御を捨てたものだったんだね」

シャドーピンボールは、威力を捨てた代わりに不規則な動きで相手をかく乱する、ミルの視力もあってかどこに当たるかなど完璧で、ほぼ必中といってもいい。
だが、あのエスグは本当に痛そうにしていた。進化していて、威力も低いのだからあんなに痛そうな顔はしないはずだ。
その点で、ミルは殻を破るの弱点を見つけたのだ。

「ま、安心して撃てるってことしかメリットなかったんだけどね。よかった倒せて……」

本当に、心から安堵し、その場に座り込むミル。バッグからピーピーマックスとオレンの実を取り出すと、一気に流し込む。
そして、そのまま寝転んだ。




影滝島、ミル対エスグ+子分達。

勝者、ミル。



〜☆〜




その頃。

「あれ、ここどこだ? というかみんなどこなんだ?」

馬鹿なリーダーは、敵地のど真ん中。
廃墟地帯のど真ん中で必死にみんなをさがしていたのであった。




次回「影滝島逃亡劇C」

■筆者メッセージ
短いですが更新。
なんと、昨日の七月十一日でエンジェルも一周年を迎えました。
間違っていたら恥ずかしいですが、プロローグ見る限りそうですよね?

次回「影滝島逃亡劇C」
ものずき ( 2013/07/10(水) 20:00 )