ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜黒と白の12の翼〜







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第二章 新たな五人目の仲間!
第二十二話 緋色の剣士、来る!
シルガとフィリア、二人の犠牲を払うもアリシアを倒し、依頼とレイン救出を無事こなしたエンジェル。そして、それから三週間後――?





〜☆〜

……あれから三週間。
三週間と言うのは案外長かったような、短かったような。勿論俺には短く感じた。
あれから一週間。レインはリハビリを終えて、百メートルを全力疾走で走っても問題ないようになった。これもあいつがダンジョン奥地で定期的に運動していたおかげだろうか。
それから二週間。レインを道場に行かせて、暇な時間に俺も修行する。など……上手く時間を使ったと思う。
そして、順調に道場の間をクリアしていった頃――。

「……はぁ、はぁ」

「おーい、大丈夫か?」

「はぁっ、はぁっ、こんなっ、短期間で、あの間を全部クリアするなんて……疲れるに決まってるでしょ?」

「ま、そりゃそうだな」

そう、順調に間をクリアしていったレインは、遂に道場の間全てをクリアすることができたのだ。因みに最後に挑んだ間はドラゴンの間だ。
レインの技……というより、レイン自体が特殊すぎた為に修行も難しくなるか……と思ったが、案外レインも自己練習していたらしい。

「だってしょうがないだろ? お前も電気を使うと思ったから、俺はお前の特訓に付き合えると思ったのに……」

「知らないわよ。私だって、ピカチュウなのに電気以外のタイプの技が主なんて、考えた事も無かったわよ」

「お前、ドラゴンの間に挑む前にもあの間に何度も挑戦してたもんな」

「だって、相性いいからねぇ……んじゃ、そろそろ帰りますか」

あの間、というのはこいつが主に使う技のタイプ……それに弱いタイプの間のことだ。勿論、電気は今の所、“電気ショック”が精一杯なので水でも飛行でもない。
着実に強くなって言ってるし、このままだとすぐに“十万ボルト”を使えそうだが、電撃は得意じゃないのか恐らく“十万ボルト”までが電気技で限界点になるだろうと予測している。
全く、電気タイプなのに電気をあまり使わないとはどういうことだ。

「さっき攻略終了した所だぞ? もうちょっと休めよ」

「大丈夫よ。オレンの実を食べるだけでいいし……なにより道場の床で寝るよりも、家の藁ベッドの上で寝るほうが良いわよ」

「まぁ、こっちの方が静かだけどな……ガラガラがどこかに行ってるからな」

「家も一緒でしょ。ミルは今頃、病院に行ってると思うし……そういえば、シルガ達の容態は?」

「ん? ああ、フィリアはとりあえずはほぼ完治しているらしい。ただ、大事をとってって所だな。シルガは……動けるのは動けるけど、杖で支えて歩くのが精一杯って所だ」

「あいつも、あんたに負けず劣らず驚異的な回復力持ってるわね……」

シルガも、前に行ったときには「見ていろ。直にこの怪我を癒し、貴様を完膚なきまで叩きのめす。それまでは誰にも負けるなよ」と言っていた。いやぁ元気がありますね。でも、負けるなといわれた所で今の俺は負ける気がしない。なんたって、やっと“電気活性≪アクティベーション≫”の改良版を……。

「はいはい、そういうのは良いから。早く帰りましょ」

「あ、ちょ、待てよ。俺は別にここに残っていようが関係な……」

「疲労感満載の美少女を放っておく気!? 酷い奴よね、あんたって」

「自分で美少女とか言っちゃう!? いやまぁ、確かに上の下くらいはあるけど!」

「失礼ね、上の中くらいはあるわよ!」

いや、それでも結構可愛い方だと思うぞ? 俺はそういうのに興味ないし、何か俺の暇を晴らしてくれるような出来事さえあればいいだけだからな。
最近、実戦で誰とも本気で戦ってないからな……ああ、暇だ。

「さっ、行くわよ」

「あっ、手前尻尾触るんじゃねぇよ!! 不快感どれだけ感じると思ってんだ!?」

「これくらい?」

「お前の小さな指と指の間で図るなよ! いや俺もそれくらいだけどさ!」

説明しよう。
ピカチュウという生物は、尻尾を触られるのが最も嫌いであり、見知らぬ相手に触られたら問答無用で爆雷パンチを叩き込んでいい程……ではないものの、ボルテッカーくらいは叩き込んでも……え? 威力が上がってる?

「誰か、ここに誘拐犯がー!!」

勿論、その光景はトレジャータウンで笑われるだけで、助けなど来なかったのはまた別のお話……じゃないけどな。



〜☆〜



そして一時間後。レインもすっかり昼寝につき、ラルドも眠ろうとしている時刻一時三十分昼飯は勿論済ませてある。
え、ミル? あいつがご飯なんて作ったら壊滅的な味だったから、ポフィンなんて真っ黒だったから。
……あ、そうそう。遂に我が家にも、キッチンが設備されるようになったぜ!!

「いやぁ、これでポフィンや林檎パイ、木の実グリルが作りたい放題……」

なんて現状には至らなかった。
このメンバー。なんと誰一人料理ができないのだ。
まだレインは試した事がないが、シルガが「レインの作る料理は全て酸っぱいを通り越した次元の酸っぱい物になる」とか言ってたから、試すのが怖すぎる。
はぁ……唯一頼みの綱としていたフィリアも、元々引きこもりだったくせに料理ができないなんて言いやがる。

「ああ、糞! 料理くらいできるようになれよ!!」

そして昼飯。それを作ったのは誰か? 勿論俺だ。
数少ない知識を頼りにして、作ったポフィンがまろやかになったときには驚いた。味? 勿論他の誰よりも美味かったよこんちくしょう!
なにが悲しくて、自分が作った料理を皆に振舞わなきゃいけないんだ……なんで、リーダーの俺が一番料理上手いんだよ。可笑しいだろ。

因みに今日の献立は肉だ。うん? 人間臭いって? しょうがないだろ、こっちは元より人間だぞ?
それに、元の記憶を頼りにしてるんだから、こうなるのは仕方ない。レインには好評だしな。シルガも微妙に喜んでいた。

「ああ、なんか不幸だな……」

料理のさしすせそとも呼ばれる調味料は確かにある。それ以外の調味料も確かにある。肉の調達元? それは神のみぞ知るだ。知ったのなら、きっと絶望するぜ。

「夜は何しようかな……そうだ、こっちの世界の料理ってそんなに試した事がないから、木の実グリルでもしようかな」

あれ、なんで俺夜の献立なんか考えてんの? 俺、腐ってもリーダーだぞ? 主婦でも皆のお母さんでもないぞ?

「ああもう! 料理できる奴が仲間になってくれー!!」

俺の鬱憤を晴らすかのような叫びは、空まで届き、木霊する。なんか惨めになってくる……はぁ。

と、そんな俺に答えてくれたのかはわからない、が……仲間に入れても申し分ない奴が、いきなり現れた。

「おうおうおう! それは俺のことか!?」

「ん?」

あれ、どこかで訊いた事のある声だな……と周りを見渡すと、入り口の階段から現れる。

「料理もでき、戦闘もできる! 万能ポケモンのヒトカゲとは、俺のことだ!!」

「……あ、お前」

ヒトカゲ。
ヒトカゲとは火を操るトカゲポケモンで、俺の知ってるヒトカゲは不思議な剣を操るヒイロというヒトカゲだ。
エネルギーを纏える剣を使う、俺の手を刺した剣。あれ、滅茶苦茶痛かったな……。

「“ヒイロ・ラリュート”参上! へへっ、お前を倒しにやってきたぜ!!」

「てめっ……ヒイロか」

何故だろうか、こういうときは「な、なんでお前がここにッ!?」みたいな反応が普通なのだろうが、俺は全然動揺しない。
幽体離脱できるピカチュウが実体に戻ったら変な体質になっていた、など刺激的なことが多かっただろう。全然なんともない。

「お? なんだ、なんの反応もなしか。つまんねーの」

「知るかよ。こっちもやっとこさ技を改良……というより改造か。ともかく、疲れてんだから話しかけんな」

「おいおい、客人に持て成しもできねぇのか?」

「持て成しか……あ、あそこに湧き水あるから自由に使って良いぞ。後、肉の餡かけがあるから自由に食べていいぞ」

ただ作りすぎただけなのだが、まさかこんな所で役に立つとは。

「じゃあ……おい、冷たいぞ」

「じゃ、俺の手に近づけて……」

ああ眠い。暇。だから肉を温めたら寝る事にしよう。そうしよう。

「ほい。で、どうすんだ?」

「こうするんだよ」

若干眠りに入りかけながら、適当な温度まで温める。その際、バチチッ、と火花が迸ったがしょうがない。そういうものだ。
これは微弱な電気を対象物に流し込み、温めると言う技だ。これさえあれば温める機械みたいなのもいらない、第一あれは高すぎる。なんだよ100000Pって。俺達の全財産で300000Pだぞ。三分の一も占めてるじゃねえか。

「じゃ、後はてきとーに寛いでくれ。俺は寝る……ぐぅ」

「ああ、いっただきまーす……って、ちょっと待ちやがれ! 俺が用があるのは……」

と、ヒイロが急に大声を張り上げる。なんだよ、折角眠り始めた所だったのに……。

「お前だ! “英雄”ラルド、お前に用がある!!」

「ん? ……って、まさか! お前、またフィリアを!?」

またあんなフィリアの婚約者みたいな扱いを受けなきゃならないのか! 嫌だぞ、俺はあいつを仲間としか見てないからな!?

「分かってるよ、んな事は百も承知だ。お前の態度を見て気付かないわけがないだろ?」

「じゃ、なんで来た」

「お前を倒すためだよ!!」

あぁ、そうか。じゃあ俺は寝る……え?

「えぇぇえぇ!? い、いきなりすぎるぞお前!?」

「俺はお前に敗れた。俺は本気で挑んだが……あと一歩、という所で敗れてしまった」

あの時に解放さえできていれば、確実に勝てたんですけどね。グラードン(十分の一)の力をまともに受け止めてみろ。凄い重いから。
そういえば、グラードンって一番体重が重いんだっけか。

「だから、俺は考えた! 何故負けたのか……それは!」

ヒイロは手を天に上げると、親指と人差し指を広げる。そういえば人差し指ってなんか失礼だよな、良い子の皆は、人を指で指しちゃダメだよ!

「俺の剣が一本だったからだ!!」

……ああ、分かった。こいつの頭は何か特別な力で本来の思考能力を失っているんだよな、じゃないとこんな馬鹿な考えには至らないはずだ。

「なぁヒイロ。普通の人は技を磨くなり、自分を磨くなりするものだぞ? それをなんだ、一刀流だから負けたって……」

「いや、二刀だと重さもちがう。何より両手で持っていた一刀より、二刀の方が片手同士を鍛えれる!」

普通はな、二刀じゃ一刀よりも一撃が軽いくせに重量自体は二倍だから嫌われてるはずなんだけどな。
まぁ、俺は剣士じゃないから良く知らないんだけどさ。

「……で? 戦うって、どこで?」

そうだ。まず戦う場所がない。この前のグレイシア戦みたく、ダンジョンの奥地か? それとも専用フィールドか? この近くにはないぞ。
せいぜい、電気ショック程度で圧倒できるレベルの海岸の洞窟の奥地は広かったが……何者かによる爆発により、崩れちゃったからな。うん、誰なんだろうな!

「へっ、そんなの事前に調査済みだぜ! ……あの海岸でだ!!」

海岸。
そう聞いて、思い出す事はたった一つ。ミルとの出会い、そして再び出会った場所。俺たち“英雄”の出発地点と言っても過言ではない。
そして、あの場所は当然海岸であり、近くに海がある。海、と聞いて想像するのは一つの例外もなく、砂か水だ。

「いいのか? お前、相当不利だぞ?」

「お前が海水を使おうが、こっちには秘策があるんだよ!」

秘策、か。
炎は水に弱いのは常識だから、やっぱり二刀流になんか秘密があるのか? 前に戦ったときも斬撃と炎の渦のあわせ技とか、鬼火みたいな攻撃技も使ってたよな。

「……分かった。分かったから少しくらい休ませてくれ。こっちは今さっき昼飯食べたばっかりなんだ」

「三十秒で支度しろ!!」

……フィリアって、何気に良いアイディアで俺達をいつも静めてくれるよな。睡眠の種という、特性不眠以外誰も耐えられない方法でな!!

「おいヒイロ。睡眠の種って、知ってるよな?」

「おお、それがどうし――」

数十秒後。エンジェル基地にはすやすやと眠る二匹のピカチュウと、大きな鼾を掻きながら眠っているヒトカゲの姿が、そこにはあった。



〜☆〜



二時間後。
世界の常識的にはおやつの時間であり、皆、好みのグミや林檎などを食べるなど昼食と夕食の間の間食だ。
勿論、俺も例外ではなく、口の中にはカゴの実が詰められている。うん、強制的に起こされたよ!

「目を開けたら、そこは真っ暗な夜の闇に包まれていた」

「なに小説みたいに言っちゃってんのよ」

「そうだぞ、さっさと俺と勝負しろ!」

「ああ五月蝿いな!!」

もし、今の時間帯が夜だったらこんな面倒くさい勝負を受ける必要もないのに。こんなの絶対可笑しすぎる!!

「分かったよ、海岸でお前を倒せばいいんだろ!?」

「はっ! 俺を倒すだなんて、寝言は寝て言えと教わらなかったようだな!」

「寝言? ははっ、負け犬の遠吠えって奴か」

「なんだとお眠り鼠。寝る子はよく育つってか?」

「なんていった、この吠え蜥蜴。鍛えすぎて脳まで筋肉になったか?」

互いに小突きあい、それが殴りあいにまで発展する。なんとかレインがとめてくれたものの、あのままだったら確実にこの場所で戦い始めてたな。
でもまぁ……それだけこいつに対して怒っている訳で。

「手前……どうやら、余程斬られたいらしいな!」

「俺がお前に? ははっ、冗談はやめてくれよ」

「ちょ、ちょっとあんた達!!」

レインが制止しようとするも、俺達は止まらない。互いが右手に雷と炎を纏うと、まるで決闘の合図の如く――

「“雷パンチ”!」

「“炎のパンチ”ィッ!!」

――炎と雷がぶつかり合った。



次回「炎の剣士と雷の拳士」

ものずき ( 2013/04/22(月) 21:24 )