ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜黒と白の12の翼〜







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第一章 帰ってきた救世主
第八話 到着、シェイミの里
霧包山にて数多くの敵ポケモンを相手にすることとなったエンジェル。そんな中ラルドは罠にかかって皆と逸れてしまい、シーアと名乗るシェイミの子供と出会い――?





〜☆〜

……俺は衝撃波などに慣れていたからそこまで強く感じなかったのかもしれないが、今の衝撃波はもっと凄い強い物なのかもしれない。
いきなりだが、俺はまだ硬直したままだ。毒状態はまだ治っていない、当たり前だ、動けていないのだから。
緑色の光――あれには熱も感じた。草タイプの技は大体が自然の力を借りたり、草や蔓などの技が当たり前だ。

「でも、この技は……少し違う」

種爆弾、そう呼ばれる技がある。それは種をいくつか放って、何かに当たるとその場で爆発するという技だ。
これには熱もあるし、衝撃波もある。だが似ているのそこだけだ。
この技は……自爆や大爆発といった自分を犠牲に相手にダメージを与えるのとは違う、かといって普通の技でもない。

「どういうことだ……う」

そんな事を考えていると、急に息が苦しくなった。
毒が進行したのだ、現に自覚した瞬間に症状が重くなった。さっきのままほかの事を考え続けていたら死んでいたのだろうか?

「も、モモンの実を……」

バッグの中に手を伸ばし、モモンの実を取る。シーアについた花と同じ桃色の果実には、毒を治す効果がある。
まぁ、進行しすぎていたら効果は薄いが。

「――ふぅ、何とか治ったか」

お腹も空いていたので一口齧るだけではなく、全て食べる。モモンの実の特徴はとにかく甘い。
他にも甘い実はあるし、これよりももっと甘い実も食べ事があるにはあるが正直言うと二度と食べたくない甘さだった。やっぱ普通が一番だ。

「そうだ、シーアは……しかも、光が射してるし」

どうやら先程の衝撃波で霧が吹き飛び、遮断されていた光が見えるようになったらしい。
でも、完璧に光を遮断するとはここの霧も何かあるのだろうか?

「シーア、大丈夫か?」

「みー……」

「やっぱ気絶してるか、あんな技を使ったんだから当たり前か」

冒険と称した遊びを行っている物の、こんなに疲れる事はない上に、あの技を使ったのだ。自分が毒ガスを吸い込めるのは知っていたらしいが、こうなるのは知っていたのか定かではない。

「っと、とりあえず持ち上げて……何度感じても、軽いなこいつ」

軽すぎて風が吹いたらいとも簡単に吹き飛びそうだ、いやないんだろうけど。
一度片手で持ってみるが、それでも普通だ。
子供という事も有るが、やはりシェイミ全般がこんな重さなんだろうな。

「……ここを通れば、無事に“シェイミの里”につくんだよな?」

若干の不安が胸に残るも、ラルドはそう信じ、光の中を通った――。



「ッ……お、おお!!」

目を開けると、そこには坂道があった。下を見てみると、どうやら上から下へじぐざくになっているらしい。
それよりもラルドには今、外へ出られたという嬉しさしか目に映っていなかったらしい。目に涙を浮かべて言葉にならない叫びをあげている。

「おお……遂に日の目を見る事ができたーー!!!!」

シーアが気絶している事を忘れたかのような大声で叫ぶラルド。その大きさは大抵のポケモンなら寝ていても起きるレベルだったが……シーアは起きなかったらしい。
と、感激の最中。丁度真横に看板があるのを見つける。

「って、あれ? ここに看板がある……」

どうやら足型文字らしい、どれどれ。ちょっと拝見……。

『緊急事態などにはここを通って逃げてください』

「……は?」

一瞬、これを見て一瞬で外へ出れたと言う嬉しさが消え失せた。
つまり、つまりだ。俺がワープしたのはシェイミの里の者達が超緊急事態(敵ポケモンがいたので恐らく)に通る避難経路でシーアはそこで攻撃を受けて迷っていたと言う事になる。

――畜生ワープスイッチめ! 幾ら同じ階とはいえこんな隠された秘境に来るなんて訊いてない、訊いてないぞ!!

「……とにかく、降りるか」

いや、もしかしたら霧に隠されていたがどこかのエリアと繋がっていたのか……? と、思う頃にはもう遅く、一人シーアを持って歩きながらネガティブになっていくのであった――。





〜☆〜

一方、馬鹿すぎるリーダーと違い、まとも(但し二人だけ)組が霧包山を突破して……シェイミの里についた頃。
シルガは無言で死んでおり、その他の馬鹿とフィリアは初めて見る場所に興奮していた。

「うわぁ、ここがシェイミの里!?」

「これがシェイミ……前に何かの文献で見た事があったけど、実物は違うね」

「どうでもいい」

里はシェイミ達が作ったであろう草の家に、所々にある池。しかも汚れがなく普通に飲んだりしても危険がない。
地面には草も生えており、シェイミ達についている桃色の花と同じ花が咲いていて、とても自然的で自然と共存しているようだった。
そして奥のほうには一軒だけ木で出来た家があり――恐らく村長などの家だと思われる――他とは少し雰囲気が違っていた。

「おや、お客さんですか?」

「そうだけど……あなたは?」

「はい、自分は“グラス・ブローム”と申す者です。以後、よろしくお願いします」

「あ、うん。よろしく」

小柄な体格、というか小さすぎる体格に桃色の花、そして黒くて円らな瞳――果たして♀なのか♂なのか、非常に気になる。

「あ、自分達は性別がないので。注意して下さいね」」

「へぇ、性別がないんだ……コイルやダンバルみたいな?」

「性格に言えば、そういう無機物系ポケモンの様ではなくて伝説のポケモンだからです」

「凄いんだね……って、え!? 伝説?!」

伝説……といえばディアルガやセレビィなどのポケモンを想像するだろう、実際シェイミもどちらかというとセレビィ寄りだ。
見たところ草っぽいのだが、本当のタイプがどうなのかは知らない。

「はい……では改めまして。ようこそ、シェイミの隠れ里へ!」

「歓迎されてるのかな、これは」

「知らん、俺に聞くな」

シェイミの隠れ里、シェイミが中央都市の様に発展した文明で暮らすと言う事ではなく、あくまで自然と共存して生きている。
そんな里。

「では、色々ご紹介します。まずお客様が来られたダンジョンは“霧包山≪きりづつみやま≫”と言います。昼頃にはゴールドランクではまず無理、ダイヤモンドランクでも難関ダンジョンの一つとなるのですが……大丈夫だったのですか?」

「化物組みがいるんだよねー

「次に里、村では様々なシェイミが自然と共存して生きており、自然そのままの形で残っています。奥の方には村長である“フラン・グラシデア”さんが住んでいます――まぁ、まだまだ現役バリバリですが」

「へぇ、そうなんだ」

「そして里一番の名物と言ってもいい“空の頂き”。これは一合目、二合目と……様々な所に休憩地点があり、頂上ではお宝が眠ってると言われています……これぐらいでしょうね」

……因みにミルは相槌こそうっているがほとんど訊いていない。ラルドがどこにいるか周りを見ているだけだ。
これは酷い。

「――ねぇ、グラスさん。霧包山でリーダーを逸れちゃったんだけど、心当たりとか無いかな?」

「そうですね……十五階ではありますね。ワープスイッチを踏むと違うルートへ飛ばされる事がありますから。霧のお陰で見えない通路に」

「……えぇぇ!? ほ、本当!!?」

「本当です、昔はそうでもなかったんですけどね……ダンジョン化が進むごとに被害が増加する一方です」

因みにだが今のミルの脳内にはラルドの事しか頭に無い。当然、今の話なんて訊くはずも無い。
それでも憎めないのは、ミルが純真な心で想っているからだろう。

「どどど、どうしよう! ラルド、無事に抜け出せるかな……」

「出口も霧で見えにくいですし、そもそもあそこの霧は光を完全遮断します。出口を見つけるなんて不可能に近いでしょう」

「い、嫌だぁ! ラルドと会えないなんて嫌だよぉ!!」

「落ち着いてミル、あの鈍感鼠の事だ。そう簡単に死にはしないよ」

ラルドの呼び方が鈍感鼠になっているのは、ある意味ミルが言っていたのでいいと思う。そんな言い訳を頭の中でしながらもそういうフィリア。
勿論、皮肉もあるが本当にそうとしか思えないからそういったのだ。鈍感鼠なのは薄々気付いていた事だし、ミルもミルで大きい出来事があったから心の奥底で封印していたみたいだが、何かの切っ掛けで思い出した……らしい。

つまり、両方似ているという事だ。

「出てくるなら非常用避難経路からだと思いますよ? あそこしかありませんし」

「なら……安心かも」

「何が?」

当然の反応だろう、ミルの頭はお花畑だろうか? まだ安心は確定したわけではなく、避難経路からしか出れないと分かったわけだ。
寧ろ心配するだろうこの状況は。

「ちょっと待ってね。グラス、避難経路ってどこ?」

「ここからなら霞んで見えますが村から見ると……あそこです」

グラスが差した方向は空の頂への登山口が北、霧包山が南と考えた南東を差す。つまり森の所だろう。
良く見れば崖があって上のほうには何か点のような物が……少し見える。

「あ! フィリア、ラルド居たよ!」

「!? こ、この距離で見えたって言うのかい?」

「……さっきから俺が空気なんだが、どうすればいい?」

「専門外です」

この距離――ざっと五千メートルあるだろうか。勿論、ミルもそんなにいはっきり見えてる訳では無いだろう、それでも本人曰く「ラルドの形が見えた」らしいのだが。
だがこの距離からそんなに見えるとは、凄いという言葉でしか表せない。

「うん…シルエット的には、黄緑っぽい物を持ってた気がするけど」

「黄緑?」

今思いつくのはシェイミ族だが霧包山の経路は把握しているだろう、迷う事などはない。ならば点検などの帰りで会い、そのままラルドを案内したのだろうか?
どちらにせよシェイミは居るだろう、ミルの視力は本気で凄い。
あそこまで遠ければ余程目が良くても黄色っぽいものとしか見えないだろう、寧ろそこまで見えても凄い。
つまりミルの視力は異常、以上!

「……行ってみますか? リーダーさんなのでしょう?」

「うん、鈍感電気鼠だけどね」

「鈍感溝鼠だね」

「本人の思いを一度訊けば「鏡を見て周りを良く見ろ」としか言えなくなる」

「……酷い言い様ですね」

まず初見でこれを訊いて仲がいい探検隊と言うには無理があるだろう。現にグラスもそう言って――

「でも、そこまで仲が良い探検隊なんて羨ましいですね。自分も入りたいですよ」

――と思っていたが、どうやら違ったらしい。いや、初見と言う訳では無いだろうが。先程のやり取りを見ていれば、逆に仲がいい探検隊にしか見えない。

「で、行きますか?」

「私は行くんだけど……皆は?」

「僕は正直バッジもあるし、帰れるから安心だとは思うけれど……着いていくよ」

「俺は行かん、面倒だ」

そういうとシルガは丘がある方へ向かって行く。寝る気なのは直に分かったが放っておいても大丈夫だろう。声をかければ直に起きるからだ。
ミルと正反対でなんともありがたいのだが、未だにミルは起きない……いつラルドの上に乗り始めるか分かった物じゃない。

「では今回、案内を務めていただく“グラス・ブローム”です。本日は“ぐるぐる森林”をご案内いたします……メンバーはガイドである自分を含めて三人でよろしいでしょうか?」

「は、はい!」

「はい、副リーダーの“ミル・フィーア”にメンバーの“フィリア・レヴェリハート”です。ご案内、よろしくお願いします――これで良かったかな? 暫く敬語なんて使っていないから忘れたよ」

「別にたいしたことはありません……メンバーの名前も確認した事ですし、行きますか」

今回の冒険地は――“ぐるぐる森林”。





〜☆〜

崖を降りた先には、広大な森が広がっており、崖の上から見た感じではこの先に里があったはずだ。
しかもこの森もリング状になっており里を多い囲んでいるようにはなっているが縦にはそこまで広くない……はずだ。なのに今の俺は迷うなんて生易しい物じゃないぐらいに――迷っていた。

「どーいう事でしゅか、里に戻れるんじゃなかったんでしゅか?」

「ああもう! 静かに待つということができないのか、お前は!?」

「子供に静かにしろ、なんて無理な相談でしゅ」

「面倒くさいなぁ、おい」

起きてからはずっとこんな調子……ではなく、十分ほど前からこうだ。
確かに森で迷っていつまでも家に帰れないなんて、子供からすれば十分不安だろう。俺はバッジがあるからそうでもないが。
緊急事態になったら、バッジがある。その為、安心して俺は里を探せる……はずだった。

「バッジ、どこにあるんだ?」

なんとこのリーダー、バッジを失くしてしまったのだ。しかもこんな森の中で。
馬鹿より馬鹿、有り得ない程の馬鹿だ。
これで絶対安全の自信は崩れ、食料である林檎や木の実がすべて尽きる前に見つけようと走っているのだが……幾ら走ろうとも見つからない、まるで同じ道を何度もぐるぐる回っているみたいだ。

「……確実に同じ所を回ってるよな……さっき傷をつけた木がある」

「本当でしゅ……まさか、このまま帰れないんでしゅか?」

「いいい、いやいやそんな事はない! その気になれば森を吹き飛ばす事だって……一週間寝込む事になるけどな」

嘘を言っていないのがまた怖いところだが……そこはご愛嬌。
確かに解放を発動すればできるだろうし、全解放なんて出来た日には一瞬だろう。但し一週間寝込む事になるが。
今でも“暴雷”を使えばある程度の木々は薙ぎ払えるが、森林破壊になるのでやめておく。奥の手としては残すが。

「でも可笑しいな、同じ所をぐるぐる回るなんて。幻術とかの類でも掛けられてない限り、そんな事は……」

考えていても仕方が無い、俺なんかに分かるはずも無いのだから。
ただ……一人、詳しい奴なら居るけどな。

――呼ばれて飛び出て何とやら! 久しぶりのレインよ――

あ、ああ。久しぶりレイン。早速だが訊きたい事があるんだ。

――分かってるって、幻術とかの類を見せるポケモンでしょ?――

それで、ここら辺に居そうなポケモンって何が居る。

――そうね……ゾロアって言うポケモンだと思うわ。幻影効果は弱いけど、それぐらいの効果なら出来るだろうし、何より他のポケモンが思いつかない――

そうか……じゃ、この森のルートは?

――ちょっと待ってね…………うん、大体分かった。行く方向はあってるみたいよ――

ありがとな、レイン。

――どういたしまして……じゃあね――

ああ、またな――



――と、意識が戻ったようだ。

「よし、後はそのゾロアってのを倒せば……あれ、シーア。気絶してるのか?」

「……ゆ、ゆーれい……」

幽霊というのは勿論、精神だけになったレインがラルドから出た姿だがシーアは何も知らないので幽霊と間違える。
ただ最近レインが幽体離脱を出来るようになったのは、光の泉と同じ様に時の影響が変化したから……らしい。だが幽体の間は話す事も触る事もできない。
引越し一日目の夜の話で分かった事だ。

「……またかよ」

やれやれ、といった感じで俺はシーアを持ち上げるのだった。



――三十分後――



三十分、ずっと歩き続けた。
その間もゾロアは現れず、俺はずっと歩く事になって……十五週目でやっと気がついた。

「そういや、ゾロアってどんなポケモンなんだ?」

ここで俺は一つの疑問に辿りつく。先程からずっと同じ道を辿っているのだが肝心のゾロアというポケモンを俺は知らない。そいつを倒さなければ最悪ここで骨になるのに。
ならばどうするのか? それは幻術を掛けられる瞬間を狙う以外ないだろう。でもどうやって? 一々放電するのは面倒だし、シーアを巻き込みかねない。

「どうすればいい……?」

ここにシルガでもいれば、簡単な作業だと言うのに。探知系のポケモン……待てよ、探知?
そうだ、その手があった!

「持ってて安心、というか偶々! こんな時には――“探知の玉”!!」

“探知の玉”――使用者一人の聴覚を最大限まで上げ、所謂“地獄耳状態”にしてダンジョンのフロアのポケモン全ての音を感じ取れるという素晴らしい不思議玉だ。
決して第六感を最大限まで引き上げるとかじゃないので注意しよう。

「よし……これで、敵の位置が……見えた!!」

正確に言うと聞こえた、が正しいのだがそこは突っ込まないで貰いたい。

「“暴雷”!!」

暴れ狂う雷を込めた雷球は斜め前の方向へ向かっていき、見事ゾロアというポケモンに当たった。
因みにこれは雷球が二つある、しかもさっき自分で森林破壊をしない為に“暴雷”は奥の手として使うと言ったばかりなのに確実に敵を倒す事しか考えていなかった。
その為木々は薙ぎ払われ……一本の樹木が倒れてきた。

「ふぅ、これで……って、え? 影が段々大きくなっていく?」

ラルドが気付いたときにはもう遅く、寸前まで近づいていた。
「げっ」と声を上げた瞬間、木はラルド達を押しつぶ――さなかった。

「“エナジーボール”」

自然の命を集め、造った球状のエネルギーは一直線に向かっていき、木を吹き飛ばす。その威力はフィリアに勝るとも劣らない。
何故? それは――

「ら、ラルド!?」

「それに……シェイミがもう一人だって!?」

「はぁ、観光客が迷子になるのはありますが……何故あなたまで迷子になってるんですか、シーア?」

――その者、自然と共存する者だから。



次回「幼い心で決意を」

■筆者メッセージ
何というか、地の文がいつもと比べて多い気がします。ラルドは一人だと考える子なんでしょう、多分。

次回「幼い心で決意を」お楽しみに?
ものずき ( 2013/01/27(日) 14:22 )