第五話 ギルド卒業! 新たな拠点
ギルド卒業もで悪の大魔王と出会い、最後に白けた物の、無事試験をクリアすることが出来て――?
〜☆〜
あれから数時間後、“神秘の森”から“プクリンのギルド”に移動した俺達。
とりあえず途中、ヒメやヘスから別れ際に祝福されたが、悪の大魔王の件に関してどういう反応をするかの方が俺的には気になった。
そして――。
「エンジェル、卒業おめでとー!!」
わーわー、ぱちぱちぱち!
辺りで拍手やら声が上がる、でも、それよりもどうやって誤魔化すかの方が気になってしょうがない。でも嬉しい事には嬉しい。
「悪の大魔王も倒した事だし、これでいう事はないよね」
「……? 何でプリルが、私達が悪の大魔王を倒した事、知ってるの」
「「「「!!!」」」」
「……いや、なんとなく、かな?」
「そ、そそ、そうだ! 親方様はお前たちを信じての一言で……」
絶対に違うだろ、寧ろ分かってたら凄い。
「ねぇ、あの大魔王とその子分達って……プリル達だよね?」
『!?』
…………。
暫く沈黙が続き、プリル達は固まっている。正直、余程の馬鹿じゃない限り分かると思う……。
「答えてよ、どうなの? 違うの?」
「いい、いや、あれは私達じゃない。似ているが私達じゃないぞ!」
「そういえば、あのペラップ、ペルーと口調その他もろもろ似ていたような……」
「も、もういいだろう!? お前達は無事、最難関ギルドの卒業試験をクリア!これでいいだろう!!」
「「「うわぁ……」」」
いやいや、絶対に納得できない。というか怪しさを促進させてるよな、な?
って、シルガ。棒読みはやめろ。
「むぅ……まぁ、いいや。皆、もう行こっか♪」
「お、ご機嫌だな。念願のギルド卒業の夢を叶えたからか?」
「うん!」
「元は入る事自体が夢だった奴が……」
「さ、行こー!!」
久々だな、ミルの無視≪スルー≫スキルの発動。
「出発進行ー」
「その前に、ギルドにおいた荷物を取っておこうか」
あ、忘れてた。
――パッチールのカフェ――
ふぅ、カフェで暇つぶしっていうのは楽だな。正直、これからの拠点もギルドでの生活に慣れたから、慣れないかもしれないな。
旅行にいっている感じ?
「それにしても賑やかだな、パッチールのカフェって言うのは」
「カフェというものは言い換えれば暇人の集まり場だからな、大体がそうだろう」
「お前は……相変わらずそういう事しか言えないんだな」
……こいつを好きにはなれないな、俺。
でも、人間の時ってこいつと俺はどんな関係だったんだろう、レインとは親しいし、俺とも親しかったのか?
……もしかして兄弟だったりとか、いや無いな。
因みに今は黄色グミで作ったドリンクに橙グミで作ったドリンクをそれぞれ飲んでいる。グミの貯蔵は十分だが、ガルーラの倉庫で腐らないのか?
「でも、前に来たときより多いぞ……何かあるのか?」
「自分で調べる事だ」
「分かってるよ……すいません」
「おや、なんだい?」
俺が話しかけたのは“バリヤード”というポケモンだ、パントマイムをしているイメージが強い。
ここの常連なのか、前にも見かけた気がする。
「あの、今日は人が多い気がするんだが……」
「ああ、これは皆、近々発表されるって言う情報を待ちに待っているのさ。僕もその一人でね」
情報、か。探検隊を雇ってリサイクルで設けた道具で宝や新たなダンジョンを見つけるっていうやつで、珍しい物を見つけたんだろうな……俺も見に行ってみようかな。
それよりもまず、拠点を探さないとな。新しい拠点を買うか、しかない気もするけどな。
因みにPはギルドから卒業祝い金である、一万Pを貰ったので大丈夫だ。
「ありがとうございました」
「いやいや、どうということないよ」
そういうと、カフェから出て行った。やはり飽きたのだろうか、俺はそうでもないが……近い将来、新しい店が出来てたりしてな。
「それで、あの緑蛇と耳長兎はまだ来ないのか?」
「お前、絶対に人間の時は嫌われてただろ……レインや俺やリードだけだったんじゃないのか? 周りに居たの」
「誰のせいだ」
「あ、ごめん……って、え? 俺のせいなの?」
いやまぁ、“僕”の性格を詳しく知らないから良く分からないが、何かあるのか……極度の人見知りとか、実は凄い秘密を隠し持って居たりとか。
「馬鹿か……」
「その言葉、撤回しろ!!」
「断る。決定事項だ、仕方ない」
「ふざけるなぁ!!」
「ちょっと二人とも、五月蝿いよ」
「しかも公共の場で、少しは弁えたほうがいいよ」
や、やっと来た、ミルとフィリア。訊いてくれよ、こいつが……。
「大声出してる君の方が悪い」
「シルガは迷惑かけてないもんね」
「お前達もかよ……」
ああ神よ、俺の味方はどこにいるんだ!
「そんな事より、遅れてすまないね。拠点を整備していたら時間がかかってしまって」
「整備? そんな早く見つかったのか、で、どこだ?」
「ふふふ、訊いて驚かないでね。実は――」
〜☆〜
「――で、前に少しだけ居た隠れ家へと来た訳か」
隠れ家――実際はミルの元家だが――は色々と整備されていて、時間がかかったのも頷けるように綺麗だ。
思えば湧き水もあり、しかも真水、藁のベッドもあって風通し抜群。雨の日も余程横に吹かなければ角度やら位置関係で濡れない……正に絶好の隠れ家。
「隠れ家じゃないよ! ちゃんと表に看板も立てたし、これからは探検隊エンジェルの拠点だよ!」
「でも食べ物はどうするんだ? あんな赤字ギルドでも隠れた場所にキッチンはあったぞ」
そう、俺達が来たときは赤字で予算オーバーなギルドだったが食堂の隠れた場所にキッチンはあったのだ。
でも、ここには当然だがない。つまりミルはいつも木の実や林檎しか食べていなかったと言う事だ。
「ふふふ……伊達に私達、英雄とは呼ばれてないよ」
「お、何か策があるのか」
「ショウさんに頼んで、中央都市に注文してもらったんだ! これでポフィンの練習も……」
「ポフィン?」
――一種のお菓子で、木の実を溶かして混ぜて、丸めて形作って固めたら出来上がり。木の実毎に味が変わったり、滑らかさなど……作った人の技術が試されるわね。ちなみにポロックというのもあったり――
……どうもご丁寧に説明ありがとうございました、で、そんなのあるのか?
「二年前に人間が生きていた時代の跡から、ポフィンのレシピらしきものが見つかったらしいんだ。それで好評になって……辛い味、甘い味、渋い味、酸っぱい味、苦い味、まろやかな味……と、本当に多種多様だね」
「私、前に作ったときは焦げちゃったよ……」
「へぇ、木の実を溶かして形作るか……シルガ、お前は食べた事あるか?」
「人間の時、酸っぱいポフィンを嫌というほど食べさせられた」
「へぇ、災難だったな」
「因みに、試食時に逃げた時には地獄を見た」
「何があった!?」
あいつが酸っぱい物が好みなのは新たな事実として……うわぁ、俺はどうなってたんだ? 訊けば訊くほど嫌な予感しか……。
「因みにお前は三日間寝込んだ」
「どれだけ食べさせられたし!!」
ポフィン、恐るべし!
「……で、いつ届くんだ?」
「予定では一週間後だって。中央都市も大変だからね、新技術の集合地と言ってもいいから、注文が絶えず来てるらしいよ」
一週間後……それでも早い方なのか、凄く気になる……といえば、中央都市ってなんだ?
「なぁ、中央都市ってなんなんだ? 凄い気になってたんだが」
「言わば、“最新技術の集う町”だね。有名な技術者が結集して、もの凄く発展してるらしいよ。それでも人間にはまだまだらしいけど」
「……ポケモンを掌サイズのボールに閉じ込め、命令を訊くようにするボールが当たり前のようにあった時代だからな、昔は」
掌サイズのボールにポケモンを閉じ込めて、命令を訊くようにするボール!? そんな悪魔の兵器があったのか、知らなかった。
「詳しく聞かせてくれないかい?」
「いや、俺が人間の時には既に過去の物となっていた。大方ポケモン共に破壊されたんだろうな」
「お前も今はポケモンだぞ」
それにしても怖いな、そんなのが市販されてたなんて、俺だったら絶対に捕まらないために人間を攻撃するけど。
やっぱり、人間からしたらこういう風にポケモンが喋ってるのは異常だよな、声が聞こえない限りは。
「だが今の世界の方が平和だろう、争いも殆どない、ダンジョンを除いたら“平和”そのもの……未来世界からしてみれば、雲泥の差だ」
「そういや食べ物ってどうしてたんだ?」
「林檎調達、人間が生存していた村は木の実もあることにはあった。……それから先は言えないがな」
「やっぱり、時が止まった世界は分からないね……でも、そんな世界も存在しなくなったし、良かったね」
「ああ、良かった」
未来世界か、新しい拠点で話す事じゃないだろうけど、大事な事だしな。
それにしても、本当に俺達を襲ったのって嵐だったんだろうか……思い出してみれば、時空に干渉できる嵐ってないよな……一体、どんな嵐だったんだろうか。
その後、新しい拠点でこれまでの事について話し合い、盛り上って夜まで話したのは言うまでもない――。
次回「空の頂き」