ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜黒と白の12の翼〜







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第一章 帰ってきた救世主
第三話 卒業試験は集団で?
突如告げられた卒業試験を受ける資格、最難関ギルドの試験をエンジェルはどう突破する――?





〜☆〜

……長い。
長い長い長い長い!!
今、俺達は“神秘の森”へ行く道を通っているのだが……長い、長すぎる!
途中に大規模の川があって、大きく迂回する事になったり、何故だかスピアーの集団に襲われたり……ダンジョンに着かないのに大きく体力を消費した。

「ま、まだ着かないのか?」

「体力貧弱鼠は黙っていろ」

「一々、お前達が俺をことあるごとに最前線に突き出すから……」

ここまで来るのにダンジョンではない普通の森を通ったり、普通の崖を上らされたり……最短ルートの道の前にいつも看板やらがあるので、何者かの悪意しか感じ取れない。

「で、今はどこなんだ?」

「今は……喜んでいいよ、もうすぐ“神秘の森”だ」

「ほ、本当!?」

よ、良かった……そいえば、シルガは一晩で山を二つ越える。とかいう種族だから体力もあるだろうが、フィリアはなんで息切れしてないんだ?
謎は深まるばかり……あ、そういう内に見えてきた。

「ふん、貧弱鼠にこの道は険しすぎたか?」

「解放も使ってない状態で、種族の壁と言う物があるんだよ。雑魚犬」

……“暴雷”を真正面から撃ちたいんだが、撃っていいか? いいよな?

「だめに決まっているじゃないか、こんな所でピーピーマックス使わせる気かい?」

「そうだよ、少なくとも森の前まで我慢しなきゃ」

「“高速移動”ッ!!」

「あ、走ってった……私も行こっと」

「あ、ミル!」

「……日が照っているから、今の奴には好都合か。“神速”」

一人は“高速移動”、一人は“電光石火”、一人は日差しが強いので素で電光石火並み、そして一人は不完全“神速”……これで直に着けない筈は無く、一分後――。





〜☆〜

……ここが、“神秘の森”か。
今、俺達は目標地点に着き、少し羽を休めていた。と言っても、オレンの実を齧り、ピーピーマックスなどを飲んだりして後は雑談が殆どだが……。

「ふん、お前達は体力が無いのか? それでよくディアルガを倒せたな」

「二人と君を比べないで欲しいよ」

「そういうフィリアも、体力の回復が早いじゃん……」

「確か、ツタージャってポケモンは日差しが強い時にはスピードが上がって、疲れてるときは光合成を……」

「正解、良く知ってるねラルド」

「前に見た……」

寧ろ今まで知らなかった事に驚きだ、これだから馬鹿は困る。

「馬鹿馬鹿五月蝿いんだよ!!」

「声に出てたか、気にするな」

「気にするんだよ!!」

休憩中で、しかも卒業試験だと言うのに、この電気鼠は……。

「聞こえてるぞ?」

「これは流石に正論だ」

「右に同じく」

「本当は右じゃなくて、フィリアの左に居るんだけどね」

……卒業試験前にこんなテンションの探検隊など、この探検隊だけだろう。
……未来世界では、ありえなかったな。

「おい、何黙って考え事してるんだよ」

「……あ、ああ。すまん」

「へぇ、お前が素直に謝るなんて珍しいな」

最初の頃は平和すぎて反吐が出そうだったな、その点、こいつは楽をしている。
……正直、そこら中に木の実が生っている事でも信じがたい光景だった。同時に決意もしたな……。

「おーい、シルガさーん? そろそろ行こうと思うのですがー?」

「黙れ」

「……泣いていい?」

「知らん」

……世界も守られた、これでいい。いいはずだ。

「あの時、俺を襲った黒い影以外はな……」

「おーい、早く行くぞ! 本当に早く来てくれないとフィリアとミルに殺される」

「……分かった」

「ああ、早く来い……って、お前! 何“神速”使ってんだよ!!」

「二人に報告しておく、呼びに来た当の本人が遅すぎるとな」

「ふざけるなぁ!!」

今は幸せだ、俺は少なくとも幸せだ。
それで――いい。





〜☆〜

ここは――“神秘の森”。
中は自然そのままが残ったと言う感じで、緑が多く、空気もおいしい。
正に木や草に適した環境であり、草タイプポケモンにも適しているためにここでは草ポケモンを多く見る。
草ポケモンである僕が言っているんだから、間違いは無い。

「森が長い……」

「当たり前じゃないか、君は何を言ってるんだい?」

当たり前、というかここは十三階もある。
まだ六階だと言うのに、ここでリタイアなんてどれだけ貧弱なんだと言われかねない。

「さっきから草タイプばっかりだぜ? 高レベルの奴は十万ボルト二回でしか倒れないし、ドダイトスなんて出てきて……アイアンテールで倒すのも苦労するんだぞ」

「知らないよ」

「俺はブレイズキックが使えるのでな、苦戦はしない」

「じゃあお前が先頭になれよ!!」

「ねぇ、さっきから私は無視なの?」

シルガの攻撃力と弱点特攻の“ブレイズキック”。
ミルの適応力とタイプ一致の“突進”。
正直、二人で僕達を守る様にして立ち回ったほうが早いんじゃないかな?

「ミルの体当たりで体力を減らした後に攻撃、でいいと思うよ」

「それだとお前とシルガが楽するだろ?」

「そんなの不公平だよ!」

「誰か一人でも体力温存しておいた方が有利だろう」

正論だね、まぁラルド達の意見も分からなくないけど。

「じゃあ俺達は試験中に何かあった時、エネルギー切れ、体力ゼロとかだったらどうするんだよ!」

「そこまで戦え、というか回復するなとは言ってないよ」

回復縛りなんて馬鹿げてるよ、もっと命を大事にしないと。
探検は命がけなんだし……。

「……お出ましだ」

「は、何が……え゛」

「まさか、ドダイトス三匹!?」

これは……大変だね、速やかに対処しないと。
逃げる? 無理だよ、ベイリーフやフシギソウが後ろに居る。

「ベイリーフ、フシギソウ、共に防御には優れていて、ベイリーフは体力も高い。両方、蔓の鞭やはっぱカッターに注意」

「この非常事態に分析なんかするな!!」

「まぁまぁ、とりあえず……“シャドーボール”!!」

「僕も……“エナジーボール”」

僕が狙うはドダイトスだ、このポケモンには地面タイプも入っているから草技は一応効く。証拠? そんなの知らないよ。
後ろの二匹の草ポケモンは……“ブレイズキック”甚振られているって事は確かだね。

「じゃ、こいつらは俺に任せてもらおうか」

「ちょ、ちょっと! ドダイトス相手だよ!? しかも三匹!!」

「大丈夫、残り一匹はお前たちが手を加えたお陰で直に倒れそうだし。それに……」

草、地面。どれも電気タイプに相性があわないって言うのに、どうやって……。

「――最近、拳だけの勝負をやってないしな」

瞬間、ラルドが消える。
いや……違う、事前に“高速移動”で高めた速度を更に高め、電気を使って信じられない速度で移動したのだ。

「痛い痛い!!」

あまりの衝撃に、ラルドの体が悲鳴を上げているのが唯一の欠点だが。

「この野郎……お返しだ!!」

「なんのお返し!?」

ギャグ感満載だが威力は本物らしく、二匹のドダイトスを“吹き飛ばす”。
当然と言えば当然だが、腕には相当な衝撃がかかるらしく……残る一匹のドダイトスを前に、悶絶していた。

「くそっ……ミル、フィリア、後は頼む……」

「言われなくても――“突進”!」

「“リーフブレード”!」

ミルの“突進”と僕の“リーフブレード”が交互にあたる、流石に二連続は無理だったのか、倒れる。
と、これまでで三分程度だ、やはり僕達も成長してるんだね。

「……俺より遅いくせに」

「君は草タイプに有効な炎技を使ったからだろう? そんな事よりも、あそこで悶絶してる電気鼠をどうにかしてくれないかな?」

「遂にフィリアまで俺のことを電気鼠と言い始めた!」

「だ、大丈夫だよ! ラルドが居ない所だったらフィリア、いつも電気鼠って言ってるから!」

「余計嫌だ……!!」

……さて、茶番はここまでにして。

「本気で行かないと夕方まで手こずる事になるよ」

「またまた、フィリアは言いすぎだよ」

「ここ森だからな、日光もそんなに当たらないし、三時になったら結構暗くなるんじゃないか?」

「冬が近づいている、五時には真っ暗だろう」

「……さ、早く行こうね!!」

ミルがこの寒い中、汗を流して足と体を震わせていたのは見なかったことにしておこう。

その後も、僕達は順調に進んでいく。
本当に気をつけなきゃいけないのは、フシギソウ、ベイリーフ、ハヤシガメ、ドダイトス、スカタンクにフライゴンだけど……その内四匹は“深緑”という特性もちで下手に攻撃できない。スカタンクは倒されると自爆する特性“誘爆”、フライゴンは高い能力値。
と、下調べはしてきたけど、頑張れば何とかなった。
それでも尚、ダンジョンは手ごわくて、ウツドンの群れに襲われて溶かされかけた事もあった。

そして――数十分後。



〜☆〜



ここは……神秘の森の奥地、の一歩手前。
どうやらこの奥に“光の泉”という泉があり、今では不可能だけど昔は進化がそこで出来たらしい。
今回はその泉が目的地みたいだけど、神秘の森奥地、みたいな感じでいいと思う。

「……ん? ヒメにヘスじゃないか、あそこにいるの」

「本当だ……おーい、ヒメ、ヘス!!」

「お、エンジェルか。お前達も来てたのか」

「こんにちは、まさかここで合流するなんてね」

この二人は、ヒメにヘスだったっけ。
僕もまだ交流を深めてないから良く知らないけど、ヒメは確か早く進化したいとか言ってたと記憶している。
……女の子なのに、ヘスみたいになってまで進化したいのかな。

「で、これから“光の泉”へ行くの?」

「……そこにある宝を取ってこいと、言われたからな」

「じゃあ一緒に行こうぜ! そっちの方がいいだろ」

「賛成、じゃあ行こうか」

話し相手が少ないより、多いほうがいいからね。
この二人も人前では喧嘩しないだろう、多分……。

「行きましょうか……あら、なにこれ」

「おー、地面が盛り上がってる?」

「時の影響だろうな……避けていこうか」

二人は慣れたように進んでいく、それはそうだ。道を知っているのだから。
……あの二人もダンジョンを潜ってきたのか、だとしたら凄い強いという事じゃないか。

「私は楽しそうだから、真ん中を通るよ!」

「ちょっと待て、罠だったらどうするんだ!?」

「そうだよ、落ち着いてミル!」

「……面倒だ」

僕とラルドでミルを引き止める……我侭な子供のおねだりは凄い、直に振り切ってしまった。

「へへん! 最初からこうすればよか――」

「罠だったらどうする――」

「帰ってくるんだ、ミ――」

「……!」

突如、穴が開く。
これは……誰かが故意で作った、“落とし穴”!

「「うわあああぁぁぁ!!?」」

「きゃああああぁぁぁ!!?」

「……着地は真空波でいいか」

一人、冷静だけど……そんな冷静な対応は出来ない!
そんな事を思いつつ、どんどんどんどん、落ちていく――。





〜☆〜

ヒュー……。
自分がどんどん落ちていく音が聞こえる、どうやら穴も塞がっているようで真っ暗だ。
それでも少しは光が入ってくる、そして……恐らく、地面も近い!

「どうやって着地しろって言うんだよ!!」

「ほら、技で……」

「遠かったらダメだし、近くても止まらないよ!?」

「……波動で分かる」

畜生、どうすれば……。
思わずバッグに手が伸びる、何か無いかと探ってみる。じゃないと本気で死ねる!

「そうだ……皆、耳を塞げ!」

「なにをするつもりー!?」

「それは……これだッ!!」

俺が両手である物を全て持つと、下に向かって投げつける。
そして――

「炸裂しろッ!」

――炸裂し、衝撃波を生み、更に多大な音を生む。

「ひゃぁっ!?」

「こ、これはッ?」

「爆裂の種、か」

そう、爆裂の種。
バッグの中には目くらまし、万が一の時の爆風で回避用、攻撃用……それぞれ四、四、八のつもりだったけど、まさか全て使うとは思わなかった。

「……真っ暗だな、光の球は使えるか?」

「試してみる……ダメだ、ここでは不思議玉の効果がかき消されるよ」

「フラッシュは?」

「無理だ、何故かフラッシュを使おうとするともれなく全方位“十万ボルト”も付いてくる」

強烈な電撃で光を放つ技だけど、俺の場合は強力すぎるんだよ。
こんな時に役に立つ技だとは……今まで「まぁいいか」状態だったしな。

『ふふふ……』

「「「「!?」」」」

なんだ、今の声……どこかで聞いたことがあるような、無いような。

『ようこそ、悪の大魔王の砦へ』

「! あ、悪の……大魔王ッ!?」

『ここに来たからには容赦しないよ、それっ!』

瞬間、俺の横に何かが通り過ぎる。
それは……一つの葉っぱだった、恐らく“葉っぱカッター”だろう。

だが、一体誰だ? これだけの罠、時の影響がまだ残っていて、あれからずっと狂ったままのダンジョンポケモンでは無理な芸当だ。
ならば、身を潜め警察から逃げているお尋ね者? いや、今の攻撃は殺す気は無かったし、ここまで穴を掘るなんてないだろう、自然のものの可能性もあるが。

「誰だ、姿を見せないと“暴雷”を三連で放つぞ!!」

「ちょ、ちょっとラルド! 生き埋めになっちゃうよ!」

「それ以前にまず、僕達に当たる可能性が!」

……そうか、生き埋めは絶対にないだろうが、味方に当たる可能性がある。それだけは避けたい。

「どうすれば……!」

と、その時!

――ゴゴゴゴ……。

「! この音は……うわっ、眩しっ!?」

「光が……蓋が外れたのかい?」

「一体誰が……」

「ほう、成る程。波動だけでは確信できなかったが、やはりそうか」

ん、ちょっと待て。
波動だけでは確信できなかった?

「シルガ、お前波動が……!」

「気にするな、それより」

「え、え? なんで……」

「何が何で? なんだ……よ」

俺は自信の目を疑った。いや、疑うだろうな普通。
だって、そこに居たのは――ビーグを除いた、プリルギルドメンバー&親方もいるよ! だったのだから。

「ぷ、プリル? それに皆も、どうしたの?」

「本当だよ、ドッキリのつもりなのかい?」

『…………』

九人全員が黙る、九人って中途半端だよな……ビーグは呼ばれなかったのか。

「……ふ、ふふふ。何を言っているんだい? 僕は悪の大魔王、神秘の森を巣食う大魔王だよ!」

「え?」

「そ、そうだ! 私達は親方……悪の大魔王様の側近!」

「いや親方って言ってるぞ、ネタバレはだめだぞー」

ペルーは演技とか下手だな……とにかく。

「おーい、残り七人はどうなんだ?」

因みに長いから省略するが、それぞれ子分だといっていた。流石ペルー、伊達に副親方やってないな。
裏では側近争奪戦とかあったんだろうな……微笑ましいな。

「とにかく! 僕達の罠にかかった以上、君達に試験を受けさせるわけにはいかない」

(なんで試験の事を知ってるんだ、なんて言ったらだめだな……しかもフィリアと口調似てるし))

「大魔王様の“側近”である私と七人の子分、簡単にやれると思うなよ!」

『……そうだそうだ!!』

今の間でペルーを睨んでいたのは無視しよう。ペルーもペルーで側近の部分をやけに強調してるのは自業自得だよな。

「ふふふふ、悪の大魔王の恐ろしさ、味わえぇ! たああぁぁーーー!!!」

そして、四対九の、英雄探検隊“エンジェル”と世界一有名なギルド“プクリンのギルド”――その対決が、始まろうとしていた。

「これって、初めの頃の脱走したらお仕置きだ! の正当版じゃ……」

一人、なにやら呟いているが気にしない。



次回「試験終了!」

ものずき ( 2013/01/12(土) 11:51 )