ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜黒と白の12の翼〜







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第一章 帰ってきた救世主
第十四話 空の頂き〜汚との頂上決戦!〜
遂に頂上へとたどりつき、グラスに勝利した俺たち。探検隊フロンティアも到着した中、ベトベターとベトベトンの軍団に囲まれて――?





〜☆〜

先手必勝、俺はベトベターをまず先に倒す事にした。
こいつらは素早さが低く、余程の者でない限りまず負けないだろう。そして次に、ベトベトンの体を流れ落ちる毒は強力だが、ベトベターの方は触れても問題ない。というかベトベトンの方も触れたら必ず猛毒になる、と言うわけではない。
そもそも生態知識での情報らしいので、特性で毒になるとかもない。

「じゃ、まずはベトベターから倒すか。どんな戦いでも手下や雑魚から倒すのが――セオリーだからな!!」

「ベタアァ!!」

フロンティアで二匹、女性陣(シェイミは無性別だよ!)も二匹、俺達男性陣は……一匹。

「シルガ、邪魔だけはするなよ」

「その言葉、そのまま返してやろう」

「じゃあこっちは、包装紙で包んで綺麗にラッピングして手紙も添えて返してやるよ」

「ならば、こちらはあのベトベターと共に送り返してやろうか?」

「どんな罰ゲームなんだよ!?」

「ベタァッ!!」

無視して二人で話していた事にイラついたのか、ベトベターがいきなり“ヘドロ爆弾”を放ってくる。
放たれた紫色の汚物――爆弾を避け、俺達は素早くベトベターに向かっていく。

「いきなり攻撃なんて、酷いことするじゃねぇか!」

「ベタァ!!」

まずは右側面からの“雷パンチ”、威力は低いがその分的確に急所を狙う。
嘘です、偶然急所に当たっただけで俺自身雷パンチが好きなだけなんです。

「……その意見には賛同しかねるが、俺の集中を妨げた事、万死に値する」

集中を妨げたって……俺の話しに集中していたとでも言うつもりか? 絶対に今かんがえただろ、それ。

「ベタアアァ!?」

次の瞬間、左側面からの“ブレイズキック”。
燃え盛る脚で突くようにして蹴った為、当然ベトベターは俺に向かってくるわけで……は? 俺に?

「ちょ、お前――へぶっ!?」

ここで一つ、ベトベターは俺より大きい。
つまり……どういうことか、分かるか?

「重い……臭い……ベトベトする……」

「絶えろ」

「それ絶対に違う意味だろ!?」

「べ、ベタァ!!」

又もや戦闘中に突っ込みをした俺に苛立ちを感じたのか、力を入れてさらに自身を重くするベトベター。
これ以上重くなるとか、罰ゲームは勘弁してください……本当に。

「畜生が……“十万ボルト”!!」

「ベタアアアァァァ!!」

「……零距離からの十万ボルトか。罰ゲームはどちらだ」

シルガ、手前……人の心を波導で裏技するなとあれほど要ったばかり……。

「? 何か言ったか」

「手前!! 聞いてない振りしてるな!?」

「ちっ、見破られたか」

「当たり前だ……ん?」

あれ? 今度は滅茶苦茶体が軽くなったような……。

「なるほど、“小さくなる”か」

「なっ!? ……じゃあ、どこにいるか分からないぞ!」

「安心しろ。この程度、直に“見破って”くれる……そこか」

シルガは右手に波動弾を作り出すと、放つ場所に眼もくれず……俺の体へと放った。

「へっ? ちょっ……ぎゃあぁッ!!!!」

流石に俺もこれには予想もできず、反応なんて夢の又夢。なすがままに吹き飛ばされる。
当然、防御が低いピカチュウの俺にはダメージが高い、この分のダメージを回復するためにオレンの実を食べると残り一個になってしまう。

「し、シルガ……いきなりなにするんだよ!?」

「お前の体に付いていたのでな。憂さ晴らし……基、日頃の鬱憤をこめて」

「ほとんど変わらないからな!?」

全く……俺はか弱いからな、もっと丁寧に扱ってくれなきゃ困るぜ?

「お前は何を言っているんだ」

「お、こいつに話しかける時って別に言葉にださなくてもいいんじゃないか?」

実際、波導はいつでも感知している訳はなく、そんな事していたら今頃こいつは波動弾を連続で五十発くらい打てるようになっているだろう。
そんな事したら、多分どんなポケモンでも大ダメージだろうけどな。

「さて、と。皆ももう終わってるよな?」

「ああ、もう五匹すべて倒れている」

「よし……」

確認のため、横目で見てみると確かにベトベターが倒れていた。
フロンティアもまだまだ余裕そうだし、女子軍も相性が悪かったが数でそれを克服しており、難なく倒していた。

「じゃ、残りのベトベトンさん達。俺たちの為に倒れてもらうぜ!!」

『ベトオォッ!!!』

両手を上げ、威圧感で俺達を怯ませようとする。
若干、ホラーにも見えなくもなかったが、それ以上に闘争心が勝っていた。

「久しぶりに、ガチバトルができるんだ……ワクワクするしかねぇぜ!」

「……馬鹿か」

さぁ、行くぜ。五対八の、若干卑怯な戦いを――。

「――残念」

? 今、誰か何か……。

「あれ? 雪が降ってきたよ」

「そんなまさか、この時期ならば雪なんて……」

「……いえ、ここ最近、確かに雪が降るという現象が起きています……が、ここは雲の上のはず……」

……忘れていた。
失念していた、馬鹿だ俺。何の為に情報収集をしていた? 危険を危険じゃなくするためだろう?
雲の上に雪、有り得ない。自然だったら有り得ない。
ならば何か? 答えは簡単、人工だ。

「雪……違う、これは――“霰”!」

それに、これは霰。雪じゃあない。
ならば人工でも振らせられる、何故か? それは――

「卑怯な戦いなんて、させてあげるわけないでしょ?」

――技、だからだ。

「「「「!!」」」」

「グレイシア?」

今、俺達の横の段差の上にいるのは……グレイシアというポケモンだ。
しかも見たことがある。確か……パッチールのカフェでだ。
グレイシアの……。

「あなた達には悪いけど、これも命令なのよね」

「何がだ?」

「あら、この状況でも冷静ねリオルさん。ちょっと好みかも」

「失笑、断る」

「無口ね……ま、どうでもいいけど」

恐らく、これは天候を変える技“霰”だ。
だが雲は下にあり、上にはない。ならばどうやって霰を降らせる?

「……自分の冷気だけで、創り出した」

「そうよ。この霰は私が自分の冷気だけで創り出した物。しかも常時放出よ、どう? 疲れると思わない?」

「そんな事はどうでもいいんだ」

「貴様、誰だ?」

これで、こいつの目的や名前だけでも聞けたのならそこから……。

「教えると思う?」

……無理だったようだ。

「いいや、言いにくい事は分かった」

「ふぅん。じゃ、後はがんばってね……七人対五匹でね」

「!?」

そう呟くとともに、フロンティアとベトベトン二匹、女子軍にベトベトン二匹、シルガ一人にベトベトン一匹となるように……氷のドームで包まれる。
大きさは山頂の三分の二を占めており、俺は……外に居た。

「……どういうことか、聞かせてもらうぞ」

「どんな事?」

「今、お前がした事だよ!!!!」

そう叫ぶとともに、俺は電光石火の如く速さでグレイシアに向かっていく。右手に雷を宿し、もう一方の手には精一杯の力を、“メガトンパンチ”だ。

「そう怒らないでくれる? ……“止刺氷柱”」

「!」

グレイシアが技名を言った瞬間、俺の足元から尖った氷柱が四本現れる。
俺はそれを避けるも、避けた体勢のまま氷柱が俺の動きを制限して動けなくなる。一体何故、こんなにも的確に俺の動きを止められたのか、それだけで俺の頭の中は瞬く間に一杯になる。

「へぇ、避けちゃったか。まぁいいわ。教えてあげましょう、私が態々ここまで出向いた理由」

「教えてもらわなきゃ、お前を今すぐぶっ飛ばすぞ」

「動けないのにどうやって?」

「……」

「ああ、解放があったんだっけ」

解放をしっているのに、解放に驚きもせず、勿論恐れも無さそうだ。
何故だ……全体の100%を使える解放、普通のポケモンになら苦戦はしても負けることはない。

「じゃ、お望みどおりにやってやるよ!!」

体全体から翡翠色のオーラを出し、同時に眼も翡翠色に変わる。氷もそうなると同時に割れてしまい、これでラルドは解放状態となった。

「ふふっ。敵に言われた事をするなんて、あなた馬鹿?」

「いいや? ただ……時期が重なっただけさ!」

と、同時にスタートダッシュ。解放をしているので物凄く、残像が見える程速い。
“電光石火”も加えているので、また、更に速くなる。普通のポケモンになら避けられないだろう。

「……ま、いいわ。解放状態にはなったわね」

「……?」

丁度、俺のパンチが顔面を捉えた瞬間だった。

「何を――」

「これが、私達の力よ」

――グレイシアの、顔面に触れた。瞬間。

拳が何かにより弾かれ、追撃するかのように氷塊が俺の腹を貫く。

「がっ……」

「甘くみないでもらえるかしら? 解放だけで」

「な……にが」

完全に不意打ちだった。
あたると思っていたものが完璧に弾かれ、そこに氷塊をぶつけられる。完璧、完全に予想外すぎた。

そして、グレイシアの方も。

「!?」

「あら、バレちゃったかしら?」

「お前……その、オーラ――何故、真っ黒なんだ!?」

「……ここまで来るのに見た、黒い水晶。覚えてる?」

「黒……まさか、黒と紫の、あの?」

「そ……あの水晶をその層で一番強いであろう敵に埋め込む。その影響を受けて他の敵も強くなる……これが、あれの正体」

……成る程。
確かにそれなら強い敵が必ず居たのもうなずける、勿論基準は他の敵たちだ。
だが何故、そんな事をする必要があるのか?

「あ、なんでそんな事するんだ。みたいな顔してるわね?」

「ちっ……それがどうした!?」

「熱いのは嫌いなんだけど、教えてあげる。この水晶の影響はどの大きさで、どの程度受けるのか……それに、あなた達の実力試しも兼ねてるのよ?」

「俺、達の?」

「そう。例えば……長老にアナタ達の動向を伝えてもらったり。アナタがどんな生活をしているのか、も観察しなきゃならなかったからね。大変だったのよ? 長老を脅すの、時間がかかっちゃって」

脅す……だと?
こいつ、一体何の為にそんな事……!!

「実験の為よ。そのお陰で、少量の水晶でこんな力を出せるようにもなって、データも得られたのよ?」

「ふざけんなッ!! 手前の利益の為に、他の奴を利用すんじゃねぇ!!」

「でも、誰も損はしてないわよね?」

「……したよ。誰も損してなきゃ、俺達は昨日“エンジェル”として行くて予定だった」

そうだ、俺がワープスイッチを踏んでなけりゃ。
踏んでいても、シーアとグラスに口出ししなけりゃ。
俺は、今ここにはいなかった。

「お前は絶対に倒すぞ!」

「やってみる? ……“吹雪”」

グレイシアは息を大きく吸い込むと、俺を吹き飛ばすくらいの大きな風と共に雪を出すという、氷タイプでも上位クラスの技“吹雪”を繰り出す。
俺はそれを“電撃連波”でギリギリ相殺すると、速攻で行く。

「ふーん、実力は一応あるんだ」

「当たり前だ……!」

再び電光石火の速さで向かっていき、右手にありったけの電気を込める。

「“雷電パンチ”!!」

「“大氷壁”」

グレイシアはそれを、目の前に大きな氷の壁を張って防御しようとする――が、俺はそんなのだけでは止まらない。

「こんなので俺が……止まると思うなァッ!!!」

「! でも氷壁を破っても、威力は落ちる」

「俺は体術だけじゃないぜ!」

氷壁を打ち破ると、今度は左手に電気を込めて――

「さっきのパンチよりは威力が少し落ちるが、食らえ……“十万ボルト”!」

「きゃあああぁぁぁッ!!?」

――放つ。

どうやら防御はとっていなかったらしく、ダメージもそれなりに通っているらしい。だが霰のせいでグレイシアに当てにくく、威力も落ちている思う。

「……やったわね」

「勝負なんだから、当たり前だろ」

「ふふっ……“冷凍ビーム”」

「!?」

口に冷気の固まりを作り出し、光線状に打ち出す技“冷凍ビーム”をいきなり撃ってくる。
笑顔の後にこれだったので、流石に恐怖した。

「“刺氷柱”からの“氷塊投げ”!」

「“高速移動”!」

こんどは先程とは違い、本気で危なく尖った氷柱が地面から出てくる。それを避けようと高速移動を使うも、その先に氷塊があり、避ける術は無かった。

「くっ……うわぁ!」

「氷塊だけで済む思わないでよ! “氷の息吹”!」

「――危ねぇッ!!」

“氷の息吹”は“凍える風”の強化版と言ってもいいだろう。必ず急所に当たるという、技の威力の低さを急所でカバーしている技と言ってもいい。
それを追撃で撃たれるので、堪らない。

「ふぅ……落ち着いてきたわ」

「最初から落ち着け」

「五月蝿いわ……さて、この技でアンタは私に手出しができなくなる」

「手出しができない? 何を馬鹿な」

「直に分かるわ……行くわよ」

静かに息を吸い、吐く。
そん一連の動作の後、持っている大きな黒い水晶が鈍い色で輝きだして……。

「“永久氷壁”!!」

「!!?」

パキパキパキパキ……。
光により目を閉じなければならない今、耳だけが頼りで……そんな音が聞こえる。
それは恐らく巨大な氷壁が造り出された音で、この寒さもそのせいだろう。

「ぐっ……なんだ、この巨大な壁!」

「壁、というよりはドームだけどね。全方位完璧、これであなたに勝ち目は無くなった」

「! ……そんなもの、壊してやる」

解放、右手の極限までの活性化、最大の電撃。
それらをすべて合わせて、シルガが閉じ込められたであろうドームにギリギリまで近づく。

「行くぞ……最高速!!!」

四足歩行で“電光石火”、“高速移動”、強化された速さ。
更に“超帯電≪ボルテックス≫”まで使い俺の全力への準備はこれで終わりだ。

「うおおおおぉぉぉぉ!!!!」

「さ、あなたの本気を見せて頂戴?」

「うおぉッ!!」

最後は二足で地面を蹴り飛ばし、そして――

「“爆雷パンチ”ィッ!!!」

――思い切り、殴った。



次回「空の頂き〜四つの頂上決戦〜」

ものずき ( 2013/02/22(金) 19:58 )