ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜黒と白の12の翼〜







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第一章 帰ってきた救世主
第十二話 空の頂き〜探検隊の救助活動〜
遂に始まったエンジェル+グラスVSラルド+シーアの決闘。そんな中、何故だかマスキッパ集団と戦う事になって――?





〜☆〜

「――っし! 掛かって来い!!」

「舐めてんじゃねぇぞ!!」

「くたばれやオラァッ!!」

フロンティアの三匹は一体ずつ相手にしている。こいつらも影響を受けて強くなってるかもしれないからな。
え、俺はどうなんだって? まぁ、確かに相性も悪いけどな……。

「シーアは大人しくしとけよ!」

「だ、だから……訊いてくださいでしゅっ!!」

何がだよ……まぁいい。

「いくぞ……“暴雷”!」

「「“パワーウィップ”!!」」

俺が放った二つの雷も、二つの“パワーウィップ”に減速させられて威力が下がる。それでも直撃し、威力は高い方だが……どうだ?

「ッ!!」

暫く煙を見ていると、中から一方のマスキッパが飛び出してくる。口をあけて噛み付こうとする辺り“噛み砕く”だろう。
それをギリギリで避け、下から蹴り上げる。

「うおオッ!?」

「もう一撃!」

そのまま“十万ボルト”を放つと、即座に前を向きなおし――

「! なっ、もう前に!?」

――た時にはもう遅く、真正面からもう一方の“噛み砕く”を受ける羽目となった。

「くっ……“超帯電≪ボルテックス≫”ッ!!」

噛み砕くを受け、只でさえ低い防御が更に下がったのだ。
ならば俺に出来る事はなんだ? 速攻で倒すための攻撃力と、確実に回避できる素早さだろう。

「これで……」

「「グオォッ!!」」

如何にも野生のポケモンって感じの声だ、つまり敵を倒すために理性を消した証拠!
ミルが一度体験したように、幾ら理性があろうと野生は野生。危機が迫るとこうなる。
シーアに被害が及ばない事を願いつつ、俺は攻撃を続ける。

「っと、“ディスチャージ”!!」

「ガァッ!!」

「……そんなに効果はないってことか」

見た限り、直前に“蓄える”をしたようだ。口を開き、エネルギーを口の中に含む動作をしていたからな。
ってことは……。

「グァ!!」

「“吐き出す”か!」

蓄えるを使えば使うほどに威力が上がる技“吐き出す”。これは蓄える状態が一段階目で普通、二段階目で普通の二倍、三段階目は普通の三倍という風に威力が上がっていく……恐ろしい技だ。
因みにこの他にも蓄えれば蓄えるほどに回復量が増えると言う“飲み込む”という技があるが、これもこれで危険だ。

「この……“電撃連波”」

「グオッ!?」

三発の電撃波で吐き出すを完全相殺する。いや、こちらの方が少し威力が高かったようだ。マスキッパが怯んでいる。

「もう一匹は……後ろか!?」

大体の敵は後ろに回りこんで攻撃しようとする。
だがそんなのは元々の本能のみでしか動いた事がない敵ばかり。そんな固定観念に、俺は囚われてしまった。

「いない……まさか」

何かに気付いたかのように、俺は咄嗟に上を見る。いや気付いたのだ、俺を覆う影のせいで。

「上か!?」

「ゴアァツ!!」

向いたときにはもう遅く、先程の“吐き出す”より三倍大きい“吐きだす”を放ってくる。蓄えすぎだろ……!!

「――“高速移動”」

そんな避けるなんて無理な状況の中、俺は超帯電≪ボルテックス≫で底上げされた素早さを高速移動で更に上げ、無理を覆す。
結果吐き出すは地面に直撃して窪みを造る、若干の土煙も立ちこめていて、これがどれ程の威力なのかと分かる結果だ。

「アッ!?」

「お返しだァ!!」

避けられたせいで一瞬の隙ができていて、あんぐりと開いたままの口……これほど絶好の的と言える物はないだろう。

「“雷”ィッ!!」

「ギャーーッ!?」

さっきチラッと横目で見ると、フロンティアの奴らも後少しで倒せる勢いだった。
ここで一匹倒せば、後々有利に――。

「待ってくださいでしゅ!!」

「え!?」

だが、それは突如飛来した“エナジーボール”により機動を変えられ、惜しくもマスキッパに当たる事は無かった。
危ないな……エナジーボールって事は、シーアか?

「おいシーア、お前何やって……」

「だ、だーかーらー! この人達がみーが言ってたお友達でしゅ!!」

「……え!?」

えぇぇえぇ!? こいつらがあの時に言っていたお友達ィ!?

「ちょ、確かにマス何とかって言ってたな、こいつらマスキッパだし……でもじゃあ何で早く言わな――」

「ラルドお兄ちゃんが言わせてくれなかったからでしゅよ!」

「なん……だと?」

……確かに思い返せば思い当たりすぎる点はある。
ああ、またやっちゃったよ。久しぶりだからって調子に乗ったら直これだ。

「ア……あぁ? このエナジーボール……」

「ン……ん? 見覚えがあるな」

……え、まさか意識が戻った? こんな短時間で?
しかも戻った理由がエナジーボールの質量だとは……あれ、俺の知ってるダンジョンのポケモンって一体。

「マスキッパさんたち、お久しぶりでしゅ!」

「ん? おぉ、シーアじゃねぇか。久しぶりだなぁ」

!? 完璧に、戻った……だと?

「何だなんだ、最近付き合い悪いじゃねぇかよ!」

「う……す、すいませんでしゅ。グラスお姉ちゃんたちが……」

「……まぁ、気にすんなや」

あれ、こいつら滅茶苦茶良い奴じゃ……妙におっさんみたいだけど、子供に優しくて愚痴も聞いてくれてそうだし、俺達悪役じゃないのか?

「でもよ、お前ら誰だ?」

「あ、お前ら! シーアが来てるぞー!」

「「……本当か!?」」

「……あれ、あれ?」

うん、ちょっと俺、一から少し勉強しなおさなきゃいけないみたいだな……ははっ。

「「「……どういうこと?」」」



〜☆〜



つまりだ。
話をまとめると、マスキッパ達の宝をニューラが“泥棒”して結局バレて。
それでどういうことだ? とこいつらが問い詰めている所をあのオクタンが勘違いして絡まれていると判断。
それで俺達が来たと……おい、ニューラはどこだ。

「ったくよ……ん、待てよ。あのニューラどこいった!?」

「まさか、あのやろう! この騒ぎに乗じて逃げやがったな、糞猫が!!」

「ら、ラルドお兄ちゃん。落ち着いてでしゅ」

ん、あ、ああ……取り乱しちゃってたな。
それにしてもニューラあの野郎、見つけたら真っ黒な体毛を真っ赤に染めてやる。材料? 勿論あいつの――。

「すとっぷ、すとっぷでしゅ!」

「あ、すまん」

はぁ、危なかった……暴走しかけてた、本当に不味かった。

「ったく、俺らは山登る事に対して抵抗はねぇけどよー」

「ルールとかは守ってもらわなきゃ困るんだよなー、本当にこれからも頼むぜ?」

「はいでしゅ、里に帰ったら皆に言っておくでしゅ」

……山でのルールか、俺もシーアと一緒に伝えなきゃいけないよな。子供に押し付けるのはダメだしな。

「じゃあなー」」

「なぁ、もう巣に戻ろうぜ?」

「おっ、いいな」

と、騒ぎながら帰ったマスキッパ達。名前は聞いていないし、シーアも分けて呼んでなかったからな。
……後から訊いた話、実はシーアはマスキッパと言う言葉の高さによって言い分けているらしい。微妙な調節をできるシーアもそうだが、それを聞き分けれるマスキッパも凄い、と素直に思った。

「……なんか、俺たち悪者みたいだな」

「ホント、見た目だけで判断しちゃダメね……」

「……そうだな」

「でも、皆ちょっと怖いけど、いい人達でしゅよ? みー達と遊んでくれたり、技を教えてもらったり……」

「技?」

技って言ったら、あの“エナジーボール”だろうな。……それにしてもあのマスキッパ達、シーアにとったら親に近い存在なんだろうな……本当にいい奴じゃないか。俺達も見かけだけで判断しすぎたんだよな。

「じゃ、俺はこれで。早く頂上へ行かなければならないんでね」

「そ、そうでしゅから……皆さん、さよならでしゅ」

「ああうん、僕達は引き続きゴンドラ設置作業兼開拓に戻るから……気をつけてね?」

「じゃあねー、二人ともー!!」

「シーアちゃん、又な!!」

ああ、又なー!! ……と返事をすると、俺は直に六合目への道のりへ若干早歩きで歩く。
……恐らく、謎のポケモン強化の影響もここまで来ているだろう。ここからは気を引き締めていかないと、シーアが大変な事になってしまう。

「さてと、行くぞシーア。あいつらもう六合目の近くまで来てやがる」

「はいでしゅ!」

良い返事だ……因みに、何故俺があいつらの位置が分かったかと言うとバッジによる機能だ。
これはダンジョンの同じフロアに仲間が居た場合、何処にいるかが分かるシステムだが、範囲を最大限に広めると一合間の距離ぐらいなら感知できる。

「……あいつらも、なれないチームに戸惑ってるのか?」

「何言ってるでしゅか? 早くするでしゅ」

「あ、ああ。ごめん」

さて、と。遅れた分はしっかり取り返してもらうぜ!

〜六合目〜

六合目までの道のり――正直に言うと、手強すぎだ。
シーアを守りながら進まなければいけないのと、俺一人だけでもそれなりの苦戦する強さのポケモンが揃っているからだ。
途中、ロゼリア二匹に囲まれ“痺れ粉”を浴びさせられた。痺れている間は俺だけが集中攻撃にあっていてシーアは無事だったが流れ弾が当たっていたと思う。
次に影響を最も受けていたであろうポケモン……“オオタチ”だ。
“不意打ち”に“叩きつける”や“怪力”などそんなに強くは思えない技でもかなりの威力を誇っていて、発生源にはどれだけのエネルギーが集まっているのかと思うとかなり恐ろしい。
だが、これまでの技は対処できたが、どうしても“ハイパーボイス”だけは対処できなかった。結果シーアを傷つけてしまったが……強い、それしか言えない。

で、今は六合目って訳だ。

「……なんか、寒いな」

「うぅ、みーは寒いの苦手でしゅ……」

当たり前だ、シェイミは草タイプ。草は氷に弱い、というか電気タイプの俺でさえ寒いって言うぐらいだ、草タイプにとっては最悪だろう。
と、毎度恒例みたいなフワライドのゴンドラが設置されてるな。二合目、四合目、六合目……次は八合目か?

「お、君達早いね」

「お前らの方が早いよ。本当に」

「いやいや、ちょっと光の玉を使用してね。早くつくようにしているんだよ」

へぇ……光の玉か。そういう類のものは使用してないって思ってたが……やっぱり辛いんだろうな。
それより、本当に寒くない?

「後、ここから先は雪山になってるらしくてね。もうゴンドラは設置できないんだ」

……雪山か、道理でこんなに寒いわけだ。
え、何でそんなに寒いのが嫌いなんだって? 俺は寒いの苦手なんだよ、この前依頼で偶に霙≪みぞれ≫が振るって言う“霙丘”ってところに行ったんだが、少しも動く気がしなくてな。もう悲惨だったよ。

「じゃ、気をつけてね」

「ああ、じゃあなー」

キノサが次の道のりへと脚を進めるので、俺は手を振って見送る。
正直言って、状況はかなり危ない。マスキッパに一件でかなり近づかれた、恐らく後一分もしないうちに追いつかれるだろう、早く進まなければ危ない。
俺は必要な持ち物を確認すると歩き始める。

「さぁ、早く行くぞ」

「は、はいでしゅ……」

幾分か、シーアにも疲労がみられる……どうやら限界に近いらしい。
これは早く行かなければ、早くして七合目で休まなければならない。

「……間に合う、か?」

少しオレンの実を齧り、もう一つをシーアに差し出すと道のりへと足を進めた――。

〜空の頂き 七合目への道のり〜

……雪が少し積もっていて、本当に寒い。
ただ雪が積もっていてもそんなに風は吹いていないのでそんなに寒くは無く、寧ろ雪があったほうが温かい。
山の天候は気まぐれだとか何とかというが、ここまで極端に違うのはやはり不思議のダンジョン。恐ろしい。

「うっ……“十万ボルト”!」

「“マジカルリーフ”!」

「グオォッ!?」

因みに今はリングマを倒した所だ。
状態異常にさせると特性“根性”が発動してそれと“空元気”が組み合わさった一撃、これに繋がるのでなるべくシーアを頼って一撃で倒す事にしている。
ただ……やはり、強い。

「まだ起き上がるかよ……」

「グオォ!!」

あの攻撃を受けても疲れを見させない動きをする、恐らく“麻痺”になったんだろうが……根性のせいで動きが少しよくなっている。

「! “切り裂く”か」

大きく振りかぶるような体勢で自身の持つ鋭い爪に力を込めていた……引き裂かれた地面を見れば、その威力がどれほどの物かを物語っている。

「“雷パンチ”!!」

「ギャアッ!?」

そのまま隙だらけの腹に一発叩き込むと、リングマは吹き飛んでそのまま戦闘不能になってしまった。
……雪がクッションになって、衝撃はそんなに受け付けなかったみたいだな。

「ふぅ、終わったか」

「ら、ラルドお兄ちゃん。大丈夫でしゅか?」

「ん、ああ。こんな奴、俺の敵じゃないぜ」

とは言う物の、厳しい状況には変わりがない。対策を考えたい事だが、そんな余裕はないし、作る気も毛頭ない。
できるだけ休憩時間に費やし、早く行かなければならない。

「……はぁ、これでまた事件が起きるなんて展開、やめてほしいぜ」

そういい、ラルドは手に持ったバッジをバッグにつけなおし、前へと進む。

――揺れて間から見えたバッジには、同じ階にいる印がついていたと言う。

〜七合目〜

「到着!」

「つ、疲れるでしゅ……」

当たり前だ……俺でも結構疲れてるんだぞ馬鹿野郎。
オレンの実も残り六つになったし、これからはかなり抑えないとな……。

「……あれ、フロンティアの奴ら……何でいるんだ?」

三人で何かを囲んで、少し下を見ていて……何か下にあるのか?

「おーい、何かあるのか?」

「あ! 君……丁度よかった、これなんだけど……」

キノサが退き、観ていた物の正体がわかり……分かり。

「にゅ、ニューラァ!? 何でここで倒れてるんだ!?」

何故だか分からないが、いや当たり前だが。
それよりも……原因はなんだ? 寒さで倒れる事はまずありえない、ニューラには確か氷タイプが入っていたはずだ。
なら、何故……?

「俺達もオレンの実を食べさせたりしたりしてたんだけど……どうやら意味が無いみたいなんだ」

「……しょうがない」

ここは――レイン!

――なによ、一々呼び出されちゃ私も困るわよ?――

五月蝿い、今は非常事態なんだ……幾ら面倒くさい奴だって、助けなきゃ後味悪いだろ。

――……はぁ、息がうまくできてないみたいだし、酸欠状態……“高山病”かしらね――

こ、高山病?

――そ、酸素が足りなくなって目眩や吐き気がするのよ。最悪死ぬわよ?――

はぁ!? し、死ぬだと!?

――一々驚かないの、直に治療すればいいだけよ……ま、私も治療方法は知らないけど――

お、お前ならなんかできるだろ? 俺を回復させた技とか……。

――あれはアンタと私が一心同体だからできる技よ? 大体体も見つかってないのに、技ができる時点で凄いのよ?――

なら……どうすりゃいいんだ?

――そんなの、知るわけ無いでしょ……じゃね――

ま、待て――



「――くそっ、どうすれば……」

どうすりゃいい? 酸欠状態、酸素が足りていないらしいが……酸素だけを送るなんて無理だぞ。

「せめて医者みたいな奴がいれば……」

「医者? それなら八合目にいますけど」

「! 分かった、貴重な情報ありが……とう」

あれ? 誰の声だ、医者がいるって分かってるなら三人の誰かが搬送しているだろうし、シーアはもっと幼い。幼すぎる。
でもシーアの声質に似てる……と、言う事は。

「グラスか!?」

「バレましたか」

後ろを向けば相変わらず澄ました顔で余裕の笑みを浮かべるグラスがいた。ただその笑みも崩れかけているが、空の頂きのせいだろう。

「ラルド、追いついちゃったよー!」

「やっと追いついたよ。案外早いんだね」

「ふん、このシェイミが俺を邪魔するのでな。少々遅れてしまった」

「何を言っているんだか……さて、追いついちゃいましたよ? ラルドさん」

「……ちっ」

ニューラを助けなければいけない上、こいつらがもう到着していたとは……。

「な、何が何か分からないけど険悪そうだね……」

「アタシたちは入れないね……」

「ま、まぁ」

ニューラを背負えば必然的に遅くなる、だがペースとしてはこちらが絶対的不利。
ならば……。

「……舐めるなよ、グラス。俺は負けないって言っただろう?」

「ら、ラルドお兄ちゃん……」

「こいつを八合目まで送り、尚且つお前達に勝つ! 俺の辞書には「約束を守らない」なんて書いてないんでね!!」

「……疲労が蓄積した子供と一緒に攻略だけでも辛いでしょうに、ポケモンを背負う? 無理に決まっているでしょう」

「そうかな?」

俺は態と挑発的な笑みをとる。そして俺はミル、フィリア、シルガを見渡してこう答える。
まず言おう。俺は英雄だ。

「そして、もう一度言う。俺はエンジェルの中では最強でリーダーでもあるんだ」

だから――

「これで、お前達に負ける道理はどこにもない!」

――後ろから白い羽が生えているのも、きっと幻覚ではないんだろう。



〜☆〜



「え……嘘、“翼”が生えてる?」

「なるほど、これが限りなく高い高電圧の電撃を圧縮して創った……“翼”だね」

「全解放状態にはなれていない……と言う事は」

皆が皆、混乱している。フロンティアは元々ついていけていなかったが、付いていけている者でも付いていけなくなる事態。
翼が生えるなんて、本来ではあまりありえないのだ。全解放でもない限り、易々とできる者でもない。

「おっと、勘違いするなよ。これは“羽”だ、翼じゃなく羽だよ」

「そんな屁理屈聞いてません」

「知らねぇよ、俺はこの三人に言ってんだ」

元々少し荒い性格だが、解放状態になると更に荒くなる。
それがラルドだ。

「いいか、俺を超えたいなら全解放でもできるようになるんだな。今の俺は間違いなくお前達より強いぜ?」

「……“波動弾”」

「“電磁波”」

電磁波による壁で波動弾を遮断する。元々不意打ちだったためか威力が低かったため、安易に防御できた。
それよりもこの力、ディアルガ戦で湧き上がってきた力と似ている。

「……もう羽も消えてきたか」

やはり解放で全解放のようにするなんて無理なのだろう、寧ろここまで持ったほうだ。

「俺はニューラを運ぶ。それに勝つ。シーア、それでいいか?」

「はいでしゅ……誰か傷ついているのに、見殺しになんかできないでしゅよ」

「! ……まぁいいでしょう。怪我人を見過ごせないという心意気、実に立派です」

「それはどうも。……俺達は行くぜ、お前らも精々進んどくんだな」

「ああ、待ってくださいでしゅー!!」

シーアが俺を追いかけてくるとき。ふと見たグラスの表情は驚いているようだった。
真剣勝負の最中に人助けを行うからか? ……いや違う、あの表情は俺がいたとはいえここまで登ってきたシーアに対して、駄々も捏ねず息も荒げないシーアに驚いているのだろう。

「……ぐっ、行くぞ」

ニューラを背負うと、俺は七合目を後にした。

〜八合目への道のり〜

「ふぅ、はぁ、はぁ……」

暑い熱いあつい。寒いのに熱い、熱いのに寒い。
ニューラを背負って行くという行為はあまりにも無謀で、あまりにも体力の消耗が激しすぎた。
雪の上という只でさえ歩きにくい環境の上、何かを背負うというのは辛い。それにニューラは俺より大きいはずだ、つまり俺よりも重い。
この状態で何か強いモンスターに有ってみろ、やられる可能性大だぞ。

「ギィー……」

「ちっ、やっぱ来るかよ!」

敵はヌケニン。だが恐らく影響を受けていて強くなっているだろう……俺が奴に与えられるダメージは道具だけだ。
ヌケニンの特性“不思議な守り”は型破りなどの特性を無視する特性でもない限り、効果抜群の技以外は当てれないといったものだ。

「くそっ!」

「ギエッ!」

俺が投げたのは“銀の針”という名の通り銀でできた針だ。
銀と言うだけ有って重く、威力もそれなりなのでこういう相手では重宝する。

「はぁ、これで……」

「ラルドお兄ちゃん! 来てくださいでしゅ!」

「な、なんだ?」

無駄な動きはしたくない、それが今の俺の臨時モットーなんだが……。

「これ、見てくださいでしゅ」

「え、何だ……これ」

シーアの指差す方には、氷付けになった幾多のポケモンがいた。
それはリングマであったり、オオタチであったり、種類は様々だ。

「……これは?」

ニューラを一旦降ろして、氷像の陰に隠れていた物を俺は手に取る。それは黒に近い紫色をしており、非常に不気味な物だった。
なんというか、触れているだけで悪意が流れてくるような……そんな感覚。

「今見つけたんでしゅが、空の頂に氷ポケモンは出ないはずでしゅ……」

「成る程。同じ登山者か」

流石にやりすぎだとは思うが、こうでもしないと負けていたのだろう。直にこれも溶けるだろうし、放っておいても大丈夫か。

「丁度良い、階段があるぞ」

「あ、これで八合目でしゅよね」

「ああ、これでやっとニューラを助けて、あいつらに追いつく手はずが整う」

「じゃあ、早く行きましょうでしゅ」

足が雪に埋もれて転げそうだ。寒くて凍えそうだ。
それでも目標が近いというのはそれらを忘れさせてくれる。目標と言うものはやはり持つべきだ。

「これで……」

次に見えた光景、それは――。



〜☆〜



……パチパチと炎が燃える音が聞こえる。火の粉も飛び散り、触れたら火傷しそうだ。だが、明かりはそれしかないはずなのに明るく、まるで光に照らされているような場所だ。
岩に囲まれて周りには壷があり――恐らく保存用の食材等々だろう――右の方には藁でできたベッドがありそこにはデンリュウと呼ばれる種族のポケモンがいた。

「……おや、お客さん?」

「お前が医者か!?」

「あ、お、おじゃましますでしゅ」

「ははは、焦りすぎだよ。で、患者さんかな?」

冷静、それに尽きる。
こういった事態に何度も出会っているからだろうが、それでも冷静だろ。
と、心の中で思いつつニューラを藁のベッドに寝かせ、診てもらう。

「“高山病”かぁ。これなら大丈夫だね」

「ほっ……良かったでしゅ」

「良かった」

酸素をつめた物とかあるのか、それとも又別の方法か……俺が知っても意味無いけど。

「……うん、君達は先に行きなよ」

「え、なんででしゅか?」

「グラスちゃんがピカチュウとシェイミが来なかったか? って訊いてきてね、一緒に居たのも違う人たちだったし。訳アリなんだろう?」

「……はい、そうです」

「なら行きなよ。ここで待っていても意味は無いよ?」

確かに、ここで待っていても俺達に出来る事なんて何も無い。見たところ高山病にもなれている感じだったし、な。
俺達に出来る事なんてない、って感じだしな。

「……お言葉に甘えさせていただきます。行くぞシーア」

「え、で、でも……」

「いいんだ……それに、ここに居ても何もできない。せめてこの人のいうとおり……いや、お前の為にもグラスに勝とうぜ」

「わ、分かったでしゅよぉ」

「事情は分からないけど、何故か必要だと思うから……はいこれ」

デンリュウは小さい箱のような物を持ってくると、俺に見えるように向け、箱を開ける。中には黄色い宝石のような物が入っており、見るだけで力が増幅するような感覚に陥ってしまう。

「これは“電気のジュエル”って言ってね。電気技の威力を増幅させるんだ」

「へぇ……そんなの、貰っちゃっていいんですか?」

「大丈夫だって、知り合いの調査員が人間文明を探求していた時に見つけて、無意味だったらしいから僕に暮れたんだけど……正直いらないからね」

「……ありがとうございます」

「うん。その代わり頑張ってね。少しでも応援しておくから」

「はい、本当にありがとうございます」

それを箱から取り出して受け取ると、一瞬力が倍加したような感覚に陥る。だが一瞬でその感覚は無くなり、元に戻る。

「……ではこれで」

「うん、こんな辺鄙な所だけど、又来てね……そうそう」

デンリュウは何か思いついたように立ち上がると、こういった。

「それ、一回使ったらなくなっちゃうからねー!!」

「忠告、ありがとうございます!」

「じゃ、じゃあラルドお兄ちゃん。行くでしゅ」

「……ああ」

電気のジュエル。これはもっと大事な場面で使うべきだ、だから俺はバッグの一番そこへ入れる。今思えばこの時にもっと取りやすい位置に置いておけば少し事態は好転したのかな、と思う。
ただそれは又、別のお話。

「後は頂上へ行くだけ……待ってろよ四人とも」

「ら、ラルドお兄ちゃん?」

「シーア、お前は絶対勝たせて見せるぜ……俺は約束は守る男だ」

「分かってるでしゅ……絶対に勝って下さいでしゅ!」

「ああ、俺は絶対――勝つ!」

そう高らかに宣言したとともに、ラルドの体は黄色いオーラに包まれていく――。



次回「空の頂き〜汚に染まる頂〜」

■筆者メッセージ
少し遅めの投稿、これからは投稿スピードがこれくらいになるかもしれません。

次回「空の頂き〜汚に染まる頂〜」お楽しみに!
ものずき ( 2013/02/10(日) 22:48 )