第三十五話 コソ泥と、水のフロート奪還
いきなり現れた探険家ユーレ・ディアレイ。俺は意識を失っていて解からないが、一体なにをしに――?
〜☆〜
「大丈夫ですか!?」
「ああ……」
シルガは素早くライボルト&ユーレから離れると、三人を無事な所に置いた。
その時に呻き声が聞こえたが、“無視”の一言で終わる。
「貴様、何故ここにきた?」
「ショウさんたちから聞いたんです。この時期のエレキ平原は危ないですから。ダイヤモンドランク以下の探検隊は入れないようになってるんですが……」
それはあくまで正式な依頼の話だろう、今俺達が行っているのは人助けだ。
俺の性には合わんがな。
「私達探検家は、あまり縛られないので……」
絶対にこいつの実力はウルトラランクに限りなく近いはずだ。
……あいつはどうしているんだろう?
「そんな事より、どうするんだ?」
「見ててください……ライボルト!!」
「なんだ?」
「私は探検家ユーレ・ディアレイだ!聞いて欲しい。この者達はあなた達の後ろにある水のフロートを取りに着ただけなのだ、決してあなた達を傷つけるためではない。確かに昔ある探検隊に傷つけられ、掟が強くなったのは確かですが……ですが、そんな事はする必要が無い!正当防衛のような物です!!」
「……よく知っているのだな。ユーレと言ったな?」
口を利いたか、やはりこいつの地位での説得は皆を騙す……。
「さっさと取る物は取れ。我々はここから少し立ち去る。いいか?早く取れ」
そういうとライボルトはラクライ達を連れて行った。
もう一人のライボルトも一緒に。
「さぁ、取ってください」
「……ああ」
少しの不安を抱くも、俺は水のフロートを取る。
……それにしても、被害は多大だったな。まさか電気が効かないだけでここまで難易度が跳ね上がるとは……。
待てよ?これをここに置いた“奴ら”はどこに行った?少なくともここにはいるはず……。
「全く、酷いですね。あんな小さい子達をこんな所におびき寄せようとしていたんですか……出てきてください、コソ泥さん」
「クククッ、やっぱりばれたか」
やはり、こいつらか……“ドクローズ”。
〜☆〜
あ……れ?ここはどこだ?
そうだ、ライボルトが“オーバーヒート”撃って……それから後ろから衝撃を受けて……。
なんだっけ?あの衝撃……。
「――っ、背中が痛む……やっぱりシルガか?“オーバーヒート”は相殺したはずだし……」
シルガの波動掌か?それともはっけい?なんだろう……。
「使いやすい技かな?あいつの」
『――クククッ、やっぱりばれたか』
あれ?今の声、まさか……!?
「クロド!!」
絶対にそうだ、クククッって、クククッって言ってたし!
「どこだ!?」
俺は周りを見る、だがそこはさっきのような岩場ではなく、そこの一歩手前の場所だった。
――危ねぇな、おい。
いくら奥地に近いとはいえ、ここにポケモンは来る。
でも、皆は?
「シルガは……倒れてないよな。多分」
不安はあるが、俺はそのまま奥地へと足を運んだ――。
〜☆〜
「クククッ、まさかライボルトの一人目を倒すとはな……」
「へへっ、まぁあの状態なら勝てますけどね」
「けっ、当たり前だろ」
こいつらは相変わらずの屑、とでも言いたそうな表情のシルガ。
実際そう思っているのだから仕方が無い。
「とりあえず“波動弾”か?」
「いえ、ここは拘束してからPEUに……」
「なんだぁ?俺達が拘束されるとでも思っているのか?」
「そうだそうだ!」
逃げる気なのは普通に見て取れるが……強気だな。
人質になりそうなミルとフィリアはここにいるしな……。
待てよ?あいつらは探検隊……と言う事は、探検隊バッジも持っている
するとどうなるか?どんなに追い詰められても、絶対に逃げられる。
これは……拙いな。
「クククッ、お前らがライボルトにやられたら、その後に俺様達がもっと痛めつけようと思ってたんだけどなぁ」
「へへっ、事態が急変したぜ」
「ケッ、相手があの“彗星の探検家”なら仕方が無い」
「「「ずらかるぜ!!」」」
ドクローズは電光石火の速さで逃げていく。その速さに、ユーレも追うことを諦めた。
ただ、ドクローズの逃げた先には電気鼠がいるのも知らずに……。
「へへっ、このまま逃げてれば、あいつらも追いかけてこないだろ」
「そうだな、ところであいつらって?」
「そりゃあ、エンジェルのリオルと“彗星の探検家”……え?」
「またシルガがなんかした?御礼なら……たっぷりとしてやるよ?」
「ちっ、穴抜けの弾!!」
ドクローズはあるポケモンがいたのを確認すると、逸早く穴抜けの玉を取り出し、地面に叩きつける。ただし、そこまでの間に……。
「一撃で仕留めてやる、“電撃連波”!!」
“電撃連波”の三発は喰らったが。
まぁ、別にワープには問題なかったが、結局ダメージは受けたドクローズであった。
そして、その後は探検隊バッジが故障していたため、ミルとフィリアを運んで帰る事となったのはまた別のお話。
〜☆〜
「ありがとうございます!!」
「いや……話を聞く限り、ユーレが来なかったら俺達は人助け失敗だったからな……」
「ユーレさん、ありがとうございます!!」
「いやいや、私も少し遅かったですから」
俺達はあの後ミル達に復活の種を食べさせた。
そしたら普通どおりに復活するわけで……。
「それよりも、なんか僕ソーラービーム撃った瞬間に気を失ったんだけど」
「でもダメージ受けてたから、ラクライにちょっとやられた後にライボルトに止めを刺されたんじゃない?私もいきなり後ろにいたんだもん。吃驚しちゃった」
あっちはやられた事を話し合ってるし……本当に便利だな。復活の種。
俺は“瀕死”では無く“瀕死の一歩手前”だったわけで……オレンの実で応急処置ぐらいだな。
しかも、火傷もあったらしい。まぁ色々な木の実食べたから治ったけどな……その中にチーゴの実も入ってたのか?
「それにしても、ライボルトが二匹いたなんてな」
「ああ、確かにな」
「いやー、大丈夫ですか?皆さん」
「「大丈夫ではない」」
「「大丈夫!」」
意見が完璧に分かれているが、そこは気にしない事に。
……してください。
「それにしても、エンジェルの皆さんは凄いですね」
「え?」
「だって、二度もマルルちゃん達を助けてくれましたしねぇ」
「一回目は、偶々ラルドが夢を見たからだよね!」
「ああ、確かにな」
「夢?というのはなんでしょう」
まぁ、確かに“夢を見たから危険を察知できた”なんてこの世にあるはずがない。
実際にあるんだけどね、俺が実例だ。
「ああ、ちょっと目眩がして、その後に光が流れて……それから映像が見えるんだ。過去か未来の」
「! そ、それは……」
「何か知ってるの?ユーレさん」
「それは恐らく“時空の叫び”という、本当に希少な能力です」
「「時空の叫び?」」
俺とミルはタイミングぴったりにその言葉を口にする。……でもなんだ?時空の叫びって……。
「時空を超越した、未来や過去の映像が見れるという能力です。最も、世界に一人しかいないんですが……まさか貴方がそうだったとは」
「なんかSF世界に入り込んだみたいだな……ボソッ(俺にとったらここにいる時点でSFだけど)」
「もしかしたら、あの事もユーレさんなら解かるかもよ!」
「あの事……って、ああ。あれか」
これは秘密を話さなければいけない展開だな……でも俺の秘密はここではいえないぞ。
……海岸に行くか。
「あの事?」
「その事なら、ちょっと着いてきてもらうぜ」
そして、俺はミルと初めて会った海岸に向かった――。
〜☆〜
「ここは……」
「ここは初めてミルと会った海岸なんだ」
「して……話とは?」
ちなみにフィリアはいない……はずだ。
いくらなんでも、こればかりは言えないからな。
「実は……俺は記憶喪失なんです」
「き、記憶喪失!?」
「それで目が覚めたらここで倒れているところにミルがいて……」
「はい……」
「それで、覚えているのは自分の名前と……“元人間”だった事だけらしいの」
「も、元人間ッ!?」
いきなりの不思議オンパレードだな、これじゃ混乱するぞ、ユーレ。
でもまぁ、いまやミルも信じてくれているんだな……不審者扱いされたけど。
「どう?なんか解かる事ありませんか?」
ミルが敬語……だと?
「いえ……と、特には……」
ん?今なんかユーレがにやけたって言うか笑ったような……悪役っぽい笑い方。
「すいません。解からなくて……」
「いいですよ。元々ラルド自体が不思議で出来たようなものだから」
「酷っ!?」
「言葉の綾だよ」
絶対に違うと断言できるのは俺だけか?
……あれ?あれは……ペリッパー?
俺がふと空を見ると、郵便を主に仕事としているペリッパーというポケモンが空を飛んでいた。
――まるでなにかを伝えるかのように。
「なんだ?なんかあんのか?」
俺は辺りを見るが、何も無い。何を伝えようとしているんだ……?
と、俺が記憶を探っていると、聞きなれた声が響く。
「おーい!ミルー!ラルドー!」
「あっ、ビーグ!」
「急いで戻ってくるでゲス!緊急招集でゲス〜!!」
「「緊急招集?」」
俺達は言葉をそろえて疑問の言葉を口に出す。
それにしてもなんだ?緊急招集って、なんか事件でも……。
「まぁ、とりあえず行こうか」
「そうだね。早く行こ」
「私も行きます。気になりますからね」
「じゃあ、一緒に行こうか」
そして、俺達はプクリンのギルドへと向かった。
――恐ろしい事実が待ってるとも知らないで。
次回「時を奪いし大盗賊」