第三十三話 無慈悲な暴虐
ふと聞こえた謎の声――。
それがなんなのか、解からずにとにかく隠れるも、意味は無さそうなので俺達は中央に移動する。
そして現れたのは、“ライボルト軍団”という者達が現れて――?
〜☆〜
「ら、ライボルト……軍団……?」
「なんだ?こいつら……」
「とにかく、逆上させてはいけないね」
(確かにな……)
恐らくあの取り巻きのラクライたちは、護衛のような物だ。……恐らく、後ろにはもっといるだろう。
「……ボソッ(水のフロートだけが目的だ。俺達が縄張りに入ったんだから……な)
「……ボソッ(解かったよ。私も無駄に傷つけるのは嫌いだもん)」
見事に二人、ラルドとミルの意見は一致する。
その時シルガが結構な音で舌打ちをしたのは気のせいだろう。
「じゃあ、化け物二人組みは別に分かれて。ラルドとミルはコンビネーションが信じられないぐらいあってるから、僕とシルガは囮に、君達は頑張って取り返してくれ」
「後、一つ忠告だ。ひよっこ」
「なんだ?」
シルガの口から、ラルドに対しては信じられないぐらい相性最悪の言葉を放つ。
――電気技は吸収されるからな。
〜☆〜
今しがた俺は絶対に拙い事実を言われた。
なに?電気が吸収される?
「これは……かなり無理な感じが否めない……」
苦笑しながら言うも、これはかなりやばいです。
周りは十匹のラクライで正に完全防御、奥はライボルトの絶対攻撃。
――これは一秒の決断が死ぬかどうかを決める。
「でも待てよ?グラードンには効いたんだから、当然ライボルトにも……」
「超帯電≪ボルテージ≫したら危ないよ?それに生半可な電撃じゃ逆にパワーアップさせちゃうし」
「ほ、本当かよ!?」
これは非情だな、少しは慈悲の感情をだなぁ……。
「無慈悲としか言いようが無ぇぜ」
電撃を使わないで置く方法はあるんだけどなぁ……これは後の楽しみだ!!
「さぁ、“水のフロート奪還作戦”、開始だッ!!」
「「「――おぉっ!!」」」
〜☆〜
ラルド命名、“水のフロート奪還作戦”が合図と共に始まる。
それにしてもラルド大丈夫かなぁ?
さっき思いっきり焦った顔してたし、本当に拙いのかなぁ?
「でも……数が面倒だね。いくら俊足の種を服用しても、前に進めなかったら意味が無いよ」
「“メガトンパンチ”も結構痛いしな……今まで“雷パンチ”は痛くなかったのに」
実はエネルギーなどを纏う攻撃は、使用者のダメージも最低限軽減している。
だから自分自身のフルパワーで相手を殴るメガトンパンチなどは反動が凄い……らしい?
――実際、よく解かってないしね。
「それにしても、本当に倒しても霧が無いね」
「……シャドーロアー……あれを拡散させる事は?」
「あれ自身でもエネルギーの調節難しいんだよ?シャドーボールを練り合わせて、光線状に飛ばすだけでも死ぬ苦労だよ」
まぁ、ラルドがいたからこそだけどね。
「だからここまで頑張れた……あ、ラルド!」
「ああ、“メガトンキック”!!」
いつのなったらこのライボルト軍団たちを全部倒して……あれ?
そういえば、さっきからライボルトが全然動いて……ない?
……待って?ラルドは帯電したら蓄電量が限界を超えるらしい。
だとしたら……!
「まさか……ッ」
「どうした?ミル」
「ちょっと足止め頑張って!ライボルトが……“パワーアップ”しちゃう!!」
「パワーアップって……?って、おい。待てミル!!」
私はラルドの制止を聞こえぬふりをして、俊足の種+電光石火で高速で走る。
早く行かなきゃ……ッ。
「いたっ!」
ここは出し惜しみしてる暇は無い。丁度ライボルトは気付いてないらしい。
だったら……ここでエネルギー温存のためにボスを少なくとも気絶状態にしないか、今ここで出来るだけ傷つけずに気絶させるのなら……今がチャンスッ!!
「お願い。あまり傷つかないで……“シャドーロアー”!!」
「もう少しで……ッ!?」
ライボルトに向かっていく紫の光線は、ライボルトが直前で避けた事により少し当たっただけで済んだが、それでも気絶量のダメージを受けたと思う。
「少なくとも、充電は止めれたかな……?」
そう、ライボルトが止まってた理由は“充電”だ。
動くよりも動かずに溜める方が効率がよい。
だから援護射撃もせずにずっと後ろにいたのだ。
「偶々気付いてよかった……?」
ミルはライボルトがいた“はず”の地面に目をやる。
だが、そこには既にライボルトはいなかった。
「移動して……まさか……後ろに……?」
「よく気付いたな。小娘」
「や……っぱり……」
「その観察力、是非スカウトしたいがな……残念だがもうだめだ」
今、パチッっていう音がした。
恐らく電気を溜めて……。
「じゃあな。小さな愚者」
「――ッ!!??」
「これが我の無慈悲だ」
「きゃあああ!!!」
少女は真っ白な光にと爆音に包まれながらも、真っ黒な闇と無音の世界に意識が飛んだ――。
〜☆〜
僕は今、何十匹のラクライを倒している。
これは本当に厄介だ。いや、面倒だ。
実際この程度の強さなら百匹いても化け物二人組みで倒せる。
でも――ライボルトがどこかから奇襲を仕掛けるかもしれない。
「どこから……ッ?」
僕はもう奇襲前提で辺りを探りながら、僕はエナジーボールを地面に当てたりして、爆風で攻撃する。
「フィリア。あいつは動いてないぞ」
この時、僕の耳がピクッと動いた。
実際は耳は隠れてて見えないけどね。
「波動かい?」
「波導ともいえるな」
「活字でしか解からない訂正やめてくれ……」
「実際、探知機能は“波導”の方が優れている。だから俺はこっちをいつも感じている」
ポケモンの波を導く――それが一つの波導。
「次は攻撃などに向いている、所謂戦闘用の“波動”だ」
動く波……なるほど、確かに言えてる。
「しかも充電もしている……これは確かに拙いな」
「えぇ!?」
「――しかもミルが既に近づいている」
「ほ、本当……?」
と、言った突如の事だった。
雷鳴が辺りに響いた――?
「これは……?」
「ミルがやられた……あいつは咄嗟に少しの守るで致命傷は防いだようだがな」
「……ミルッ!!」
僕はそれを聞くと同時に走り出した。
――ミル、無事でいてくれ……!
〜☆〜
どうしたものだろうか。
ミルが突如いなくなると同時に、奥のほうから雷鳴が響き渡った。
でも、ラクライたちは吸収しなかったな……避雷針のはずなのに。
「ちっ、それにしても厄介なのはここの電気だ……静電気が増幅しちまう」
「お?そこにいるのはひよっこピカチュウのラルドか」
「ん?おぉ、へっぽこリオルのシルガ君か。久しぶり」
「「……うざい」」
ここからはあまり覚えてなかった。
多分、これは喧嘩の騒動のついで……ではなく無意識に体が反応していたらしい。
まぁ、俺の電気を感じる能力で気配もくそもないけどな。
「はぁ、やったか……?」
「いや、後二十匹はいるはずだが……この周りに」
「それにしても、あいつらどこに……」
「あいつらなら……」
シルガが口を開こうとした瞬間だった。
またもや雷鳴が鳴り響いた。
「なんだ!?」
「間に合わなかったか……」
「あっち……」
(拙い……このまま行くと……)
素越すの不安を胸に若干帯びるも、“波動纏装”をして向かった――。
〜☆〜
ラルドがそこに着くと、そこには――
――ボロボロになった二人、ミルとフィリアがいた。
「な……んだよ……これ?」
「くそっ、これは……あまりにもおろかだぞ……」
「ん?そこにいるのはさっきのチビ共か」
「お前は……!」
そこにいたのは、少しの電気を帯びたライボルトだった。
否、電気を帯びているのではない、残っているのだ。
さっき発射した大量の電撃が。
「お前……まさか」
「そうだ、我々の領域に踏み入れたので少し制裁をな……」
「ふざけるなッ!!」
「ふざけてはいない。本気で……殺った」
「ッ!?」
嘘だろ……?
俺は、また傷つけて……あれ?
なんか……全く同じ様なことがあったような……。
あれ?
「我々の領地を荒らすからこうなる。そうだなぁ、今のうちに恐怖を植えつけてやろう!!」
「……」
(ちぃっ、厄介な事を……ッ)
「さて、我の無慈悲を教えてやる、終わるのだ!雷……」
直後、ライボルトの雷が直撃した。
避雷針では吸い取りきる事のできない、自然と言うポケモンでは出せない出力の雷を。
「かはっ……なにが……?」
「……お前、今さっき無慈悲って言ったよな……」
ラルドは血が少し垂れた口を拭ってこういった。
「なら俺が……無慈悲な“暴虐”ってのを教えてやる」
その形相はまるで悪鬼修羅の如くだった――。
次回「正当な暴虐」