第三十一話 脅迫のエレキ平原
ここは……どこだ?前が真っ暗だ。まるで誰かに視界をさえぎられてるようで……。
しかも温かいし、体がフワフワしてるし……ん?待てよ?
このパターンは……もしかして!!
〜☆〜
「ミルッ!!」
「ひゃっ!?」
俺が大声を上げると、珍しくミルが飛び上がる、珍しいことも有るもんだ……。
でも、なんか目が死んで……いや、これは気絶しているのか。
……ん?ボイノの殺戮的大声≪ハイパーボイス≫でも起きないこいつが……一体何故?
「まさか……俺、なんか覚醒したのか?」
実際は叫んだ際、ちょっとした静電気が強まってしまったのであった。
「おい……ちょっと焦げてるぞ?」
「むぎゅぅ……」
おいおい、これはちょっと拙いかも、フィリア達に見られたら俺がこいつをやった、見たいに誤解される……まぁ、俺がやったんだけどな。
「照り焼きミルバーガーになっちゃったか……可哀想に」
「むぎゅぅ……」
「まず、毛を剥いで、皮も剥いで、それから血抜きして……あ、本当にはやらないぜ?それこそ犯罪者だし」
何故か怖い顔を言うも、俺は内心ちょっとお腹が空いていた。
待てよ?俺、昨日晩飯……。
『睡眠の種』
『ぎゃあああぁぁぁ……』
うわぁ、これは酷い。
「そういえば……オレンの実が……」
ふと木の実などがある、自分の木の実が入ったバッグを取ろうとしたラルド。
だが、目の前には「バッグ破いちゃったから、ちょっと修理出してます」の置手紙。
俺は発狂して「ふざけるなぁあああ」と言いそうだった。
「で、でも理性はちゃんと保たなきゃな……」
……それから?なぁに簡単なことだったんだ。Pはある、だから……買えば良かったんだ。
俺は急いでカクレオンの店へと行く。滅茶苦茶に走って。
その時に青い何かがボロボロになっているのも無視して――。
――トレジャータウン――
「はぁ、早くしないと、はぁ、腹が空きすぎて、はぁ」
「おや?ラルドさん。どうしたんですか?」
「林檎をくれぇ!!」
「へ?あ、はい。25Pです〜」
俺は急いで25Pを出すと、林檎を貰い、その場で食べつくす。
さすがに背は向けるが。
「あぁ、やっと満たされたぁ……」
俺は林檎を芯ごと食い尽くすと、帰っていく。こういうときに店があるのはいいもんだなぁ。
「それにしても、誰が俺のトレジャーバッグを……?」
ふと思いに耽ると、前が見えなくなる。
そして、そのお蔭でその存在にも気付かなかった。
「うーん……やっぱりシルガか?それとも……」
「あ……ラルドさん?」
「ん?この声は……マルルか?よう、久しぶり……え?」
俺は声のした方……後ろを向き、声の主に挨拶をする。
だが、その声の主は……ボロボロになったマルルであった。
「お前……どうしたんだ!?」
「ちょっと……怪我をしてしまって……」
(この傷は……焦げてる?でも炎ポケモンじゃない……とすると、電撃?)
ラルドは冷静に傷の分析をする、が電撃が傷の原因ならお安い物だ。
「俺は電気を操るからな。それ相応の知識は持ち合わしている……絶対に助けてやるからな!!」
そういうと、俺はマルルを背負い、急いでギルドへ向かって行った。
あの大階段に手こずり、激しく肩を上下に揺らしたのは別のお話。
〜☆〜
「マルルちゃん!それにラルド!一体どうしたの?そんなに慌てて……」
「なんか知らないけど、マルルが傷だらけなんだ!急いで部屋に行くから、準備しといてくれ!」
「う、うん。解かった!!」
急いで走ってきたものの、準備をしていない事を忘れていたラルド、だからミルに頼んだのだが……やっぱり心配な心が残っている。
「早く……!」
そして、マルルは――?
あれから小一時間――。
マルルは傷が少し治り、目が覚めたところだった。
俺達はマルルになんであんなにボロボロだったのかを問い詰めた。
「実は……あの後海岸に行ったら、代わりにこんな物が……」
あの後、とはミルに引き止められた事らしい。
「えーと、何々「クククッ、水のフロートは預かった。返してほしくばエレキ平原に来い。だが水タイプのお前達に行けるかな? 無理なら誰かに頼むこったな。クククッ」って、これ脅迫状じゃない!?」
「しかも、誰が出したか丸解かりだぜ?執筆にも口癖が現れるもんだな」
これは……そう、あいつらが出した物だ。しかも口調で丁寧にヒント、と言うか答えを書いてある。
「……つまり、俺達がやればいいんだろ?」
「って、シルガッ!?」
「そうだよ。かつての依頼人が、また助けを求めるんなら、僕達が出ないわけには行かないね」
「フィリアも……?お前ら良い所に出てくんなよ!!」
と、ラルドの発言を完全に無視して、フィリアはマルルの手を取る。
「安心して、マルルちゃん。君が手こずるのは良く解かる。あそこはエレキ平原、しかも今の時期は電気が溜まりやすい」
「み、皆さんをそんな危険な目には……」
「――でも、こっちには化け物二人組みがいる。それに、僕達だって探検隊だ。困っている人がいるなら、絶対に見過ごせない」
「ふぃ、フィリアさん……」
ちぇ、フィリアだけ美味しい所持って行きやがって。
でも、まぁ。
「俺達は伝説のポケモングラードンを倒した、チームエンジェルだ!心配するな、俺より強い電気ポケモンなんて、エレキ平原にいない……はずだ。だから俺達を……信じろ!」
困ってるポケモンがいたら、絶対に放っておけないもんな!
「み、皆さん……ありがとうございます!!」
「いいよ、それにしてもあいつら……こんな子にまで手を出すとは……許さないぞ」
「そうだよねラルド。私達であいつらをぶっ飛ばそう!!」
「ふん、日頃のストレス解消にはもってこいだな」
皆が皆、やる気を出し、いざ……。
「行くぜ皆、『エレキ平原』にッ!!」
「「「おぉおッ!!!」」」
次回「荒立ちの雷」