第三十話 落し物、名は水のフロート?
まだ、皆が寝静まる丑三つ時――。
ある三匹のポケモンが、悪巧みを働いていた。
「くそっ、なんでプリルには効かなかったんだ!?俺達の毒ガススペシャルコンボがッ!!」
「へっ、おかげでギルドに入って夜襲とかは出来なくなったからな……」
「せめて、プリルはいいからエンジェルに一泡吹かせてやりたいですよ」
瞬間、二つの影が動く。
「そうだ!エンジェルの奴らなら弱いっすよ!!」
「クククッ、それなら早速作戦を考えるぞ!」
「「「おぉーーーー!!!」」」
〜☆〜
「だ、誰だ……?」
いきなりの圧迫感に、いつも以上に苦しげに起きるラルド。
「むにゃ……ラルドなんか足元にも及ばないよー……ぐぅ」
「こいつ、いっつも俺を命令してる夢とか見てそうだな……起きた瞬間問い詰めてやる」
いつも起きると同時にトラブルな俺だが、今日もそれは衰えずに続いていた。
「ミル、早く退け」
「ぐぅ……」
「早く起きろッ!!」
「むにゃ……」
相手を誰と心得ていたんだ俺?相手はボイノのハイパーボイスをも耐える奴だぞ?
なんな奴に俺如きの声?無理無理。
「……そうだ!放電とかを使ったら……」
と、考えたりもした。だが無理だ。俺はあまり電気の扱いが上手くは無い、弱めるのは、だが。
最小でも通常の電気ショックぐらいだ。しかもそれも体から出るときには物凄い電熱を帯びている。
「もし、そんなのを発射したら……うん、ミルが照り焼きミルバーガーになるな」
と、ここで一つの考えが費えた。
「そうだ、皆を呼んで……って、あれ?皆いない……って、まさか……こんな早い時間から、しかも今日に限ってフィリアの野郎は……シルガなら面白そうだな。とか言って放っておきそうだし。
「ここは……すり抜け術!!」
俺は電光石火の勢いで、後ろ足で前へ跳躍し、一気にすり抜け……、
「へぶっ!?」
られなかった。
「こいつ……俺から離れないぞ?どうなってるんだ!!」
傍から見れば羨ましい光景だろうが、そういうことには一切興味、というか知識を持ち合わせてはいないしデリカシー無しのラルドからしたら、重いの一言だ。
「ミル、ちょっと起きてくれないかなー?ちょっと返事して……」
「むにゃ……」
「……もう終わったな……」
その後やはり、フィリアの死角からのソーラービームに、エナジーボール三発、止めにグラスミキサーを受けた、今日も不幸なピカチュウであった。
〜☆〜
ちょっと視点が変わって、私はミル。極普通のイーブイ。
ただ一点違うのは、王家の出身、過去などが一切不明な謎なリオル、更には元人間なピカチュウなどと一緒のチームの、影が薄い者だ。
でも、そんな私でも活躍の場がある。それは……。
「雑用なんだよね……」
これしか無いからね……うん。
そういって、私はセカイイチの入荷予定を聞くためにカクレオンの店へ急ぐ。
――そういえば、ショウさんとシンさんと会うの久しぶりだな……買出しとかはフィリアとシルガに任せっきりだったし。
「うーん……ちょっと頑張りすぎてたのかなぁ?」
そう思いつつ、今日も張り切っているミルだった。
「おーい、ショウさん!シンさん!!」
「ん?おぉ、ミルちゃんですか。久しぶりですねぇ」
「そうですねぇ、最近頑張ってるんでしょ?」
「はい、おかげ様であんまりこれなくて……」
私が挨拶をすると、ショウさんとシンさんも返事をしてくれる。
いつもの日常だったそこに、違いが現れた。
「ん?あなたは……?」
「え?」
私が声が聞こえてきた方を見ると、そこにはヨノワール――ユーレがいた。
「なにをしていたんですか?」
「いや、ちょっとした雑談ですよ」
「ユーレさんは物知りですから、色々な事を教えてもらってたんですよー」
へぇ……ラルドはなんか嫌いだって言ってたけど、私はそうは思わないなぁ……。
「ねぇ、ショウさん、シンさん。セカイイチの入荷予定ってある?」
「え?ああ、すいません。セカイイチを取る人たちは、殆どの人があっちの地方へ持っていくので……入荷予定はないですね」
「そう……」
ペルー、滅茶苦茶に発狂するんだろうな……と、考えつつも、立ち去ろうとした時。
見慣れた姿が走っていくのを見た――。
「もしかして……ルリちゃん、マルルちゃん!!」
「はい?ああ、ミルさん!」
「ミルお姉ちゃん!」
「久しぶり♪」
あれから少しルリの呼び方が変わった(もちろんヨウム事件の時から)
私とラルドとフィリアの事を、それぞれお姉ちゃんやお兄ちゃんをつけて呼んでいる。
悪い気はしないんだけど、なんかずっと妹……ああ、思い出さないようにしてるんだった。
「なにをそんなに急いでるの?」
「以前、私達が言ってた落し物があるじゃないですか!」
「あぁ、確かにそんな事言ってたね」
前にヨウムと初めて会ったとき……に、言ってたよね?
「それが……水のフロートって言うんですが、それが海岸にあったって情報を聞いたんです!!」
「だからね、私達。急いで海岸に行くの」
「じゃあ、早く行かなきゃね。ごめんね引き止めて」
「いえ、いいんです。じゃあ、それでは」
マルルは深くお辞儀をして、走っていく。
ルリも同じ様にして走って行った。
それを見ている者がいるとも知らないで……。
「二人とも、頑張ってるんだね」
「すいません、ユーレさん。水のフロートとは?」
「水のフロートというのは、トレードというものを繰り返してやっと手に入る、ルリリの専用道具ですよ」
「へー、私の店じゃ、絶対に入荷はできませんね」
そうよね、そんな貴重な物を入荷なんて……ん?入荷?
「あー!!セカイイチの事を忘れてた、急いで戻らなきゃ。じゃあね、ユーレさん、ショウさん、シンさん!!」
そして、私は急いで走ってギルドへ向かう。
「あの子は……?」
「ああ、ミル・フィーアという子ですよ。最近探検隊になって、確かラルドってピカチュウの子と一緒に組んでるんですよ」
「ラルド……?」
その時、ユーレの中でなにかが繋がりかけた。
その後、ミルがセカイイチの入荷予定がないと報告すると、ペルーは滅茶苦茶に発狂したとさ。
次回「脅迫のエレキ平原」