第二十九話 彗星
あれから俺達はギルドに戻り、今までの事を弟子達とペルーで言い合い、それを纏める。
そんな作業をしていた。ちなみにプリルは自分の部屋で寝ている。
ちなみに書いたのは何故か一番活躍したともいえる俺だった……。
そして、それは翌朝の事だった。
〜☆〜
「ふぁあ、朝か……?」
「起きたか……」
「げっ、お前かよ……」
俺が目を覚ますと、そこには外を眺めているシルガがいた。
まだフィリアのほうが良かった……。
その直後、フィリアが寝ながらラルドにエナジーボールを放ったという……。
「痛ってぇー!!この蛇野郎。絶対に起きてやがる!!」
「五月蝿い……俺は静かな方が好きなんだぞ」
「知るかよ。ってか、お前がいっつも騒ぎ起こしてんだろ。騒ぎ起こしの張本人が何言ってやがる」
実際そうだろう。だって、こいつ本当に嫌味で騒ぎしか起こさないんだぜ?
「……やはりか……」
「どうした?いつも以上にその房が逆立ってるぞ?」
「……別に。なんでもない。ただ……嫌悪感が感じれたからな」
「……そういえば、お前って凄いよな。波動使えるから」
俺は暗くなりそうだった雰囲気を少し紛らわした。
でもまぁ、波動を使えるってのは凄い事だと思う……。
「勘違いするなよ。リオルは森羅万象。全ての万物の喜怒哀楽などを”波紋”として感じれるだけだ。俺みたいに波動をここまで完璧に扱えるリオルはいない」
自分で完璧って言うなよな……って、えぇ!?
「って事は……お前って特別なの?」
「特殊能力を扱える上、元人間。それに別の魂が体に入り込んだお前にだけは言われたくない」
この言葉に俺は何かが切れる。
だって……挑発的なんだもんな……。
「そんな事言ったら、元人間の俺を元から知っていて、しかも解放の事にも妙に詳しいお前にだけは言われたかねーよ!!」
「憑依されたピカチュウ」
「波動使える変なリオル!!」
今ここに、なんとも低レベルな口喧嘩が始まった――。
「へっぽこシルガ!!」
「へっぽこはお前だろう?それとも雑魚か?」
「冷静沈着!!」
「そう言ってくれて嬉しいよ」
まぁ、大概はシルガが受け流すのだが……。ラルドもただでは済まさない。
「……虫」
「っ……なにがだ?」
「キャタピー」
「そんなのがこんな所に……」
瞬間、シルガの目の前にキャタピーが現れた。
ちなみに以前も使った吃驚箱なのだが……。
「……バタッ」
「自分で言ってやがる……まぁ、これでこいつは倒れたな」
「ぎゃー……」
「本当に気絶してるのか?まぁ良いけど……って、もうこんな時間かよ」
ラルドはふと時計を見る、すると長身は十二、短針は七を指していた。
……ちなみに“午前”の七時だからな?当たり前だからな?
「おーい、フィリアーミルー起きろー」
「もう食べられないよぉ……」
「はっはっはっは、ラルドもシルガも弱いねぇ……」
諸兄執行確実。よしやろう。
「音を重視した放電を放ちますよ、えぇはい」
瞬間、エンジェルの部屋から雷が落ちたかと思うほどの音が鳴り響いたとさ。
〜☆〜
あれから一時間……皆が朝礼に出席する中、シルガは来なかったと言う。
しかも、ミルとフィリアが何故か耳を押さえていたという。
「皆、今日も張り切って行くよ!!」
「「「おぉおお!!!!!」」」
あの遠征から翌朝だからか、皆が張り切っているようだった。
いや、でも……あの後大変だった。解放の手伝い代とか言って、レインに体が乗っ取られたんだからな……(今までの事を書いているときはレインだったんだよ♪)
「じゃあ、皆。今日も張り切って“お尋ね者”を捕まえに行こうぜ」
「嘘だ!!」
「本当だよ。と言うかどうしたの?なんか怯えてるような……」
「だ、だって!グラードンと戦ったばっかりなんだよ?それなのに……お尋ね者なんて……」
いやいや、普通だろうな。グラードンとは格が違うし。
「じゃあ、この『零点下の氷洞』って所に落ちてる宝物を拾って来いって依頼やる?俺は分厚いコート着ていくけど」
「寒いの苦手なら言わないでよ!しかもいつ取りに行ったの!!」
「起きてから……十分後?」
「なんで十分!?」
いや、だって……シルガが五月蝿いんだぜ?
なんていった日には、フィリアに「君もだろう!!」といってエナジーボールの餌食に……。
――あれ?
「そういえば……シルガは?」
「寝込んでるよ。虫……虫……って魘されながら」
「魘されてる……どれだけ虫嫌いなんだよあいつは……」
キャタピーの吃驚箱なんて、赤ちゃんでも驚かないぜ?
と、やはり今日も無駄な考えに頭をフル回転をしていた途中……。
聞いた事がある大声がギルド全体に響いた。
「……この声って……」
「ボイノ?」
「なんだろう。近所迷惑だよ」
いや、このギルドは地下にあるし、しかもここは崖の中だからな?絶対に近所迷惑にはならないよ?
と、思っていると間もなく第二声が響く。
「ディル!!お前の役目は足型を見て、どのポケモンかどうかを見分けるんだろう!?それがなんだ、解からないって!!」
「だってー、足型が無いんだもん……」
足型が無い……と言えばゴーストタイプか?でも一部足があるからな……ゴーストとかか?
「解からないなら名前を言ってもらえ!!」
「解かってますよー。えー、すいません。お名前を教えていただけませんか?」
こいつら、いつか絶対に喧嘩しそうだな……と、中から声が聞こえてきた。
『はい、私の名前はユーレ・ディアレイです。一端の探検家の一人の』
「え……?」
「な……?」
ユーレ・ディアレイって名前を聞いた瞬間、二人の動きが止まる。
それはほんの一瞬だったが、どれだけ凄いかは……解からなかった。
「なぁ、ボイノ。ユーレ・ディアレイって誰?」
「なっ……お前、ユーレさんを知らないのか!?」
いや、だって……しかもこの名前には何故か嫌悪感を抱くしな。
「そんな権利振りかざしてそうな奴は知らねぇよ」
「お前……全く、ユーレさんは凄いんだぞ!?数々のダンジョンを単独でクリアし、尚且つ一度受けた依頼は絶対に何があっても遂行すると言う……あ、入り口を開けなきゃ!!」
……とりあえず関わりたくは無いな。
「それにしても、一人でダンジョン制覇するのが珍しいか?俺なんかそれよりもっと厳しいぜ?」
「へー、なにが厳しいの?」
「毎朝シルガと喧嘩して、依頼を受ける。その後にシルガと喧嘩をして、エナジーボールを喰らって、しかもお仕置きとして晩飯抜き。どうだ?単独より厳しいだろ?」
「別の意味で凄いよ。と言うか、自覚あるのならやめなよ」
自覚は普通あるだろ……無かったらそれはミル以上の馬鹿だぞ?
「今、なんか失礼な事を考えなかった?」
「いえ?別に何も?」
こういう時にはしらばっくれるのが一番!
そして、何分か経った後……。
〜☆〜
「そうですか……つまり遠征には失敗したと?」
「うん、もっと簡単かなぁ?と思ってたんだけどねー。霧が晴れないから、何にも見えなかったんだよー」
あれからはユーレがプリルに質問攻めしていた。
そして最後は今回の遠征の事……まぁ、約束は守ったんだよな。
「いや、いいですよ。今回かの有名なプクリンのギルドが遠征に赴くと聞いたので……」
遠回しに悪口を言ってるような気がするのは俺だけか?
「なぁ、ソーワ。あの……そうそう、ユーレとプリルって知り合いなのか?」
「いいえ、そんなのは聞いたことも無いですわ。第一ここに来た事も無いですし」
「へー」
「ラルド。シルガも連れてくる?」
「いや、いいと思うぞ」
なんか、こんな短時間で疲れたような気がする……。
「ユーレさんは、このまままた流浪の旅に出るの?」
「いえ、暫くはここに滞在します。探検隊のオアシスとも呼ばれるトレジャータウンに折角来たんですから」
え?トレジャータウンってそんな有名なの?
「ほー……お前達。話などを聞くのは良いが、決してサインなど貰うなよ!!」
そういうペルーの視線の先には色紙がある。……とか言いながら、自分が真っ先に貰うだけだろ。
「いや……いいですよ。サインくらいは」
「そうですかー。ならばお言葉に甘えさせてもらいますよー」
棒読み寸前だな。
「じゃあ、私はこれで」
「さよならー。また来てねー!!」
絶対に知り合いだろ……それともプリルが非常に交友的なのか?
「……じゃ、じゃあ。各自持ち場に着け!エンジェルはいつも通りに依頼をこなしなさい!!」
完璧にサイン貰いに行く気だな。しかも弟子達が……とかの理由を創って。
目の前のペルーを見れば一目瞭然。
「ユーレか……一体誰なんだ?」
「今インターネットで調べたら、彗星の如く突如現れ、数々の難依頼を失敗無くこなしたらしい」
(インターネットあるのか……)
インターネットの存在に驚きつつも、案外技術も進歩してるんだなぁ……と思ったり。
「じゃ、“お尋ね者”をやるか♪」
「えぇ〜!?」
そして、いつも通りの日常を今日も過ごしていく。
それを邪魔する存在が現れたともしらないで……。
――ちょっと……嵐が吹き荒れそうだわ……――
一人ラルドの中で、なにかを予兆したかのような言葉を漏らすものがいた――。
ちなみにあの後、シルガを忘れてたのを気付いて、急いで起こしに行ったらしい……。
次回「落し物、名は水のフロート?」