第二十七話 時を護りし湖
今、俺は非常に優勢だ。だって、解放と言う特殊能力を使えるようになったのだ。
当然、そんな俺にグラードンなんて敵じゃない……じゃなくて、やっと互角になれた。
しかもなんだよ。可笑しいよ?目がエメラルドグリーンになるなんて。
……と言う事で、俺達は今、逆転劇が始まるのであった。
〜☆〜
「行くぜッ!!俺達の逆転劇!!」
「フィリア、エナジーボール」
「なんで君が僕に指示を……しょうがない。エナジーボール!!」
「私も、目覚めるパワー!」
二人の技がグラードンに直撃する。
グラードンは一応遅いので、殆どの攻撃が直撃する。
――でも、なんでさっきから動かないんだ?
「グ……ォオオオオ!!!!」
「うわぁッ!?」
グラードンの爪に紫のエネルギーが纏ったと思うと、その爪を俺達に向かって振り下ろす。
それは、驚異的な破壊力だった。その爪が直撃した岩が大破したのだ。
「これは……”ドラゴンクロー”!?」
「ビルドアップも積んである……これは驚異的な破壊力だぞ。気をつけろ。奴の攻撃が全て強化されている」
「うん……じゃあ、あの作戦を実行するしかないね」
「作戦?」
なんの作戦だ?いや、多分俺のいない間に考えたんだろうな……。
……そういえば、なんか新しい技でもやってやろうかな……。
「おい、ラルド。これをグラードンの口に入れろ」
「ん?これは……邪悪な種?うわぁ、絶対にこれを食べさせたらお前らにオクタン殴りにされるな」
「そんな当たり前の戯言をぬかすな。ほら行け」
「へーい、じゃあ保険と言う事で……”超帯電≪ボルテックス≫”!!」
刹那、ラルドの体が碧く光りだす。
帯電を超えた帯電……超帯電状態になったからだ。
「行くぜ……高速移動!!」
「グガァアアアアアア!!!」
ラルドは高速移動でグラードンの前まで移動する。
グラードンも負けじと”ドラゴンクロー”をラルドに向かって放つが、バックステップで避けられる。
「はい!邪悪な種!!」
「グガッ!?」
グラードンの口に邪悪な種を無事入れ、俺は置き土産に電撃連波を放つ。
しかもなんか電撃連波の数が五つから十つのなってたし……。
「ふん、作戦は成功か……行くぞ」
「了解、合体技……」
「「ボルトウェーブ!!」」
ラルドが放った広範囲の電撃波に、シルガが衝撃を加える事によって電撃の波ができる。
その波にグラードンは足をとられ、転ぶ。
「今だッ!」
「解かってるよ!一々命令しないでくれ!!」
「フィリアも相当お怒りだね……行くよ、”シャドーセリエス”ッ!!」
「ソーラービーム!!」
二つの技は寸分狂わずにグラードンの顔に直撃する。
シャドーセリエスの方は高い技術が必要だが、それは置いといて。
「グォオオオオ!!!!」
グラードンも”ドラゴンクロー”で迎え撃つ、が力負けしてしまい、結局直撃する。
「これは……邪悪な種だけじゃない。まさか……お前ら猛撃の種を!?」
「戦場では、一手も二手も先を読む方が勝ちだからな……今からあのグラードンの動きを止める。お前は今もてる最高の力で、あいつを倒せ」
「了解……超帯電。チャージ……」
シルガの言葉を信じ、ラルドは電気を溜める。
その姿はより碧さが増し、神々しかった。
「行くぞ、グラードン……接続≪コネクト≫!!」
「グギャアアア!?」
突如、グラードンが喘ぎ声を上げる。
恐らくエスパータイプの技だろうが……リオルはエスパータイプの技は覚えない。
「何が起こってるの?」
「……もし二人の言ったとおりに、あのグラードンが偽者で、念力かなにかで創られたのなら……その念力を妨害できたら、グラードンを消しは出来なくとも、動きを止められる……全く、凄いよあの二人は」
フィリア達も後ろでエネルギーを溜めている。
万が一の時の為に、ラルドが攻撃すると同時に自分達もする為に。
「グゥォオオオオ!!!!」
「行け!時間が無い、お前達もだッ!!」
「元よりそのつもりだよ……ミル」
「解かってるよ!ラルド!!」
「ああ、グラードン、俺達の全力を喰らえ!!」
瞬間、ラルドが両手を翳し、そこに巨大な電撃の塊が出来る。
フィリアは新緑と猛撃の種を掛けて、ソーラービームを放とうと。
ミルは口が黒く光り、発射口をグラードンに向ける。
そして……。
「行くぞッ!!雷撃弾”シース”!!」
ラルドは巨大な電撃の塊を、
「倒れろッ!!”ソーラービーム”!!」
フィリアは最大威力のソーラービームを、
「これで最後だよッ!”シャドーロアー”!!」
ミルはシャドーボールをビームの様に放ち、それぞれの技は全て直撃する。
さしものグラードンもこの猛攻には耐えられずに――倒れた。
「お、終わったの……?」
「確かめてみるか?波動弾」
「ちょッ!シルガ!」
「……どうやら、本当に終わったようだね」
フィリアのその言葉と共に、俺達は脱力する。
だって……あんなに苦労したんだぜ?
「そういえば……なんでグラードンに雷が通用したの?」
「解放はそれぞれで特徴が違う。どうやらラルドの場合はタイプを無視できるらしいな」
「いや、他にもなんか体のエネルギーが尽きてないとか……」
「へー、あれだけの威力の技を放っても、まだ解放は解けないんだ……」
ん?そうなのか?まだ解けてないの?
っていっても、鏡もなにもないから……あ、そうだ。
「ちょっとミル。目を見せてくれ」
「ふぇ!?な、ななな、なんで!?」
「いいから」
そして、俺はミルの目を見る。
思ったとおりにこいつの目は鏡の代わりになる……。
って、うわっ!?本当だ。まだエメラルドグリーンの儘だ……。
「いや、解放は解けてるぞ。只単にお前の目は本当はエメラルドグリーンじゃないのか?」
「いやいや、そんなはずが……そういえばなんか力が抜けてきたかも」
「翠色の瞳のピカチュウって珍しいね。でもちょっとさっきより薄くなってるよ?」
「ああ、本当だね。でも珍しいね」
「……そういえば、グラードンはどうなって……」
ラルドがグラードンへ振り向いた瞬間、辺り一面が光に包まれる。
そして、光が収まると……グラードンはいなかった。
「えっ!?」
「グラードンは幻影だ。それより……本体であるユクシーは?」
「……隠れても無駄だ。生き物は必ず波動を出す。感じれば……そこだ!」
「――念力」
シルガが俺達の後ろに波動弾を放つ。
だが、それは念力によって相殺される。
「……やはりいたか。記憶を操ると言われるポケモン……ユクシー」
「はい。あなた達の戦いは見せてもらいました。そこのピカチュウがいきなり強くなったのは疑問ですが……そんな事はどうでもいいです。あなた達の記憶は消えてもらうしかありません」
「え?ちょっと待ってよ!」
「さよなら」
そういうと共に、ユクシーの目が光る。
それを見た瞬間、不思議な感覚に襲われたが……。
「なにも……起こってない?」
「なっ……!?」
「……ユクシーの記憶を消す能力は目と目を合わせ、特殊な念力で相手の脳を操作するからだ……逆に言うと、その念力を妨害すればいい……それだけだ」
そういうシルガの体は蒼く光っている。
恐らく波動で妨害したんだろうな……。
「ゆ、ユクシー!聞いて!」
「野蛮な探検隊に貸す耳などありません。即刻立ち去ってください!!」
「私達は確かに霧の湖を探しにきた!それは確かだよ。でも……でも、あなたがもし霧の湖を見てはいけないって言うなら、私達は遠征を中止する。プリルなら解かってくれるからね」
「……そんな嘘に……」
ユクシーは知識を司るポケモンと言われている。
このように自分を騙そうとする言葉も、全てお見通し。
「まぁ、無理に話さなくても良い。時の番人だから……な」
「ッ!?あ、あなた。いつどこでその情報を?」
「俺は知っているが、こいつらは知らないぞ?大丈夫だ。”話す”気はない」
「……解かりました。着いてきてください」
半ば脅しに近い形で霧の湖へ来る事となった俺達エンジェル。
そして、霧の湖に着いて――。
――霧の湖――
「ここが……霧の湖?」
「そうです。ここが……霧の湖です」
「へぇ〜……ん?なんかあそこにあるよ!翠色の……ラルドの目と同じ色だね」
「噴水かなんかの中だよな?蒼い……歯車?」
なんか、あれを見たら心がうずうずしてきた……何故だろう?
「あれは……時を護る物です」
「時……!まさか……」
「そうです。あれは――時の歯車です」
次回「遠征終了」