第二十五話 地神の強さ 仲間の絆
今、俺達は非常に拙い状態の中にいる。いつものようなギャグなどではなく、ましてやピンチだが安易に切り抜けれるような状態ではない。
それほど強いのだ、伝説の大陸ポケモンは。
『神』と崇められるポケモンよりは格段に弱いが、それでも強い。それも並大抵のポケモンなら、そこで土に埋まるほどに。
そんな伝説の大陸ポケモンを、俺達は……?
〜☆〜
「おいおい……これはちょっと拙いぞ……?」
「伝説との対決は、それ程の強さじゃなきゃダメだよ。多分、今の僕達では10分の1の力でも……土に埋まれるよ」
「……(こいつは……なにか可笑しいな。体から波動が出ていない……?)」
何か戦うような展開になってきているが、俺達は戦わずに、普通にここから逃げるため……。
って、アレ?シルガさん。なんでいきなり波動纏装してるんだ?おい馬鹿止めろ!!
「先手必勝だ。見てろ、『波動連弾』」
「グォオオ!!」
シルガは先手必勝で、波動連弾を放つが、それはグラードンの切り裂くによって文字通り切り裂かれる。
「貴様らは何者だッ!?いきなり攻撃するとは、敵か!?」
「やっと喋ったよ……俺達は探検隊エンジェル。この奥にある【霧の湖】を探しに……」
「グォオオオオ!!!やはり貴様らも物欲に身を任せた者達か!ならば覚悟しろッ!!グォオオオオ!!!!」
グラードンはいきなり怒りだすと、さっきのように、『マッドショット』を撃つ。
だが、これも守るにより、完璧に防がれ……はしなかった。
「きゃあっ!?」
「ミル!?そんな、守るを破るなんて……」
「さっきは遠距離からの攻撃だったからな、恐らく威力が落ちていたのだろう」
あれでも高威力だったのに……だけど、弱点も発見できた。
あいつの弱点。それは……。
「鈍間だって事だ!『十万ボルト』!!」
「グヌッ!?」
グラードンはいきなりの技に驚くが、直にマッドショットの溜めにはいる。
「なんだ?この余裕……って、あれ!?十万ボルトが全然効かない!?」
「ラルド!こいつは地面タイプ、電撃は効かないよ!!」
「じゃあ、これはどう?」
ミルの周りに水色の光の球体が現れる。この技は……目覚めるパワー!
「行くよ……目覚めるパワー!!」
「僕も、エナジーボール!!」
「グォオオオ!?」
グラードンの弱点の二属性の攻撃は、グラードンの体力を大幅に減らした。
それでも大ダメージではないようだった。
「これでもダメか……?」
「でも効いてるはずだよ、もっと攻撃を続ければ……!そうだ、あれを使えば……ねぇ、フィリア」
「なんだい?……ふむ、それは大ダメージを期待できそうだね」
「指示は私が出す。行くよ……『シャドーピンボール』!!」
ミルが技名を放つと同時に、紫色の弾が複数現れる。
そして、それに続いてフィリアも複数のエナジーボールを現す。
それは、まるで緑と紫の弾が、踊っているかのように……。
「行くよ……ラルド!アイアンテール使える?使えたらシルガと一緒にグラードンの気を引かせて!!」
「ああ!解かった!!グラードンこっちだッ!」
「舐めるな……ッ!?」
「遅い、遅すぎる。今宵の血は疼く。俺の生贄となってもらうぞ……『波動纏装……」
シルガは技の溜めを終えると、神速でグラードンの顔に跳躍し……。
「解放≪バースト≫』!!」
シルガの周りに纏う蒼い光が消えると同時に、、強力な波動の衝撃がグラードンを襲う。
それは、グラードンを怯ませるには十二分な威力だった。
「今だ!ミル、フィリア!!」
「うん、解かった。行くよフィリア!」
「うん、ミル。僕達の合体技……」
「「紫翠跳弾ッ!!」」
瞬間、ミルとフィリアのエナジーボールとシャドーボールが合体し、そこら中の壁に跳ね返る。
それは怯んだグラードンに近づいていき……。
「無防備だよ。グラードン」
「チェックメイト、だよ」
瞬間、紫翠跳弾が全て直撃し、グラードンは倒れた。
そして、そのまま動かない事十秒……。
「お、終わった……?」
「いや、油断はするな」
「解かってるよ。ミル、フィリア。大丈夫か?大活躍だったな。お前達」
「ああ、疲れたよ」
グラードンを倒した『気になり』、すっかり和みムードになるエンジェル。
だが、何故かさっきから続く異変があった。
「それにしても……暑いな」
「うん、直射日光が当たってるような……」
「……まさか!ミル、ラルド、シルガ!まだあいつは倒れていない!演技だ!!」
「へ……?」
瞬間、グラードンがその体ではとても無理そうな素早さで起き上がり、ミルに、向かってマッドショットを放つ。それはいきなりの事で、ミルも反応が出来なかった。
ただ、その中で一人、物凄い速さで反応した者がいた。
その者はミルをマッドショットから庇う。
自らの弱点と知りながら……。
「ラ……ルド?」
「へ、へへへ……大丈夫……そうだな」
「うん、私は大丈夫……って、ラルド、何?その赤いの……」
確信してかもしれない、解かってたかも知れない。でも、信じたくなかった。
それは……。
「血……かな?ははっ、意識が無くなってきたかも……」
「ラルドォ!!」
見たくない、見たくないよ……。
そんな考えが脳裏を過ぎる。
だが、そんな事を考えてる暇は無い。
「フィリア、シルガ。ちょっと待ってて。お願い」
「ミル……解かった。シルガ」
「ああ」
二人はグラードンの気を逸らすべく、攻撃を続ける。
ラルドは私を何度も救ってくれた。助けてくれた。
だから、いくら泣いても仕方が無い。
今度は……私の番。
「今度は……私がラルドを助ける番だ!!」
そして、ラルドの意識は、この言葉と共に深い闇へと消えて行った――。
次回「解放」