ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第三章 謎と遠征のクロス
第二十二話 霧の湖 前編
ここは海沿いの崖――。
あしばが悪く、更に海の勢いが強く、偶に崩れることがあるという……。
ただ、そんな場所にも、一応休憩できる場所はあった。
そこにエンジェルはいた――。







〜☆〜

「ふぅ、疲れたー」

「ふぁ〜あ、眠いよ〜」

「もう一時だよ?」

「口が動くのならさっさと動け」

あまりポケモンが乗ると崩れてしまいそうな場所、そこに俺達はいる。
……と言っても、あまり狭くは無いけど。

「なぁ、ここまで来るのにどれだけのダンジョン潜ったと思う?」

「ある時は獣道で有名な【獣燐の森】やら、ある時はゴーストポケモンの溜まり場となる【霊の墓場】やらに」

「偶々強いポケモンに合わなかったから良かったものの。あそこのポケモンのレベル高いんだぞ!?」

俺の正論に反論できないって事はないけど、普通休むぐらい良いだろ!
それに……。

「モンスターハウスに入ったとき、放電の連発だったんだからな?!」

「凄い凄い(棒」

「ふざけるなッ!」

「まぁ、ラルドも頑張ったんだよ?五分ぐらいは良いんじゃない?」

おお……女神ミルが現れた。

「そういうミルも。休みたいんだろ?」

「ギクッ!?」

フィリア!お前もシルガの仲間か!

「失礼な。こんな野蛮狼と一緒にしないでくれ」

「何だと?」

って、何で俺の心読めたし!?
シルガを何気に怒らしたし……。

「とりあえず。早く進もう。この【沿岸の岩場】を抜けたら次は【ツノ山】だし」

「ハードだな……じゃあ、早く行こうぜ」

「はーい」

俺も疲れたし、一番乗りでベースキャンプへ直行だ。
と、思って足を踏み入れた沿岸の岩場……。
そこでは、恐怖が俺を待っていた。



――沿岸の岩場――



「『十万ボルト』!」

「『ブレイズキック』」

「『突進』!」

「君達、働くねー」

あれ?今、なんか可笑しな声が……。
あ!フィリアの野郎、休んでやがる!!

「お前、働けよ!!」

「嫌だね。林檎食べてるんだ。食事中は騒いだらいけないだろ?常識だろ?」

「そうだけどな、戦闘中に林檎を食べる奴があるか!?」

絶対に俺の意見はご最もといわれるはずだ!!
当たり前だろうな。うんうん。
と、思っていたのが失敗だった。

「いや……腹が減っては戦は出来ぬって言うし……」

「それはそれ、これはこれ!ほらシルガからも何か言ってやれ……」

「いやー、林檎はおいしいなー(棒」

こいつら……。

「ほらほら、二人もちょっとふざけすぎだよ?」

おお!女神再び!!

「しょうがない。じゃあ、早く行ってベースキャンプで食べよう」

「ワンパターンだな」

「だめだこいつら……早く何とかしないと」

「じゃ、じゃあ行こうよ」

この遠征。俺達のチームだけグダグダになりそう……。
それよりも、早く行って休みたいんだが……。

「君も五月蝿いね……ん?何かがあそこにいるよ?」

「なにその説明みたいな言い方」

「でも本当にいる……?って、あ!!」

「おお?何だ?この距離でハッキリ見えたのか?」

ここから何かがいる距離は、決して肉眼でハッキリと見えるような距離ではない。
もちろん、イーブイという種族は目が良いわけではない。
それでも見えた……?

「で?何がいるんだ?」

「えーと、マリルリ……え?」

「へ?いやいや、そんなにレベル高いのここにいたっけ?」

「さっきからこんなトラブルばっかりだし、可笑しくは無いよね」

確かに色々なダンジョンで必ず一匹はレベルが高いのに会うが……。
それでも最終進化形態は無いわー。

「ここは、目潰しの種で……」

「あ、こっちに来た」

「ここは先制しなきゃ、『エナジーボール』!」

「何してんのぉーー!!?」

俺が目潰しの種を投げようとした瞬間、フィリアがエネジーボールを放つ。
いきなりの攻撃に怒らないポケモンは……いなかった。と言いたいところだったが、それが普通だった。

「お前なぁ……うおっ!?いきなり『ハイドロポンプ』?!」

「当たり前だな。うん」

「ちょっと眠ってて、『シャドーセリエス』ッ!」

「ミルも頑張るねぇ」

ミルは少しのエネルギーで抑えようと、高威力の『シャドーセリエス』を放つ。
当然の如く、全てのシャドーボールが直撃する。

「止めだ!『電撃連波』!!」

そして、ラルドが止めの『電撃連波』で攻撃する。
それも全て当たり、マリルリは戦闘不能に……。

「――って、うわぁあ!?」

ならずに、ラルドに『ハイドロポンプ』を当たる。
しかも、直撃なので大ダメージになる。

「ふん……『波動纏装』」

「いきなり本気かよ……?」

「獲物を狙うのならば、常に本気だ」

瞬間、シルガの姿が消える。
未完成『神速』だ。

「終わり……だ。『波動掌』」

技名を放った瞬間、蒼い波動に包まれたはっけいが、マリルリを吹き飛ばす。
その威力は折り紙つきだ。

「狩猟完了……波動纏装解除」

「無駄に疲れた……なぁ、もうすぐ出口だよな?」

「うん、と言うか、あそこに出口あるでしょ?」

と、言われたとおりにフィリアの指差す方を見ると、そこには出口が。
しかもご丁寧に出口と書かれた看板が。

「誰が書いたんだ?」

「さぁ?それより早く出よう。ちょっと蒸し暑くなってきた」

「そうだね。早く行こう」

「はいはい。ああ疲れた」

ちゃっかり苦労役になったラルドであった。
ちなみにいつもの苦労役はフィリアだが、あまり苦労はしていない。
やはり世代も交代と言う事か……?

「じゃ、続いてツノ山に行こうか。まだ二時だし」

「早く着きそうだな……」

「でも……お腹すいたー!」

「セカイイチでも食うか?」

うわっ!?いつの間に持ってきたし。
……それにしても、何でこんな甘い林檎があるんだろう……。

「ふぁひはふぉー(ありがとー)」

「はへははらはへへない!(食べながら喋らない!)」

「お前もな」

「ばれたか……」

「隠せてねーし!」

こいつらは……今が遠征と言う事を忘れてやがったな?
……俺も忘れてたけど。

「あれ?ここに入り口が二つあるよー」

「ツノ山が目的だけど……ここはやっぱり……」

「うーん、ツノ山が目的だから……やっぱりここは」

「「右(左)でしょ」」

あれ?フィリアと意見が食い違った?
……どうしようか、ちなみに俺は右な。

「ここは右って相場が決まってる!!」

「いやいや、だって右だとありがちじゃない?それなんかここに小さな穴が開いてあるし、どうせここに戻ってくるんだろ?そっちに行ったら」

「いやいや、解からないだろ、そもそも……」

「右だからね。早く行こうよ」

うわっ!?いきなりミルが現れた。
でも右賛成か、よし、賛成意見来たコレ。

「シ、シルガは!?」

「残念だが、ここは右で間違いない」

「そ、そんな……」

落胆してる、馬鹿め。
それにしても、なんでシルガが知って――。

「この前、修行の前の肩慣らしならぬ足慣らしでここに来たとき……」

「とっくに攻略済みな落ち!?」

「まぁ、そうだろうね」

「早く行こうよ。もうお腹が空いてきたよ」

「「早ッ!?」

なんか、今日は早いって言葉を使うのが多い気がする……。

そして、二時間後……。







――ベースキャンプ――

「うわっ!?霧が深い!」

「あれから結構疲れたね……」

「まさか虫ポケモンがいるなんて……おかげでシルガが死んでるよ」

「ピクッ……ピクッ……」

あれからなんやかんやでベースキャンプへ到着した一行。
だが、そこにはすでに他のチームが見えた。

「あら、もう着きましたの?」

「早いわね。新入りさん」

「フウさんにソーワ。先に来てたのか?」

「凄いね、私達より先に来るなんて」

「あら?新入りなのにこんな早くに来れる事は珍しいですわよ?」

まぁ、途中に虫ポケモンが出なければ時間的に勝てそうだったんだけど……。

「そういえば、今回の遠征の目的ってなんなんだ?」

「ペルーは後で話すって言ってたけど……私達も予想はついてるわ」

「なんなの?」

「僕も大体解かったけどね」

え?フィリアが解かった……だと?
ああ、そういえばこいつって、名家だったっけ。だから知識も豊富なのか。

「目的は……【霧の湖】という場所らしいですわ!」

「霧の……湖?」

瞬間、頭の中になにかがよぎる。
だが、それはほんの一瞬の出来事であり、何が過ぎったのかは知らない。
でも……変な感触だったのは確かだ。

「しかもそこには、【時の歯車】があるって噂もあるんですわよ!」

「それにね、私達が途中聞いた情報だと、なんとそこには伝説のポケモン。ユクシーがいて、もし霧の湖に行けたとしても、そのユクシーに『記憶』を消されちゃうらしいの」

「記憶を……消す?」

記憶……じゃあ、もしかして俺の記憶はユクシーに消された可能性も……?
と、考えていたが、現実に引き戻される。

「おーい!エンジェル。お前達のテントがあるから、そこで休め!」

「空気読めよ……じゃ、またな」

「また話が聞きたかったらいつでもいらっしゃい」

「お待ちしますわー!!」

じゃあ、また明日!!
と、挨拶をして、俺達は自分達専用のテントへ入る。
そして、そのまま時は流れた――。



「勘違いをしないといいがな……」

闇夜に赤く光る目は、赤い石を森へ入る道の途中へ置き、言葉を漏らした。
その月明かりに照らされた姿は、正に狼だった――。



次回「霧の湖 後編」

ものずき ( 2012/07/31(火) 20:38 )