ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第三章 謎と遠征のクロス
第二十話 遠征前夜
今日は、遠征発表の日から六日目……。
明日が遠征なので、頑張って修行に励む者も、ゆっくり休む者もいた。
そして、その中で……。

「行くぞ!!『波動弾』!!」

「へっ、そんなもの……『電撃波』!!」

と、こんな風に戦っているのは、シルガと俺だ。
え?何故、いきなりそんな展開なのかって?
……この理由は、少し時を遡った話だ……。







〜☆〜

「皆、今日は久方ぶりに、親方様が朝礼に出るよ」

あれ?そんなに出てなかったっけ、プリル。
だって、親方だよ?そんなのダメだろ。
――って、俺達の初めての朝礼でも、出てなかったじゃん!!
まさか……おいおい、そっれは訴えれるぞ?

「永らく仕事に出掛けていたらしいが……何でも、時の歯車を盗んだ犯人への対処の会議だそうだ」

「きゃー!!さすが親方様ですわー!!」

「さすがだな、それでこそ親方様だ!」

あれから一ヶ月ぐらい経ってるんですけど……。
……って、あれ?何で時の歯車?俺達の最初の時から出席してなかったよね?

「じゃ、親方様!!出てきてください!!」

絶対、このギルドではこれが日常茶飯事なんだろうな……。

「ぐぅ……ぐぅ……」

プリルが出てくると、俺はどんな事を言うのか、少し胸の鼓動が早くなる。
だが、真実は違った。

「ぐぅ……ぐぅ……」

へ?嘘だろ?まさか……。
寝てやがるッ!?

「……ヒソヒソ(出たぜ、親方の寝ながら朝礼に来るの)」

「……ヒソヒソ(きゃー、久しぶりに見たですわ!!)」

「……ヒソヒソ(お茶目な親方……)」

上からボイノ、ソーワ、フウ、という順番だ。
しかも最後、何だよ……。

「有り難いお言葉、有り難うございました。親方様」

えっ!?あの言葉解かるの!?
どう聞いても、「ぐぅ……ぐぅ……」としか言ってなかったよね!?

「なぁ、ミル。何て言ってたか解かったか?」

「ううん、全然解からなかった」

「だろうな……」

おいおい……何で解かるんだよ!!

「じゃあ皆、今日も張り切っていくよー……と、言いたい所だけど、今日は皆、休みな!!」

「え?」

「明日に遠征が控えてるんだ。それなのに探検で怪我なんかされたら、堪ったもんじゃない」

案外、言わないでも解かるな。
まぁ、俺は休まないけどな!!

「なぁ、ペルー。必要な物を買うとかはいいか?」

「ん?ああ、別に良いぞ。遠征の準備ならなんでも」

「へぇー、『何でも』、だな?」

「ああ、どうしたのだ?そんな『何でも』を強調する……って、うわぁああああ!!!??」

ペルー、悪いけど、少しの間眠っててくれ。
へへっ、これで……道場に行ける!!

「よっしゃあ!!皆は休んでるし、誰にも文句は言われなーい!!」

俺は『高速移動』で道場へ向かう。
……って、あれ?どこにあるんだろう……。




――トレジャータウン――



「えーと、確かタマゴ預けやの直横……あ、あった!!」

ラルドはラッキーというポケモンが経営する、タマゴを預かる施設の横にある、いかにもオンボロな道場にやって来た。
それにしても、ボロボロだな……。

「ガラガラ道場……?ガラガラ?ああ、中が空いてるのか」

俺は名前を勘違いして、中へと入って行った。




「ここが……ガラガラ道場?」

「何だよ、本当にガラガラだな」

「そうそう、ガラガラ……って、うわぁあ!?」

「そんなに驚くな。五月蝿い」

え?嘘?何で……シルガがいるんだ!?

「俺もここに来ようとしたんだ。そしてら、ペルーに引き止められてな……」

俺と同じだな……まぁ、俺は力ずくで来たけ……。

「仕方なく『ブレイズキック』で吹き飛ばしてきた」

「俺より質が悪いっ!!」

「自分もやったくせに、何を言っている」

へ?何故ばれた?

「お前の波動を見れば一目瞭然。と言うか、元からペルーが焼き鳥になてっていたしな」

「更に焼きを入れたのか……極悪非道だな」

「お前もな」

全く……何でここに来たんだ?こいつ。
……あれ?そういえばここの主は?

「ん?何か書いてあるぞ?」

「え?何々、『しばらく留守にします。タダで使っていいので、自由に修行の場として使ってください』だってさ」

「……それは好都合だな」

「同感」

もし暴れすぎて、追い出されたら堪ったもんじゃないからな。
じゃあ……。

「一時間後……ここで会おうぜ」

「その時には、俺は全ての間をクリアしているな」

「……間って何だ?」

「なっ……!?」

え?何?その「そんなのも知らないのかよ……」って顔!?

「それぞれ「ノーマル、飛行の間。悪、炎の間。岩、水の間。草の間。電気、鋼の間。氷、地面の間。格闘、エスパーの間。毒、虫の間。ドラゴンの間。ゴーストの間』という具合に分かれている」

「多いな……じゃあ、俺は『氷、地面の間』に行こうか」

「俺は『エスパーの間』だ。その後に色々行くがな」

じゃあ、俺はこのままタイムアタックで全制覇をするんだな?
燃えてきたぜ……。

「じゃあな!!また一時間後に!!」

「その時は俺がお前を倒してやる」

そして、一時間後――。








〜☆〜

「へへっ、行くぞシルガ!!」

「来るなら来いッ!!」

あれから一時間。
俺はシルガと戦っている。
それにしても、結構強くなった気がするな……。

「『雷パンチ』ッ!!」

「『見切り』」

ラルドは初手に雷パンチを放つが、見切りで避わされる。
それはまるで、最初に戦ったときのようだった。

「『電撃波』!!」

「『波動弾』」

ラルドも負けじと『電撃波』を撃つが、『波動弾』で相殺される。
すると、小爆発がおき、煙が漂う。
当然、ラルドは視界が利かないが、シルガには『波動』があった。
それは、確実に相手を見つけれる、正に隠れて闇討ちするには、絶好の特技だった。

「へっ、俺はこんなのに惑わされ無えぜ!!」

「どうだか……『はっけい』!!」

シルガは煙から一気に現れ、『はっけい』を撃つ。
だが、それは当たらなかった。

「『見切り』!!」

「なっ……!?」

俺は見切りを使い、シルガの隙を狙う。
そして……。

「最高出力!!『雷……」

「ッ!!」

「ダブルパンチ』!!」

「ぐぉお!?」

俺は両の拳で、がら空きになったシルガの背中を思いっきり殴りつけた。
それを受けたシルガは、衝撃により、地面に叩きつけられる。

「ぐっ……波動弾!!」

「残念、見切り」

まるであの時の立場が逆転したかのような戦い方をする二人。
だが、シルガやラルドも、あの時とは実力が違った。

「負けるか……ッ!!」

「へへっ!!呆気なかったなぁ!!」

「なっ……に?」

「行くぜ!!止めだッ!!」

ラルドは手に電撃エネルギーを集め、一気に解放した。

「行くぜ……『チャージビーム』ッ!!」

「負けて堪るか……行くぞ『波動纏装』」

瞬間、チャージビームはシルガに直撃し、小さな爆発を起こした。

「やったか!?」

「何がだ……?」

「へ……?」

俺は後ろからの声に振り向く。
すると、青い光を手に纏ったシルガを見た。

「『波動掌』」

「ぐわぁあ!!?」

いきなりの攻撃に、手も足もだせずに直撃を食らうラルド。
その威力は、あの時よりは小さいが……。

「それでも……喰らうな」

「当たり前だ」

何だよ……じゃあ、俺の本気を見せるぜ、負けてちゃ悔しいからな!!

「じゃ、行くぜ!!帯電【ボルテージ】改!!」

「っ……?」

ラルドが技名を言うと、体が青白く光り、体に電気が奔る。
しかも手の毛が青白い光りを纏って逆立っていた。
その姿は、普通の帯電【ボルテージ】より、強いのは一目瞭然だった。

「汚名返上だぜ……」

「汚れてないだろ?まだ……な」

「強がってられるのも、今の内だぜッ!!」

そういうと、俺は消えた。
いや、高速で走った。
シルガも一瞬戸惑ったたが、直に未完成の神速で追いついてくる。

「終わりだ!!『十万ボルト』!!」

「『波動弾』!!」

お互いに技がぶつかりあい、相殺しあう。
その力は、丁度互角だった。
そして、三十分後……。




――探検隊の間――




あれから戦い続けた俺達は、いつの間にか『探検隊の間』にいた。
だが、一向に戦いは収まらない。

「決着が着かねぇな……おいシルガ。次で最後にしようぜ」

「ん?どうした?へばったのか?」

「違ぇよ!!」

「まぁいい。行くぞっ!!」

そういうと、シルガは真空波で作った衝撃で、空中へ跳んだ。
これは……あれか。

「行くぞ……波動掌ッ!!」

「あの時と同じか?まぁいい、行くぜ、五十万ボルトッ!!」

あの時と同じ技で、俺達はぶつかりあう。
おそらくここが潰れるだろうが……俺達はそこまで計算していなかった。
そして――。

「「行けぇえええ!!!!」」

爆発を引き起こした――。







〜☆〜

「あっ!二人とも、どこに行ってたの?」

「ちょっと……なぁ?」

「ああ、ちょっと買出しに……」

「買出しに行って、そんなに傷つくわけ無いでしょ?君達今から寝なさい」

時は変わり、今はあの十分後ぐらいだ。
あの後?……あの探検隊の間って所が潰れて、それで俺達は逃げてきた。
ついでに買い物もしたんだけどなぁ……。

「じゃ、睡眠の種」

「オイ待て!飯が食えない……ぐぅ」

「俺は直に回復す……ぐぅ」

「さすがフィリア、凄いね」

相変わらずのフィリアの無茶ぶりは、俺達を軽く眠らせれた。
だって、疲れてたんだもん!!
しかも……飯が食えなくて、俺達は朝を迎えた。
と、思ったのだが、俺は早く寝すぎたのか、目が覚める。

「あ〜……あれ?夜〜?」

突っ込みがいないと、こんな事も只の戯言になる。
そういえば……寝てたんだっけ?それで……って、今何時!?
俺は時計を見る。すると……。

「三時……だと?」

中途半端な時間に起きたな俺!?
……まぁ、いいや。なんか外を歩いとこうかな……。
そういえば、バルコニーがあるって言ってたな……行ってみよう。
そして、俺はバルコニーへと、足を運んだ。



〜☆〜



「ふぅ、眠れないなぁ……」

一人バルコニーで佇むのは、イーブイのミルだった。
しかも、かなり落ち込んだ様子で。

「はぁ、ちゃんと遠征に貢献できるかな……?」

私、ちょっと自信無いや……。
イートさんと戦ったときも、本当にギリギリだったし……。
と、心が折れるのを自分で加速させていた時。
――随分元気な声が聞こえてきた、しかも聞き覚えが……。

「おーい!!ミルー!!」

「ラルド……?」

「どうしたんだ?眠れないのか?」

「うん、それもあるけど……」

遠征に自信が無いなんて……言えないや。

「どうした?まさか遠征でちゃんと手柄立てれるかな?とか思ってるのか?」

――って、え!?何で解かったのッ!?

「そんなの、長い付き合いだからな。せめてチームの中では」

「って、何気にまた私の心読んでる!?」

「知らず知らずに口に出てるぞ?お前」

え?……え?本当に?
……恥ずかしい……。

「まぁ、そんな事は気にすんな」

「でも……」

「個人個人の手柄じゃなく、チームの手柄だぜ」

「え……?」

何のことだろう……?

「この前、お前の日記が落ちてたんで見てたら、そんな事が書かれてあった」

「勝手に見ないでよ!!」

「ゴメン、でもな、もしお前が手柄立てれなくても、俺が頑張るだけだ」

で、でも、私が少しも立てれなかったら……。

「まず、遠征にいけるかはまだ解からないだろ?……絶対行けると思うけど」

「うん……」

「気にすんな、さっきも言ったろ?『個人の手柄より、チームの手柄』この言葉の意味は、お前が一番解かってると思うぜ。俺は」

「ラルド……」

なんだか……胸が温かい……。

「心配すんな、俺が助けてやるから。その代わり、サポートとか、俺が再起不能になったりしたら、お前が頑張れよ?」

「うん……ラルド」

「何だ?」

「その……ありがと……ね」

「礼は要らねえぜ?お前の言葉を使っただけだしな」

まぁ、そうだけど……。
でも。

「それでもありがとう。ラルド♪」

「ああ、こっちもありがとな。ここまで来れたのはお前のお陰だ」

「へ?」

私なりの満面の笑みできっちりお礼の言葉を言ったのに……逆に感謝された?

「お前が誘ってくれなかったら、ここに俺はいなかったし、今頃多分死んでたし」

「そ、そんな事は無いよ」

「本当だって、だからさ。ありがとな、ミル」

「/////」

い、今の私の顔、どうなってるんだろう……。
あ、赤いのかな……?

「どうした?ミル。顔が赤いぞ?」

(やっぱり!!」

どうしよどうしよ!!……そうだ!!

「わ、私今から部屋に戻るね。じゃあね!!」

「ああ、俺はここにしばらくいるからな。明日に備えておけよー!!」

「わわわ、解かってる!!」

私は急いで部屋に戻る。
明日は頑張って、ラルドを見返そう!!
そうすれば、この気持ちも取り払えるかも……。
じゃあ、明日。またね。



次回「遠征出発」


ものずき ( 2012/07/29(日) 23:28 )