ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第三章 謎と遠征のクロス
第十五話 探検隊VS探検隊
俺は思いっきりの驚きの声を上げる。
遠征はそろそろやるんじゃないかってのは、ソーワとかから聞いてたけど......。
新弟子はメンバー候補には入れないって話じゃ......。
――って、ん?何だ?今の声。








〜☆〜

「誰だ!?出て来い!!」

いや、もう犯人誰か解かってたけど......。
って、あいつ、逃げようとしてやがる!?
あ、俺、聴力良いから、それぐらいは解かるんだ。

「もう解かってるから出て来い!!ミル!!」

「え......えへへ......」

満面の笑みで出てくるミル。
お前って奴は......。

「ミル......お前......」

「な、何?」

何か威圧感を放っているので、怒られる事は悟るミル。
恐らく盗み聞きの事を......。

「何こんな時間まで起きてるんだ!?」

(そっちー!?)

ミルはてっきり、盗み聞きの事を怒られるかと思った。
が、現実は違う。
狙ってやった、とも言えるラルドのずっこけ発言に、ミルは転びかけた。

「盗み聞きしたのを怒るんじゃないの!?」

「は!?そんな事はどうでもいい!お前は寝起きが平均九時なんだぞ!?」

「夜の?」

「朝に決まっているだろうが!!」

「は、ははは......」

ミルはこの状況を誤魔化そうと、苦笑いをする。
だが、ラルドには通用しない。

「とりあえず、早く寝ろ」

「だってー、眠たくないんだもん......」

「じゃあ、寝させてあげようか?」

そういうラルドの手には十万ボルトの電撃が......。

「寝ます!お休みなさい!!」

ミルは電光石火の勢いで、急いで自分達の部屋へと戻って行った。
全く......こんな時間まで起きやがって......。
ん?何か落としてる?

「えーと、レイ......チェル?何だこれ」

レイチェル......何でミルがこんな物を......。
確か、ミルの本名はミル・フィーア......。
繋げたら、ミル・フィーア・レイチェル......。
何だ?妙な違和感を......?

「あっ!ラルド!!」

「へっ!?」

後ろからの声に驚き、恐る恐る後ろを見る。
すると、ミルがいた。

「ねぇ、ここに落ちてるはずの紙、知らない?」

「え?紙?」

俺は焦る、尋常じゃないくらいに。
だが、一つの解決策を思いついた。
この紙をコソっと落として......。

「ん?コレじゃないのか?」

俺はわざとらしく紙を拾い上げる。
ばれてないかな......。
と、必死にばれない様に神頼みをする。
が、俺はミルの天然を、甘く見ていた。

「あ!ありがと♪ラルド」

「え?あ、ああ......うん」

ミルの天然は、もう常人の域を超えていた。
......悪い意味でな。

「じゃあ、お休み。ラルド」

「ああ、早く寝て、明日は早く起きて五回ぐらいに依頼するぞ」

「えっ......じゃ、じゃあ」

あの顔......遅くまで起きるつもりだな。
ま、無理だが。
でも......あの顔、なんか焦ってたな......。
気になるな......。

「まぁ、早く寝よ」

ラルドはあまり深く考えずに、明日物知りなフィリアに聞こうと思って、部屋に向かう。
が、それは叶わなかった。








〜☆〜

「う〜ん......ここは......?」

「ん?起きたのか?ミル」

「え?ラルド......?」

「ああ、日の出を見てたんだ。綺麗だぞ?」

「へぇ〜、私も見る!!」

ミルは上機嫌でこちらへ来る。
恐らく早起きをしたのが嬉しかったのだろう。
いや、でも......。
何か、嫌な予感がする......。
何も起こらなかったらいいけど......。

「なぁ、大広間に行こうぜ。俺達が先にいたら、皆ビックリするかもな」

「そう言えばそうかもね!じゃあ行こう♪」

「ああ」

全く......行動が早いな......。




――大広間――

「凄い!誰もいない!!」

「お前にとっては新鮮だろうな......」

「うん!早起きっていいね♪」

「はは......今更?」

やっぱり、ミルにはこんな事は珍しいのだろう。
でも、こんなにはしゃぐか......?

「はぁ......ちょっと疲れた」

「どうしたの?」

「何か......頭を使いすぎた。ちょっと最近、考え事が多くて......」

「じゃあ、今日は休んで良いよ。ラルド、最近頑張りすぎてるんだよ。今日は、副リーダーの私に任せて!」

「有り難うな。でも良いよ」

最近、ミルが頼もしくなったな......。
やっぱり、探検の成果だろうか。

「お?ラルドとミルか?ミルが早起きとは......珍しいな」

「むぅ〜、私だって早起きするんだもん!」

「ペルーか......何だ?」

「もう少しで朝礼だからな。私はいつも、この時間に来るんだ」

「遅いな......」

実は偶々だと言う事を、ペルーは知らなかった。

「きゃー!ラルドとミルですわ!早起きですわね!」

「本当、特にミルはね」

「ソーワ!フウ!失礼だよ?」

ミルは口を尖らして、後ろにいた――チリーンのフウと、キマワリのソーワにそういった。

「そろそろ、あの子達も来る頃ですわ!」

「あの子達?」

「あいつ達か......」

すると、いかにも無愛想なリオルと、上品気なツタージャが来る。
シルガとフィリアだ。

「よう。へっぽこシルガ」

「今日は早いな。雑魚ラルド」

「君達、会って早々喧嘩しないの」

「本当、仲良いね......」

「「良くない!!!」」

見事に息がピッタリだ。
本当、打ち合わせしてるんじゃないかな......。

「おっ、ミルとラルドか。珍しいな」

「おはようございます。ラルドさん。ミルさん」

「ああ、おはよう。ディル、ボイノ」

「ヘイヘイ!今日は早いな!」

「今度はガオンか。結構、この時間帯に皆来るんだな」

しかも、何か昨日ペルーが重要な事を知らせるって言ってたな......。
恐らく、昨日プリルが言ってた遠征の事だろう。
このことに関しては、ミルも知っている。

「今日はビーグやドツキも起こしてきたからな。もう直来るだろう」

「そういえば、サーイ、だっけ?あのダグトリオはどこで寝てるんだ?」

「ん?あいつはサメハダ岩で寝てるぞ?」

(おいっ!?)

何だよ、このギルドは......。
ギルドで寝ろよ、全く......。

「ふぁ〜あ、おはようでゲス......」

「ぐへへ、おはよう......」

「おお!おはよう皆!」

「一気に来たな......」

普通に皆が出てくる場所からドツキとビーグ、地面からサーイが出てくる。
サーイ......普通の場所から出でこいよ......。

「じゃ、皆揃った事だし、朝礼始めるよ♪」

「ああ、早くしてくれ」

「じゃ、まずは.....親方は出掛けてるから、あれだ。重要なお知らせだ」

「何ですの!?一体!!」

ハイテンションすぎる!!テンション高すぎるよ!?ソーワさん!!

「一週間後......遠征をする事となった」

「ほ、本当か!?」

「ヘイヘイ!!本当だな!?」

「きゃー!!久々の遠征ですわーー!!」

テンション高っ!?毎年こうなの!?
――って、毎年は無いか。

「ちなみに、新弟子はいつもは候補に入れないのだが......エンジェルも、候補に入れる事にした」

「きゃー!!本当ですか!?」

「ほう、ライバルが増えたな!面白くなってきたな!!」

あれ?意外に受け止めてくれた......?
何か、文句言われるかと思ったけど......。

「じゃあ、今日も張り切っていくよ!!......と言っても、まだ仕事するには早いから、休んでおいてくれ」

「おっ、ペルーが何時に無く優しいな」

「うるさいぞ!!」

そして俺達は、いつも通りの生活を送るために、体を休める。
が、今日は少し違った。
それが何なのかを、俺達はまだ知らない――。








〜☆〜

「ふぅ、そろそろ行くか」

「あ、僕とシルガは買出しに行ってくるよ。君達じゃ、喧嘩するしね」

「当たり前だろ?」

「いや、だから......」

何だろう、こいつ達が最近、面白くなってきた。
世に言う夫婦漫才って奴?

「じゃ、僕達は行くよ。ほら、シルガ」

「ああ、じゃあな。雑魚ラルド」

「買う物を間違えるなよ?へっぽこシルガ」

「ラルド!シルガ!」

ミルの制止で、俺達はやっと止まる。
やっぱり、こいつは気に食わねぇ......。

「じゃ、ミル。俺達も行こうぜ」

「うん!」

そして、俺達は掲示板に向かう。
だが、今日は一味違う。



――地下一階――

「さて!今日も依頼をこなそう......って、あれ?掲示板の前に誰かいる......?」

俺達は依頼を選ぼうと掲示板へ向かったが、その前に誰かいた。
誰だ......?

「ん?お前達は......?」

「げっ!?あの時の!?」

「ん?お前達は......?」

「あ!もしかして、あの時の......」

ミルはあの時の事を思い出す。
そして......。

「あ!もしや、あの時の毒風船と蝙蝠!!」

「イングとバルンだ!!」

ズバットが出しゃばるとは......。
ドガース涙目になるぞ?

「俺達初心者に負けたお前達が、一体何の用?」

「ふん!聞いて驚け、俺達は探検隊、ドクローズだ!!」

「「......」」

ミルとラルドは少しだけ呆れた。
いや、俺は結構呆れた。

「いや、お前達......。馬鹿じゃねぇの?いきなり探検隊って......」

「いやいや!?本当だぞ!?」

「仮にそうしても、あの時の一般人の俺達に負ける探検隊って......。信じられないな」

「あ、あの時は兄貴がいなかったからだ!!」

兄貴頼りかよ......。
全く、どっちにしろ根性無しじゃ無いか。

「って、ん?何だ?この鼻を突く様な臭い......」

と、俺が本気で呆れていると、何というか、変な臭いが漂ってくる。
これは......?

「どけっ!!」

「なっ......!?」

俺はいきなりの衝撃に、受身も取れずに、吹き飛ばされる。

「ふん!出しゃばるんじゃねぇ!!」

「なっ......!?この......種族は......スカタンク?」

そう、ラルドを吹き飛ばしたのは、紫と白の色のポケモン――スカタンクだった。

「お前も、こいつみたいになりたくなかったら、早く退け!!」

「うぅ......」

ミルは恐怖に駆られ、退くしかなかった。

「ふん、雑魚が」

「さすが兄貴!!」

「そこに痺れる憧れるー!!」

「プクリンのギルドも、こんなカスをシルバーランクにするなんて......墜ちたな」

「特に、このイーブイは、ですね!」

瞬間、ラルドの体に電気が奔る。

「はははっ!!そうだn」

瞬間、スカタンクの体は、吹き飛んでいた。
少しの電気を帯びて。

「な、なんだ!!?」

「ミルの悪口を言うな......」

「あ!?」

「ミルの悪口を言うな!!」

「っ!?」

スカタンクは、ラルドの迫力に少し後ずさる。

「あいつは......臆病だけど、それでもここまで必死に頑張ってきたんだ!!それを......お前達みたいな集団でしか威張り散らせない奴等が、馬鹿にする資格なんて無い!!」

「何を......」

「その通りだ」

「な、何だ!?」

スカタンクは声のした方――後ろを向く。
すると、右手に波動を集中させたリオルがそこにいた。

「今回ばかりは、賛成だな」

「頑張ってね。君が負けると、ミルが可哀想だ」

「解かってる......」

「ククク、なら、表へでろ!!決着をつけてやる!!」

「望む所だ!!」

そして、少しずつ、俺達の日常は変わっていく――。




次回「誇りを賭けろ」

ものずき ( 2012/07/22(日) 23:08 )