第十四話 確信と朗報
今、俺達は激流に飲まれ、息が出来ない状態でいる。
この意味、解かります?
何故か俺はカナヅチなんだ。
しかも、肺活量なんて常人のそれを超えている。
......悪い意味でな。
だから......どうなるかなんて、誰が見ても解かる事だ。
〜☆〜
あれから一分......いや、正確にはもっと早いのだろうが、俺にはそれぐらいに感じれる。
そんな時間、三十秒も息をとめれない奴がどうなるかなんて、誰でも解かる。
そう、気を失う。
俺は必死に意識を保とうと頑張った。
が、それも無駄だった。
恐らく、ミルも意識は失っているだろう。
......あれ?意識を失ってるのに、何故俺は考える事が出来るんだ?
何で......ナンデ?
だが、俺は間もなく息が出来るようになった。
が、最悪の形でだ。
何と、息が出来る......と、思ったら、何と空にいるではないか。
もう、何がどうなったか......解からなかった。
「......もう嫌だ......」
俺はとりあえず、ミルが無事な様な体制をとった。
結構、疲れるな......。
「......死ぬの......かな?でも、ミルだけは......!!」
ラルドはミルは抱きしめ、急降下していった。
俺は少しずつ地面に体が近づいて来るのを感じた。
より一層、力を体に入れ、ミルを守ろうとする。
が、待っていたのは地面じゃなく、温かい水だった。
俺はドボン、と言う音と共にその水に浸かると、その温かい何か解かった。
温泉、だ。
俺は顔を上げ、目を開けると......。
何とも不思議そうな顔をした、コータス、と呼ばれる種族のポケモンがいた。
「は、はぁ......とりあえず......助かった?」
「お、御主達......何者じゃ?」
「すいません。ちょっと空に打ち上げられて、ここに落ちたから......休ませて......」
そして、俺の意識は消えた。
〜☆〜
「う、う〜ん......?」
目を開けると、そこは自然が広がっていた。
いや、直横で温かい空気がある。
多分......温泉......?
「こ、ここは......?」
「おお、目を覚ましたか」
「え......?」
横を向くと、オレンジ色の顔に、黒と赤の甲羅。
ちょっと年寄りそうなこの顔は......。
コータス......?
「ほっほっほ、いやはや、御主、いいリーダーを持ったな」
「何でそれを......?」
「胸に付けているバッジ。それは探検隊バッジじゃろ?」
「は、はぁ......」
首の毛皮に隠れてるのに......。
何で解かったんだろう?
「ほっほっほ、さっき、このピカチュウが、御主のバッジがあるか確かめてたよ。あったのを確認したら、ぐっすり眠ってのぉ」
「へ?ラルドは......意識を失わなかったの?」
「ん?どういう事じゃ?」
「実は......」
ミルはこれまでの事を年寄りのコータスに話した。
滝の裏側に洞窟がある事、その奥の罠にかかって、ここまで流されてきた事を......。
「ほっほっほ、随分と壮絶な探検じゃったの......。じゃが、御主達がここに来たのは空からじゃぞ?」
「え......?」
「恐らく、ここの近くの間欠泉が、そこと繋がってたのじゃろう。全く、本当に良いチームじゃな」
「そ、そうだったの......?」
後々に聞くと、そこからここに来るには、私達の様に飛ばされて来たなら、確率は十%そこらだったらしい。
その十%の中の二人になった......らしい。
ラルド......ありがとう。
「じゃあ、おじさん。私達、もう行くね」
「ほっほっほ、十分に休むんじゃぞ?それと、ワシの名前はコート・スパレイク、じゃぞ」
「うん......じゃあね。コートさん」
瞬間、ミルとラルドは、黄色い光に包まれた後に、消えて行った。
〜☆〜
「ふぅ、疲れた」
「全く......結局、宝箱が一つだけしか収穫がなかったな。お前の下らない考えのせいで」
「だって......君達、絶対に喧嘩するだろ?」
「当たり前だろ?」
「常識だろ?みたいな感じで言わないでくれ......」
こちらは所変わってシルガとフィリア。
手に持っているのは、宝箱の一個だけだ。
恐らく、外れだったのだろう。
「はぁ......、ミル達は戻ってるかな......!?」
瞬間、目の前にミルとラルドが現れる。
しかも、ずぶ濡れで。
ラルドの方は寝てるし......一体何だ?
「ちょ、ちょっと休ませて......」
「何が......」
すると、ミルは体を重力に任せ......倒れた。
恐らく眠ってるのだろう......。
僕達は、自分達の部屋にミル達を背負って行くと、そのまま寝かせた。
「ふぅ.......何か疲れた。僕も寝よう」
「ふん、そうしておけ。俺はもう少し起き......」
瞬間、シルガの口に何かが入れられた。
すると、シルガの目蓋は閉じ、完全に眠った。
「ふぅ......じゃ、僕も寝ようか」
すると、エンジェルの部屋からは四人の寝息が聞こえてきたと言う。
「おーい、エンジェル。帰ってるのか?帰ってたら、探検の結果を.....って、寝てるのか......」
「ぐぅ......」
「......ん?ペルー......か?」
「お?ラルドじゃないか。どうした?」
「いや......そうだ。報告しなきゃな」
ラルドは藁ベッドから立つと、ペルーと一緒に大広間に行く。
「......なぁ、ペルー」
「何だ?」
「俺......ちょっと、報告したら確認したい事があるから......プリルに逢わせてくれ」
「ああ。でも、何が確認だ?」
「ちょっと......な?」
そして、ラルドはペルーに探検の報告をした後、プリルの部屋に行こうとした。
ペルーは俺とミルの探検の報告を聞いて、多少驚いたが、直に戻った。
「じゃ、行くぞ。親方様。ペルーです。入りますよ?」
『うん、入ってー!』
中からは何とも子供っぽい子が聞こえてくる。
プリル......あれが地声か?
俺は色々考えつつ、プリルの部屋に入って行った。
「お?ラルドもいるね。どうしたの?」
「実は......プリル。あんた、俺達に探索を頼んだあの滝......本当は過去に行った事があるんじゃないのか?」
「......どうしてそう思う?」
「何となく」
「そう、何となく.......か」
プリルは後ろを向き、息を吸うと......って、やばっ!?
「思いで思い出......たぁ〜!!!!!」
子供っぽい声とは裏腹に、物凄い音を出す。
それは、ギルド全体を揺らす物だった。
「ふぅ、あ、そういえば行った事あるかも♪」
「親方!?」
(やっぱり......か。これで確信が持てた)
ラルドはある『確信』を持つと、「じゃあ、明日」と、言って去ろうとした。
だが、プリルはそれを呼び止めた。
「ちょっと......話があるんだ」
〜☆〜
う〜ん、こ、ここは......?
あ......あそこか......夢......なのかな?いや、そうだ。
だって......あそこからは、もう逃げ出してきたんだもん。
あんな厳しい所......探検隊の方が良いもん。
でも......故郷って言っても良いもんね......。
......まだ、見切りがついてないのかな?
「うーん......よ、夜......?」
今の時刻は、もう夜の十時だ。
当然の如く、弟子達は食事を終わり、就寝している。
だが、ミルはさっきまで眠っていたからか、全然眠たくならない。
「......ちょっと、外の風景見てこよ」
ミルは藁ベッドから立ち上がると、大広間へ向かう。
あそこは、地下なのに景色が見える、結構、素晴らしい場所だから......ね?
私は遅めの足取りで、大広間に向かう。
そして、大広間につくと、プリルの部屋に明かりがついているのが見えた。
何してるんだろう......と、思いつつ、扉にこそっと、耳を当てる。
『ちょっと......話があるんだ』
『何だ?早く寝て、明日の朝礼に備えたいんだけど......』
『あのね、君達、最近頑張ってるじゃない?だから......』
『だから?』
ミルの鼓動が、少し早まる。
何を言うんだろう......結構重要なのかな?
そう思っていると、とんでもない言葉がプリルから出た。
『だから、普通、連れて行く事の無い新弟子の君達を......遠征に連れてく事になったんだ♪』
『な......』
「な......」
『「何だってーー!!??」』
次回「探検隊VS探検隊」