第十三話 滝壺に秘められし洞窟
ここは静かな川――。
名の通り静かで、不思議のダンジョンだが、暴走するポケモンはあんまりいない。
しかも、偶に聞こえてくるポッポの囀りが、また平和を強調していた。
その中で――。
〜☆〜
「あそこは[はっけい]だろ!!?」
「お前が邪魔で最大威力で撃てないからな......波動弾の方が効率がいい」
「ふざけるな!!あそこは、はっけいでも倒せた!!」
「ふん」
「何を〜!!?」
いつものこの調子。
だが、川のせせらぎなどが聞こえるこの川では、それはとてつもなく五月蝿かった。
この連中を止めるため、エナジーボールとシャドーボールの爆音も聞こえる。
それは周りのポケモンを脅かすには充分で、凶暴なポケモンや、その他のポケモンも、一部の者を
除く者達は近づかない。
「......ねぇ、ミル。ピーピーマックス尽きてない?」
「大丈夫だよ?それに、もう直別々で行動するんでしょ?」
「うん、この二人は一緒にしちゃ駄目だから......ミル達は秘密の滝へ向かって、僕達は静かな川を探索するよ」
「解かった......あ、あそこからじゃない?秘密の滝って」
「そうだね......シルガ!ここからは僕と行動してもらうよ」
この言葉を聞いた瞬間、不機嫌になったのは視界に入っていない。
だって......喧嘩中だったんだもん......。
「じゃ、ミルとラルドは一緒に滝の調査、僕達は静かな川に何かあるか調べるよ」
「解かった。じゃあな、へっぽこシルガ」
「ああ、弱虫ラルド」
終始喧嘩をしていたが、別れると信じられないぐらい元気になる。
特にラルド達は......。
〜☆〜
「ねぇ、ラルド」
「何だ?」
「ここが......秘密の滝?」
「ああ、多分」
そこは、轟音を鳴らし、今にも吹き飛ばされそうな勢いだった。
多分、触れたら本当に吹き飛ばされそう......。
「い、一度触ってみるね......」
ミルは滝に思い切って触れてみる。
すると、その軽い体はいとも簡単に吹き飛ばされる。
「きゃあ!?」
「大丈夫か?」
ラルドは吹き飛ぶミルを受け止める。
それは、世に言う[お姫様抱っこ]と言う物だった。
ミルの顔は当然の如く赤くなり、驚いて悲鳴も上げれなかった。
「全く......じゃ、次は俺だな。良し!!」
「う、うん......」
ラルドは恐る恐る滝に触れてみた。
すると、やはりミルと同じ様に飛ばされ、後頭部を強打した。
「痛ってぇ......」
「大丈夫?ラルド」
「ああ、大丈夫......っ!?」
瞬間、目眩がした。
しかも、かなり酷く、膝をつく。
「やっぱり、無理かな......って、ラルド!?大丈夫!?」
「あ、......ぐぅ......」
そして、一筋の閃光が奔った。
見えた映像は、黒いシルエットのポケモンが、ある程度の助走をつけ......。
この滝に飛び込んだ。
そして、そのまま滝を突き抜け、滝の中にあった洞窟へと姿を消した――。
そこで、映像は途切れた。
「え......?何だったんだ?今の......」
「どうしたの?ラルド」
「あ、ああ、実は......」
ラルドは今見た夢も含め、ヨウムの時の事も一応話した。
すると、余程驚く事なのか、ミルは目が点になっていた。
「ほ、本当!?なら凄い事じゃない!?だって、未来予知だよ!!?ピカチュウがそんな事をするなんて、聞いた事無いよ!!」
「そ、そうか......?」
「うん!!もしかしたら、これからの探検......ううん!人助けの役に立つよ!!」
「そ、そうだな......」
ちょっぴり得体のしれない能力を評価され、ラルドは少し喜ぶ。
が、少し怯えてもいた。
俺は記憶が無い......だから、もしかしたらこの能力を狙っている奴達がいたかもしれない......。
「でも、どうしよ.......この滝の中へ行くの......」
そう、確かにヨウムの時には合っていたかもしれない。
だが、今度も当たるかは解からない。
運に頼るしかもう無い。
「......俺は行くぜ。自分の能力に確信を持ちたいからな」
「ラルド......うん!解かった。私も行く」
「ミル......ああ、結構な助走つけなきゃ、お陀仏だぜ?」
「怖がらさないでよ〜!」
「じゃ、行くぜ、ミル」
「うん」
そして、ラルドとミルは一気に走る体制をとり......。
「ゴー!!」
轟音鳴らす滝に、突っ込んで行った。
〜☆〜
「ぷはぁ!?」
「ぐえ!?」
ラルドとミルが、滝から姿を現したのは、入った直後だった。
が、ミルは普通に尻餅だったものの、ラルドは顔から思いっきりぶつかった。
「痛って〜!?」
「だ、大丈夫?ラルド」
「あ、ああ......。そ、それより、見てみろ」
「え......?......あ!!」
ラルドとミルの視線の先には、蒸し暑い空気がここまで流れてくる――洞窟の入り口を発見した。
......ここまで蒸し暑さが来るって事は......中は一体どうなってんだ?
「じゃ、行ってみるか?」
「うん!ここまで来たんだもん!!」
「じゃあ、行くぜ。この――滝壺の洞窟に!」
そして、ラルドとミルは、ラルド命名滝壺の洞窟へ足を踏み込んだ。
「はぁ、暑い〜」
「確かに......蒸し暑すぎる。早く出口探した方が良いな......」
滝壺の洞窟、と言うだけあって、水ポケモンが多く、湿気が凄い。
その為、物凄く蒸し暑く、ミルの様な毛が沢山あるポケモンには地獄だ。
「ふぅ......あ、見て!あそこに光る場所が!!」
ミルの視線の先には、出口らしき物から、光が見えている所だった。
「行こうぜ!!早く抜けたいしな、このダンジョン」
「うん!」
そして、俺達は出口へと向かって行った......。
だが。
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
瞬間、俺達の姿はそこから消えた。
......どうなったんだって?
今から教えるよ。
「ぐへっ!?」
「わっ!?」
ラルドは地面に体全体で落ち、その上からミルが落ちる。
完璧にクッション代わりのラルドだった。
「痛たい〜。な、何が起こったの......?」
「どうやら、ワープスイッチを踏んじゃったんだろうな」
「えー!!?じゃあ、また探さなきゃいけないの!?」
「......いや。直そこにある」
「え?あ、本当だ!!」
だが......この状況は......。
「下見てみ」
「え?――って、何これ!?」
下は、果てしなく続く奈落......。
そして、それを飛び越えれば、向こう岸にたどり着けるが......。
「どうする?」
「......こ、ここは......爆裂の種!!」
「なるほど、その爆風で飛ぶのか......良し!やるぞ」
ラルドとミルは、それぞれ三個ずつ持ち、そして......。
「爆裂の......種!!」
「行っけー!!」
そして、俺達は、その爆風で出口まで吹き飛んだ。
そのお陰で、またもや顔から直撃した。
ミルは無事だが......。
「痛ってー!!もう嫌だ!!何だ!?毎回毎回!!」
「良いじゃん。ラルド。それより、見てよ!!こんなに宝石があるよ」
「え......本当だ」
そこは、宝石や水が、光を反射し、何とも幻想的な光景となっている。
「凄い......あ!見て!!ラルド。あれ!一際大きい......エメラルド......かな?引き抜こ!」
「エメ......ラルド?」
瞬間、頭に声が響いた。
――あな......の名......エメ......ド――
そこで、声は途切れた。
「っ!?何だ......?今の......」
「ラルドー!これ引き抜いてみて!!根強さが半端じゃないよー!」
「え?あ、ああ。解かった」
ラルドは一際大きい宝石――エメラルドを引き抜いてみた。
が、根強く、びくともしなかった。
「はぁ、はぁ、無理だ......」
「うーん。ラルドでもダメ......ううん!これを持って帰れば、ペルーも褒めてくれるよ!!」
ミルは再び、引き抜こうと努力をする。
頑張るな......っ!?
と、思う矢先、目眩がした。
それは、さっきとは違う......あの時見えた映像だった。
それは、またあの黒いシルエットがここ......俺達のいる場所に来た。
そして、今引き抜こうとしている宝石を......押した。
瞬間、激流が流れてきて、その黒いシルエットは流されていった――。
と、そこで映像は途切れた。
「え......何だ......?今の......」
とにかく、ミルに伝えたかった。
が、それは無理だった。
「うーん......。!!そうだ、思いついた!!」
「おい、ミル。その宝石は......――って」
「引いてダメなら......」
「止めろ!!ミル!!」
「押してみな!!ってね!」
ミルはラルドの制止も聞かずに、宝石に体当たりをした。
最大威力でやったからか、宝石は引っこ抜けた。
が......。
「見て!!ラルド!!取れたよ!!待っててね。今、この宝石を縄で......」
「そんな事はどうでも良い!!早く逃げるぞ!!」
「何で?」
「いいから!!」
「え?って、きゃあ!!」
ラルドが無理に引っ張った瞬間、ミルはこけ、しかも......。
「痛い......足捻っちゃったじゃんか!!」
「え......?」
瞬間、激流の音が聞こえてきた。
ミルもこれには驚いたらしく、「逃げよう!!」と、言ったが、足を挫いてしまってはどうしようもない。
(......せめて、離れない様に手は繋いどこう)
「きゃああ!!!??」
そして、激流にのまれ、俺達は――。
次回「確信と朗報」