第十話 挑戦状?それとも果たし状?
フィリアの初依頼達成から三日......。
最近、ペルーの動きが慌しいな。
俺はどうでも良いけど。
そして、俺達はいつも通りの日常を過ごしていた......。
ただ、今日は少し違っていた。
〜☆〜
「なぁ、ちょっと依頼休みたいんだけど......」
「突然!?って、何でよ!!」
「理由を述べよ」
「ちょっと腰が......昨日のお尋ね者逮捕の時、腰に技喰らって......」
そうだ。俺達は昨日、お尋ね者に行っていた。
少しずつ追い詰め、さぁ終わりだ。
と、思っていたら騙まし討ちをもろに喰らい......。
腰が......ねぇ?
「......しょうがない。今日は一日安静。もししてなかったらエナジーボール3連発」
実は、フィリアがエナジーボールを[確実]に撃てるようになった。
お尋ね者と戦ってる内に......な?
そのお陰でどれだけ練習させられたか......。
「......解かってる。じゃ、元気に行って来い。俺はここで休んどくから」
「......とりあえずエナジーボール!」
「ぎゃあ!?」
それは俺に直撃しーー
部屋が散らかってしまった。
フィリアは「あ、もうそろそろ行かなきゃ。じゃあ、掃除しといてね」と、言いやがった。
これだからフィリアは......。
「はぁ、......まぁ、腰なんて痛くないけどな」
え?と思われた方。
正解です。
「......さて、果たし状と書かれたいかにも古そうな挑戦状か、それとも現代に生きる物が書く様な挑戦状か......どっちにしようか?」
ラルドの手には二つの紙が握られていた。
一つはある探検家からの果たし状。
これは......ちょっとパスかな?
残るは......リオルって言う種族からの挑戦状か......。
何か、出だしの探検隊にこんなの届くなんて......。
噂って怖いな。
さて、ペルーも出し抜いたし、リオルの待つ双子山って所へ向かおうか......。
ちなみに、一人なのはこれに一人で来い、と書いてあったからだ。
そして、時は進む--。
〜☆〜
「ここが......双子山?本当に双子みたいだな......」
双子山――
名の通り、双子の様に大小で連なっていた。
大きい方の山の頂上は戦えるようになっているらしい
。
そこへはロープウェイで行く。
......と、気楽に思っていたのでしたが、間違いでした。
何だよ......いきなりロープウェイの紐が千切れたぞ......。
欠陥品だ!!訴えてやる!!
......でもまぁ、頂上には着けたな......。
「......やっと来たか......」
「ん?ああ、来たぜ!えーと......」
「俺はシルガ......リオルのシルガだ」
「そうか!俺はピカチュウのラルド!!売られた勝負は買うぜ!!」
ラルドは早速、体に電気を溜める。
[充電]だ。
それと同時に、リオル――シルガはリオル特有の脚力で向かってくる。
それを、俺は巴投げで勢いを受け流した。
だがシルガはその勢いを反動として、ラルドにただの拳を叩き込む。
が、その拳を掴み、十万ボルトで反撃をする。
そして......。
「......中々に慣れているな。その体に」
「!?い、今、何て......?」
「慣れているな。その体に。元人間が」
「!!お前......俺の秘密を知ってるのか?」
「ああ」
瞬間、シルガの腹に雷を纏った拳が直撃する。
だが、それはギリギリの所で止められる。
しかも、カウンターを喰らわされて。
「教えろ!!」
「......嫌だな。俺に勝てたら......考えん事も無いが」
「なら!!」
ラルドは電撃波を撃ち、更に雷パンチを叩き込む。
電撃波で怯んだ所に拳を叩き込む。
だが、それも見切りで避けられる。
焦るラルドは連続で雷パンチを繰り出す、が、全て避けられる。
(見切りも使ってないのに......)
「どうした?リオルの俺には止まって見えるぞ?」
「ちっ......!!」
それでも叩き込み続けるラルド。
だが、それも避けられる。
が、ラルドも考えない訳では無い。
「行くぞ!!電撃波!!」
「っ!!しまった......」
至近距離での電撃波は、避けようが無かった。
予知が出来る訳でも無いので、ヨウムよりはまだマシだ。
が、攻撃に関してはSランク級だ。
「やっと二撃目か......」
「うるせぇ!!十万ボルト!!」
「......動きが単調すぎる。それならば避けるのも簡単だ」
「なっ......!?」
またもやギリギリで避けられ、苛々するラルド。
しかも、避ける度に挑発するかの様に嘲笑うシルガ。
そこにラルドの怒りが噴火した。
「ちっ!!十万ボルト!!」
ラルドはもうやけくそとなり、十万ボルトをシルガの方向へ、無差別に撃つ。
が、当たり前の様に避けられる。
「はぁ、はぁ......くそっ!!電撃波!!」
絶対必中の技を出すも、見切りの前では形無しだった。
もうラルドに技は[あれ]しかない。
が、当たるかどうか心配だった。
攻略の鍵はどうやって攻撃を当てるか、だ。
まずは見切りをどうにかしないと......。
......ん?待てよ?
冷静になれば......解かった!!
「行くぞ......」
「当たるわけが無いだろう。そんな攻撃」
(今に見てろ......)
ラルドの両手に物凄い雷が集中する。
電撃波か......。
シルガにはどんな技をだすか見破られた。
だが、予測済みだ。
もし、あいつが技の予備動作を見切れるとしたら......。
俺はその可能性にかけた。
そして、それは間違いではなかった。
行くぜ......その安心感が命取りだ!!
「新技......[電撃連波]!!」
「っ......!?」
ラルドは五発の電撃波を撃つ。
それは見切りで避けられていく――。
二つまでは。
「ぐっ!!?」
残りの三発は避けきれず、直撃する。
これこそが、ラルドの狙いだった。
見切りは連続で出すと失敗しやすい。
と、言う特性を使ったのだ。
あの時点で、避けようとしたので、絶対に当たるとは確信していた。
そして、煙が立ち込める中――。
一つの影が立ち上がる。
「ふぅ、少し疲れたな......」
「なっ......!?」
「......咄嗟に[堪える]をして無ければ、倒れていたかもな。いくら電撃波でも三つの直撃はな」
「......なら、もう一回だ!!電撃連波!!」
「......守る」
そういうと、シルガの周りに緑の壁が出現する。
ミルも使っていた、守る、と言う防御の技だ。
その硬さは、並みの攻撃なら楽に弾く。
そして、隙が出来た所を......突く。
「[はっけい]」
「ぐっ......!!?」
守るで守り、ラルドの技を出した後のインターバルを突き、攻撃する。
それは強力な物で、山壁にぶつかる。
「くそっ......!!力があれば......」
俺は力――、あの時の声に頼りたかった。
だが、これは只の挑戦。力が無ければダメなんて事は......。
――ねぇ、聞こえてる?――
――え......?――
と、聞こえてきたのは、あの時の声だった。
それは、優しく、そして厳しい声だった。
――力......欲しい?――
――......いや、やめとくよ――
――......そう。じゃあ、これだけは言っておくわ――
――......?――
――あいつは......舐めたらダメよ――
そこで、視界が真っ暗になった。
次回「帯電」