第一話 流れ着く者
ここは海岸――。
夕日が反射し、地平線まで続く光景は綺麗だ。
そして、他にも色々ある海の光景。
その中でーー
「はぁ、また失敗か……」
このイーブイの少女、名はミル。
探検隊になりたいが、勇気のない者だ。
「今日は宝物も持ってきたのに……」
宝物というのは、あの不思議な石である。
「やっぱり、いつもと変わらない……クラブが泡を吹いて、それが太陽の光を反射して、それを気休めに見る……」
いつもこうだった。
もう嫌だった。
諦めようかと思った事もあった。
でも……。
「やっぱ……頑張ろ」
そして、元気付くのも、いつもの通りだった。
これまでは。
「ん、何かいる?」
ミルは何かを見つけた。
黄色い何かだが……。
「なんだろ……」
そして、見た光景は....。
ピカチュウが、無残に息をせずに横たわる姿....。
本当は気絶しているだけだが。
「ん……?」
「うわぁ!もう嫌!ジバコイル保安官だけはー!!……って、あれ?」
「あ?って、イーブイか?」
「うん、そうだけど……」
そして、その瞬間、ピカチュウの顔が引きつった。
「何で……」
「?」
「何でポケモンが喋ってんだーー!!?」
「きゃあ!!」
いきなりの大声に、ミルは吃驚して石を落としてしまう、というか耳が痛くなるのが普通なのになってないのが既に奇跡だ。
「何……?あなたもポケモンなんだから、当たり前でしょう?」
「いやまぁ……って、は!?俺はニンゲンだぞ!?」
「どこからどう見てもピカチュウだけど……?」
「え?」
そして、ピカチュウは自分の体を見た。
黄色く尖った先端が黒い耳に、赤い頬、ギザギザの尻尾に黄色い体が特徴のポケモンーーピカチュウだった。
「何で、ピカチュウなんかに……」
「? あなた……名前は覚えてる?」
「え、ああ。ラルド、それが俺の名前だ」
「じゃあ、ラルド。なんらかの記憶は……ある?」
「無い」
キッパリ言うね……。
まぁ、解かり易いけど。
「じゃあ……記憶喪失って事?」
「そうだろうな」
記憶がないからこんな事になってるのに、なんで質問したんだろ、私……。
「じゃあ、あなたは一体……」
と、言った瞬間だった。
「おや? これは誰のかな〜?」
「え、あ。それは!!」
「?」
このイーブイの後ろを見ると、ドガースと言うポケモンとズバットというポケモンが並んで立って(実際は浮いている)いた。
変な笑みを浮かべて。
「ん〜? これはなんだろうなぁ、イング」
「あぁ、本当困るよな〜。こんなとこ落し物があっちゃ」
「あ、そ、それ返して! 私のなの!」
「あぁ?お前のだって言う証拠はあるのか?」
「ないけど……けど、私のなの!」
「五月蝿ぇ!!」
遂にキレたのか、イングと呼ばれたズバットは“エアカッター”を俺たちに向かって放つ。威力はまだ弱い二人には強力に感じれる程度だった。
更に俺の居る所には小さな穴のようなものが開き、すっぽりはまってしまった。
「へへっ、取り返しに来るか?」
「来いよ!けっ」
可笑しくないか? 笑い方だ……。
「うぅ……」
「? 何だ、ビビってんのか?」
「弱虫だな。へへっ」
「じゃあな。弱虫君」
「くぅ……」
そして、バルンと呼ばれたドガースと、イングと呼ばれたズバットは洞窟へと消えていった。
「うう……そうだ、ラルド! 大丈夫!?」
「大丈夫だ、それより引っ張ってくれ……」
「うん」
〜☆〜
「あいつ達……次逢ったらようしゃしねぇ! と言うか追いかけるぞ!!」
「え?でも……」
「いいんだよ!俺の鬱憤は晴れる。お前の宝物も戻る。一石二鳥じゃねぇか!」
「うん、って、手伝ってくれるの?」
「ああ! だからさ。ほら」
ラルドは手を差し伸べてくれた。
こんな私に。
(...あの時以来かも...)
ふと、ミルは昔を思い出した。
とても温かく、とても冷たかったあの日々を。
「一緒に行こうぜ、えーと……」
「ミル……私はミルって言うの。よろしくね」
「ああ、一緒に行こうぜ、ミル!」
「うん!」
そして、俺達は海岸の洞窟へと、足を踏み込んだ。
次回「VSイング&バルンそして……」