ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第八章 幻と謳われし大地
第六十一話 亀の甲と年の功?明かされしキーアイテム
ラルドにとって忘れたいあの事件から食事を済ませ、念願の世界を救うという難事件を今――?





〜☆〜

「では、これよりメンバーを決める。準備は出来てるな?」

「ああ、準備万端だ!」

「いつでも来いって今なら言えるよ!」

「単純だね……」

「馬鹿二人というのは知っているだろ……?」

やっぱりシルガはムカつくな……まぁいい、この際無視だ、無視!

「まず、エムリットやユクシー、アグノムにこの事を伝える役だが……ボイノ、ソーワ、ドツキ、ビーグ、サーイだ。ボイノとビーグには霧の湖、ソーワには地底の湖、サーイとドツキには水晶の湖を頼む。それ以外のメンバーは真実を広めるのに徹してくれ!」

「「「おぉ!!」」」

なんでこういう時には頭が冴えてるんだろ……確かにガオンも広めるのには適してるだろうし、フウやディルも良いな。

「決まったね……良いですよね? 親方様」

「うん良いよー、ペルーに任せるよ」

投げやり……か。こんなのでもプリルって強いんだろうな……確かギルドマスターランクじゃ無ければギルドはもてないって言うし。

「じゃあ、皆、張り切って行くよォ!!」

「「「「おおォッ!!!!」」」」

何時にもまして本気で、しかも俺が知る中で最もギルドの弟子達の心が揃ったと言える瞬間だった――。



〜☆〜



あれから小一時間……今、俺達がいるのは滝壺の洞窟だ。
以前にも来た事があった……確か奥に宝石が一杯あった場所だったはず。
因みにこうなったのにはちゃんと理由がある、それは……。




「さて、俺たちはどこに行く?」

「あ、エンジェル。ちょっと待って」

「? どしたのプリル」

「どこに行くかいまいち決まってなかったら、ご老人の所に行くといいよ。確か温泉に居たと思うから……」

ご老人? そんないたっけかな……?

「温泉……ああ、あの人かな。それならラルドは見てたはずだよ? まぁ忘れてる可能性もあるけどさ」

あれ、声に出てたのか? 出てなかったらミル天才だけど……無いか。
そんな思考は直に捨て、老人について思い出す。

「……待てよ? 確かあの時……」

いた、確かに居た。
赤い色をした、亀のようなポケモン。甲羅は黒く堅そうで、赤も少し混じっていて、如何にも老人っぽいポケモン――コータス。

「名前は……なんだっけ?」

「“コート・スパレイク”確かもう直100を超えるぐらいの年月を生きてきたご老人だよ。幻の大地も昔の事に詳しいご老人ならもしかしたら知ってるかもしれないしね」

だがどんな顔かラルドは忘れていたため、この話を聞かずに必死にどんなだったかを考える。因みにポケモンにもニンゲンの様に顔が違う、それこそニンゲンには見分けがつかないようなものだが。

(そういえば、ポケモンもこういう風な所で暮らしてるとニンゲンと変わらないように思えるな……)

実際、どんな種族も根は変わらないというのが現実だ。
暮らす所があり、友達や家族も居る、それはダンジョンのポケモンでも少しは当てはまっているだろう。

「友達はないだろうけど……」

「なにしてるのラルド、もう行くよ?」

「え? ……ああ、今行く!」

まぁ、今はこんな考えは捨てるべき、だな!





〜☆〜

ここは滝壺の洞窟の奥地、宝石が一杯ある所だ。
温泉への道は工事中らしい、こんな時にまで工事って言うのは、やっぱり何も知らないからだよね。

「あ、これ……エメラルド?」

「ん、なんだミル?」

「違うよ、ラルドのことじゃないよ」

「確かにラルドどしか呼ばれた事無いしな……早く来いよ」

「解かってるって!」

そう言いつつも、エメラルドをバッグの中にしのばせ、内心ホッとしていたミルであった。

「さて、温泉へゴー!」

ただ、温泉へ行く為の道のりがあの時より数倍長く感じれたのと、出口が高かったので結局温泉へ行く道を無理してでも通ったほうが良かったんじゃ……と思ったのはまた別のお話。



「ふぅ……やっと着いたよ」

「時間は……どれぐらいかかっただろうね」

「二時間くらいだろう……それより」

シルガが目線を上に上げる、するとそこには……。

「ほっほっほ……まさかまた上から登場するとはの」

「久しぶり、コートさん」

昔、俺達の初探検と言ってもいい依頼先で会った老人……コート・スパレイクがいた。

「で、何か用かな?」

「うん、実はね……」

私は幻の大地のことを話した、流石に全て話すってのは無理だけど。

「成る程……それなら知っているぞ。知識だけでしかないがな」

「ほ、本当!?」

「ほっほっほ、本当だとも。……では教えてあげよう」

老人は只でさえ細い目を更に細め、考え事をしていた。
昔の事なのだろう、老人だから他にも知ってる事があって思い出そうとしているんだろう。

「えー、確か……幻の大地はこの世界のどこかにあると言われ、海にあるとも言われておる」

「うんうん!」

「そこは選ばれし者しか入れないと言われ、その選ばれし者が選んだ者ならば入れる」

「それで、他には?」

「他は……うーん、忘れてしもうた」

「「「えぇッ!?」」」

シルガ以外の全員が驚く、ここまで来たのにそれはないよぉ〜!
恐らくは全員が疲れてるはずだ、なにせ吹っ飛び玉で……思い出したくもない。

「な、なにかないの!? 思い出してよ!」

「そういわれても……あ!」

「な、なにか思い出したのか!?」

「そうじゃ、選ばれし者になるには証が必要なんじゃ」

証? 私が持ってる遺跡の欠片みたいな紋章が書かれたのかな?

「で、その証はなんですか? 詳しく教えてもらいたいのですが」

フィリアが敬語になったらなんか可笑しいような……普段が突っ込み役だからね。

「すまん、忘れてしもうた」

「そうですか……でも情報は得られました。どうも有り難うございます」

「ほっほっほ、最近の若者はこんな御伽噺(おとぎばなし)を訊くためにここまで来るのか、頑張るのぉ」

「はい、では……行こうかラルド」

「お、おう」

ラルドがバッジを天に翳すと、黄色い光が私達を包み――消えた。

「ふむ、ちょっと思い出しておくかの」

再びコート老人は、温泉を見つめる。
――またまた目を細めながら。





〜☆〜

「で、収穫はあまりなかったと?」

「ああ、証ってのが必要ってのは解かったけどな」

ただどこにあるかで悩んだのはフィリアやミルとラルド、三人一緒だ。
結局どこかは解からないのが関の山だったのだが。

「皆さん! 晩御飯ですよー!」

「やっと食べれるよぉ……」

「ミル、大丈夫かい?」

「ミルは結構食うからな、ビーグもそうだからお代わりなんてする暇がない」

実際ミルは本当に食べる、オレンジュースやモモンジュースは一気飲みする、×ゲームという名目で飲ませたマトマの果汁をたっぷり混ぜ込み、刻んでジュースにしたのも飲むので一度フィリアが本気で悩んだほど。

「明日に向けて一杯食べるよ!」

「今日も俺達の量は限られたな……」

その晩、腹の音が鳴り響く哀れなピカチュウと化したのは言うまでもない。



〜☆〜



あ……れ? ここは……?

俺が目を覚ましたのは広い草原でだった。
どこかで見た気がするのだが……どこなんだ?

「あら? やっと起きたの」

「え……?」

後ろからの声で、振り向くとそこには――半透明のピカチュウが。

「え、えぇ!? 半透明……って、待てよ? このパターンはもしや……レインか?」

「正解! レイン・コキュート本人です!!」

思い出せば、こいつもハイテンションだったな。
すっかり忘れてた。

「って、本名名乗っていいのか?」

「大丈夫大丈夫、もう訊いてんでしょアンタは。なら大丈夫だね」

「……確かに訊いたけど」

「なら問題ないわ、ここはあんたの中、私とあんた以外いないんだから」

俺の中……ああ、ここは俺の夢の中だったな……。

「で、なにか用?」

「は? それはこっちのセリフ……」

「ああ、勘違いしないでね? 私があんたと会うのは緊急事態であんたが気を失ってるときだけ、もしくはあんたが私に会いたいと思ったときね」

会いたい……? 自覚ないけど、折角だし訊くか、こいつにも悪いし。

「じゃあ訊く。記憶を失う前――ニンゲンだった頃の俺はこんな性格だったか?」

「あら、リードの言葉に疑問持った? ま、以前のあなたは思わず助けたくなるような兎のような奴だったわね、今じゃこいつならなんとかしてくれるとか余裕で言われちゃいそうだけど」

は、早口すぎて何言ってるのか全然聞き取れねぇ……でも。

「今の俺は……元の俺じゃないのか?」

性格や人格が変わったら、俺は“エメラルド”じゃないんじゃ……。

「なに言ってんのよ、あんたはあんたでしょうが」

「れ、レイン……?」

「前にも言ってなかった? 昔のアンタもそんなだったわよ、いくら初見での印象が変わったからって根は変わらないのよ、誰しもね」

「……有り難うな。吹っ切れたよ」

「漫画の主人公かあんたは……あ、もうすぐ朝ね。じゃあ私はこれで」

「ああ、またな!!」

そして俺の視界は――暗転した。



〜☆〜



「ラールードッ! 起きてよラルド!!」

「ごほぉッ!?」

ぐふっ……腹が……この威力はミルじゃない、絶対にこれは……!

「“気合パンチ”の簡易版を試したが……うまく決まったか」

「痛ぇじゃねぇか……この馬鹿シルガが!!」

「ふっ、暢気に寝てたお前が悪い……夢の中でまで質問するお前がな」

「……知ってやがったか」

幸い二人には聞こえていなかったようだ、と言うよりもういない。

「お、置いて行きやがった!?」

「当たり前だろ……」

今日も元気に、エンジェルの活動が始まる――。



「皆、揃ったかい? 今日も元気に張り切って世界を救うよー!!」

「「「「おおぉッ!!!」」」」

世界を救うと言う英雄のような仕事に弟子達全員が張り切っている。
これなら直にでも手がかりが……。

「……え? コートさん、ですか?」

「え!?」

コートという言葉に敏感に反応するミルやフィリア、俺も反応したから解かる。
まさか、思い出した……?

「はい、入ってきた下さい」

そして、コートさんが入って来てここまで来るのに結構な時間がかかり――

「ほっほっほ、やっと来れたわい。老人にあの階段はちと応えるのぉ」

「遅かったですね……それで、なにか思い出したんですか?」

今はコート老人のお陰で情報が揃ってきた、後は証がなんなのかというのと幻の大地への行き方という二ピースさえ除けば。

「昨日温泉を見つめて考えていたんじゃが……証の事について思い出したんじゃよ」

「本当に!?」

「ほっほっほ、そうそう。証はなにかの欠片で、不思議な模様が書いてあるんじゃ」

「不思議な模様が書いてある欠片……?」

あれ? 見たことがあるようなないような……待てよ?



――遺跡の欠片。

「ミル、遺跡の欠片だ」

「え? ……あ、そっか!」

ミルはトレジャーバッグから不思議な模様が書かれた欠片――遺跡の欠片を出した。

「お、おお! これじゃ、わしが言っていたのはこの石じゃ!!」

「ほ、本当にッ!? 本当にそうなの!?」

この言葉で、俺の中でのパズルは着実に――完成に近づいていった。



次回「最後の一ピース」

■筆者メッセージ
実に八日の遅れ、現実辛すぎ……!
次回「最後の一ピース」よろしくお願いします!
ものずき ( 2012/10/30(火) 21:54 )