第六十話 真実を話して
未来から帰り、第二の故郷とも言えるプクリンのギルドへ来た俺たちは、帰ってきた事を祝福されていて――?
〜☆〜
……今、俺達はギルドの地下三階にいる、今までの事――真実を話すためだ。
真ん中で話しているのはミル、俺達は周りで足りない部分などを付け足していた。
そして、全ての事を話し終わったとき……。
「……つまり、ユーレさんは実は極悪非道の悪者で、リードは逆に世界を救おうとする英雄だと?」
「うん、極悪非道や英雄とまでは言ってないけどね」
「勝手な解釈するな……ややこしくなる」
そう捕らえても仕方がない、寧ろリードが正義と感じるのは殆どのポケモンがそうだろう。
ただ俺は……感じ方が違っただけだな。
「……ふむ、解かった」
「ほ、本当!?」
な……なんだって!? まさかあのペルーがこんな短時間で理解しただと……?
「変な夢を見たのは解かる。さぁ、部屋で休んでおいで」
「……へ?」
……前言撤回、勘違いじゃないかこの焼き鳥野郎。
ここにヒイロがいれば……焼き鳥になんて直できるのに。
「ぺ、ペルー! この話は本当なんだよ!?」
「だまらっしゃい! 大体、未来は信じれても幻の大地なんて場所、情報屋の私ですら聞いたこともないよ!!」
こいつは……はぁ、あんな死と隣り合わせになりながら命からがら逃げてきた俺達の苦労や努力はなんだったんだよ……。
「……でもペルー。エンジェルの話には筋が通ってますわ」
「な、なんだソーワ?」
「あの時……謎がひとつだけありますわ。二人が時空ホールへ落ちたとき……あれは“落ちた”じゃなくユーレさんに“引きずり込まれた”ように見えませんでした?」
「そ、それはそう見えただけで二人が偶々……」
「いえ、もし引きずり込んだ、ならエンジェルの話は筋が通っているわね」
「ふ、フウもか? じゃあなにか、お前達はユーレさんが悪だと言うのか!?」
……。
暫くの沈黙が続き、最初に口を開いたのは――
「あっしは……信じるでゲス」
「び、ビーグ!?」
信じるのか……? 正直、俺もあまり信じられなかったが……情ならいらないけど。
「だって……エンジェルはあっしにとって弟子同士で、後輩で、なにより仲間なんでゲス!」
「……本気、なのかい?」
び、ビーグ……見直したよ、あんたにもそんな所があったなんて……正直、探検隊の才能がない事を自覚してるって日記に書いてたし、寧ろよくがんばったな……とか思ってたりしてたけど。
「……私も信じますわ」
「ソーワ!?」
「私も、大事な大事な後輩ですものね」
「フウも!?」
……今のが恐怖と本当の笑顔が混ざりこんだように見えたのは俺だけなのか?
「俺も信じるぜ!」
「ヘイヘーイ! 俺もだぜ!」
「私もだ、仲間だからな」
口々に信じるという言葉が飛んでくる、こんな非常識な事に対しても、だ。
……正直言ってこんなに早くは信じられなかったけどな、常識が全く通じないような事だしな。
「皆……有り難う」
ミルはすっかり涙ぐんでるし、フィリアも目頭が熱くなってきたって感じかな? 俺も同じだけど。
「良かった、皆信じてくれたんだねー。じゃあ早速さっき言ってた幻の大地って所を探しに……」
「ちょ、ちょっと待ってよプリル! まだペルーは納得してないよ?」
「なーんだ、そんな事? ペルーならもう納得してるよ? ね、ペルー」
違うと思うけどな……こいつは本当に理解してないんじゃ……?
と、思っていたのが早くも杞憂となる。
「くくく……はっはっはっは!」
「「「「!?」」」」
いきなり笑い出したペルーに弟子達全員が驚いた。狂ったように笑ってるんだもんな……頭が可笑しくなったのか?
「流石、親方様です……そうだ、私は最初からエンジェルの言葉を信じていた」
本当に? この言葉が弟子全員の脳裏を過ぎる。
「さぁ、“幻の大地”捜索へ向けて、張り切って頑張るよ!!」
「「「「お、おー!!」」」」
いきなりの事に着いて行けていなかったが、皆も賛成の色を表す。
「じゃあ、まずリードが時の歯車を集めるのを簡単にする為、エムリット、アグノム、ユクシーにこの事を話すメンバーを決める、次はこの事件のことを皆に広めるメンバー、後はエンジェル。お前達の仕事だ、いいな?」
「うん!」
「ああ、それでいい」
「僕も賛成だよ」
「……好きにしろ」
なんだろう、初めてペルーが輝いて見える……こういう時に限って、凄いんだよな……。
「――でもその前に、お腹が空いてません?」
「え?」
あ、不味い。そのことを思い出したら……お腹が……!
――次の瞬間、ラルドのお腹から音が鳴る。
「ガハハハ! 訊いたか皆、ラルドの奴、腹の音で返事したぞ!」
「「「「ははははは!!!」」」」
「う、五月蝿ぇー!!」
また一つ、プクリンのギルドに新たな伝説が誕生する事件の幕が上がる――。
次回「亀の甲と年の功?明かされしキーアイテム」