ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第七章 暗黒の未来
第五十三話 108個の魂
あれから時間が経ち――今、俺とミルは何故か穴があったりと空間が無い事から俺命名“空間の洞窟”にいて――?





〜☆〜

「うおぉッ!?」

「ラルド、大丈夫?」

この言葉だけでどれだけ危険かわかる人はいないだろうな……。
ちなみにどんな展開かと言うとその空白の空間に落ちそうになったのだ。

「ふぅ、危ねぇ……」

「確かにね……なんか疲れる」

「落ちそうになるのは嫌だしな…はぁ」

さっきからずっと考えていることがある。未来から帰ることだ。
いくら逃げ続けても永遠に逃げ続ける事はできない。

「さてどうしたものかな……」

「どうかしたの?」

「なにもない。それより……出口だ」

「え? ……本当だ」

それを確認したミルの歩く速度は心無しか速くなる。だが自覚はしていないようだった。
だからといってラルドも気付いていないが。

「やった! 出口……って言っても暗いままか」

「……光がないとかなんとか言ってたしな。どういう意味だろうな……」

光がない、それは闇しかないみたいなもんで……いや、光がないは正しくないか。
正確には“自然の光”がない、だな。
現にあそこが……光っている。

「あ、ラルド。見て、あんな所に光が……」

「どこだ……?」

「多分……処刑場の場所かな……」

(よく解かったな……こいつ)

確かに目はいいが、それだけでわかるなんてもはや神業と言うレベルじゃない。
いやまぁ、目だけで解かったんじゃなくて勘だろうけど……な。

「ねぇ、ラルド……私達、戻れるのかな?」

「さぁな、まだ解からないけど……ミル、可能性が無いわけじゃない」

「な、なにかあるのッ!?」

「ミル、もしどうしても解けない問題があるとしたら……どうする?」

「なに? 急に……でも答えを言うんなら、誰かに聞くとか諦めるとか?」

俺はそんな解けない問題出てたら諦めてるよ……それはおいといて。

「俺が今考えているのはその答えの前者だ。……意味、解かるか?」

「誰かに聞くって……誰に?」

「それはこの世界から俺たちのいる過去の世界に“実際”に行った奴だよ」

「って、まさか……それって……」

「ああ、多少の危険は伴うと思う。でもな……俺はもう一回リードと会って、話を聞く!!」

言い切った言葉を訊いてミルは「え……?」という顔になっていたがこの際無視だ!

「で、でも! リードは悪者で……」

「ミル、俺はちょっと疑問を持ってるんだ。リードが悪ならそいつの逮捕に協力していた俺達――というかミルは処刑されないはずだろ?」

「な、なんでラルドは候補にいないのさ!」

「俺は記憶喪失なんだぞ? 忘れてないよな……もし失われた記憶の中にユーレやリードと接触があったら? ……まぁ、後二人は確定してるんだけどな」

レインやシルガ――レインは俺の中にいるらしいが理由は知らない。ただそんな事が出来るなら伝説のポケモンや神レベルだろう……そしてシルガ、あいつは多分リードやユーレのことを一番知っている。

そして……俺のことも。

「つい最近まで俺達はそこらにいる探検隊と一緒だったよな……」

「な、なに訳の解からない事言ってるの!? 大体ユーレさんを疑っているならリードも……」

「あいつは俺達を助けた。あいつ一人でもあの作戦は結構出来ただろ? ……そしてあいつは俺を殺す事を躊躇した」

「え……っ?」

「殺す事に何の戸惑いのないやつと、絶好の機会なのに戸惑う奴、どっちが俺達に害があるか……解かるか?」

……しばらく場の雰囲気は沈黙と化したが、また口が開かれる。

「ラルド……フィリアやギルドの皆、トレジャータウンの皆も……心配してくれてるかな?」

「当たり前だろ? なんせこの俺がいるからな、貴重な人材を失くしたら……」

「ぷっ……はははっ」

「な、なんだよいきなり……笑うなよ!」

「もう、ラルドったら……自信過剰はいけないよ?」

いつも通り、いつも通りだ。後は普通にリードを探して……過去へ帰る!

「でもさぁ、ラルド……見つけれるかな?」

「……見つけられるとか見つけられないの問題じゃないぞミル」

「へ?」

「“見つけなきゃいけない”……これが俺達エンジェル最優先の……依頼だ!」

胸をはり、更にドンと強く叩く。だがそんな慣れないことをしたら咽てしまうのは当たり前だろう。

「ゲホッ!?」

「あわわ、大丈夫? ラルド」

「だ、大丈夫……じゃあ行こうか。ミル」

出来る限りの満面の笑みを浮かべ、俺達は……リードを探しを決行した。
そしてその頃、リードは――?







――とある岩場――

俺は……ジュプトルのリードは今、とある岩場を横切っている。
それにしてもあんな策にかかるとは……くそっ、失態だ。
だが……あの二人は大丈夫だろうか? 捕まってはいないだろうか?

「いや……今はそんな事を考えている暇はない……誓ったではないか、どんな犠牲を払ってでも成功させると」

今は行方が知れない親友との約束だ、そいつは皆より異質だが……。

「……ここはどこだ? 恐らくあの森へは近づいているはずだが……」

見慣れない場所にいつのまにか来ていたリードは辺りを見回し、道を確認する。
目的地である森には近づいているはずなのだが……。

その時!

『誰ダ……我ガ縄張リヲ侵ス者ハ……』

「っ!? 誰だ、出て来い!」

『何ヲ言ッテイル……貴様ノ横ニイルダロウ』

「横……?」

そして、リードが横を向いた瞬間――

――隣にあった罅割れた石から紫と緑の異型のなにかが出てきた。

「な、なんだ!?」

「我ノ名ハ“ミカルゲ”! 108個ノ魂ガ合ワサッタ者ダ、縄張リノ侵入ハ許サナイ。死ネッ!!」

「なっ……ぐわあああぁぁぁ!!!」

沈黙を守る岩場の中、あるポケモンの叫び声が辺りを木霊した――。





〜☆〜

あれから数分、一時間が経つか経たないかの時間の中で俺達は数々のダンジョンを突破していた。
ただ大半が小さめのダンジョンだったのでこの時間で抜ける事が出来た――と言っても最初は長かったが。

「や、やっとここまで来たよ……」

「ここは……どこだろうな」

「知らないよ、それよりも疲れたよ!」

「我慢しろミル。もしかしたらあいつも休憩してるかもしれないだろう?」

そう、あいつが化け物みたいな奴とはいえポケモンはポケモン、疲れは感じるはずだ。
となると休憩をしている可能性が高い……休憩の時間が早かったらそれはもう無理だが。

「じゃあ……行くか!」

「うん、ラルド」

張り切るラルドにミルも返事をして返し、やる気を見せる。
ちなみにラルドが張り切っていたのはこちらに来てから未知のダンジョンばかりなので、探検心が擽られていた、というのが本音だったりする。
リードの件もあるが……。



――封印の岩場 最奥部――



このダンジョンは敵がやけに強かった。
元々能力が高いのもあるがそれを差し引いても強い、ラルドも苦戦したぐらいだ。
そして、苦戦しながらも来たのがここ――最奥部だ。

「ふぅ、疲れたな……」

「そうだね……あ、ここで終わってるよ」

「そうだな……ん? なんかここ焦げてるぞ?」

「本当だ、リードか誰かがダンジョンのポケモンと戦ったのかな?」

だとしたら不幸だな、そのポケモン……。
と、そんな事を考えていると、急に何処からともなく急に声が聞こえてくる。

「ぐ……お前達……」

「え……?」

「リードッ!?」

声をかけてきたのは、紫色の何かに包まれたジュプトル――リードだった。

「どうしたんだ? まさか負けたんじゃ……」

「そこを離れろ……あいつがいる」

「あ、あいつって? どこにもポケモンなんかいないよ?」

「お前達の……横に居る!」

「へ……?」

ミルはそーっと横を見る。するとそこには……罅割れた石があった。
なんだ? と思って近づこうとした瞬間……。

「きゃあ!! ラルド逃げて!」

「なんでだ?」

「そ、その石は……!」

「別になにかが飛び出してくるわけでも無いだろ……」

――刹那、俺の横を黒い切れ味鋭いなにかが通った。

「は……?」

「ら、ラルドッ!!」

どうやらミルは知っていたらしい、だから驚いて後ずさったのか……畜生、俺も引いていれば……って、こんな状況で俺は良く考えれるな。あれか? 焦りが一周して逆に静かになったのか?

「か、“影うち”! やっぱり……その石は……」

「とにかく……“衝撃電流≪インパルス≫”!!」

冷静に考え、とにかく石に衝撃を与え、更にその場から離れる方法……衝撃電流≪インパルス≫で攻撃とともに衝撃で離れると言う計算をして使う。
案の定、石から“影うち”が来たが難なく避けられた。

「誰だ!?」

『解カラヌカ……? ナラバ教エテヤロウ』

突如、石から紫と緑のなにかが出てくる。その姿はなんとも不気味な物だ。

『我ノ名ハ“ミカルゲ”、108個ノ魂デ出来タ者ナリ!!』

このジバコイル保安官に似てなくも無い機械声のゴングにより――俺たちとミカルゲのバトルの火蓋が斬って落とされた。



次回「VSミカルゲ――星の停止の真実」

ものずき ( 2012/10/01(月) 21:57 )