ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第七章 暗黒の未来
第五十二話 処刑は暗黒の未来で
ユーレと感動のお別れ、と思いきやいきなり腕を引っ張られ、時空ホールに落ちた俺とミルは一体どうなる――?





〜☆〜

「うわぁあああ!!」

「きゃぁあああ!!」

今、俺達がいるのは時空ホールの中……とても蒼い空間だった。
吸引力のようなものがあるのか体が分裂するみたいに痛く、引き裂かれている様だった。
だが痛みを上回るどうなるかの恐怖で俺は一杯だった。

「う……うわァッ!!」

そこで、意識は消え去った。







……なんかひんやりしてて気持ちいい……でも、どこだ? ここは。
確か、えーと……なんだっけ? なにが起きたんだっけ?

「……ド、ラ……ド、お……ルド!!」

声が聞こえる……もう訊きなれた、いつも訊いている……。

「起きてラルドッ!!」

「ぐぉお!?」

寝ていたので俺はいきなりの衝撃に受身が取れず……そのまま硬いゴツゴツとしたなにかに背中がぶつかる。

「痛ぇッ!?」

「わ、ご、ごめんラルド」

なるほど、さっきのはミルの“突進”か……ミル、起こすにしてももうちょっと丁寧にしてくれよ。

「だって……いっつもラルド私のことを電磁波で痺れさせるんだもん」

……ちょっと突っ込まなくちゃな。あれは正当防衛だ、そして人の心を読むな!

「いいじゃんか、別にちょっとぐらい」

「良くねぇよ!!」

なんだろう、非常事態なのにいつもと同じ様に喋ってしまう。
……それはそれでおいといて。

「ここは……どこだ?」

「多分、牢屋? だと思うよ。ほら見て」

「え? ……本当だ、檻がある」

「それにここ暗いし……見たことの無い構造だし……もしかしたら……」

「いや、多分未来だろうな」

そうだ、あの時俺たちはユーレに引っ張られて……未来世界に連れてこられたのだ。
するとこんな場所でリードもいるのだろうか? 縛られて。

「さて、脱出する方法を考えよう……それしかないし」

「そうだね、じゃあなにか考えは……」

――刹那、檻が開く音がした。

「へ?」

「なんだ?」

呆気にとられながらも警戒する……が目の前がいきなり真っ暗になる。
明かりが切れたのか……と思ったがそれは間違いで、目隠しをされたのと直にわかった。

「だ、誰だ!?」

「五月蝿い、早く行け」

「きゃっ」

隣でミルがこけたと解かる音が聞こえる。後ろに誰かいるのか……だが目が見えない状態での反撃は無謀、俺は即座に素直に進む事にした。

そして……数分歩き続けると。

「着いたな……おい、早く縛り上げろ!」

「「「ウィィィィ!!!」」」

今の声の主が犯人か! なら今すぐに……うおぉ!?

「痛っ!」

「完了しました」

「終わったか……」

いきなり締め付けるっておいおい……これじゃ動けないじゃねぇか!

「ら、ラルド……大丈夫?」

「おう、目隠しは…甘いまだ取れないのか?」

「わ、私は緩かったから外れてる……ラルドは?」

俺か……そうだ! 電磁波を発生させれば……。

「千切れろ……!」

ぶちっ、
という音とともに目隠しは消え……あまり変わらない暗闇が目の前に広がった。

「ミル……いるか?」

「うん、ちょっと目が慣れてきたから私はラルドがどこにいるかも解かるよ?」

「隣だろうな……へへっ、一体どうなる事やら」

俺は本当にこんな雁字搦(がんじがら)めに柱を背に縛られ、一体なにをされるかを考えていると……。

「――随分と気楽な物だな。これから処刑されるとも知らないで」

「処刑……?」

「って、誰!?」

横から聞こえた謎の声に、俺としては処刑と言う言葉を注目した……のだがミルは誰かどうかが気になったらしい。

「解からないのか?」

「その声……まさか!」

徐々に慣れていく暗闇の中で、見えたのは……?

「「リードッ!!」」

「よう、お前達は……あの時の」

「一体どうなってやがる!? なんで俺たちとこいつが……しかも“処刑”って!!」

「解からないか? 俺達は今から……殺られるんだ」

「え……?」

な、なんでだよ……なんで俺達がそんな事をされなくちゃいけないんだよ。

「俺達が……なにをした……?」

「知るか、悪い事でもやったんじゃないのか?」

「そんな事してないよ!!」

一つだけ解かった事があるのは確かだ、俺達が……“殺される”と言うこと……。

そんなとき、部屋の中に声が響いた。

「準備は出来ているか?」

「「「ウィィィィ!!!」」」

「ゆ、ユーレさん!?」

声の主は、俺とミルを未来世界に引きずり込んだ張本人……“ユーレ・ディアレイ”!

「ユーレさん! 私達だよ、エンジェルだよ!!」

「エンジェル……?」

エンジェルという単語にリードは首をかしげる、がその思考も今は断ち切らなければならない。

「罪人リード、ラルド、ミルを処刑しろ! 但しリードには注意しろ」

「「「ウィィィィ!!!」」」

「ねぇ! ユーレさん!!」

「あいつに声は届かない、それよりも今からは小声で話せ!」

なにか策があるのだろうか……? 俺はリードの指示に従い小声で話す。

「……ボソッ(で、なにか策はあるのか?)」

「……ボソッ(お前達、なにか出来る事はあるか?)」

「……ボソッ(こ、攻撃ぐらいなら……)」

「……ボソッ(よし、じゃああいつら……見えるか?)」

見えるか? の一言で俺とミルは目を見る。
するとそこには紫色の宝石が目のポケモン……ヤミラミがいた。

「……ボソッ(ヤミラミ……がどうしたの?)」

「……ボソッ(あいつ達は処刑の際、“みだれひっかき”を繰り出してくる。そしたらいつかは俺達を縛るロープが緩むだろう、そこを突く!)」

作戦をリードから訊いているときも、ヤミラミはじりじりと近づいてくる。

「……ボソッ(もし……ヤミラミが“みだれひっかき”を使ってこなかったら?)」

「その時は……そのときだ!!」

瞬間、みだれひっかきが俺達を襲う!

「きゃ……こ、これを耐えるの!?」

「我慢しろ……もうちょっとだ……」

互いが互いを励ます中、遂に俺達を縛るロープ全てが切れ――。

「今だッ!!」

「「おう(うん)ッ!!」」

「「「ウィィィ!!!??」」」

その一瞬の中、俺達はヤミラミをただの攻撃で離れさせ……。

「もう一つおまけだ!!」

「な、なにを――?」

――刹那、その場が光に包まれた。





〜☆〜

「げほっ! つ、土が口に入った……」

「な、なんとか振り切れたか……」

「ふん、やはり子供だな」

な、なんか今馬鹿にされたような……まぁいいや。
私達はあの後穴を掘るで全員が地面にもぐって、恰(あたか)もその隙い後ろに逃げたと思い込ませる。
後は普通に出るだけだからね、簡単だよ。

「簡単と思ってみたら、案外地面の中が怖かったんだよな、ミル」

「な、なんで解かるの!?」

「お前、今涙目だったぞ……」

「おい、さっさと行くぞ」

「う、うん……」

そして、扉から私達は先へ進んだ。



〜☆〜



「早く! ヤミラミやユーレに見つかる前に!」

「そ、そうは言っても……これが精一杯だよぉ!」

「リード、俺達は高速移動使ってるんだぞ?」

「……なるほど」

所変わってここは先程の扉から外へ出る道、リードが案外ここに詳しいのは驚いたなぁ。

「も、もうだめ……休ませて」

「もう少しで外につく、それまで我慢しろ」

「……! 出口だ!」

ラルドは出口を見つけると、私達は全速力で走る。
そして、外に出たそこは……?

「で、でた! 外だ!」

「よっし! これで……って、なんだここ!?」

今の反応は当然だ、私も嬉しさと疲れで目を瞑っていたが、目を開けるとそこには……?

――暗闇の、そこら中の空中に岩が浮かんだ摩訶不思議な光景だった。

「こ、ここは……?」

「さぁな、未来という事しか……」

「そこまで解かっていたら上出来だな……さて休むと……」

「「「ウィィィィ!!!」」」

と、休憩しかけた瞬間またあの声が聞こえる。
これはもうこっちにいると踏んで来たのだろうか?
どっちにしても……逃げる!!

「黙って逃げろ、さもなくば見つかるぞ」

「……うん」

「一体、どうなってやがる」

そして、ヤミラミと私達の鬼ごっこが始まった――?







「ふぅ、はぁ、もうダメだよ……私」

「ちっ、そろそろ休むか」

「いや、俺も疲れてきたからな……休むか」

休む、このキーワードが出た瞬間私は岩陰に隠れて休憩する。

「確かにここなら見つかりにくいか……だが直に出発するぞ?」

「そうだな、もし見つかったら逃げにくく――」

「ちょっと待って!?」

リードとラルドが早々に出発すると言った直後、ミルが遮る。
もう少し休みが欲しいのか? と問いかけようとラルドが口を開ける。
だが、ミルの口から出たのは意外な言葉だった。

「――なんでリードと行く事が前提になってるの!?」

「は?」

「だって、こいつはあのリードだよ!? そりゃあさっきは非常事態だったから仕方なく協力したけど……でもこいつは極悪人だよ!?」

「それは過去の事で――」

「未来でもってユーレさんが言ってたでしょ!?」

恐らくこれが普通の反応だろう、だがラルドはせっかくの機会を逃し残念な表情を浮かべる。
ミルは不思議だったがリードはそれを聞いて立ち上がる。

「おい――」

「そうまで思われているのなら仕方がない――がお前はあのユーレと俺、どっちを信用する?」

「う……」

「まぁ、そんな考えもった奴と一緒に行動していたら不意打ちされかねない、俺は先に行くぞ」

「ちょ、ちょっと待って!」

リードは「なんだ?」といってミルの方へ振り返る。その顔は不機嫌だったがミルは続ける。

「こんなに暗いんだし、朝になってから行こうよ。向こうだってこの暗さなら――」

「残念だが、それは無理だ」

「え?」

「この世界は朝も来ない、それどころか光もない……暗黒の世界だ」

「どういう意味だ?」

教える義理もない、そういった感じで先へ進んでいったリード。
後に残ったのは、暗い気分とヤミラミの鳴き声だけだった――。



次回「108個の魂」



ものずき ( 2012/09/29(土) 17:46 )