ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第七章 暗黒の未来
第五十一話 リード捕獲と未来への道
あれから何日か経ち、俺達はいつも通りにリード捕獲がいつかとぞれぞれの悩みをもつなか、遂にその時の盗賊が――?





〜☆〜

「ぐ……う……」

今日はなんだか寝苦しい、なんだか背中が圧迫されているようで……それになんだか誰かに抱きつかれている感触もある、一体誰が……?

「ミルしか……いないよな」

こういうときは引き剥がすに限る。

「おーい、ミルー?」

「むにゃ……ボディプレスだぞぉ……」

変な寝言を言うのは勝手だが、毎回毎回俺に乗るのだけはやめろ、本当に寝苦しい。

「“電磁波……強”」

「きゃぁあああ!!?」

いつからかは解からないのだが、いつの間にか俺は電気のコントロールが上達している事に気がついた。

――と言っても前に調子乗ってで“十万ボルト”を曲げようとしたらミルに直撃したからな……あの時は大惨事だったな。

と、ラルドは気付いていないが電撃を曲げるの自体が常人じゃない事にまだ気付いていない。

「う、うぅ……」

ミルは電磁波で痺れたのか、ピクピクと痙攣している……それでも無視するラルドもラルドだ。

「あ、そういえばショウやシンの店って開いてたよな……林檎買おうっと」

早速、俺は定価の25Pを持つ。これくらいなら一回の探検で稼げる量だ。それどころかダンジョンは色々な場所にPが落ちているので、この前ある種を食べて次の階に向かうとまるで落ちているもの全てがPに変わったように落ちていた……ただ後から調べると食べた種が富豪の種というものだったらしい。
その効果はそれを食べた階の次はPが一杯落ちているとかなんとか……。

ただ、こっそり少しだけ見えない位置にあったPを自分だけの物にしていたともあった。

「さて……考えてるうちにつきそうだな」

今はトレジャータウンの広場に居る、そこは一際広いので、この前ユーレの話もここで行われていたし……ただそんな話、もう殆ど頭に残っていなかったが。

「なーんか信用できないんだよな……ユーレは」

何故か名前を明かした次の日、少し考え事をしている様子が節々に見えた。多分リードのものではないだろう……証拠は無いが。

「えーと、開店時間はって確か二十四時間……あれ? いつどこで睡眠とってんだろ」

謎、これに尽きるのが最終だ。

「まぁ、いいか。それにしても人が居ないせいか、空気が全然変わってるな」

睡眠なんて皆が寝てる時間にとっているだろう、夜に買いに行くなんて物好き、そうそういやしない。

「さて、ショウとシンは……ありゃ? 寝てる……?」

先程の予想は当たり、寝ていたのだが……なにも店先で寝なくてもいいだろう。
と言うか、泥棒は入らないのか……?

「えっと、とりあえず25Pをおいて……林檎を貰おうか」

さて、ギルドに帰ってなにかするか!



〜☆〜



あれから数時間……フィリアは普通だが、ミルが普通に起こしたら普通に起きたので驚いた……のだがその前に一度起こされて、眠りが浅かった……完璧に俺の仕業と言うのを理解するのは少し嫌だなぁ、と思ってみたり。

「さて、今日も張り切って行くよ……」

『ビー! ビー!』

朝のいつもの朝礼、その定番の一つのペルーの声掛けの途中……ある警報が鳴った。

「な、なんだ!?」

『至急、トレジャータウン広場ニ集マッテ下サイ、ナントユーレサン達ノ活躍ニヨリ……遂ニ“リードガ捕マッタカラデス”!!』

「「「えぇええええ!!!??」」」

そういえば最近忘れてたな……と思いつつ、少しリードが捕まった事を周りと同じ様に驚く。
ミルは普通に驚いてたから覚えてたんだな……あれ? フィリアが……なんか考えてる?

いつもフィリアが考え事をする時は作戦を立てる時か……それとも。

(今の自分の最大の謎のヒント……とかを知らされたときだよな……実際ミルがどうしてあんな大音量で起きないの議題で話し合ったとき、ミルが寝てるときは一瞬起きて意識を失うって言ってたとき、耳が良すぎて意識を失ってるんじゃないか……とか真剣に言ってたもんな)

実際はただ単に寝てるときは耳を折っていたらしい……それでも“ハイパーボイス”の時だけだったが。

「お、おおお親方様! 急いで広場に!!」

「ぐぅ……」

寝てるな……あ、起きた。





〜☆〜

「はぁ、はぁ、着いたぁ……」

「なんでこれだけで息切れするんだよ……」

「ミルがさっき大階段を下りるとき、弟子の皆に押されて下りるとき殆どが転げ落ちていたのを見ていないだろう?」

フィリアの言うとおり私はみんなに押されて階段を転げ落ち……実は途中で立ったんだけどね。
それにしても皆結構いるね……ざっと見て三十人? かな。

「でもユーレさんはいないね……」

「リードもな。多分搬送途中だろうな……あ、あそこに保安官が」

え? と思い私もラルドが見ている方向を向くと……そこには黒い穴があった。

「なんでゲスか? これ」

と、私達がなんだろう? と不思議に見ている中で、ビーグが近寄る。
そんなビーグを、ジバコイル保安官は止める。

「ビビッ! 危ナイデスヨ! コレハ時空ホールとイイ、落チルトモウ戻ッテ来レナインデスヨ!?」

「うぅ、す、すみませんでゲス……」

相変わらずの機械声に、何故か懐かしくなる。
皆はどう思っているだろう? 気になってるのかな?

「ねぇ、フィリア」

「なんだい?」

「リードが捕まったって言ってるけど……途中で逃げられたりはしないよね」

「当たり前だよ。ユーレさんがいるんだ、そんなヘマはしないさ」

「だよね、ユーレさんは強いし正義感たっぷりだからね!」

その言葉に一瞬フィリアの顔が曇る……だけどまた一瞬で元に戻る。

「そういやさっき言ってた“時空ホール”ってなんだろ?」

「時空と言う辺り、過去や未来に行けるんじゃないのかな。予想だけどね」

「じゃあ私達も未来にいけたりして?」

「行けるといいね。……未来に」

あれ? なんで未来ってわかる……ああそうか、ユーレさん達は未来から来たんだもんね、でも未来って……どんな所なのかな? やっぱり今みたいな良い世界かな?

「お尋ね者はいやだけどね……あ、見てみて! ユーレさんとリードが来たよ!」

「本当だね……もっと前に行って見よう」

「うん!」

ラルドも前に居るし……行こう!



――その言葉であんな事になるなんて、私は夢にも思わなかった。



〜☆〜



さっきからリードの顔を見て非難の声が飛んでいる。
「あんな凶悪な顔だからな……」や「見ろ、いかにも犯罪者って感じだぜ」などなど……だが殺しなどはしていないのは明白だ。
あの時あいつは俺を殺ろうとした時、確かに謝罪の言葉を口にした。恐らく本心だ。

(ポケモン一人を殺すのに、そんな悪人が一々謝罪の言葉を言うか?)

答えはNOだ。実際周りの奴らは平気で殺すような奴だと思っているだろう。
今、リードは拘束されていて、口さえも封じられているので安全だが。

「……なんかいざ捕まると、可哀想に見えてきたな」

「――全く、こいつのせいで星が停止しそうになったんだな。捕まって本当に良かった」

「……ッ!? んんッ!! んーッ!!」

今の誰かも解からない奴の言葉がリードにも届いたのだろうか、リードは必死に首を振って否定する。

(可笑しい……そんなに否定するのか? もし本当なら普通は今の状況からして普通の体勢で俯いていたはず……)

もしかしたら、とそんな考えがあるもリードのしたことは悪い事、俺はそれを頭に浮かべて振り切る。

「さて、皆さん。今日は重大な発表があります」

ユーレは前と全く同じ場所に立つと、話を始める。
唯一違う点はリードがいる事だけだ。

「なんと、大盗賊リードが……今日捕まりました!!」

この発表――既に皆知っているが――で辺りから声が上がる。

「そして……同時に悲しいお知らせがあります」

ん? こっちの方は訊いていなかったな……まぁお知らせだし、ここで訊いておいたほうが良かったかな。

「同時に私も……未来へ帰ります」

「「「えぇええええ!!!??」」」

俺も少しは驚いたのだが周りの奴らみたいには驚かない。
むしろ何故こんなに驚くのか? それが不思議でたまらなかった。

「すみません……ですが元々私はリードを追っていた身。もう用はなくなったのです」

「そ、そんなぁ……」

とても悲しいようだが、深く見たらあなた達といる義理は無い、とも聞こえる。
実際はそんな考えには至っていないが。

「ですが仕方の無い事なのです……では皆さん。今日でお別れです、本当に……有り難うございました」

「ユーレさん……うぅ」

「悲しいでゲス……うぅ」

でもまぁ、これで普段の日常に戻れるとなると少し嬉しい気もするな。

「では、ほら行け」

「うっ」

ユーレは縛っていたリードを“時空ホール”へと投げ込む。その扱い方がなんとも雑だなぁと思ったりしていると、ユーレが急に立ち止まる(元々立っていないので立ち止まる、という表現はおかしいが)

「そうだ……最後に。“エンジェル”さん」

「ら、ラルド……私達だよ、行こう……」

「あ、ああ……」

普通は呼ばれるような事はしていなが……指名されたからな、最後だし普通に終わらせようか。

――そんな油断が命取りになるとも知らないで。

「うぅ……ゆ、ユーレさん。今まで有り難う……!」

「ああ……」

「そうだね……寂しいよ」

「ここで……お別れなんて」

ミルは遠目でも解かるような涙を浮かべている。俺は浮かべなかったが俯く事しか出来なかった。
フィリアも俺と同じで俯いている……ここでお別れってなったら寂しいもんだな。

「お別れ……ですか」

まぁ、誰だってどれだけ嫌ってる奴でもいざ離れるとしたら少しは悲しい……。

「本当に……そうかな?」

「え?」

「は?」

いきなりの変なことばと同時に、俺とミルは……手を握られた(ミルの場合は前足を握られた、だが)

「お別れは……まだ早いッ!!」

「ぐっ!?」

「きゃッ!?」

「ミル!!」

「ラルドッ!!」

俺とミルは引っ張られ……未来へと通ずる道へ引きずりこまれた。



――その時見たこちらへ必死になって跳んでくるフィリアと、なにか蒼いポケモンがこちらへ来たのは見間違いだったのだろうか。



次回「処刑は暗黒の未来で」

ものずき ( 2012/09/25(火) 22:45 )