第四十八話 緋色と黄色のフィリア争奪戦!?――前編
いきなり裏で活躍している護衛さん達に攻撃され、倒したと思ったらいきなり後ろからエナジーボール、しかも巨大な。一体なんだ?と思って振り返ってみると――?
〜☆〜
「ヒ、イロ?」
「そうだ、お前の名前は? ……なんか目が普通じゃないけど」
「はい?」
あれ? 俺は普段だったら解放なんてするはずもなく、目は黒いわけで……待てよ?
(まさか……さっき無意識のうちに解放使っちゃってたり?)
実際は普通のピカチュウは目がくりっとしてて愛くるしいのだが、ラルドのそれはいかにもだるそうに目蓋が下がっているからだ。
「えっと……俺はラルド。目が普通かどうかは解からないけど」
「いや、そうだな……苗字も名乗らなくちゃな。俺はヒイロ・ラリュート。これが本名だ!」
「へぇー」
苗字か……俺にもあったのかな?
「……で、お前はなんでここにいる?」
「へ?」
さっきとは一変し、声には覇気と若干私情が挟まれてたり……って、なんの私情?
「いや、俺はこいつと探検隊を組んでて……その探検隊のリーダー……」
リーダー、その言葉を言い終わると同時に俺の横を熱線が迸った!
「今の……“火炎放射”?」
にしてはちょっと光線みたいだったけど……敵意識持たれちゃった?
いやいや、俺は別にそんな悪い事は……。
「ここにいる時点で、もう君はフィーちゃんに選ばれた婚約回避方法の一人なのです」
「……婚約回避方法?」
「……あ゛」
後ろの方でフィリアがしまった、とでも言いたそうな声を出す。だめだなぁ、今すぐフィリアを殴り飛ばしたくなってきたよ。
「もしあなたがこのヒイロ君に勝てれば、フィリアは少なくとも半年は婚約がなしに……」
「婚約って……おいフィリア。お前まさか……家出の理由って……」
「……そうだよ。あのトカゲが原因さ」
「トカゲ!?」
まさかとは思うけど……婚約回避方法って……。
「そこの緋色トカゲと……戦うのか?」
「緋色トカゲ!?」
「そうです。フィーちゃんの婚約者……ヒイロ君と戦うのです」
……折角ここまで修行を捨ててきたのに……それはないだろう。
「さて、いきなりはあれですからね。明日になったらここに来てください」
(じゃあ、行かなかったらいいだけか……)
「――来なかった場合は敵前逃亡とみなして、フィーちゃんは貴方方の探検隊から抜けてこちらに戻ってもらいます」
「は?」
って事は……まさか、勝てなかったらフィリアは探検をやめるし、逃げても執着心剥き出しのまま追いかけてきて……どっち道フィリアは探検をやめるのか……。
「そ、そんなぁ!?」
「そ、それは……くっ」
これは……負けられない……展開だな!
「解かった! その勝負引き受けた!!」
「え? ラルド、でも……」
「こんな時に限ってなに言ってんだよ。チームメイトの危機を助けないでなにがリーダーだ」
「ら、ラルド……」
「ま、また睡眠の種で眠らせてくれなきゃ、寂しいだろ? な、ミル」
「う、うん!」
さて、俺のやる気は最大になった。これで……。
「決着つけようぜ! ……ヒイロ・ラリュートッ!!」
「望む所だぜッ! ラルドッ!!」
これで決着の火は近し! ……ただ、フィリアの言っている剣使い……こいつは相当な難敵になりそうだな。
――翌日 女王の間――
「皆、集まった?」
「フィリア、ラルドがまだだよ?」
「えぇ!?」
あれから時間は経ち、今は全員女王の間にいるはず……なのだが。
「来ねぇな。あいつ」
「どうしたんだろう……」
「き、きっと来るはずだよ!!」
いきなりのラルド遅刻事件、だがこの勝負では相手の部屋に誰も行ってはならないという変な決まりがあるためもし寝ていても起こしに行く事が出来ない。
「ラルド……」
時刻は十時五十分、もうすぐ決戦の十分前だ。
フィリアはもうダメだ、と半ば諦めかけたその瞬間。
――ヒイロ目掛けて閃光が奔った。
「うぉおッ!?」
ヒイロはそれを避けるも、どこか楽しそうだった。
「よくも縄で死ぬほど強く縛りやがって……!」
「昨日から勝負は始まってるんだよ! ……それにしてもよく切れたな」
「電気鼠嘗めるなよ!!」
どうやらヒイロが昨日のうちに縄で縛っていたらしい……。
「しかもここがどこか昨日教えてもらわなかったから迷ったじゃねぇかッ!!」
前言撤回、そういう言葉が皆の思考に訪れた。
「知るか! ……じゃあ始めようぜ!!」
「そのつもりだ……フェアじゃない戦いはするなよ」
「するかッ!!」
「すみません、移動してくれませんか?」
と、そんな盛り上がってる所に声が割ってはいる。
「え?」
「ここじゃ壊れやすい物が多いので……ではこちらに」
「は、はぁ……」
「なにも知らねぇな!」
軽くヒイロに馬鹿にされるも、そんなの知るわけが無い。
「では、ご武運を」
そして、俺達は戦いへと向かっていく――。
次回「緋色と黄色のフィリア争奪戦!?――後編」