第四十五話 嘘か真実か
緊急でコイルに呼ばれた俺達だが、何故こんな目覚めの時間に呼ばれたんだ? ……という突っ込みもする暇などなく、急いでトレジャータウン広場に向かうことに――?
〜☆〜
――トレジャータウン 広場――
「で、来てみたわけだけど……」
「結構探検隊の皆さんがいるね」
「ショウさん達も……トレジャータウンにいる人全員召集かな?」
その考えであっているだろう、なにせ他の場所には人っ子一人いなかったからな。
それに……あの時気絶させられた謎を俺は知りたいんだけど。
「皆サン、御ソロイデスカ? 今回ハアル報告ガアリマス」
と、ジバコイル保安官が前に出て話す。そこには彗星の探検家ユーレもいた。
「今回、時ノ歯車ガジュプトルノ魔ノ手ニ渡リソウニナッタノデスガ……ナントユーレサンガソレヲ阻止シテクレマシタ!!」
この報告を聞いた瞬間、辺りから大きな声が聞こえる。「やったぞー!」などの歓喜の声が声だ。が……俺は快く思わなかった。
なんせ俺達が早くに気付いていったからこそ良かったものの、もし気付かなかったら……最悪の事態に陥る事になる。なのに俺達のことが知られてないなんて……面白くない。
「ソシテ、今日ユーレサンカラ重大ナ秘密ヲ話スラシイデス。デハユーレサン、ドウゾ」
何回聞いてもこの電子声には慣れないな……当たり前だろうけど。
「はい、皆さんこんな時にお呼びしてしまい申し訳ありません。ですがそれ程重要な話なのです」
「話とはなんですか?」
ペルー、それを今から言うんだよ。
「はい、実は……私は前からジュプトル――リードを追っていました」
「「「えぇえ!?」」
全員驚愕の声を上げる。それは極自然の事なのだが……俺としては何故か当たり前の事に感じた。やっぱり過去が関係して……?
「――そして、リードは……未来から来たポケモンです」
「「「えぇえ!?」」」
皆、さっきと反応同じだな……マンネリするぞ?
と、心の中で突っ込みをいれているラルドもラルドなのだが。
「未来では……ジュプトルはやはり指名手配中の悪者で、罪から逃げ延びるためにこの過去に来ました」
ここでリードの評価は最低値になっただろうな……俺は過去とか未来とか関係ないけど、あいつがそういう奴だったてのは……信じられない。
あいつの瞳を見たらなんとなくだが戦うのが苦しそうに見えたしな……寧ろ俺はユーレの方が……まぁこんなの心の中で喋っても意味なしだけどな。
「お父さん、未来って何?」
「息子よ! そんな事も解からないのか? 未来と言うのは……これから先のことだ」
「へえ、知らなかったよ」
今ダグトリオとディグダの親子らしき奴らの話が聞こえたような……気のせいか。
「そこでジュプトルはこの世界でも悪事を働こうと考えました……そして、時の歯車に目をつけたのです」
「と、時の歯車になんの関係が?」
普通時の歯車は盗ったらその地域が止まってしまう。だがなんの関係が……?
これは、満場一致で思った事だ。
「はい、実は時の歯車を全て盗ると……“星の停止”という減少に陥ります」
「「「“星の停止”??」」」
今度こそ訳が解からなくなった。なんだよ星の停止って……。
「星の停止とは……星が停止する。つまり世界中の時が止まる事です。するとどうなるでしょうか?」
「多分……生物の活動が止まるんじゃないか?」
「その通りです、ラルドさん。時が止まると生物の活動が止まる……もしその状態になったら、すでに時が止まっている場所にいないとまず非難は出来ません」
なるほど……時が既に停止している所に……確かにそこなら安全だな。
「そこは暗黒の世界、草木も育たない、朝も来ない、光も無い、全ての活動が停止している……そんな世界です」
「そ、そんな場所に……」
なるほど、それは確かに嫌だな。
草木が生い茂っていてもずっと止まっていて更に暗かったら意味が無い……空気とかはどうしてんだろ?
「そして私は……そんなリードを追いかけるためにここに来たのです」
「ヘイヘイ! 質問!!」
「なんでしょうか? ガオンさん」
「リードの事とかは解かったんだけど……いくらユーレさんが物知りだからって、なんでそんな事を知ってるんだ?」
正論だな。確かにそれは的を射ている。でも……。
(なんか……可笑しいんだよな……)
俺は心に残る違和感を抱きながら、次の驚愕の言葉を聞く。
「実は……私も……“未来世界のポケモン”なんです」
「「「えぇええ!!??」」」
今度の皆の叫びは有り得ない程の声量だった。まるでボイノのボイスが赤子の産声の様に……。
「皆さんは信じられないでしょうが……現実です」
「で、でもよぉ……だったらなんでユーレさんは今まで教えてくれなかったんだ?」
「すいません、私も言おう言おうとは思ってたんですが……でも皆さんは私がいきなり未来からきましたと言って、信じてもらえますか? ……無理ですよね?」
「そ、そうだな……」
へぇ……今までの事を記憶しようにも俺は馬鹿だから無理だけど。
――なんでこちら側、過去に来れたんだ?
〜☆〜
突然だが僕はさっきの話を絶対に嘘だと断言できる。
ユーレさんは矛盾と言った、恐らく過去、未来が出るあたり小説などでよく使われる時間の矛盾――“タイムパラドックス”の事だ。
だがこの話では未来は今のような世界と同じということ、そしてそれをリードは過去へ行く事によってこの事件を企て、実行しようとしている……でも可笑しくは無いか?
リードは頭が良い……あの一件で僕はそれを悟った。
だとしたら、自分が消える可能性の事件を企てるか? と聞かれたら答えは絶対にNOだ。
すると必然的にユーレさんの言葉は半分が嘘で半分が本当となる……一体なんのため?
……おっと、そろそろ思考を中断しなきゃね。
「ねぇ、フィリア」
「なんだい? ミル」
「さっきの話……本当だと思う?」
「さぁ……僕には解からないよ」
嘘、だけどね。本当は深入りしすぎている。
「私は本当だと思うなぁ……だって、リードは悪い奴だもん」
必ずしもそうとは限らないんだけどね……さて。
「そういえばあの後どうなったの?」
「え? フィリアまたなにか考え事してたの? ……まぁいいや。あの後は……」
『そして、私はリードを捕まえなければなりません。そして……あいつはまたやってくる』
『だから……どうするんですか?』
『今は保護されている三匹の湖の守護神たち……ユクシーアグノムエムリットに力を貸してもらいます』
『なるほど……では私達も探検隊を向かわせ……』
『いや、いいですよ。皆さんには噂を流してもらうだけで十分です。あの用心深いリードのことですから……下手に気配を感じさせたら近づかないでしょう』
『で、噂とは?』
『それは……』
「確か、時の歯車を永遠に封印するらしいって噂だったよね」
「そう! 全くフィリアは……」
今はそれどころじゃないんだよ……ミル。
「僕は調べたい事がある。しばらく一人にさせて」
「またぁ? フィリアも調べ事ばっかり気にしてると、病んじゃうよ?」
ミル……それはない。
「じゃあねミル」
「うん、頑張ってね」
ちなみに基本僕はバルコニーで調べ事などをする。だって静かだもんね。
さて、僕は集中モードになるとあれになるし……この辺で思考はとまるかな? じゃあね。
あれから数時間……僕はご飯も食べずに集中していた。だがそれが当たり前の様に続くので、ミルはフィリアの分は作らないようにと頼んでいるらしい。
……それにしても、技の性質や形状の変化などを調べていたら面白いね……今僕が調べているのは時を遡る、つまりタイムトラベルが出来るポケモンを探していたけど……。
やっぱりセレビィやディアルガしかいないね。
「さて、この辺で寝るか……」
僕は道具などを持って、部屋に戻ろうとした……その時の事だった。
――刹那、濃い気配が後ろに現れた。
「なッ――!?」
「き、君は……シルガ!?」
そこにいたのは、チームメイトの一人である……シルガであった。
「お前か……何故ここに?」
「集中モードに入ってたからね。今は3時ぐらいだろ? ……君の策はこれでアウトだ」
「ふん……今日はお前にも用があった」
「なに……?」
僕は警戒しながら聞く、驚くような事だったらその間にやられそうだし……。
だが、予想と事実は違う。
「もうこれ以上……この事件にかかわるのはよせ」
「ふうん……心配してくれてるの?」
僕はあくまで冷静に対処する……だがシルガは事件の中心人物だ。その人物が言う事はおそらく正しい。
「ああ、心配……というより警告だな。お前達がターゲットにされるのはまだ早い」
「どういう……」
「――あいつに悟られる前に関わるのはもうやめろ、これが……最後の忠告だ」
「だから、どういう意味……」
瞬間、シルガが消えた……恐らくワープの玉だ。
だけど、あいつっていうのはまさか……
――一体どういう意味? シルガ……。
次回「お姫様の家からの招待状」