第四十一話 裏切り者の正体は?
それは翌日の事だった、俺は気分が良く朝早く起きた。すると――?
〜☆〜
「えぇっ!!?」
「うわぁっ!? なんだい!?」
ラルドの大声で、フィリアは驚いて飛び起きる。そんな声でもミルが起きなかったのは何故だろうか?
「どうしたんだい?」
「フィリアか……それが……シルガが消えたんだ!」
「え……えぇ!?」
シルガが消えたことにフィリアは驚きの声を上げる。それはそうだろう、シルガは少なくともこの事件の最重要人物だ……もしかしたら。
「ジュプトルと繋がってるとか……?」
「でもいつ会う機会が……」
「しかもあの果たし状の時に俺宛に書いたのも可笑しいし……まさか俺のこと調べた……?」
「けど、ジュプトルは君の事を知らなかった……そういう点では大丈夫だろうけど……僕はジュプトルじゃなくシルガのほうが危険だよ」
あんな誰でも診て解かる表情で笑うなんて正気の沙汰じゃない。その時は態とかと思ったほどだ。
「なぁ……もしやあいつ」
「まさか……」
「「“水晶の洞窟”に……?」」
二人の声が見事に一致する。だがそれは確実に最悪の方向へ言っていることを示している。
「拙い……こうなったら俺達が早く行くしかない」
「じゃあ、僕が用意をやっておく! だから君は……」
「解かった! ミルを起こして目を覚ませる! ……ミルの場合は多分ショックで目を覚ますだろうけど」
俺達は緊急事態――と言っても推測だが、の為に色々準備をする。
この時間なら恐らくシンやショウの店も開いているだろうし……よし!
「急ぐぞ! 目的は……“水晶の洞窟”!!」
「ああっ!」
俺達は気合を入れて、水晶の洞窟兼もしかしたらジュプトル&シルガ戦の為……水晶の洞窟へ向かった。
ちなみにその後ミルの大声で弟子達全員がおきかけたのはいい思い出だ。
〜☆〜
――水晶の洞窟 前――
「ここが……水晶の洞窟?」
「あたりに水晶が一杯あるね……」
「スイクンとかいそうだねー」
ちなみにスイクンとは伝説のオーロラポケモンなのだが……スイクンに水晶は案外強いイメージがあるらしく、その昔スイクンが水晶で出来た絶対防御を造れると聞いたことがある。本当の事は解からないが……。
「とにかく! 今回は時の歯車の保護を兼て、更にジュプトル、もしかしたらシルガの捕獲……これが今日の俺からの依頼だ!」
「依頼主が普通探検のお尋ね者逮捕に加わらないよ……まぁいいよ」
「じゃ、水晶の湖へ行こー!」
「なんで水晶の湖?」
「“水晶”の洞窟の中の“湖”だから」
直後、二人が安直だなぁ。と思ったのは言うまでも無いはずだ。
〜☆〜
「水晶の洞窟……中は眩しいな……」
「まぁ、水晶だしね」
「当たり前だね」
さすが水晶の洞窟、光が反射して眩しいほどだ。
「ラルド、あそこになにかいるよ?」
「え……? あれは……?」
「あれは……フローゼル二匹とアブソル三匹だって。凄いね」
「なんだと……?」
おいおい、それは流石に……拙い!
「けどこっちに気付いたみたいだよ? あ、こっちに来る」
「よく見えたな!? この距離で」
「私は視力だけが頼りだから。あ、来たよ」
「本当だ……」
ミルは視力だけは凄いよなぁ……あ、視力が武器になるとか?
「じゃあ……先手必勝! “衝撃電流≪インパルス≫”!!」
言うが早いか、ラルドが“高速移動”でフローゼルの懐にもぐりこむと……電気の衝撃で吹き飛ばす。そして標的がラルドになると、その隙にフローゼルをフィリアの“リーフブレード”で確実に倒す。
「さすがだね……じゃあ私も!」
ミルは口元に黒きエネルギーを溜めると……。
「“シャドーロアー”ッ!!」
三匹のアブソルを吹き飛ばした。
「おおっ、凄いよミル!」
「美味しい所は持っていかせてもらうぜ……“十万ボルト”!」
「ああっ! ダメだよ!」
「いやだね!」
ラルドの十万ボルトは見事三匹のアブソルに命中し……三匹のアブソルを倒した。
「案外弱かったね……」
「僕達が強いんだよ」
「自惚れるなよ」
今から倒すお尋ね者――ジュプトルは強い。
更にシルガがいる、あいつは俺達を知っている……かなり注意しなきゃな。
「シルガがジュプトル側に着いたとは思えないけど……」
「そういえばラルド、ジュプトルの秘密知ってる?」
いきなり核心突いてきやがったぞこいつ? いやまぁ普通はそこ気になるけどさ……。
「え、まぁ……名前なら」
「「本当ッ!?」」
「ああ、盗賊ジュプトル……“リード”」
「「り、“リード”……」」
いかにもリーフブレードが省略されたような名前だが……気にはしない。
むしろなんでレインやシルガとリードが……繋がりがあるのかが不思議だ、深く入りすぎないほうがいいけど……今更って感じだし……な。
「ラルド! なんか見えてきた!」
「なにを?」
「奥地らしき場所♪」
さすがミル……視力は抜群だな。
「早く行こう。アグノムは時空の叫びではやられていた……つまりこの奥にリードがいる!」
「っと、言ってる間についたね……あれ? 大きな水晶が……四つ?」
「ここは時空の叫びの出番だよ」
「頼りにしすぎだ……全く」
俺をなんだと思ってやがる……確かに便利だけどな。
「行くぞ……」
俺は意識を前方に集中する。その時若干だが体がフワッ、と浮いた気がしたのは気のせいではないだろう。
「ど、どうだい?」
「大丈夫?」
なんで大丈夫? なんだよ……ッ!
俺が心の中で軽い突っ込みをしたその時、目眩がおきる。
それは段々と酷くなり――目の前に閃光が迸った。
あれ? いつもと閃光の進み具合が違うような……?
そう思いながらも、時空の叫びを聞いた。
――なるほど……この三つの水晶はそれぞれ知識、感情、意思の色を司る――
――つまり、感情はエムリットの色、知識はユクシーの色だね――
――さすがだな! やっぱり俺のパートナーだ!――
――でも、結局アグノムの心の色が解からないと行けないんじゃないの?――
――ご、ごめん――
あれ? 声だけ……? 前はこんな事無かった……いや、あったか。霧の湖の時と……その他にも多分。
「で? なにか見えた?」
「ああ……声だけだけど、どうやらこの水晶は――」
俺は一旦間を空けると、その巨大な三つの水晶に目を向ける。
「――アグノムの心の色と比例しているらしいからな」
俺は瞬間、全てを悟ったような気がした。
〜☆〜
でも、問題は色だ。時空の叫びでも解からなかった。でもアグノムの色は大体予想できる。
あのポケモンは事前の情報から照らし合わせると……意思を司る。
つまり意思……アグノムの意思と、この水晶の色を合わせれば、
――道が開くんじゃないのか?
「確証もないし、まず水晶の色に合わせるって言ってもな……それにどうやって変えるんだ?」
俺はとりあえず触ってみると……色が変わる。
「なるほど……よし! とりあえず水晶の色に変えよ!」
水晶の色――透明なのだが、無かったので水色に近い色にしたが、に変えた。
その時、水晶の頂点が……怪しく光る。
「なんだ!?」
「ラルド!?」
「とりあえず離れるんだ!」
「お、おう!」
いきなりその光が紫色の電気の集合体となり……激しく光る。
「ぐ……ぐぅ!」
俺はその光りに飲み込まれて――?
〜☆〜
――水晶の湖――
「これで……終わりか?」
「あ……う……」
「ふん、やけに強くなっているな。それにその体も馴染んでいる」
「あれから血の滲むような特訓……なんてしてないが、波動を使ったドーピングだな」
ここは水晶の湖――そこで二人のポケモンが、一人のポケモンと戦っていた……と言うより弄っていた。
「バーストと同じ様な効果が期待できるとはな……」
「元々この体になってから少し身体能力も落ちた気がするしな……もうあの時以上になっているが」
「ふん、その点あいつは監視していた中で解放を使ったのだろう? ……なら安心だ」
「……ん?」
「どうした?」
二人がアグノムを再起不能にまで追い込み、いざ湖に浮かんでいる時の歯車を盗ろうとしたとき。
――アグノムの目が妖しく光った。
「なにを……ッ!?」
「僕はね。最初から君に勝てるとは思わなかった。まさか外界のポケモンがこんなに強かったなんて……思いもしなかった」
「それで……」
「だから……ある対抗策を取らせてもらった!」
瞬間、湖の至るところから……尖った水晶が突き出した!
「これは……」
それは安易に切れる物ではなく、純度100%でリーフブレードなどで斬ろうものなら逆にこっちが切れるかもしれない……それにジャンプも届かず、完全に進むのは不可能だった。
「くっ……!?」
「き、貴様ァッ!?」
「応援が来るまでの時間稼ぎだね……」
「ふざけるな! 今ここでお前を倒して! 俺達は皆の思いを……」
「ふざけるなはこっちのセリフだ!」
突如聞こえた謎の声に、リードとアグノムは少し身構える。最もその声を知っているシルガは全くと言って良いほど動じないのだが。
「そうだよ! それはこっちのセリフだよ! 盗賊リード!!」
「君達の悪事は許せる物じゃない……共犯さんも含めてね」
「やっぱり、裏切り者はお前だったんだな……残念だぞ
――シルガ」
次回「決戦!VSリード、シルガ 前編」