ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第五章 未来からの閃光
第三十九話 現れた盗賊、奪われた四つ目の歯車
両方動けない状況を狙ってたかのように現れた盗賊ジュプトル、一体どうやってここを見つけたのだろうか――?






〜☆〜

「と、盗賊!? お前達じゃなくてか!?」

「感情の神のくせに一々熱くなるなよ……そうだ、あいつが正真正銘の盗賊……ジュプトルだ」

俺も余裕の表情を見せるも、内心は焦っていた。なんせ近くにいるのに動けないといって見す見す時の歯車が奪われるのを見るなんて……。

「……ジュプトル……! そうだ、あの時の恐らくレインが言ってた……」

思い出した! そうだ、あの時に……レインは……!

「リー……ド……?」

「!? お前は……何者だ?」

表情こそ物静かだが、明らかに俺のことを小動物から獣に昇格したかのような目で睨みつけてくるのだが、俺はそんな事では動じない。

「さぁな? 俺を倒したら教えてやろうか?」

「お望みどおりにしてやろう……“タネマシンガン”!」

草タイプのエネルギーが粒となり、何粒もの攻撃が俺を襲う……が俺にはありがたいことだった。
エムリットやミルにも、他の弾丸が当たったのだ。

「(よし! エムリットの拘束は解けた……こうなったら後は解いてくれたら問題……)」

「貴様! 何故ここを知っている!?」

……無理だった。

「さぁな? ただ……俺は元からここを……“知っている”」

「なにっ!?」

し、知っている!? まさか……やっぱりこいつは……シルガと同じ様な奴なのか?

「エムリット! とにかく封印を……」

「“サイコキネシス”!!」

聞いてねぇ!! 絶対に聞いてねぇぞ!

「ふん……」

ジュプトルはそれを軽く避けると、“エナジーボール”で攻撃する。
だがこれはエムリットのテレポートで飛ばされる。

これって……時間経つまで解けないの!?

「ら、ラルド……なんか疲れたよぉ……」

「うん、俺も疲れてるよ!? でも……唯一の手段があれなんだよ?」

確かに、としか言いようがなかった。実際それしか言葉が見つからないしね、この状況……こういう所で二人で来たのが仇になったか……?

「けど……そういえば口は何故か動くよね」

「あいつが俺達から色々絞ろうと思ったんだろう、情報を……って!」

ま、まさか……シャドーボールならもしかしたら!

「ミル! シャドーボールだ、エムリットに向かって!」

「え?」

「いいから!」

「うん……頑張るよ」

口の前にエネルギーを溜め、一気に放つので口さえ動けばなんとかなるんだったんだ。今まで忘れてた俺は恥ずかしいな……。

「いくよ……どうせだから“シャドーピンボール”!」

シャドーピンボールとは、イート戦で使った妙に弾力あるシャドーボールで……二つ発射したから
、恐らく壁とかに当てて勢い強めようと……そういやミルって今思えば天才だな。そういう事は。

「まだまだ……サイコキネ……きゃっ!?」

「ぐっ……これは……?」

ジュプトル――もとい本人の反応からで推測したリードは、いきなりの攻撃に驚く。
そして、術者のエムリットが倒れたという事は……?

「ふぅ、なんか疲れたな」

「ずっと立ちっぱなしだったからね……」

俺達が……。

「盗賊ジュプトル! お前を探検隊エンジェルの名において……捕まえてやる!」

――封印と言う悪夢から復活したという事だった。






〜☆〜

私達は、エムリットを倒したことで封印がとけ、ジュプトルを逮捕する状況に作ることはできた。
後はその実力を……どうにかしないといけなかった。
いくらラルドがグラードンを解放したら倒せるとはいえ、それは“解放”をしたらだ、解放は今出来なくなっていた。

「……頑張るしかないよね……」

「行くぞ……ミル!」

「うん! 頑張るよ〜!」

まず私が前衛へ電光石火で飛び出してその後ろからラルドが初見と言う事で”十万ボルト”で援護射撃をする。
それをジュプトルが軽くかわすと、今度は私が“突進”で攻撃をする……のだが軽く避けられる。

「えっ……?」

は、早い……しかも尋常じゃないぐらいに。

(な、なに今の? あんな至近距離から最大速度に近い速度で突撃したのに……)

私が実力の差で既にネガティブになっているのだが、ラルドは前衛に飛び出し実力の差も感じさせないほどの攻撃の連続で圧倒している。

「さすがラルドだな……じゃあ私も……“シャドーセリエス”!」

口を上に向けて、一斉にシャドーボールをいくつか発射すると……全てをジュプトルに当てた。
いくらなんでもそれを避けるのは無理なのか、少しよろめく。その隙をラルドは逃さなかった。

「よし! 帯電≪ボルテージ≫改……」

あれ? いつの間に帯電≪ボルテージ≫改を……?

「“衝撃電流≪インパルス≫”!!」

「ぐぅっ……!?」

その衝撃で砂煙が発生し、ジュプトルの姿は見えなくなる。
や、やった!? もしかしてこれなら……ジュプトルを倒せ…。

――だが、その考えは突如の声により妨げられる。

「ぐぁああ!!?」

「少々手間取って更にダメージも結構受けたが……まぁ掃除は出来たな」

「ら、ラルド!? なんで?」

あの砂煙の中で一体何が起こったのか……簡単だ、今ラルドのお腹部分が見えた。……ジュプトル定番の切れ味抜群の技“リーフブレード”だ。

「そんな……“リーフブレード”は強いよ……」

私は恐怖のあまり足が竦む。
ああ……やっぱり私は臆病だ、ラルドがあんなんになってるのに。

「お前は……ふん、倒す価値もないか。じゃあ時の歯車は頂いていくぞ」

「なっ……! や、やめて!!」

無我夢中で放ったシャドーボール、当たったかどうかは解からないが……それは遠くで音を鳴らせた。爆音を――。

「じゃあな、か弱いお姫様」

「え……?」

一瞬の事だった。

私が……宙に浮いていた。

「え……」

痛みもなにも感じられなかった。ただ一つ感じれたのは……、

“恐怖”の二文字だけだった。

「か……はっ……?」

地面に叩きつけられ、肺の空気が全て吐かれたようなきがするが砂がクッションにより少しは衝撃を和らげられた。

「ここを取ったら、後一つか……やっと……ここまで来た」

意識が消える前の見たジュプトルの顔は、どこか嬉しそうで、無邪気な子供のような顔だった――。



次回「歯車の鍵は水晶!?」

ものずき ( 2012/09/03(月) 14:46 )