ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊 エンジェル〜空を包みし翼〜












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第五章 未来からの閃光
第三十八話 潜む番人――VSエムリット
昨日の違和感の正体が解かるも、強制的に帰らされた俺は少し不服で――?






〜☆〜

「おーい、ラルドー! 朝だぞー!」

「え……えぇっ!? ミルが俺より先に起きてる!?」

「酷ッ!?」

俺が目を開けると、そこにはミルの黒い円らな瞳があった。ただ俺はそんな事よりミルが早起きしてたのがそもそもの吃驚の原因で……あれ? バッグ持ってる?

「朝礼は……終わったか。この様子だと」

「ラルド遅いよ。フィリアとシルガはもう先に行ったよ」

「どこに?」

「ペルーやユーレさんが各自色々探索してくれだってさ。フィリア達は森や鍾乳洞、高台の湖と着たもんだから次も湖だ! って言いながら湖がありそうな秘境に行ってるよ。“星の洞窟”とか」

……あいつらも頑張るな。でもシルガは知ってそうなんだけどな……いや、あの時は知ってたんじゃないんだろ、偶々あいつの不思議な勘が働いたんだ。そうに決まってる、いやそうであって欲しい。

「じゃあ、準備次第すぐに行こうか」

「え? もう決まってるの?」

「ああ、あの……――“流砂の地”に!」

俺は一通りの準備を済ませた後、穴抜けの玉を数個もって、ギルドを出た――。



〜☆〜



「また来たけど……一体何があるの? あるとしても流砂だけ……」

そう、ここにあるのは流砂だけだ。だがそれが鍵を握っている。
可笑しいとは思わないか? こんな場所だけに流砂がある、流砂ができるのは下に空白の空間がないと絶対に出来ない。

という事は……?

「この流砂の中に……飛び込む!」

「え……えぇーー!!??」

ミルはどれだけ驚いたのかは解からないが、これでも相当な声を上げている。
ボイノほどじゃないけどな……当たり前だけど。

「よく考えてみろ。プリルにこの前俺が密かに鍾乳洞への行き方を聞いたとき、あいつなんて応えたと思う?“分かれ道の丁度真ん中にある壁を通り抜けたら鍾乳洞に出るよ♪”だってさ」

こんな意味不明な事をいきなり言われたら、耐性ついてなくちゃ驚くぞ? 絶対に。

「霧の湖だって日照り石とグラードン像の謎を解いてやっと見つけれた……つまりここも普通では考えられない流砂の中が鍵なんだ!!」

「へ、へぇ……ラルドも色々考えてるんだね……?」

ミルは今だ驚いてはいる物の、俺の推理(?)の意味が解かったらしく少しは落ち着いた。
でも……問題は流砂の中に入ることだけではない。

「もしかしたら、ユクシーのような“番人”がいるかもしれない、それにジュプトルと会う可能性も0じゃない。それでも良いんなら来い。俺は強要はしない」

ラルドの言葉は、今までのようなおちゃらけた雰囲気ではなく、どこか威厳があった。
そんなラルドの迫力に、ミルは少し気圧されるも言葉を発する。

「根拠は?」

「違和感のみ」

根拠が違和感だけでは、普通の探検隊はそんな危険な事はしない。

――普通の探検隊ならば、の話だが。

「解かったよ。私も行く、ラルドを信じるよ」

「本気か?」

「うん、だって根拠が違和感ならそれだけでも十分じゃない?」

この言葉を普通の探検隊は発しないのを覚えてもらいたい。こんなのが一杯いたら探検隊の人口はとっくに消えてるよ!

「霧の湖の時もそうだったし、俺もそれで確信した……自分の能力を信じる!」

「じゃあ、行こラルド死ぬときは一緒だよ?」

「縁起でもないこと言うな……そういうのをフラグって言うんだ」

「えへへ〜……じゃあ、いち、にの……」

「「さん!!」」

助走をつけると同時に、俺達は真ん中にある一際大きい流砂の中に……飛び込んだ!

「「うぁああああ!!?」」

俺達の身は重力がかかり、そのまま落ちていき……?

「きゃあ!?」

「ぐぼっ!?」

ミルの下敷きとなり、俺は肺にあった息を全て吐く。一応砂がクッションになって衝撃はやわげられたんだけど……。

「ふぅ、助かったぁ」

「た、助かったね……お前は」

すでに満身創痍の状態だが、自分で言いだしたのだから行かなければならない。

「じゃあ行くぞ、もしかしたらあるかも知れない……地底湖(仮)へ!」

「おぉー!」

初めがどうであれ、俺達は――時の歯車を目指して進んだ。
ただし、この後に起きる偶然の悲劇もしらないで……。






〜☆〜

今、私達がいるこの場所は又もやラルド命名となった“流砂の洞窟”の中間地点、ここならモンスターもあまり来ないし、休憩にもなった。

「それにしても、モンスターが普段より強く感じるよ〜」

「ここのモンスターが強いのと、俺達が二人だからだな……それにしても“モンスターハウス”は焦ったよなー」

「そうだよねー」

説明しよう、“モンスターハウス”とは複数体のモンスターが一つの部屋に集まる事である。
それは無尽蔵に湧くような物で、ある意味そこらの群れよりは強いかもしれない。
今まで説明はあまりしなかったが、危険を回避できたのは縛り玉のお陰だったのは黙っておこう。

「サンドパンやビブラーバ、今会った中で一番強いモンスターは鎧ポケモンの“バンギラス”だよな」

バンギラスとは、鎧ポケモンの名の通りに鎧の如く硬い皮膚で覆われている。
その硬さはシルガの波動掌でやっと本格的な物理ダメージが通るような硬さだ。
しかも攻撃力も高く、カウンターなどされたらひとたまりも無い。

「そういえば、“ストーンエッジ”もしてきたし……強すぎる」

本当にこのダンジョンは一味もふた味も違うと、私は身に染みる。実際にさっき直撃したが、オレンの実でも回復しきれない。

「そろそろ行くか……これ以上の時間はジュプトルが来るかもな」

「そうだよね。急がないと……」

私達は早速立ち上がると、戦闘の体制に入りながら地底湖(仮)を目指した――。



〜☆〜


あれから数分、私とラルドは砂嵐やモンスターハウスを掻い潜り、地底湖(仮)へと歩いていた。
その時間は短いようで長いらしい、私は少なくとも長く感じれた。
そのお陰で遂に、地底湖らしき場所について――?

――地底湖――

「ここが……地底湖?」

「ユクシーみたいな番人は……いないな。やっぱり間違いだったのかぁ?」

「……あ! ラルド、あの湖の真ん中の所、翠色に光ってる!」

「そうか……あ、本当だ。微かに見える……」

ラルドがどんな視力だよ……と思っているのもミルは知るはずも無く、時の歯車がある光に近づいていく。

「さてと、ギルドに連絡するか」

私はラルドの言葉など耳に入らず、好奇心のままに光に近づく。
瞬間、私の直横を虹色の光線が通った。

「こ、これは……?」

「やっと来たか! 盗賊!」

「盗賊……?」

そして出てきたのは、ピンクがベースで、ユクシーのような形をしておりシルガの房のような物が二つ垂れ下がっているポケモンだった。

って、それよりも盗賊ってなに!?

「ねぇラルド。まさか……とは思うけど」

「ああ、そのまさかだ」

私(俺)達を盗賊だと勘違いしている!!

私達は全く同じことを考えながらも、全く同じ言葉なのかは解からなかった。

「それにしても早合点するなよ! 俺達は時の歯車を探してて……!」

「その後はどうするつもりだ!?」

「知らん! だって何も言われてないからな!」

ラルド、それを言ったらダメじゃんか……。

「やはり盗賊か……覚悟しろ!」

「くそっ! 話が通じない……ここは正当防衛だ! ミル、“シャドーボール”!」

「解かってるよ……傷つかないでね“シャドーボール”!」

ミルは得意のシャドーボールで牽制するも、それはエムリットに触れる直前で消えた。

――な、なに? 今の……?

「何故って顔をしているな? 教えてやろう、これはテレポートの応用だ!」

ま、まさか……。

「そうだ、貴様の“シャドーボール”を違う場所に“テレポート”させた。今頃流砂の近くに落ちただろうな!」

そ、そんな……“テレポート”は移動用だと思ってたのに……実戦で、しかも技をどこかへ飛ばすために使うなんて……。



――これはピンチかも。






〜☆〜

“テレポート”を応用し、技を飛ばす謎のポケモン。ただ今の流砂の所に飛ばしたって言うのが本当なら、こいつは……恐らく仲間かなにかがいないかを確かめるためにそこへ飛ばしている。

「厄介だな……もしシルガ達がきたら、いきなり技を受けて……」

「ラルド、どうする?」

「こうなったら……ミル、ゴニョゴニョ……」

「……! 確かにそれはいいね。やろう」

ミルに作戦を伝えると、俺はすぐさま大技の準備に入る。
帯電≪ボルテージ≫改、からの放電なのだが、それがもしテレポートされたら……。
いや、そんな事は考えるな……行くぞ!

「帯電≪ボルテージ≫改、更に充電!」

この流砂の洞窟の中で解かった事が有る。それは……解放が使えなくなったことだ。
考えても見てください、俺は解放をする前提でここまで自信たっぷりで来た。もしここにジュプトルが来たらどうなる?倒されるに決まってる。

「だから……最小限の被害(エネルギー的な意味で)で、お前を倒す! えーと……ユクシー似のポケモン!」

「私はエムリットという名前がある!!」

何故か自分で名前を言ったが、改めて伝説のポケモンの番人――エムリットを最小限の被害(エネルぎー的な意味で)で倒す!

「行くぞ……新技、モンスターハウス用“超広範囲放電≪フロア・ボルテクス≫”!!」

「なっ……こんなの相殺するしかないじゃないか!?」

思ったとおりだ、エムリットはそんな広範囲にま“テレポート”を掛ける事は出来ない。
元々、あれは他人や他の技に掛けるものじゃない、だから……相殺したそこを突く!

「今よ!縛られの種!!」

「え……?」

パクッ、という効果音が鳴りそうな雰囲気で、エムリットは……縛られの種を食べた。
その後、エムリットは硬直し……動けなくなった。

「しまっ……」

「やったよ! エムリットを止められた!」

エムリットにはもう衝撃を与えないか三十分経つまで動けない悪魔の兵器“縛られの種”を食べさせたので一安心だ……った。

「ふ、ふふふ。あんた達、私がエスパータイプなの忘れてない?」

「なにを……ってうわぁ!? 体が動かねぇ!?」

「わ、私も……もしかして金縛り?」

「残念、三十秒後へ未来予知してついでに“封印”という技も上乗せしてな……数分経たなければ動けないぞ?」

こ、こいつ、頭に血が上ってると思ったら急に冷静になりやがって……あれ? そういえばこいつは感情を操れ……あ!

「お前……自分の感情をコントロールしたな!?」

「勘がいいな……その通り、私は感情をコントロールできる」

だからいきなり冷静になって作戦を思いついたり……。

「正直に答えろ。お前達が、時の歯車のを奪う盗賊なんだろ!?」

「だから違うって! 本当の盗賊は……」

俺が本当の盗賊の名前(というか種族名)を言おうとしたとき、不意に周りが一気に氷点下に落ちた気がした。……まさか……?

「それは多分……俺の事じゃないかな?」

「な、なに!?」

「お、お前は誰だッ!?」

「ちっ……狙ってたとしか言いようが無いぜ。こんな時に来るなんてよぉ……



――盗賊ジュプトル」

そう、現れたのは……黄緑と緑を合わせた様な体色で、頭に葉っぱがあり、両手にはブレードとなる草がある主に森に生息している森トカゲポケモン――ジュプトルだった。



次回「現れた盗賊、奪われた四つ目の歯車」

ものずき ( 2012/09/01(土) 17:07 )