第三十六話 時を奪いし大盗賊
俺達は、ビーグに緊急招集という件で呼ばれ、ギルドに急いで向かって行って――?
〜☆〜
「なにかあったのか!?」
俺達はギルドへ着くと同時に梯子を使わずに飛び降りる(ラルドだけだが)。
そのせいで少し床が少し揺れてしまう。強度弱っ!?
「あ、あぁ、じ、実はな……」
「なんだ!? なにがあった?」
「時の歯車が……二つ盗まれた」
「二つッ!?」
いくらなんでも、同じ日に二つはないはず。
まさか……また連絡が!?
「ああ……どうやら犯行は私達が出発した日と、帰って来た日らしい」
「狙われたのか……?」
「そ、それでっ!? どこの時の歯車が盗まれたの!?」
「それは……一つ目は親方様が昔一度だけ行って、見つけたという“巨大岩石群”の中の鍾乳洞らしい」
鍾乳洞……そんな場所にも時の歯車が? いや、そこだからあったとか?
でも、もう一つは……?
「もう一つは?」
「そ、それは……」
「霧の湖」
俺が確信したとき、シルガがその場所を言った。
ミルは最初呆気にとられていたが、直に口を開く。
「な、なんであそこの時の歯車が!? 第一ユクシーがいるじゃん!」
「不意打ちではないんだが……犯人は相当の強者らしい。それこそユーレさんレベルだな」
「いくらユクシーでも、目を合わせなければ記憶は消せないしね……僕も最初聞いたときは驚いた」
一体誰が……? 情報を漏らしたとかは……無いと信じたい。
……! もしかしたら……。
「……ボソッ(俺かレインかと思ったか?)」
「へ?」
俺の考えた最初から霧の湖に時の歯車があることを知っていたこの一人目に、声を掛けられる。
――シルガだ。
「残念だな。レインには実体が無いし、俺もあの時あの時間に霧の湖に行けると思うか?」
「そう……だよな。悪い疑って」
「いや、あの発言の中から俺を疑うのは当然だ。……しかもこの中にばらした者はいない。波導で解かる」
「ああ……」
誰だ? 一体誰が……こんな……待てよ?
なにもレインとシルガだけが知ってるわけじゃないかもしれないじゃないか、元々シルガとレインは俺を知っている、じゃあ当然俺も霧の湖に時の歯車があることを知っていたかもしれない。
だったら、他にも誰か知ってる奴が……。
「そ、それで? 犯人は? ユクシーは?」
「ユクシーは自力でポケモンがいる場所に移動してきたらしい。重症だったが、今は安静にしている」
「良かった〜……で、犯人は!?」
「それは……ユクシーの証言で解かった」
えっ!? じゃあなんか意外にすぐ捕まるんじゃないの!?
「もうお尋ね者として張ってある……」
「これが……犯人?」
そこにあったのは――
――ジュプトルという種族のポケモンだった。
「いかにも凶悪そうな顔してるな……」
「そうですわ!」
「ヘイヘイ! 最悪だぜ!」
上からボイノ、ソーワ、ガオンだが……今は言ってる暇も無い。
こいつが……もしかしたら……。
俺は色々な考えの中で、一番手っ取り早い方法を考えた。
ある事を知るために――。
「じゃあ、こいつを捕まえれば……」
俺は別の意味で言ったのだが、ミルは普通に考える意味で理解する。
「そうだよね、このジュプトルって奴を捕まえなきゃ、ユクシーも報われないもんね!」
「ミル、縁起でもないこと言わないの」
こいつ……もし知ってるんだったら名前が思い浮かぶ……とか無いよな……。
――リード……――
「リード……?」
なんだ? 今の声……いや、今確かにリ……あれ? さっき声に出したのに、忘れてる?
まさか……レインか? 何でこんな事を……。
「とにかく、僕らプクリンのギルドは、絶対にジュプトルを捕まえるよ!! たぁーッ!!」
「「「おぉおーー!!!!」」」
プリルを含め、皆がジュプトル捕獲一色に染まる。
だが、理解できない者がここに一人。
「ちょ、ちょっと待ってください! 今回の遠征は失敗だったのでは!?」
「それが……ユクシーとの約束で言えなかったんだ。ごめんね」
「い、いいですよ。それよりも解かりました。私もジュプトル逮捕、手伝いましょう」
「ユーレさんがいれば一安心だね。じゃあ明日はジュプトル逮捕で忙しいから、頑張って休んでね」
そして、俺達は気合を入れて眠る。ただ一つ、俺は腑に落ちたことがある。
――シルガが時の歯車を二つ盗まれたと言った時、少し笑みを浮かべた事だ。
(でも……ありえないか。そもそもあいつは忙しいんだ。会う機会とかは無いだろ)
そして、俺は就寝した。
〜☆〜
翌日、俺達が大広間に行くと、ペルーや他の面々が既にいた。
そして、徹夜で考えた時の歯車がありそうな場所を手分けして探す事となる。
「まず、“東の森に”……ボイノ、ガオン」
「おぉ! 張り切るぜ!」
「ヘイヘイ! 絶対に見つけたやるぜ、ヘイヘイ!」
こいつらがコンビなのが不安なのは俺だけか? あ、俺だけか。
「次……“水晶の洞窟”、ビーグ、ソーワ、サーイ」
「頑張るでゲスよ〜!」
「きゃー! 最強の布陣ですわー!」
「ふふふ、見つけられない気がしない」
自信過剰者約二名がここにいる。
「エンジェルは“北の砂漠”に行ってもらう」
「了解! 任せといて!」
「ジュプトルか……出会っても勝てそうに無いね」
「お前達は弱いからな」
「お前もな」
エンジェルは相変わらずだが、一応気合は入っている。
「じゃあ、ジュプトル逮捕目指して……たぁあーー!!!!」
「「「おぉおーーーー!!!!」」」
かくして、ジュプトル逮捕作戦の……開始!
次回「吹き荒れる違和感」