PART 9 <盗難>
僕は決意した。
そして知った。解った。
技なんか無くても、この先人生お先真っ暗って分けでも無い。
そんな事より、道場で修行だのしていたら、もう時刻は真昼に近付いている。
嗚呼……。これは絶対、スイングと言うエモンガに罵りられる事間違い無いでしょ……。
僕の頭の中には、これから起こるであろうシチュエーションが再生されっぱなしで、勝手に震えさせている。
誰だって、怒られたり、罵倒されんのは嫌でしょう……?
性格理解したって……、嫌な物はいつまで経っても嫌なんだ。それに、世の中、罵られるのが好きな物好きの度を超えた物好きは居るのだろうか……。
まぁ、良いか……。暗い事は考えない事にしよう。負の感情が全ての負を引き付けるからね……。
明るく行こうか……。人生楽しんだ方が圧倒的に良いもんね。こんなに晴れてるんだし……、もっと暗くなってちゃ勿体無いしね……。
それに、ユーリとも知り合えたし……。まぁ、弄られている感がハンぱないけどさ……。飛び道具もそこそこ上手く扱える様になったし……。
一番は、夜明けを眺められたからね……。あれは綺麗だったよ……。心の中の負と言う負を全部洗い流してくれてるみたいで……。
それにさ、僕の嫌いな夜を追い払ってくれるしね……。
そう言えば……、夜と言えば、あの夢は一体何だったんだろう……。修行中はすっかり忘れていたけども……。
考えるだけ無駄だって、自分に言い聞かせても、考えてしまう物なんだよね……。
謎に包まれた物って、それが一体何なのかって言う事実を追求したくなる物だったりするのかな……?でも、こう思うのって、案外少ないのかな……?
でも……、僕は知りたいな……。
謎に包まれた全てを……。何で僕が人間からこの姿になったのかとか……、どうして記憶を失ってしまったのかとか……、さっきみたいな、あの夢の正体とかさ……。
でも、その正体とか事実を知った時、僕はどうなってしまうのかな……?
失った記憶が、思い出したくない程、黒ずんだ過去だったりしたら、僕はどうなってしまうんだろう……。
今まで考えた事も無かった……。きっとショック受けるのかな……?否……、きっとメンタルの弱い僕なら、心からズタボロにされて二度と復帰出来ないかもしれないよね……。
だとしたら……、それらは本当に追い求めて良いものなのかな……?
…………
……
…
否、でも、僕なら、それでも知りたいと思うな……。
謎のままなんて……、キレが悪くて、モヤモヤしていて、知らなかったら後悔する事もあるんだろうし……、僕には知らないまま何て状況は、きっと生きていけないな……。
あれ……。そんな事を1人考えている内に、基地の近くまで来たみたいだ……。
異様に早く感じるな……。でもそれも、きっと気のせいだよね……?
でも、いつもと何かが違う予感がする……。空気が冷たい様な……。何かしら、衝撃的な事でも起こったのかな?
否、これも気のせいでしょう……。
そう信じて、基地の戸を開く。否、開いちゃいないね……。開きっぱなしだし……。上スライドだし……。
☆
嫌な予感は的中したようだ。
僕ってある意味で凄いよね……?
否、今はそんな事言ってる場合では無い……。
えぇと……、何が起きたかを脳内整頓してやると……。
僕が基地に入ると、スイングとアサギと後、見慣れないイーブイが居て、何やら不穏な雰囲気……?とにかくピリピリとしていて、近付きがたい雰囲気が空気が漂っていた……。
でも、ここで僕が話を切り出さないと、何も始まらないし、何の解決にも至らない。
とにかく勇気を持て……!不穏な空気に何て負けるな……自分……!
「あの……すいません……。皆さん揃ってどうしたんですか……?」
言った……。僕は確かに言ったぞ……。確かに雰囲気には打ち勝った……!
すると、張り詰めた空気が一瞬緩んだ様な気がした……。
まぁ、効果はあったって事で良いかな……?勇気を出した甲斐が……。知らないけど……。
「あ、ソラ……!良いところに……。でも、どこに行っていたの……?」
「ちょっと、マクノシタの施設へ……。飛び道具の扱いの練習を……。」
「否、それは、どうでも良い。取り敢えず、アンタ今来たばかりだからな……。状況を軽く説明する。」
スイングがそう告げると、緩んだ空気が張り出した。でも、さっきよりかは、不穏では無いけど……。
でも、やっぱり重々しい話の予感……。この話の切り方だと、そう感じても無理は無い……。
「まずだな……、アンタが今朝早くから、どこかへ言った後にな、アタシらの元にこのイーブイが現れたんだ……。依頼を持ってな……。」
「依頼人のアビスって言います。」
スイングの語る合間に、依頼人だと言うアビスと言う名のイーブイが小さく礼をする。
どうりで見慣れないポケモンだと思ったよ……。依頼人だったのか……。あれ……人……?
「で、アビスの依頼がこれ……。あ……読めないんだっけ……?」
「そうだけど……。ここでバラさないでよ……。初対面のポケモン居るのに……。」
「悪かったですね。アサギ……読んであげて……?」
「何でボク……?!スイング持ってんだし、そのまま読めよ……。」
突っ込み合いになるスイングとアサギ……。どうしてこうなった……?
アビスって言うイーブイも、ちょっと引いてると思うよ……。こんなの……。
否、でも、僕だって文字が読めないのバラされたから、若干変って思われてたり……。
「あ、私が読みますよ……?元は私が持ってきた依頼なんですし。」
「え……?じゃぁ、お願いします……。あ、それと……、そんなに畏まらなくたって良いからね……?」
「あぁ、はい。私が持ってきた依頼は、お尋ね者関係なんです。」
「そう。お尋ね者。それにアタシらと因縁深き奴……。」
「盗られたのは、ロケットペンダント……。それは、私の宝物なんです!!でも、私1匹の力じゃどうにもならなくて……、そしたら偶然ここの救助隊の事を知ったんです。嘗て、その実力で名を挙げ、でも不注意で一時活動休止した救助隊があると……。」
「ド痛い所を突くな……。」
「まぁ、不注意であぁなったのは、事実ですけども。でもボクは許さないよ。見つけ次第、血祭りに上げてやる……。」
「アサギの言ってることが怖いよ……。」
まぁ、アサギは嘗ての恨みを思い出したのか、怖い事を言ってるけど……、取り敢えず、依頼内容は窃盗かな……。
でも、それだけ……?もっと何かがありそうだよね……。最初の雰囲気からして……。
「ええと……まぁ、それはさておき……。依頼内容は分かったけど……、場所とかは……?犯人の種族とかも知らないといけないし……。」
「そうなんですが……。実は、依頼内容には続きがあって……。」
「続き……?」
「はい。その犯人と言うのが、嘗てスイングさんたちを欺いた……奴らしいんです。」
嘗てスイングを欺いた……?それってもしかして……。一昨日の晩にアサギが言っていた奴なのかな……?
「多分そうだと思う……。ボクらを騙した奴と種族、性別、更には名前まで一致していたんだ……。」
「マジでぇ……。」
予想的中……。こう言うのは、当たらないで欲しいよ……。
でも、よく考えれば、敵討ちのチャンスだったりもするんだよね……。
「場所は"あんやいせき"。そのお尋ね者の種族はヤミカラス。特徴として右目が潰れていて、その名はゲイル……。」
「ヤミカラスか……。金目の物には目が無いって言うよね……?」
「まぁ、そうだろうけど……?裏があったら嫌だね……。」
「裏って、一番嫌なパターンじゃん……。黒幕は別に居たとかね……。否、まさかね。」
「フラグださないでよ……。」
「それじゃぁ、ソラさん……?」
「堅苦しい敬称は、付けなくて良いよ。その方が楽だし。」
「そうですか……?じゃぁソラ、宝物の争奪兼仇討ちをしに行こう……!」
「そうだけど。もう悪い方向にずれないで欲しい……。」
「ずれたって、その分フルボッコにできる相手が増えるじゃん……?アタシは歓迎。」
「ボクも本気でボコれるなら、曲がっても良いかな……?」
「私だって、1匹じゃぁできない分討つよ!!」
何で、この人達こんなに元気なの……。ただ相手が増えてめんどくなるだけじゃん……。
攻撃手段が乏しいのに、相手が増えたら堪ったもんじゃないよ……。
でも、今日は悪い予感当たり過ぎだし……、もうこれ以上は止めて下さい……。
僕は、悪い方向に曲がらない事を祈ろう……。