PART 4 <頭痛>
「それじゃぁ、"でんじはのどうくつ"へ行こうか……!」
アサギの掛け声で僕らは"でんじはのどうくつ"へ向かう事となった。
"でんじは"と付くと言う事は、電気を帯びたポケモンが多く生息するのだろうか……?
そんな事は、行ってみないと分からないけど、ポケモン同士が引き付けあってしまう程の電磁波なんて普通は有り得るのだろうか……?
この世界では、やっぱり何かが起こり始めているのかな……?
まぁ、とにかく今は、救助依頼とやらを熟す事が第一だよね……。
何せ僕は、"救助隊"の一員になったのだから。
☆
あれから彼是お天道様が青空の天辺まで登りつめた頃、僕らはその"でんじはのどうくつ"に辿り着いた。
足を動かし続けていた所為か、膝が笑う。
他の2匹が平然と進んでいたのは、経験の差なんだろうか……。どちらにしても、僕自身の体力の無さには嘆かされる。
"でんじはのどうくつ"……。目の前に聳える彼の洞窟は、名前の通り、岩肌のあっちこっちから電気エネルギーを放出している。
また、その洞窟の岩石は、迸る電気のエネルギーの所為で黄色く染まっていた。
でも、その見た目とは裏腹に、洞窟には電磁波が渦巻いている様で、近くに居るだけで頭が痛くなる。内部に、更に強い電磁波が流れていると思うと頭痛が酷くなりそうだった。
否、既になっているけども。
それにしても、何をどうしたらこの様なダンジョンが出来上がってしまうのだろうか……。
自然災害に伴って出現し続けているとは言え、有り得るのだろうか……。
まぁ、この事は考えるだけ無駄なんだろうな……。変な世の中だ。
「ビビビ……。モシカシテ キミタチガ ワレワレガ キュウジョヨウセイシタ キュウジョタイカ……?」
考え込んでいると、前方から2つの鉄の玉が飛んで来た。
救助要請をしたポケモンと言う事は、この鉛玉の様な2匹が"コイル"と言う種族なのだろうか……?
どちらも同じ様な……、と言うよりも同じ外見なので、どちらが依頼主なのかは僕には分からない。だけど、依頼主のマグネと言うコイルは仲間を助けてと言っていたから、このもう片方のコイルは彼の仲間なのかな……。それよりも、同じ外見で仲間同士見分けが付くのかな……?
「うん、そうだけど。キミたちのどちらかが依頼主のマグネなの……?」
「ソノトオリダ マッテイタゾ。ツイデニ トナリニイル コイルガ イライジョウヲ カキシルシタ マグネダ。」
そうなんだ……。まぁ、次会う時には、どっちがどっちだか再び分からなくなるだろうね。
同種族が居ると不便だね……。相手からしたら見分け付かない。
でももしも、同種族がこの先仲間になったら、どうなるんだろう……。
何かトレードマークさえあれば、何とかなるのかな……?
「で、依頼内容はこのダンジョンの最奥部に居るコイルたちを助け出す事だよね……?でも、どうしてこんな所に引き寄せられて居るの……?」
「そう言えば……。何でこんな場所に……?」
「ソレハダナ……。ココハ モトモト ワレワレノ スミカ ダッタカラダ。モトモト コノ ドウクツニハ デンキガ ナガレテイタ。ソレハ ワレワレノ タイセツナ ショクリョウダカラナ。ダガトツゼン……、コノ ドウクツニ フメイナ デンジハガ ナガレタノダ……。ソノ デンジハニヨッテ ワレワレノ ナカマハ ヒキツケラレテシマッタ……。ト、イウコトダ。」
コイルって電気食べるの……?どうやって……。何を原理に……?
まぁ、口には出さないけど、彼らの話を聞いていると、様々な疑問が浮かんできた。
とにかくここは、彼らの住居らしいね。でも、突然の電磁波って普通有り得るかな……?
もう何でも有りなのだろう……。ホントにどうなっているんだ……?
「トニカク……!ワレワレノ ナカマヲ タスケテクレ……。」
「まぁ、任せてよ。そんなに暗い顔しないで……、ちゃんと助け出して来るからさ……。」
「オオ……。ワカッタ……。タノンダゾ。」
暗い顔……?僕には、変わっていない様にしか見えないな……。
だって、どう見ても無機物で目玉1つの生物がどうやって表情作るのだろう……。
でも、さっきよりも浮かび方が弱々しくなっているのかな……?そう感じるけど、実際の事は分からない……。
僕には、いつ見てもポーカーフェイスなんだけどね……。
まぁ、依頼を受諾した以上は熟す事が第一……。頭痛いけども……。
こうしてアサギを先頭に僕らは、電磁波渦巻く謎の洞窟の中へと足を進めるのでした……。
頭痛い。