PART 2 <翌朝>
僕はアサギとスイングの過去を知った。
スイングが、あぁやって無愛想なのも過去の出来事が原因らしい……。
所謂、ポケモン不信って言うやつかな……?
☆
清々しい、朝の光に照らされて僕は目を覚ました。
僕が寝ていた所って、窓の直ぐ側だったから、直接日光を浴び続けてしまった。
直ぐ横では、いつ来たのか分からないが、アサギが俯せに眠っている。これは、起こしたらダメなパターンだよね……。
そして恰も毎日恒例でやっているかの様に、顔を洗って、伸びてみる。記憶喪失なのにね……、自分でも分からない……。
この基地は、改めて見渡して見ると、大分シンプルな構造だった。
部屋の真ん中に比較的大きなテーブルが鎮座していて、それを取り囲む様に藁の布団、僕が今使った桶などがある。
起きたものの遣る事も何も無い、取り敢えず基地の中に居ても退屈なだけ……、なので一旦外へ出てみる……。
外に出てみると、空は青くどこまでも晴れ渡り、鳥ポケモンやペリッパーが忙しく飛んでいる。
「あ、もう起きてたの……?もっと遅いかと思った。」
当然、どこからか声を掛けられる……。それは、聞き覚えのある声だったが、どこに居るのだろう……。
辺りを見渡して見ると、庭に生えた大木の枝の上……、そこにあのエモンガ__スイングが寝転がって居た。
いつもそこで寝ているのだろうか……?飛行タイプだし……落ちても問題は然程無いようだけど……。
「まぁ、寝起きしたの初めてなんで何とも言えないよ……。そうなのかな……?」
「アンタ……、寝起きが初めてって頭大丈夫……?変な冗談……。もっとマシなのつきなよ。」
そう言うと、木から飛び降り、そのまま滑空して地に降り立った。
そのまま、昨日と同じ冷たい視線で僕の事を見つめる。まるで見知らぬ何かを見るように……。
まぁ、見知らぬ何かなのは事実ですけども。
うーん……。信用してもらうのは難しそうだね……。まぁ、重々承知の上だけどさ。
「で、アンタどこ出身なの……?この辺じゃ見掛け無いけど……?」
「あ、それが良く覚えて無いんだ……。所謂、記憶喪失って言うやつらしいんだけど……。で、覚えている事が"自分の名前"と"人間だった"と言う事だけ。変わり者ですか……?」
「あっそう……まぁ、そういう事だね。全く……とんだ変わり者を連れてきたわ。」
そう言い終わると、スイングは基地の中へ入っていってしまった。
昨日と同じ、何とも無愛想な喋りだったけど、こうやってスイングと話したのは初めてかな……。
まぁ、相変わらず"変わり者"だとかと、変に思われてるな……。だって、人間だったって言う事暴露しちゃったし……。
でも、言わなかったら、ずっと隠し事しているみたいで、嫌だったけどね……。
取り敢えず、どっか近くまで行こうかな……。だってこの辺の事知らないし……。
知り合いも増やしたい。だって、交友関係が無かったら気まずいじゃん……?
☆
基地の敷地外に出ると直ぐ、分かれ道に出くわした。
真っ直ぐが、この町の外に出るらしく、昨日森から帰る時に通った。
右が山脈やら、平原やらが見える感じ……。後、ここの住民なのかな……?家みたいなのがポツポツと見える……。
左が何か遠くからだから分からないけど、商店街みたいな感じかな……?途中に家も建っているみたいだけど……。
取り敢えず、僕は左に進む事にした……。
でも、ここに来てまだ半日も経っていない……。それにこっち側は、行った事も無いから、看板を頼りに進んでみた。
で、今に中るわけです。
近くから見ると、さっき思った通り、商店街の様な所で数々の店などが朝早くから営業していた。
でも、店と言っても、何の店なのだろう……。将又、本当に店なのだろうか……。
見れば見る程、怪しく見える……。
「あの……?もしかして、ソラさんですか……?」
突然、聞き覚えのある様な声に尋ねられ、辺りを見渡す。
すると、昨日救助したキャタピーが居た。隣には、彼女と同じ緑色の殻のようなポケモンも居る。
「そうだけど……。もしかして昨日の……?」
「はいそうです!!先日はお世話になりました!!」
早朝から頭を下げられた。また、何故か隣のトランセルまでもが、目を輝かせている。
彼が昨日言っていた、トルンって子なのかな……?
「あの……、もしかしてこの町に来るの初めてですか……?」
「え……?どうして……?」
それは事実だけども、誰かに話した覚えも無いし……。
もしかして、気付かぬ内に呟いてでもいたのかな……?だったら恥ずかしい……。
「あ、違いますよね……。すみません……。」
「あ、否、僕がここに来るのが初めてって事は、本当だから……。でも、どうして分かったのかな……って。」
僕がそう言いながら密かに祈っていたのは、他人には知る由も無いだろう。
と、言うか誰も悟らないで……。
「やっぱりそうなんですね……?!だってこの辺じゃ見かけない種族ですし、それに商店街の入り口で迷ったようにしていたんですもの。」
思っていたのとは、形は違ったけど……、悟られていた事には変わり無い……。
でも、さっきもスイングに言われたんだけど……、僕の種族__クチートは本当に見かけないのだろうか……?
その真相は定かではないが、まぁそうなのだろう……。
「あの……?もし良かったら、この"ポケモン広場"案内しましょうか……?昨日のお礼も兼ねて……。」
キャピーの提案は、今の僕にはとてもありがたい物だった。
だって、この世界に来てから間もないし、それと言った知り合いも居なかったからね……。
そして、僕はキャピーとトルンの後について行き、各商店の説明を受けた。
彼女の説明をリピートすると……
「この双子のカクレオンの店が、きのみとかわざマシンのお店です。弟のカクレオンの色がピンク色なのは、数々の噂があるんだよ!」
「で、ここのペルシアンが営業しているのが、ぺルシアン銀行。まぁ、その名の通りだから、説明の必要は無いかな……?」
「次にここ、プクリンの居る店が、プクリンのともだちサークル。私たちは救助隊じゃないから良く分からないな……。」
「大分歩いたね……。で、ここがゴクリンのれんけつてん。ここは、ポケモン自身の技を連結したりする場所だよ。連結って言うのは、技と技を組み合わせることで、ゴクリンはそれを教えるそうです。ソラさんも救助隊なんですよね……?でしたら、いつか行ってみてはどうですか……?」
「このガルーラが運営しているのが、ガルーラのそうこ。道具専用の銀行みたいな感じだよ。ここに預けていれば、絶対安全なんだよ。」
「最後にここがペリッパーれんらくじょ。ここで救助以来を受けられるんだ。これで、一通り説明したかな……。あ、それとまた、マクノシタくんれんじょって言う施設もあるんだ。」
ふぅ……。朝から大分歩いたな……。少し疲れたよ。
キャピーたちは先に帰ったし、僕も帰ろうかな……。そろそろ皆起きてそうだしね。
でも、結局話せたのは彼らだけか……。まぁ、ゆっくり増やしていけば良いか。
☆
また、同じ道を辿って基地に着いた。
そして、少し伸びをして、基地の中に入ろうとした時だった……。
1羽のペリッパーが飛行して来て、ポストの中に何かを入れた。
それが、ある物だったなんて、その時の僕は知らなかった……。