PART 6 <結成>
漸く、森の奥地に辿り着いた僕らは、崖に落ちてしまっていたキャピーを助けた。
また、このダンジョンが、地震の影響でできてしまった事も分かった。
「じゃぁ、事態も解決したし……。とにかくここから出ようか……。バタフリーさん__キミのお母さんも、きっと心待にしているだろうし……。」
アサギの言葉で、このダンジョンを引き返す事が決まった。
僕らが、無事にキャピーを送り終えてからが、依頼の達成だからね……、最後まで気は抜けない。
☆
漸く僕らはダンジョンを抜け出た。
予想はしていたけど、キャピーを敵から守る事が必要だったから、予想以上に体力を消耗した。
だって、せっかくキャピーを助けたのに、余計な傷を負わせてしまったら、無傷で無事に助けた意味が無くなる……。
アサギもワザの使え無かった時の僕を守る時は、こんな気分だったのかな……?だとしたら、彼に凄い迷惑と言うか、苦労を掛けていたんだな……。感謝しきれないよ……。
そう考えていると、彼方からどこで僕らがキャピーを助けた事を聞いたのかは知らないけど、バタフリーが息も絶え絶え飛んで来た。所謂地獄耳って言うのかな……。
「キャピーちゃん!!無事だったのね……!!」
「お母さん!!」
両者とも、お互いに気づき合うと全速力で再開を喜んでいる。
何だろう……この光景を見ると、ホントに救助して良かったなって思う……。
そして、存分に再開を喜び合ったバタフリーは、徐に僕らの方に向き直る。
更に釣られてキャピーも僕らの方を向く。
「すみません……。こちらが勝手に舞い上がってしまって……。とにかく今回はありがとうございました。何とお礼したらいいのか……。」
こうして改めて礼を言われると、何とも照れくさいのだろう……。それより今日の僕は照れすぎだな……。まぁ、それほど良い事をしたという証拠と捉えようか……。
「いえいえ……。お礼なんて良いですよ。とにかくキャピーさんが無事で何よりです。」
アサギはバタフリー親子にそう伝えると、僕の方を向いて「そうだよね」と合図する。
僕も同感かな……?とにかく無事で何よりだよ……。
その言葉に感激したかの様にバタフリーは目を潤し、キャピーは「カッコいい」と呟いている。
僕もそう思うよ……。だって何でも先にテキパキとやっちゃうんだもん。自分が引き受けたという責任を感じてるのも一理あるだろうけども……。
「でも、お礼をしないわけにはいきません。大した品では無いのですが……。」
そう言って、どこからか取り出したのは、複数のきのみだった。
青や桃色の色とりどりのきのみ。勿論僕は知らなければ、食べた事も無い……。故に美味しいのかは全く持って知らない。
そして、僕らもお礼を言うと、バタフリーたちはどこかへ帰っていった。
一件落着って奴かな……?まぁ、何とか無事に終われたな……。
そう考えると、今まで溜まりに溜まっていた疲労が一気に押し寄せてきた……。
「ふぅ……。やっと終わったね。そう言えば……ソラはこの先どうするの……?記憶喪失なのに行く宛はあるの……?」
アサギは、1つ溜め息を吐き、地面に腰を下ろしている僕に尋ねる。
この先の事か……。今までキャピーを救助する事に頭が一杯だったから考えた事も無かった……。
目が覚めたら、記憶も身内も何も無い世界だもん……。行く宛なんて無いか……。
考え込んでいる僕を見て、状況を察したのかアサギが口を開く。
「その様子だと、行く宛も無いみたいだね……。じゃあさ、今後ボクの家で暮らさない……?」
「えぇッ……?!ホントに良いの……?出会って間も無いんだよ……?!まぁ、1日中一緒だったけども……。」
彼の口から告げられた、予想外の言葉に僕は驚いてしまう。大分声が大きかったな……。恥。
僕がそう聞き返すと、彼は勿論と言うように、首を縦に振る。
「でも、ソラ……?1日を一緒に過ごして思ったんだ……。」
「次は何……??」
「ボクと"救助隊"をやってくれないかな……?無理だったらそれで良いけど……。どうかな……?」
救助隊を"やって"と言う言葉より、僕は"救助隊"と言う聞き慣れないワードに疑問を持った。
この世界は、僕の知らない事だらけだ……。やっていけるのか心配になってきた……。
「もう少し待ってて……。でも、その"救助隊"って何なの……?それが分からないと……答えが出ないよ……。」
「あぁそっか……。ソラはこの世界の事何も知らないもんね……。"救助隊"って言うのはね……、ボクらが今日今回やったみたいに、困っているポケモンを助けたり、悪いポケモンを捕まえたりする団体の事だよ。で、どうかな……?」
所謂、ポケ助けを専門とするやつなのかな……?
ダンジョンに踏み入れるのは、やっぱり怖いけど……、今日みたいに感謝された時は嬉しかったな……。
よし……僕は決めたよ……
「じゃぁ……、僕はキミとその"救助隊"って言うのをやるよ!」
「本当……!?やったぁ!!これであいつの許しもでるね……!!」
僕が承諾すると、怱ち目を輝かせて喜ぶアサギ。
まぁ、良かったかな……これで……。
あれ……何か引っ掛かるな……。そうだよ"あいつ"って誰……?
でも、その疑問は彼の無駄に明るい言葉に掻き消された。
「さて、そろそろ日も暮れるしさ……帰ろうか。案内するよ。」