第三話 『才能』
前回のあらすじ。
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アクアはキリアに約束した。
《約束する。このゲームが終わるまで…君だけは絶対に死なせない。このゲームが終わるまで君を僕が全身全霊で守り通すから…だから安心して…ね?》
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翌朝。早朝。今が何時なのかはわからない。何時なのだろう?
部屋で目覚めたアクアはゆっくりと体を起こし、洗面台へ行き、顔を洗って歯磨きをした後に時計を見る。
アクア「まだ6時か……」
昨日、キリアの部屋から出た後すぐにまたディーナとガジラ、アクアとで話し合い、仲良くなった後に色々部屋のことに付いて聞いていた。キルフィールドに出場する者は大抵この列車の中で沢山のご飯を食べて過ごす。時には一匹で10匹分の食料を平らげてしまう者もいると言う。すごい…。で、他にも部屋があり、モニター部屋や連絡部屋、他にも寝台列車なのに何故か特訓部屋がある。その部屋ではその名の通り特訓ができる。しかし【タダの特訓】ではない。その部屋に入り、ボタンで難易度を選択して決定ボタンを押すと列車内が森や砂漠、草原へ変わり、次々と敵が出てきて自分を攻撃してくる。その攻撃を避けながら、一度も敵の攻撃に当たらずどれだけその場で戦っていられるか、と言うものだ。かすり傷だけでもアウトになってしまうと言う結構難しい特訓ゲームだ。それと協力プレイも可能なのだとか。ちなみにアクアは今まで生きてきた中で木刀で遊ぶこと以外一度もまともに戦ったことがない。
アクア「………いっぺん戦って見るか…」
そう一人ごとを呟いて特訓部屋に入った。
中は思った以上に広く、本当に寝台列車なのか?と、思ってしまうほどだ。そんな事は今は気にせずに難易度簡単を選択し、決定ボタンを押す。すると。
【これより、難易度《鬼》の特訓を始めます】
と、聞こえた。
……ん?気のせいだろうか?今鬼と聞こえたような……って!!気のせいじゃない!!このボタン鬼って書いてある!!!と、最初は焦ったがこれは当たればゲームオーバーになるからちょっとやって見て無理だったら当たって終わらせようと言う事にした。そして…特訓ゲームが始まった。周りは沢山の木に囲まれ森林のステージになった。
ちなみに言ってなかったが、アクアは木刀だけは非常に得意で、友達との間で負けた事は一度もないそうだ。そして大人ともまともにやりあえる程だ。それぐらいアクアは木刀に自信がある。
アクア「よし………いくぞっ!!!」
そう言って木刀に近い日本刀をもって身を構える。周りから来る気配をたどり…左後ろにいる敵を切り裂く。それと同時に沢山の敵が襲ってくる。一つ一つの技をギリギリで避けながら切って突いて蹴って倒していく。初心者とは思えないぐらいの動きをしてどんどん敵を倒していく。
アクア「アクアボールッ!!水の波動ッ!!」
アクアボール、エレキボールやシャドーボールの水バージョンみたいな物だ。それの次は水の波動を放ち、敵に確実に当てる。
アクア「次ッ!!アクアボンバーッ!!」
そう言って10数個程の水の玉を投げる。そしてそれが敵や地面にあたり爆発して砂煙りが上がる。そして着地した瞬間、後ろから弓が飛んできた。アクアは持ち前の反射神経でその弓の先から太刀で端っこまで綺麗に真っ二つに切り裂く。そしてそのまま太刀を弓の飛んできた方へ投げ、敵を倒して……ゲームをクリアしてしまった。
アクア「はぁ…はぁ…きっっっっつい…………」
アクアはそのまま倒れこみ、休憩を取る。すると何処からか拍手をする者が。よく聞くと3匹が拍手している。この三人は大体誰なのか予想が付く。
ディーナ「わぁお!!すごいわねあんた!!難易度鬼を簡単にクリアしちゃうなんて!!」
ガジラ「やるなぁ!!俺でも結構苦戦したのに一発で簡単にクリアしちまうなんて!!」
キリア「すごいよアクア君!!それにかっこよかったよ!!はい!これお水!」
と、一人一人違う意見を述べながらアクアの方へ歩いていく。最初の2人の感想には何故か何も感じなかったが、最後のだけ無駄に嬉しく思ってしまうアクア。…何故だろう?
アクア「見てたんですか…」
ディーナ「ええ!貴方が特訓部屋に入って行くのを見て、この二人を連れてあなたの特訓してるとこを見ようって事になったんだけど…まさか初心者で難易度鬼をクリアするとはね!最初は直ぐやられるって思ったわよ!」
そう言ったディーナは少し興奮しているようだった。が、ガジラには直ぐに分かった。アクアは心の中でまだ全然足りなさそうにしているのを。要するに先ほどのはアクアの中では全然ダメだったということだ。まだたりない…何か物足りなさそうなアクアにガジラが声を掛ける。
ガジラ「…………物足りなさそうだな」
アクア「へっ?」
何のことかととぼけようとするアクアに少しイラっときたガジラは少し強めに言った。
ガジラ「まだ何か物足りないって思ってんだろ!その証拠に、ディーナが話してた時も俯いて難しい顔をしてた」
アクア「…………」
図星だった。何も言えなくなったアクアは正直にいた。
アクア「……さっきの、ずっとギリギリで交わしてたんだ。あんなんじゃずっと連続で罠とか敵とかが出てきたら余裕が無くなってその内やられちゃうよ。もっと強くならなきゃ…もっと強くならなきゃ守りたいものだって守れなくなる………」
アクアは表情を一切変えず真剣な表情でまっすぐガジラを見て言った。守りたいもの。ガジラは分かっていた。その守りたいものと言うものがキリアだと言うことを。実はあの時、ガジラは見ていたのだ。約束を交わしていたところを。その瞳の中に強い大きな意思があるのがガジラによく伝わった。そして、その瞳はキリアと約束をした時の目と同じだった。
ガジラ「……よし、分かった。そこの鬼のボタンを三回押して決定を押せ。俺たちは部屋の外から見てるぞ」
そう言ってガジラ達は部屋の外へ出ていった。
そしてアクアは鬼のボタンを三回押し、決定ボタンを押した。
【警告。警告。これより地獄モードを開始します】
アクア「地獄モード?なんか怖いn………ぐっ!?」
独り言を言い終える前に背中にとんでもなく痛い激痛が走った。
アクア「なんっ……だっ……!?」
アクアは自分の背中を見ると……一本の矢が刺さっていた。
アクア「これ……全く気配を感じんかったっ!!……いってえええ!!!」
そう言いながら背中に刺さった弓を抜くアクア。周りは真っ暗で敵なんて全く見えない。すると今度は正面から顔面を殴られ、吹っ飛び、壁に激突する。
アクア「かっはっ!!っくっっっっそ!!!!」
激怒したアクアは自分のお腹のホタチを抜き、戦闘態勢に入った。
すると、微かに、微かにだが何かを感じ、それと同時に危険を感じたアクアは左に避ける。すると、さっきまで自分のいた場所に大量の矢が降り注いできた。そのままでいたら即死だっただろう。
アクア「なんだよっ!!これ!!!!」
アクアは完全にパニックになってしまっている。だがこれはまだまだ始まったばかり。本当の地獄モードの地獄は次の一本の矢とともに始まった。
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続く。