第一話 『当選者』
ここはアルカディア国のとあるスラム街。ここには沢山の貧しいポケモン達が暮らしている。毎日毎日こつこつと働き、1ヶ月1000円と言うほんのちょっとの給料でみんな働いている。そんなスラム街にとある白い服の集団がやってきた。
???「はぁ〜い皆さぁん!!今年もキルフィールドのくじをしにやってまいりましたぁん!!」
今、集団の数名が短時間で作った高さ2メートル、横の長さ4メートル、奥行き2メートルの土台の上でルンパッパと言う種族のポケモンがテンションあげあげでキルフィールドと言った途端。スラム街のポケモン達は静まり返り、綺麗に列を作った。途中泣き始めてしまうものがで始めて、その泣いてるポケモンをこれでもかと言うぐらいに白い服のゴーリキーと言う種族のポケモン達はボコボコに殴っている。それを止めに入ったものも空手チョップで気絶させ、何処かへ連れて行ってしまう。
???「あらぁ〜可哀想にぃ〜…まぁいいわ、それより自己紹介!!」
なんとこのルンパッパはそんなのはどうでもいいと言う顔をしながら自分の自己紹介をし始めた。
ディーナ「はぁい!!私はルンパッパのディーナ!!ディっちゃんとでもよんでね!!よろしくぅ〜!!」
そういうがスラム街のポケモン達は一言も喋らずにじっと立ってじっとディーナを見つめている。中には睨む者。殺気を立たせている者。いろんなポケモンがいる。誰も反応しないことを確認したディーナはごほんっと咳払いをして再び喋り始める。
ディーナ「はぁい!!それでは早速キルフィールドに参加する男一匹と女一匹の二匹を選びたいと思いまぁす!!」
そう言うと、右側の大きなガラスの入れ物から紙を一枚取り出した。
ディーナ「はぁい!このみんなから見て右のガラスの箱の中にはこのスラム街のオスポケモン達の名前が入っていまぁす!さぁ一体どの子が選ばれたのでしょうかぁ?」
そう言ってディーナは紙を広げて行く。名前が呼ばれるまでの間、スラム街のオスポケモン達の中には、必死に祈るものや、もう今にもぶっ倒れそうになるもの。中には逃げ出して白服のゴーリキー達に連れて行かれるものも出始めた。そして、ディーナが紙を広げ、選ばれたポケモンの名前を呼ぶ。
ディーナ「はぁい!!今回選ばれたのは………種族ミジュマルのアクア君でぇす!!!」
ディーナは一人で拍手をしている。
が、スラム街のポケモン達の中に拍手するものはいない。
そして、肝心のアクアは…。
アクア「嘘………だろ………」
この世の終わりを見ているかのような顔で一歩また一歩と台へ上がる。そして台の一番上まで上がると、ディーナが笑顔で迎えてきた。
きっとアクアは今まで生きてきた中でこれほど憎い笑顔を見たのは初めてだろう。
アクア「(くっそったれ………)」
アクアは涙を流しながら暴言を吐く。ディーナには聞こえていないようだ。左のガラスの箱の前まで行き、箱の中に手を入れ、箱の中から紙を取り出す。
ディーナ「はぁい!それじゃあ次の子!!女の子ねぇ!!種族は…ピカチュウ!!で、名前はキリアちゃん!!おめでとおおぉぉ!!」
キリア「イヤダアアアァァアア!!お母さあああん!!お父さああぁぁん!!!」
キリアはゴーリキーに掴まれながらも母親に必死に助けを求める。すると、キリアにとって衝撃の言葉が降りかかって来た。
キリア母「ふんっ!!とっとと行っちまいな!!これでうちの生活もちょっとは楽になるよ!!そこのお兄さん、早くそのクズを連れて行って頂戴!!」
キリア「へっ……?」
何とキリアの母は心配するどころか、キリアを罵った。
それを見たアクアは………キレた。
アクア「おい…」
アクアは台から飛び降りて、キリアの母親の方へまっすぐ歩きながら言う。
アクア「てめぇ…今自分が何を言ったかわかってんのか…」
それを見たゴーリキー達は止めに入ろうとしたが、何故かディーナがそれを止めた。アクアは不思議そうに一度ディーナを見ると、ディーナはアクアに対してウィンクを飛ばした。
アクアは少し頭を下げ、再びキリアの母の方へ歩き始めた。
アクア「てめぇは今自分の娘をクズ呼ばわりしたんだぞ……更にはこの狂ったゲームに自分の娘が強制参加させられそうになってんのに、お前は止めるどころか逆に連れて行けと言った……」
キリア母「ふんっだからどうしたってんだい、クズにクズって言って何が悪い」
アクア「っく……てめぇ見てえなクソになんざぁなぁ……このスラム街のど真ん中で偉そうな口叩くのも!!!母親としての資格もねえんだよ!!!」
キリアの母に殴り掛かろうとしたアクアはゴーリキーに押さえつけられる。そして………。
アクア「う"っ!?!?…………」
俺は気絶した。
ここでアクアのこととキリアのこととキルフィールドのことについて話をしよう。
ーーーーーー
それは数時間前。
アクアが店の前でテレビを見ていたとこから始まる。
アクア「はぁ、大人たちが見てるこの番組ってそんなに面白いのかなぁ?」
今やっているのはとあるホラー系の番組だった。学校や廃病院、時には夜中に山へ行き、次々と怪異を解決していくと言うストーリーだ。他のポケモン達は思いっきりその番組に食いついているのだが、アクアは全く興味がなかった。するとアクアの横でいきなり叫び始め、アクアに抱きついて来たポケモンが一匹。
アクア「あ、あのぉ……ちょっと…?」
???「はっ!!...ご、ごめんなさい!!///」
そのポケモンはその場で何度も謝り始めた。流石にこれは恥ずかしい。しかもよく見るとそのポケモンはメスのピカチュウだ。これがアクアとキリアの最初の出会いだった。それより女の子にここまで、しかも公共の間で謝らせているのが尚更恥ずかしい。
アクア「あ、いや、そこまで謝らなくても…ってか君、大丈夫?」
キリア「ご、ごめんなさい…テレビでいきなりゴースが出てきて
すごくびっくりしちゃって…その…本当にごめんなさい!!」
アクア「いや、だから謝らなくてもいいよ!!」
再び何度も謝り始めるそのピカチュウにアクアはもういいってば!と、困り果てる。すると、一匹のライチュウが近づいてきた。
???「あんたまた謝ってるの!?」
と、大声でキリアを怒鳴りつけ始める。大きな体格で三日月のような形をした耳。細長い尻尾。ライチュウだ。きっとキリアの母親なのだろう。
キリア母「あんたいい加減にしなさいよ?一体どんだけ謝れば気がすむの!!」
キリア「うっ……ご、ごめんなさい」
と、キリアはシュンとしてしまう。すると、テレビの方のドラマの映像が変わり、とあるニュース番組になった。
ナレーター「おはようございます皆さん!!今年もついにあの楽しいバトルゲーム!!キルフィールドの時期が近づいてやって参りました!!」
キルフィールド。
一つの大きなフィールドで世界中から選ばれた24匹のプレイヤー達が殺し合う最低なゲーム。プレイヤー一人一人は自分の得意な武器を持ち戦う。もちろん技もオッケーだ。これは、いわゆる生死をかけた集団ポケモンバトルだ。ちなみに勝ち残れるのは24人の内たったの1人。毎年それでチャンピオンが決まる。
アクア「うわぁ…またかよ…」
キリア母「またなのね」
キリア「このスラム街の誰かオスメス一匹づつ選ばれるんだよね…」
アクア、キリア、キリア母はそれぞれ違う感想をのべ、テレビを見続ける。
ナレーター「だが今回のキルフィールドは一味違う!!!」
それを聞いた途端。キリアの母が硬直した。
キリア母「まさか……あれをやるんじゃ!?」
アクア「え、あれって……」
キリア母「多分今年やるのは世界中から集められた120匹のプレイヤーが殺し合う大規模なキルフィールド…フィールドは半径軽く1000km以上もあってプレイヤーがある一定の数まで減るとどんどんフィールドが狭くなると言うもの。これは終わるのに半年以上は掛かるゲームで、資金も掛かる。20年に一度しか行われないんだけど…」
アクア「今日がその20年目ってことですね…」
キリア「そんな怖いところに選ばれちゃったら…」
キリアがそこまで言うと……。
ディーナ「はぁ〜い皆さぁん!!今年もキルフィールドのくじをしにやってまいりましたぁん!!」
ディーナの声が聞こえ始めた。
ーーーーーー
続く。