キーワード6:「For Tomorrow打線が目指す更なる高み」の巻
あさひポケナインズが7年間遠ざかる頂点を目指して着々と戦いの準備を進める頃、同じプロ野球“カントリー・リーグ”に所属するライバル球団にも様々な動きが見られた。
カントリーの西部に位置する“ゆうひタウン”。
この町に存在する屋外球場、“ゆうひスタジアム”を本拠地とする“ゆうひオレンズ”はこの年のペナントレースを2位で終えていた。
「今シーズンを振り返ると、リーグ制覇へのポイントとなる試合で勝ちきれなかった。久しぶりのAクラス入りを果たせたのは嬉しいことだけど、このチームならまだまだ上を目指せるはず。そのためにもこの秋季キャンプを充実したものにしたいですね」
来年の闘いへの準備となるオレンズの秋季キャンプ。その様子を取材にきた多くの報道陣に対し、確かな手応えを語る選手がいた。
背中のたくさんのトゲ、鋭い手足のツメが特徴的な……ねずみポケモンのサントパン。彼はファースト(一塁手)のレギュラーとして安定した守備と、一流選手としての証である打率(ヒットを打つ確率)3割超えを毎年成し遂げている打撃が自慢のオレンズの中心選手だった。
「オレンズの持ち味といえば、ホームランこそ少ないけど打ち出すと無限に繋がる……“For Tomorrow打線”。だけど課題の守りが改善されないせいで、なかなか優勝争いに絡むことが出来なかった。今年こそ2位に入ったけれど、同じくらい打っていた去年が5位、その前が4位、6位、5位とBクラス(4位以下)が当たり前だったことを考えたら、勝つってこんなに難しいことなんだって感じましたね」
オレンズで11年間プレーしてきた背番号“14”。その間チームは優勝争いはおろか、Aクラスもあまり経験していない。それでも選手や首脳陣のチームへの愛着、そしてファンの温かく熱い声援は変わることはなかった。
「それだけに来シーズンへの決意は僕だけじゃなくてみんなも強いですね。あまり満足できる成績でなくても毎日満員に近いお客さんが、スタンドを埋めてくれて、たくさんの勇気を僕たちにくれる。そのお客さんに僕たちが“ナンバーワン”になるところを見せてあげたい。そしてみんなで喜びを分かち合いたい。今はただそれが僕の夢です」
一度火を噴くと永遠に攻撃が止まらないオレンズ打線。いつしかその打線はとあるファンによって、この町のシンボルである夕陽が明日ものぼる存在であることから、無限に続く攻撃の様子も含めて“For Tomorrow打線”と名付けられた。
しかし来シーズンはこの攻撃に加え、掴んだリードを逃さない鉄壁の守りが加わった新しいオレンズ野球が展開されるはずだ。