キーワード3:「登場!!期待の新星たち!!」の巻
12月下旬……。冷たい北風と白い雪が世界を包む頃、8年ぶりの優勝を目指すナインズからドラフト会議と言う形で指名された、小さき期待の新星たちがプロ野球の世界に足を踏み入れようとしていた。
「信じられない……。本当にプロ野球の世界にやって来たんだ。しかも夢だったナインズのユニフォームを着て……」
オレンジ色の小さい体に白いお腹、しっぽの先から命の炎が燃え盛るポケモン……とかげポケモンと呼ばれる種族の僕、ヒトカゲは“あさひスタジアム”を目の前に大きな瞳を潤ませていた。
小学校になったばかりに、大のナインズファンだった父と一緒に来たこの野球場で観たナインズの試合で、初めて味わった野球場の熱気……そして自分のところまで飛んできたサヨナラホームランのボールが手にしていた赤いグラブに吸いこまれたあの感動……。
『いつか僕もナインズに入ってみんなが喜ぶようなホームランを打つんだ!!』
あれからセカンド(二塁手)として今日まで頑張ってきた野球人生を振り返ると、この熱き想いを抑えられないのは仕方ないのかもしれなかった。
「私も信じられないよ。しかも小学校からずっと一緒だったヒトカゲくんと同じチームに入れたなんて……凄くラッキーでハッピーだよね!これからも一緒に頑張ろうね!」
僕の反応に黄色い小さな体、先端が黒い長くとがった耳、ギザギザで先端がハート型になったしっぽ、赤いほっぺたにつぶらな瞳が特徴という種族……ねずみポケモンと呼ばれる女の子のピカチュウが、僕の様子を見て笑顔を浮かべていた。
彼女は僕と小学校から高校までずっと同じクラス、しかもどんなときでもなぜか僕と必ず隣の席だったという……とても不思議なつながりを持っていた。
ちなみに野球を始めたのは小学校5年のとき、たまたま僕のチームメイトが試合の日にカゼで休んだハプニングに、遊び気分でその子のポジション……ショート(遊撃手)を守ったら、種族の特性を生かした抜群の瞬発力で好プレーを連発して監督をびっくりさせたのがきっかけだった。
それからずっと僕と鉄壁の二遊間として頑張ってきた……とにかくミラクルな野球人生を送ってきたのである。
(僕が言えるような立場じゃないけど、女性選手ってプロ野球にはなかなかいないから、これから厳しいかも知れないけど……なんとかピカチュウには頑張ってほしいな。そして二遊間を組めれば良いな……)
僕は優しい性格が光る彼女のプロ野球での活躍を祈りつつ、一緒に新人選手の入団会見が行われる事務所へと向かった。